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紙の本
どうしても、山口百恵をイメージしながら読んでしまい、電車を乗り過ごしそうになったこと数度。
2006/04/16 20:53
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「『潮騒』の舞台となった歌島はどこにありますか」と酒席で尋ねられたとき、なにを勘違いしたのか手書きの日本地図の伊豆半島を指し示していた。
数日後、赴任先の香港に戻った友人に『潮騒』の舞台となった歌島は伊豆半島ではないとあわてて訂正のメールを送ったところ、次回、日本を訪れる時には歌島に行こうと計画していると返信があった。とんでもない失敗をしたものだと思い、記憶を呼び覚ますために慌てて本書を読み返した次第だった。
日本に赴任する前に英文で三島由紀夫の『潮騒』を読んでいたく感動をしたそうであるが、日本での仕事に忙殺されて歌島に行くことができぬまま次の任地である香港に赴任にした友人が少し小首を傾げた意味がわかり、酒が入っていたとはいえ恥ずかしかった。
吉永小百合、山口百恵等が映画『潮騒』に出演したそうであるが、海に生きる女のイメージと「その火を飛び越して来い。その火を飛び越して来たら」というセリフは山口百恵にして初めて生きてくる言葉と思う。サユリストに怒られることを承知ですが。
潮のにおい、潮風、紺碧の空、純白の雲すら行間から現れ、デビューして間もない山口百恵と出あったときそのままの胸の高鳴りを覚えながら読み進んでいった。
出勤途上ではなく、仕事を終えての会社から自宅のある降車駅までの車中、歌島の男である新治になりきり、没頭できる世界がどれほどの気分転換になったかは計り知れない。
そして、降車駅に気付かずに乗り過ごしそうになったことは何度あったろうか。
くっつくのも早ければ、剥がれるのも早い近頃の恋愛物語を「べた甘」とすれば淡麗にしてうま口の一品として楽しむことができた。
結末は分かっていても、「男は気力や。気力があればええのや。この歌島の男はそれでなかいかん。家柄や財産は二の次や。そうやないか、奥さん。新治は気力を持っとるのや」との照吉の言葉が更に濃厚な余韻を与えてくれた。
村上春樹氏の作品が世界に紹介され、称賛されているそうである。
今、入手できる英語訳の日本文学の作品は村上春樹氏のものが大半であるが、三島由紀夫の作品も容易に入手できるようにしておいて欲しい。難しいといいながらも、『武士道』を読んで日本人が理解できたと喜んでいた友人である。なぜ、三島由紀夫が自決したのかの真意を理解したがっている友人のためにも、英文の三島作品を揃えて欲しいとこの作品を読みながら思った。
紙の本
今更ながら読みました!
2018/09/30 21:27
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たんたん - この投稿者のレビュー一覧を見る
言うまでもなく、とても有名な本なので存在やあらすじは知っていましたが、きちんと読んだ事は無かったので、これは日本人として読んでいないとまずいかなと今更購入して読みました。有名な作品という事を差し置いても、読んでおいて良かったなと単純に思える本でした。面白かったです。
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清々しく健康的恋愛
2022/07/19 04:18
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:帛門臣昂 - この投稿者のレビュー一覧を見る
美しい文体と整った構成が相俟って、なんとも清々しく健康的な恋愛譚を完成させている。何度も何度も読み返したくなる。読後感がこんなにも清々しい小説は稀有であり、三島由紀夫への苦手意識を持っている人にもおすすめできる一冊。
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この作品で三島由紀夫を知った人の幸せ
2020/11/20 07:17
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
三島由紀夫の代表作といえば『金閣寺』になるのだろうか。
三島の主だった作品を揃えている新潮文庫でも360万部を売っていて三島の作品では一位を誇る。
あるいは『仮面の告白』や『憂国』『豊饒の海』をあげる人もいるかもしれない。
では、新潮文庫で三島作品として二番目の349万部を売り上げているこの『潮騒』はどうだろう。
何度も映画化されて多くの若い読者を得ているこの作品だが、三島の他の作品とは毛色が違うように感じる。
まさに、三島由紀夫の異色の代表作といえるだろう。
しかし、この作品こそこれから本を読み始める若い人に読んでもらいたい。
何故なら、これは実にうまく出来た物語だからだ。
この作品を読めば、物語がいかに面白いか体験できるはずだ。
まず、登場人物の役割がしっかりしている。
考えることよりも肉体の動きで生きているような青年新治。今だ純のままの少女初江。息子を信じる強い母親。初江に岡惚れして新治と敵対する村の金持ちの息子安夫。自分は醜いと思いこんでいる灯台守の娘千代子。人のいい灯台守の夫婦。
誰もがそれぞれの役割を見事に演じている。
そして、物語の構成の巧さ。
新治と初江の出会い。雨の中での逢瀬。ここで有名な焚火を挟んでの二人のやりとりがある。
千代子の誤解と嫉妬する安夫のたくらみ。新治と安夫の嵐の海での対決。
誤解が解け、将来を約束される二人。
もちろん、この作品をもって三島のギリシャ文学への憧憬とか言われているが、何よりも感性された物語を純粋に楽しめる作品といっていい。
紙の本
そうか源流はギリシャのあるのか
2020/09/05 23:01
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
あまりにも正統派の10代男女の恋物語であることはわかっている。なぜ、「仮面の告白」「憂国」の彼がこんな甘い恋物語を書くことができたのか。その疑問は佐伯彰一氏が、作者が古代ギリシャの物語に心惹かれていたと書いてあったのでやっと腑に落ちた、この二人の純愛はギリシャに源泉があったのだ。「その火を飛び越してこい。その火を飛び越してきたら」(そういえば、何年か前の朝ドラに同じような場面があったような)という台詞があったことは記憶にあったのだが、それがどういう場面だったのかは、前に読んでから何十年も経つので忘れていた、ああ、こういう場面だったんだと思い出す。しかし新治が思う「希望が心を苦しめるという恋の不思議」、そういう気持ちがどういうものだったのかは残念ながら思い出せなかった。
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三島の代表作の一つ
2019/06/12 23:19
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
三島由紀夫の代表作の一つにして、日本の代表的な青春文学の一つ。三島自身は本作を単純な青春文学として捉えられることを嫌っていたと言う説もあるが、読後感はとても気持ちがいい。
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題名からして名作
2019/04/26 14:21
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投稿者:apple2 - この投稿者のレビュー一覧を見る
時々、純文学とポルノの違いって何?
とわからなくなる凡人脳の私にも分かりやすく、これぞ純文学!純愛!と思える名作。
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青春恋愛もの
2018/06/11 10:42
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投稿者:L - この投稿者のレビュー一覧を見る
ドキドキするシーンもあったシンプルな青春恋愛ものでした。初めて読む三島由紀夫作品に選んで正解だったんじゃないかと思います。