- 現在お取り扱いが
できません - ほしい本に追加する
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
紙の本
著者の代表作である『ムーンパレス』と合わせて読むと余計に効果があがりそうですが、ラストの凄まじさは翻訳作品であるが故の爽やかさを感じたが、それが正しい読み方なのかどうかは少し疑問ではある。
2010/03/24 20:02
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
原題 “The Music of Chance”
構成的には前半と後半とでは全然違いますが、いろんな成り行きがあってこそ後半が生きて来るところが素晴らしいですね。
あとは、自分自身がナッシュに似てるのかそれともボッツイに似てるのかを常に考えながら読むと凄く付加価値のある作品だと言えます。どちらが人間らしいかを深く考察するだけでも奥行きがあるんですよね。
誰しもナッシュのような強い部分とボッツィのような弱い部分が表裏一体となって併せ持っていると思うのですが、この作品に関しては私的にはボッツィに似ている部分が多いと認識している人の方が本作を読んだ価値がよりあると言えそうですね。
物語の内容そしてスピード感はアメリカ文学ならではのものですね。
人生は偶然の繰り返しであってたまたま大金(遺産)を得た主人公で元消防士のナッシュなのですが、赤いサーブに乗りまくりほとんど使い果たしてしまいます。
そして運命の自称天才ギャンブラー・ボッシュとの出会いですね。
あとは彼ら2人との対比としてのフラワーとストーンですね。
彼らはやはり権力者としての意味合いが強いでしょうか、徐々に本性が浮かび上がってきます。
物語の後半でひたすら石を積んでいくナッシュとボッツィ。
これは忍耐力のいる労働ですが、やはり無力に感じるのはその労働をしなければいけなくなったいきさつがいきさつだからですね。
そう借金を返すために働かされるのです。
そして読んでのお楽しみなのですが、ボッシュの取った行動は愚かだったのでしょうか?
私個人的には確かに愚かだったかもしれませんが、決して責められないことだと思ってます。
その答えとしてオースターが、彼がどうなったのか具体的に書いていないところが心中、ボッシュの行く末を案じていることを暗示しているように思えるのですね。
思えば物語の設定等は代表作と言われている『ムーン・パレス』に似ていますよね。
物語の完成度では少し落ちるかもしれませんが、身につまされるのは本作に軍配を上げたいですね。
本作の魅力は決して寓話的であって実は寓話的に読めない部分でしょう。
『ムーン・パレス』のように開放的に終わらずに虚脱感が伴うのですが、一読者の私としてはプラス思考に受け止めたいなと思いますね。
なぜならその部分(受け止め方)は著者が読者に委ねている部分だと思うのである。
そこでもう一度ナッシュに成り切ってみて考えてみると次のように考えれるのだと結論付けれるのですね。
なによりもナッシュにとって一番の財産となったことは“ボッシュと知り合えたこと”ですよね。
ボッシュのせいでこんなことをやらされる破目になったとは全然考えていないところが衝撃の結末となっているように思えました。
これは単に奇想天外だと受け止めた方がアメリカ的なのでしょうかね(笑)
本作は“凄くプラス思考で考えることが重要なんだなと改めて考えさせてくれる作品”ですね。
私の読み違えかもしれませんが、そう受け取っています。
明日からは今日よりも背筋を伸ばして仕事頑張れそうです(笑)
紙の本
石を積むというナンセンスな労働は、僕たちのこと
2004/02/24 18:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:牧原 風太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「石を積んで壁を作る」というナンセンスな労働。
しかし僕たちの労働も、ナッシュのそれとはサメとフカほどにしか違わないのではないか。
できあがったものは立派で、それなりの達成感はあるが、すこし考えると徹底的にナンセンスで敵意に貫かれている。
それをせざるを得ない状況を選び取ってしまった悲劇。すごくやり切れない。
僕たちはどうしたら本当に自由になれるんだろう?
紙の本
偶然か運命か
2003/02/12 18:11
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sei - この投稿者のレビュー一覧を見る
ポール・オースターの作品では、
いつも偶然やシンクロニシティが牽引役となって物語が展開する。
この作品「偶然の音楽(The Music of Chance)」では、
そのタイトルにも示されているようにこうした特徴が前面に押し出されている。
彼の作品を読むと、どうしても自分のことを考えてしまう。
今の自分が置かれている境遇は、果たして偶然の積み重ねによるものなのか、
それとも目に見えない因果律によって支配されているのか。
…あるいは運命か。
「ニューヨーク3部作」(「City of Glass」「Ghosts」「The LockedRooms」)を読んで
「すっきりしない」と感じた人は、この作品あたりから読むことをお薦めする。
柴田元幸の翻訳も読みやすい。
紙の本
何度も読めば何度も楽しめる、のではないかと思った
2001/12/19 14:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:白井道也 - この投稿者のレビュー一覧を見る
文庫に入ったついでに(3年ぶりに)読み直してみた。3年前は「石を積む小説」っていう印象しか持たなかったけど、読み直してみたらそれだけではないな、と思った。
主人公が車を運転することに始まり、彼が車を運転するところで物語りは終わるけど、それに象徴されるような“抑えの効かない運動”というモチーフがまず目についた。ジャックのポーカーしかり。そして、というかそれと同根かもしれないけど、タイトルにある“偶然”というのが物語の大きなモチーフになっているのだなぁ、ということ。主人公もジャックもポーカーの対戦相手も思わぬ形で大金を手に入れ、それがこの小説の枠を作っているようなものなのだけど、その大金の入手の仕方がとても良く書けていると思った(ってこんなことを僕が書くのもおこがましいけど)。よく小説って、話が普通だと平凡だって言われ、とんでもない出来事や偶然が起こるとリアリティに欠けるって言われるけど、物語に必要不可欠な“偶然性”っていうテーマにもオースターは言及したいのかな、とちょっと深読みしてみたくなったり。
いろんなテーマがさりげなく盛り込まれていそうな小説なので、何度も読むことが出来るし、そのたびごとにいろんな味わい方が出来ると思う。