紙の本
物語がゆるやかに流れ始める
2019/12/24 12:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
秋川のふたりの女性が登場することで、物語がゆるやかに流れ始める。
免色の挙動に変化がきざし、関係を絶っていたユズの動向も垣間見える。
老画家の過去についても、南京事件など旧日本軍との関わりも示唆される。
村上さんは、一貫して日中戦争には関心を払い続けているので、
別に不思議ではない。
そして、まりえが姿を消す。
ここまで村上春樹の長篇にしては、淡々と来た感じだが、
さて、ここからどう流れていくか。
紙の本
メタファー編
2019/05/16 20:50
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ごんちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
秋川まりえちゃんがいなくなり緊迫したところで3巻はおわってしまいましたが、騎士団長や面色さんなど秘密を抱えたキャラが性格を表しながら精神構造を文章にしたようで最終章が楽しみです。
紙の本
村上春樹氏の独特の世界が幕開き、読者をその世界にどんどんと引きずり込んでいきます!
2019/04/22 08:50
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、独特の世界観で読者を魅了してきた村上春樹氏の『騎士団長殺し』文庫版の第3巻です。同巻では、森の奥にひっそりと佇む山荘に飾られた4枚の絵を眺めていた絵画教室の少女とその叔母の前で、その絵が一つの大きな物語を浮かび上がらせます。その物語の中には、奇妙な話し方で主人公の「私」に謎かけをする騎士団長もいます。そして、次第に山荘の持ち主である老画家の歴史が明らかになってきます。一体、その歴史とはどんなものなのでしょうか?読者はいてもたってもいられない感情にさいなまれます。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ねむこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
どうにも不思議な感覚の持ち主のようです。子供のようで、子供ではないって感じ?
免色さん以上に興味深いです。
イデアである「騎士団長」は謎かけのようなことを言うし、ゆずの秘密も明らかにされるし、盛りだくさん。
後一冊で落ち着くのかな。
投稿元:
レビューを見る
このところ多忙につき、読感を書いている時間がない。
とりあえず、読みましたということで、読了日と評価のみ記載。
投稿元:
レビューを見る
起承転結の転に当たる、第2部の上。まりえの肖像画を描くのが中心に進むのかと思いきや、雨田具彦の過去が分かってみたり、ユズの今が分かってみたり。こう拡散させてどう収束させるんだろうと思ったら、事件発生。気になるところで4巻目の下へ。とりあえず、メタファーって何だって気になるな。
5月の週末で読み進め、復活した出張の飛行機で読み終えました。
投稿元:
レビューを見る
主人公の周りの人物と共にいくつかのイベントが行われ、いくつかの不思議な事象に直面する巻。
1巻の最初と繋がりそうなアイテムは出てくるが、不思議な出来事に関しては3巻時点で断片的に起こっている印象。4巻ですっきりできることに期待したい。
投稿元:
レビューを見る
第2部(上)。
何だか樹海に迷い込んでいるのに、どんどん進んでしまうような。
未だに謎が深まるばかりなのですが、心地よい混沌に引き込まれて一気に読んでしまいました。
次巻で終わりなのですよね。収束できるのかな。ま、結局謎のまま終わるのも村上ワールドではありですから。
とりあえず先に進むしかない感じです。
投稿元:
レビューを見る
・秋川まりえの肖像画を描き進めていく。中学生のまりえは叔母や免色には素っ気ないけど、主人公には好意的。二人の会話が淡々と描かれる。二人ともどこか冷めたような、冷静な感じがする。
年の割に妙に大人っぽい登場人物というのも、いかにも村上春樹の作品ぽい。
・主人公が小田原に来てから描いた絵は4つ。1.免色の肖像画、2.白いスバル・フォレスターの男、3.秋川まりえの肖像画、4.石塚の下にあった穴の写実画。
主人公が絵をどう描き進めて行くかを考えたり、絵を眺めながら取り留めなく考えたりする時間が多く描写されている。芸術家はそんな風に考えるもの?とても精神的な見方が多くて、面白い。芸術に携わる人がこの作品を読んだら、どう感じるだろう?
