紙の本
未知の世界へのトビラ。あまりにも遠い世界が少しだけ近づく。
2012/02/05 15:11
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のちもち - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者のことは(すみません)存じませんでしたが、タイトルに惹かれました。著者が数多くの裁判に傍聴して、そこに見られる人間模様を読み解きます。その場に登場する被告、証人、弁護士、検察...事件がどう結審したか、というよりは、彼らの「キャラクター」を中心に描かれます。
特別「裁判」に興味があったわけでもなんでもなく、おそらく多くの方と同じように、その仕組みや、中でどのように何が行われているのか、裁判官はどんな人で...「別の世界」の5W1Hについて、正直興味関心が薄い、無い...というレベルでしたが、知っておくことも悪くない、レベルで読み始めています。
オウムや、ワイドショーをにぎわすようなものだけではなく、新聞記事にもならない裁判の傍聴にも、かなり積極的に足を運んで、そこに表出する人間模様を描いています。新聞や週刊誌、マスメディアが絶対に打ち出せない、「裁判の空気」はまさしくその場にいないと感じることはできないのでしょう。
傍聴しようと思ったことすらない自分ですが、おそらくその建物の中は別世界なのでしょう。メディアによる偏った見方(都合のいい解釈)と違いのはもちろんですが、新聞や雑誌などの紙媒体でも、やはり「当事者」が遠くなり「識者」が大きくなるので、事件の真相からは別の方向に進む。逆説的に(あるいは皮肉で)言えば、いわゆる「マスコミ」は別の方向に向かうのが「使命」だったりしますけれどね。
とにかく裁判。地裁、高裁、簡易裁判所。刑事事件、民事訴訟。当然に「裁判に持ち込まれた」からには被告の向こうには「被害者」がいるわけですよね。なので、特に死者がでるような殺人事件の裁判については、著者も書きにくかったと思います。
当然に、「一般的な」良識は持っていらっしゃる方だと思われますが、敢えて「軽いノリ」でせめています。特に殺人事件の場合の被害者側に配慮すれば、ギリギリの線でしょうか。いや、被害者側にとっては、何をどう細工したところでいい感情は持たないでしょう。
そこは「敢えて」、裁判の、裁判所の現実を、(自分のような)無関心の人たちにも伝える、という使命(と考えているかどうかは?)のもと、さらっと、でも事実は隠さずに伝えてくれています。
関係者ではない自分でも、「ここまではちょっと...」という表現にも出くわしますが、それは初心者向けの「読み続けるための」刺激、と捉えましょう。
これを以て、傍聴に行ってみようかなあ...とまでは思わなかったけれど、もしも何か機会があったらぜひ、くらいには関心度があがりました。
まさにそこが著者の狙い目では、と思いますね。裁判員制度を見越したものではなかったようですが、著者は裁判そのものの「楽しさ」を、そこに登場する「人間」を軸に見ています。
被告、弁護士、検察、裁判官はもちろん、承認、傍聴人、そして裁判所の周りに居座る抗議者にいたるまで。
この本にでてくるのは、「人間」なんですね。極悪な「事件」ではなく、「人間」。わからないのは「事件」ではなく「人間」なんです。人間関係が入り組んだものほど、その絡まったものをほどく裁判が重要になる。それは事件の重要性とか凶悪性とかではなく、あくまで人間関係がどうか、ということなのだろう。
不謹慎な言い方をすれば、ちょっと興味でてきましたね。言ってみようかな、傍聴。
【ことば】ぼくにとっては最高の人間ドラマに思える公判が、他の傍聴人にとっては平凡な事件でしかなく...またその逆もある。
物事を表裏両面から見る。ひとつの事柄、出来事であっても、見る角度、見る人によって全然違うものになることはよく経験することだ。司法はそれを、また別の角度、「上」から見ているイメージでしょうか。人を裁くって大変なことだよね。すごい仕事だよ。
紙の本
裁判傍聴の記録、という堅苦しい印象を吹き払う、完全部外者による人間観察としての裁判傍聴記録
2006/08/20 23:43
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Skywriter - この投稿者のレビュー一覧を見る
人生の縮図が現われるシーンというのはそうそうあるものではない。我々自身の生活もそうだと思うのだが、傍から見て眺めていられるのは日々のルーチンワークではなく、恋愛模様であったり、プロポーズだったり、果ては修羅場だったりする。だから非日常を描く映画やドラマでは、日常でもありうる生活のうち見て飽きないシーンだけを集めているのだ。
しかし、そんな人間模様が顕わになるところがある。それが、裁判所である。言われてみるとその通りで、判決とはそれによって被告の人生に多大な影響を与えうるものなのだ。極端な場合には、判決が下されるまでの攻防によって生死が分かれる、なんてことすらあるのだから、当然皆必死になる。
検察は己の正義を貫こうとし、被告は自分の権利を最大限に護ろうとする。民事裁判では双方が自分の利益を相手の利益より如何に大きくするのか凌ぎを削る。
そんな法廷を、いっそのこと見ものにしてしまおうというのが本書である。なにせ、著者自身が裁判を傍聴する理由について「誤解を招かれそうなので書いておくと、執念深く大事件を追いかけていたとか、知り合いの裁判を見守っていたわけではない。ただただ、自分とは縁もゆかりも無い事件を、興味本位に見続けていたのだ」と言い切ってしまうくらい。
赤の他人の有名でもない事件の裁判を覗きに行って楽しいの?
