紙の本
答えを求めてはいけない、問いがある
2009/11/12 23:12
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mayumi - この投稿者のレビュー一覧を見る
全米の自由の女神像を爆破していた犯人は、自分の長年の友人だった…。
その犯人が、爆死しFBIが主人公のもとにやってくるところから始まる。
オースターにしたら、ちゃんとストーリーがある。象徴というより、きちんと具象しているので、わかりやすい気がする。でも、気だけだった。
一体、これは何の物語なのだろう。もてあます才能に振り回された天才の話なのか、焦燥の話なのか、絶望の話なのか…。私には、これという答えを見つけられない。
ただ、深い孤独を感じただけだ。
紙の本
ひたりひたりと文字がはりつく
2003/01/27 06:25
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:☆ゆうき☆ - この投稿者のレビュー一覧を見る
それぞれの作家には、それぞれの文章の味がある。香りといってもいい。音楽の場合、音を聞くだけで演奏者がわかるという。文章を読んで誰の文かあてるのはなかなかむずかしいが、川上弘美、村上春樹、よしもとばななくらいならわかるかも。利き酒ならぬ利き本などはいかが。このポール・オースターの文章は、とても渋い。派手さはないが、精緻で選び抜かれた言葉には、穏やかな求心力があり、読んでいて気持ちがいい。会話文が少なく、びっしりと文字でページを埋めているが、文章がいいのでまったく疲れない。一つ一つの文字が、ひたりひたりと頭の中に張り付いていくかのよう。
この物語は、一人の男がテロリストになってゆくまでを描いた小説である。しかしこんな一言では到底表しきれないほど、複雑で豊かな内容が描かれている。物語の構築力に圧倒される読書体験だった。
紙の本
こんなにも
2019/05/01 17:01
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投稿者:ケロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
こんなにも悲しい物語だとは。
どのような気持ちでオースターを読んだらいいのか戸惑う時があります。
あくまでも私個人の意見ですが、自分の精神状態が安定していないとしんどくなってしまう作家さんです。
紙の本
期待が大きかったが
2017/12/22 19:37
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投稿者:ポッター - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者の作品は、初めて読んだ。
一つ一つの表現及び物語の構成はしっかりできていて、比較的スムーズに読み進める事ができた。が、期待が大きすぎたのか、ストーリー展開については、謎が残る部分が多々あり、読み応え感は物足らなかった。
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極端に言ってしまえば、だれとだれがやったかっていう話だ。
けれどそうしたささいな日常と人生の絡み合いが他者の人生の風向きをほんの少しずつ変えていく。
日々の回想録を思わせるような文章の裏に壮大な物語が広がっていく。オースターの構成力が見事としか言いようがない。
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柴田氏の訳が合わないのか、正直ポール・オースターを読むのは肩が凝るのだが。
ファントム・オブ・リバティ、せつない。ここまでせつない温度の小説は初じゃないか、ポール・オースター作品で。
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作品の冒頭に出てくる「すべての現実の国家は腐敗している」とある。
国家と自由そんな無謀な題材から、こんなおもしろい作品になるのかと関心しました。
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なぜ彼はテロリストになったのか。自由とは。アメリカとは。
大きなテーマの中に個性的な登場人物たちが美しく布置され、まるで細部にわたって精緻に描かれた美しい地図を見ているかのよう。いい本です。
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連綿と続いていく展開に飽きることなく引き込まれる。
ベンジャミンの考え方がいい。ラスト泣けました。
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アメリカ人だったらわたしよりももっと大きなショックなんだろうな。オースターの作品の『完璧なカップル』って、いつも望まぬ破局を迎えてしまうよなー。
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読み終えたときの喪失感がすごい。
私は物語にこめられたメッセージなんて信じていなくて
ただ情念が、読者に届いてくるのだと思います。
勿論解釈して、述べろと言われれば、それなりにアイデンティティの話が述べられると思います。
でもそんなの無意味だよね。
と思わせてくれる物語を久しぶりに読みました。
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オースターへの期待が大きすぎた。いつもはとんでもない結末でも、そこに行き着くのが当然に思えたけれど、今回は納得できずに飛びすぎだと思った。
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アメリカ東部のリベラルなインテリが、自分に近似した東部のリベラルなインテリの話を作るとこうなるのかと思われた。作中人物たちが(そしてオースター本人の経歴も)傍目にはとても自由にうつるわけで、もちろんそれには才能が必然的に要求されるわけだが、例えばアイヴィー・リーグの大学を出たあと外国を何年か放浪しながら翻訳で身を立てつつ詩や小説を著す、なんていうのは、スケールが違うし、身近に引きつけてはイメージがなかなか湧かない。これが日本だといわゆるバックパッカーとか、「××年のサラリーマン生活を経たのち、○○賞を受賞」みたいな、まあ言葉は悪いけど矮小なイメージになってしまうんだろうか。それともかの国の知識人のありかたもこんなには優雅ではありえないんだろうか。この作品の中の人物たち(とオースター)は恵まれた例外なんだろうか(あまり本質的な疑問ではないが)。何にしてもオースターの衒学性は読んでいて心地がいい。端的に言うとセンスがいい。それにこれは「小説らしい」小説なので読みながら不安にならない。接近した者たちは物語のルールに従ってすべからく関係するし、偶然はいずれ必然の顔をするようになるから。
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個人的にはこれまで読んだオースター作品の中でも、一番好きな作品かもしれない。ピーターが語る、サックスがいかにして自由の怪人として自爆するに至ったか、という物語は、サックスだけの物語ではない。それは、ピーターの物語であり、ファニーの物語であり、マリアの物語であり、リリアンの物語であり、そして、アメリカの物語でもある。とりわけ全編の基底にはベトナム戦争が影を落としているが、今回のイラク戦争や9.11は、アメリカに今後どういう影を落としていくのか。アメリカに生きる人々のすべての物語にどういう影響を与えていくのか。9・11以後のオースター作品を早く見てみたい。 (2003 Aug)
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ムーン・パレスと本作しか読んだこと無いが、つまらないわけではないのになぜか読み終わるまでに時間がかかる。しかし、じっくり読んでいるという感覚もない。訳が合わないのかもしれないので、原文で読めばまた違う感想があるかも。落下以降の流れに唐突なところ、入り込めない何かを感じてしまい、なんとなく最後まで読んだが、ラスト数ページにグッときて最初から読み直した。とても不思議。私が読んだことのあるもう一作がヒトリの人間を中心にした偶然の集まりだったのに対して、これは多数の人間と偶然が、からみあった結果ある物語となっている。ただし、語っているのはやはりヒトリ。