・この作品では、冒頭から色んな「事件」が起こっている。この3巻の事件は、まりえの失踪。警察に届けないと。でも石塚の穴のことや騎士団長のことを話しても、変に思われるだけだ。「警察」というとても現実的な言葉とファンタジーっぽいことが混ざっている。どこまでが現実でどこまでが非現実なのか、境界が曖昧で読んでいて奇妙な気分になる。
投稿元:
レビューを見る
◇帯
少女は森の小径を抜けて
真夜中の鈴とみみずくの羽音に導かれ、4枚の絵がパズルのピースのように、一つの物語を語り始める。
……
メモあり。
投稿元:
レビューを見る
一巡目での感想。
(村上春樹氏の作品は、何度も読み返す度にまた違うものが見えてきて、新たな気付きや、新たな解釈が生まれるので)
ストーリー展開や結末が分かっていても、再びページを開いてしまうとそこから読み返してしまう。読み返すと止まらなくなる。これは村上作品全てに共通する普遍。
気に入った音楽を飽きることなく何度も聴きかえすように。
村上作品は、文章を追うだけでしっかり体感できる。自分の心の中で描かれた情景が揺るぐことない映像として記憶される。
ピンクのスーツを着たふくよかな女性の後ろ姿だったり(世界の終わり)、イルカホテルに棲む羊男だったり(ダンスダンスダンス)。
村上作品だけは、何十年も前に読んだ本でも記憶を映像として呼び起こすことができるのは、この「心の情景」が描けている稀有な作家だからだと思う。
●心の情景
まるで女性器のような雑木林の祠の穴。
屋根裏に棲みついたみみずく。
「騎士団長殺し」「白いスバルフォレスターの男」「未完成のまりえの肖像画」が置かれたアトリエ。
谷の向こう側のまるで要塞のような免色さんの白い豪邸。
会話の合間に眺めた、窓にうちつけられた雨の雫。
●「性」「生」「死」
「性」「生」「死」は、村上作品で一貫して重要になってくる要素。
なかなか消化できないそれらの問題を、全てをまるごと享受して生きていく。
今回は「井戸」ではなく「穴」。
それは、茂みにひっそり隠れた「まるで女性器のよう」で更に「異次元に繋がっている」ことから、子宮を連想する。
無から有に変わる場所(命が有形化され、魂が宿る場所)、無風だけど水がある(羊水)。
別次元に迷い込んだ子宮(もしくは狭くて真っ暗な卵管なのか産道)を潜り抜けて再びこの世に生まれ落ちた時、私はもう一度生まれ変わり、ユズに会う決心をする。
そして、実質的な我が子ではないけれど、ユズの身籠った子供は、自分にとってかけがえのない子だと揺るぎない確信を得る。
●「イデア=顕れる」
ここで顕れたイデアは、内なる自分。
「罪悪感」「怒り」「内なる悪」「邪悪なる父」の仮の姿、可視化。
大切なものを奪われ、どこにぶつけたらいいのか分からない怒りのようなもの。
表立って出ることなく、心の中だけに留められた怒りのような感情を、ただやり過ごして生きてしまった、未消化のままのもう一人の自分。
昇華しきれてない感情があるものだけに見えるイデア。
雨田具彦にとって、愛する女性を殺された怒りと、自分だけ助かった裏切りと罪悪感(騎士団長殺し)。
私にとって、幼いコミを奪われた病魔と何もできなかった罪悪感、ユズが浮気して突然去っていった怒りとそれに向き合えない罪悪感(白いスバルフォレスターの男)。
秋川まりえにとっては、母の命を奪ったスズメバチへの怒り、心を通わせられない父親への憤り。笙子への罪悪感。(免色家の謎の男)
私が騎士団長を殺したことで、雨田具彦のイデアは救われる。
そして、穴の中に��り、コミを失った現実としっかりと向き合う。
まりえは免色家で、スズメバチや謎の男と対峙する。
喪われたはずの愛する存在は、完全に失われたわけではなく、今も尚、自分を救ってくれている。
●「あらない」(「在る」と「無い」)
騎士団長の口癖「あらない」には、「在る」と「無い」を両方含んだ「ない」である。
「在る世界」と「無い世界」で判断しがちだけれど、実は「無くなった」ものは、完全に「無」になったのではなく、「在りながらして無い」のだ。
●「顔なが=メタファー=遷る」
顔ながは、時空や次元を超えた目撃者(冷静に判断できるもの)で、二つの世界の蓋を開ける者。
屋根裏を覗いた私そのものが、雨田具彦にとっての顔なが。
●「顔なし=二つの世界の橋渡し」
現実の世界(生・肉体)と非現実の世界(死・魂)の橋渡し的存在。
橋渡しが可能になるアイテムが顔なし次第で都度変わる。(鈴、ペンギンのお守り、完成した肖像画)
免色渉=顔なし。
免色渉の肖像画を完成させたから、ふたつの世界を行き来することができた。
私は冒頭のプロローグで、顔なしの肖像画を描こうとしていることから、何らかの理由で再び向こうの世界に行こうとしているのかもしれない。
●穴の中の世界
穴の中の世界は、子宮の中で命が芽生えることと似通っているように感じた。
有形が無形になり、無形が有形になる、「在る」と「無い」が通り道となる場所。
逆らえない運命のようなもの。
水があれば飲まずにいられないような(羊水)
川を渡るしか選択肢がないような(三途の川)
細い穴を潜り抜けるしか道がないような(産道)
●二重メタファー=免色渉?