そんな疑問が沸くのは当然のことだろう。答えは決まっている。面白いのだ。なにせ、裁判傍聴を楽しむ霞ヶ関倶楽部なんてものまであるくらいなのだから。
部外者として見て楽しむというには不謹慎すぎる裁判も確かにある。面白い裁判もあれば退屈極まりない裁判もある。その中から印象に残った裁判だけを取り上げているのだから、本書が面白くならないわけがない。麻薬、DV、詐欺、殺人、強姦、買春、痴漢、離婚と様々な裁判があり、事件ごとに人間ドラマがある。中にはつい笑ってしまうエピソードもあれば、憤りを感じることもある。人間ドラマである以上、当たり前かもしれないが、本書を読むまではそんなことまで想像できなかった。
右も左も分からないところから傍聴をスタートさせた著者が、やがて判決をほとんど予想できるまで成長する様もまた面白い。
そして忘れては行けないのは、事件に深入りしない部外者だから出来る、冷静な観察である。勿論、卑劣な事件では加害者側に同情できないような書き方になるが、それ以外は傍聴人として距離のある観察をしている。裁判の過程は当然のこととして、事件そのものすら記事にならないような犯罪。当事者にとっては深刻であっても、社会的関心は引かないような些細な事件。そんな事件を中心に裁判の模様を垣間見せてくれる本書は、裁判員制度開始を前に読んでおいて損は無いと思う。
なお、法曹関係を目指そうと思っている方には役に立たないであろうことは付言しておく。
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週刊誌の連載企画として、担当者のオガタから「裁判を傍聴してみないか」と勧められたフリーライターの著者が、法律素人として果敢にも予備知識も無く裁判を傍聴し始める。
最初は裁判の何を聞いたらいいかも分からず戸惑う著者であったが、日参していくうちに裁判傍聴の面白さに気づき、さらには長年傍聴を趣味としている傍聴マニアたちとも知り合いになり、裁判傍聴術の手ほどきを受けるようになる。
そんな著者が通いに通って書き溜めた傍聴記録から、話のネタになりそうな(というと不謹慎だが・・・)裁判が21件、本書には収録されている。
本書を読むと、敷居が高いと考えがちな法廷が、少しは身近になるのではなかろうか。
もちろん、なぜ国民の権利として「裁判傍聴」が認められているのか、そのことも念頭においてほしかったというのが著者への要望ではあるが・・・。
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フィクションじゃないからおもしろい!!
傍聴席で聞いてる筆者とのギャップにびっくりする。関係者でなければ、こんなに冷静に見れるもんだーとか。さらにそれを静観してる自分が居たりします。
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ヒトの人生が垣間見える裁判傍聴記録。まったく無関係だからおもしろがれるけどな。しっかし裁かれるのは大人気ない大人の多いことよ…
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フリーライター、北尾トロが裁判を傍聴したレポート。有名事件ばっかりではなくて、コンビニで年賀状強盗をした小さい事件とかの裁判も傍聴してる。考えてみればすごい人間ドラマだよな。
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著者の裁判傍聴記録。 大きな事件、小さな事件さまざまあり、一歩間違えれば自分も犯罪者になってしまうってことを、痛感しました。
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待ち合わせまでの時間つぶしに覗いた書店で、久々にジャケ買いした本。裁判の傍聴を軽いノリで書いており、さらりと読める。
色々と眉をひそめるところもあるが(特に性犯罪裁判に対する反応等)、まあ本のコンセプト自体野次馬視点に立って作ったものだろうからやむを得ないかもしれない。これを読んで傍聴してみたい気になった私も野次馬なのだし。
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裁判員制度に突入しようとしている日本。それを前に、是非読んでほしい一冊。
文章もおもしろく、歯切れがよくって、とてもおもしろく読むことが出来ました。
傍聴に行ったことがない人は、絶対に行きたくなります。
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裁判長! コレは言うほど面白くありません。
著者・北尾トロの東京地裁傍聴録。
客観性のない感想文が並べられており、人間ドラマも無ければ、著者が感じている抑揚も伝わってこない。
文が稚拙。
唯一、なかなか表に出てこない裁判の様子を書いたことに価値アリ。
故に星二つ。
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箱根合宿の下見に行く途中のロマンスカーで読みふけった1冊。刑事訴訟法に授業取っているし、近年裁判員制度も始まるし、
私にとって読み時だった。
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本のレビューは初めてですね。