「1つの精神が同時に相反する2つの信条を持ち、その両方を受け入れることができる能力のこと。あなたの中にありながら、あなたにとっての正しい思いをつかまえて、次々に貪り食べてしまうもの。そのように肥え太っていくもの。それが二重メタファー。それはあなたの内側にある深い暗闇に、昔からずっと住まっているものなの」
物事には相反する表と裏があり、それがセットでひとつである。日が当たれば必ず影ができる。どちらか一方だけを無くすことはできないけれど、場合によっては影に覆い尽くされてしまうことはある。
目に見える現実世界の出来事だけでなく、別の世界(想像の世界)も信じてもいい。しかし、免色のように想像の世界に現実まで貪られてしまっては元も子もない。
現実世界と想像世界を上手に行き来できる柔軟さ、不確かなものを信じる力も大事、でもその信念は時に行きすぎると盲目的になり現実を脅かすものにもなりかねない。
真実の顕れであるイデア(揺らぎのない真実)観念よりも、メタファー(揺らぎの余地のある可能性)不確かな現実を信じる免色渉は、「まりえが自分の子どもかもしれない」という不確かな可能性を拠り所にするために、半ば強引に豪邸を買い取ったり、笙子を手中に納めたりする。
人間誰しもが、自分の正しさ(信仰)を追求するあまり、結果的に悪をもたらしてしまう���とがある。
●最後のユズのくだり
「私が生きているのはもちろん私の人生であるわけだけど、でもそこで起こることのほとんどすべては、私とは関係のない場所で勝手に決められて、勝手に進められているのかもしれないって。
つまり、私はこうして自由意志みたいなものを持って生きているようだけれど、結局のところ私自身は大事なことは何ひとつ選んでいないのかもしれない。
そして私が妊娠してしまったのも、そういうひとつの顕れじゃないかって考えたの。
こういうのって、よくある運命論みたいに聞こえるかもしれないけど、でも本当にそう感じたの。
とても率直に、とてもひしひしと。そして思ったの。
こうなったのなら、何があっても私一人で子供を産んで育ててみようって。
そして私にこれから何が起こるのかを見届けてみようって。
それがすごく大事なことであるように思えた」
これは、私が18歳の時に日記に綴った言葉とほぼ一緒。
私は免色渉やユズのように、完璧主義で徹底している。
避妊だってぬかりなく、計画外の妊娠なんて絶対に在りえないはずの条件で、妊娠してしまった。
そして、私はユズと同じように「産もう」って決心した。
結局産めなかったし、その後も流産を繰り返し、結果的に子宝に恵まれたなかったけれど。
それでも、あの時思ったこの感情や出来事は、私にとって「あらない」なのかもしれない。
現実には「無い」けれど、今でもしっかりと「在る」。
私の人生の核となっている。
投稿元:
レビューを見る
村上春樹作品の主人公(大抵の場合、僕)は大体同じようなキャラクター(クラシックやジャズが好き、料理が好き、読書が好き、色んな女を抱く、などなど)だなと思っていて、恐らく村上春樹本人(あるいは村上春樹にとっての理想像)がモデルだろうと勝手に思っていて、今回もそんなキャラクターだった。というところから、考えて、ひょっとして絵を描くことと小説を書くことというのは似てるのかなと。
例によってちょいファンタジー要素もあり、ちょいミステリー要素(いつも通り解決しない謎多数)もあり、最近の村上春樹っぽい長編作品でした。
投稿元:
レビューを見る
絶妙に登場人物が絡み合ってきて
先の展開が気になる、が
この少ない登場人物たちが
これから、どうなっていくのか
これが村上ワールドなのかしら
投稿元:
レビューを見る
でも如才のない免色のことだ その車が静々と坂道を降りて視界から消えていくのを かやば草 秋川笙子しょうこ ジャガーとプリウスとでは 手中に収める必要がある まったく絵に描いたようなフロイト的解釈だ あそこは決して近づいては、ならない神聖にして不可侵な場所になっていた 嘱望 雨田ともひこ具彦 そのおかけで当時の揚子江には子馬くらいの大きさに肥えた鯰がいたそうだ 多くの画家が嬉々として戦争称揚の国策絵画を描いていたことも 小径こみち じゅかん樹幹 それは確固とした意思を持って激しく収縮し、いつまでも私の体液を搾り続けた。 蓋然性がいぜんせい
投稿元:
レビューを見る
真夜中の鈴とみみずくの羽音に導かれ、4枚の絵がパズルのピースのようにひとつの物語を語り始める。不思議な世界に読者を誘う、村上ワールド真骨頂の第2部上巻。
いったい何処に辿り着くのだろう。果たして今が過去なのか現在なのかもわからなくなる。主人公の現在地は、まさに私たち自身の姿を投影しているのかもしれない。