しかも石井さんとはまったく関係ありません。
この本はライター北尾トロ氏の裁判傍聴記録です。裁判員制度の導入が話題になっている今、タイムリーといえる文庫化ですね。
最近はまっている黒川博行氏の本を買おうとして、ついでに新刊コーナーを冷やかしていたときにタイトルに惹かれて買ってしまいました。
私自身は裁判の傍聴経験はありません。が、民事裁判の当事者になったことはあります(少額訴訟ですが)。ちなみに原告で、決して被告ではありません(笑)。
この本では主に刑事裁判が取り上げられています(離婚、DVなど民事裁判の傍聴記録もあり)。
その中でも取り上げられるのはなぜか痴漢、強姦など性犯罪が多くそのせいか全体的に野次馬視点で書かれている印象です。
第13幕「なぜ露出なんだ?」では「触るのと出すのは別物」(何を出すのかはあえて書きませんが)などと、女である私から見て「?」と思う記述もあります。
「男は女を見れば触りたくなるものだが、露出をするようになればそれは性欲がねじれているからだ」といったことも書かれていますが、少なくとも私から見れば触るのも露出すんのもじゅーぶんねじれてるんだけどなー。
法廷に立つ当事者の表情を直接見た、一人の男性の正直な気持ちなのだと思えば良いのでしょうか。
文章はほどよく軽く読みやすいのですが、あまり読後感の良い本ではありません。
しかし、この本では大学の講議で学べない裁判当事者の人間像を読み取ることができます。
自分の犯した罪の重さを法廷で知る人、また逆にそれがわからない人、欲の皮の突っ張った人間の成れの果て、そんな人を利用する賢くも悪い人、国選弁護人となる人の本音、有名な事件だが報道では分からない裁判官・検察側・弁護側のやる気の度合いや駆け引きなどなど…。
「証言を終えたあと、その証言が裁判官や傍聴席にいる人たちに良い心証を与えたことを確信し満足そうに席へと戻る証人」、「すでに実刑となることが予測されていて、その量刑を軽くするための反省の言葉を被告人から引き出そうとするが、被告人がその目的に的外れな発言をくり返すので困惑する弁護人」この文庫の表紙絵のような「ドクロのマークの服を着て被告席に座る人間」に対する複雑な感情を、この本を読むと実際にその場にいたかのように感じることができます。
どのような行為が犯罪となるか?その犯罪にはどんな刑罰が科されるのか?といったことが法律で成文化されており、また世の中には法律を扱ったテレビ番組も増えました。しかしそれによって人々のモラルが向上するわけではなく、犯罪は減らない。逆に法律のウラをかこうとする人もいるし。この本に書かれている事例以外にも有名・無名問わず事件の多さ、多様さに「罪刑法定主義ってなんだ?」と考えさせられました。刑法を学んでいるときでもこれほど深く考えたことはなかったりして(笑)。
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追記
このレビューを書いてから東京高裁、富山地裁、横浜地裁にて裁判傍聴を経験しました。法廷を出たあとは「この事件について誰かと語りてえ!」とヘンな衝動にかられて困りました(笑)。特に富山地裁での刑事裁判、窃盗罪(万引き)の証人尋問だったのですが、証人が女性警察官であまり歯切れのよくない証言だったので疑問に思いゼミの先生に聞いてみたところここには書けませんがなかなか興味深いお答えが。ひとつの事件を余さず傍聴してみるのもいいなあ…と思いました。そんな時間ないけど…。
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女性週刊誌の連載とかでありそう。
いまいち入り込めなかったけど
実際に全部あった話だと思えば、
作者自身はそりゃおもしろかっただろうなぁ。
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裁判をひたすら傍聴するルポ。笑いあり涙ありの実はドラマチックな裁判に人間味を感じる。裁判員制度が始まる前に読んでみては?
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平成21年からの裁判員制度が気になる今日このごろ。
北尾トロさんの東京地裁傍聴録が文庫になってる(単行本は2003年に鉄人社というところから発刊されているそうです)のを発見したので購入しました。通勤時間+数時間で読めます。
社会派なルポルタージュを期待して読んではダメです。
あくまで、北尾トロさんの素でもないんだろうけど
まんま演出とも感じさせられない(ここらへんがうまいです)物見高さ、安っぽい正義感を、
この本を読む人が「北尾トロよ、人の人生がかかってんのに、そんなことでいいのか」と、
自らの物見高く安っぽい正義感にあまり気づかずモヤモヤする、
というのがこの本へのふさわしい接し方といえましょう。
そこいらへんのことは、タイトルの「どうすか」にきちんとヒントがありますからね、
そういう点では親切な本ですね。
北尾さんがワイドショーのように熱く傍聴レポートを
語れば語るほど、読む側のやりきれなさのボルテージは
あがっていくのですが、なぜこんなにやりきれないかというと、
プチ正義な北尾さんの姿に自分がダブってしまうからでしょうねえ。
外見からにじみ出るなんとか、といいますけれども、
普通の人間がいかに、被告の顔つき、服装、挙動といった
次第で人としての評価(この場合はふさわしいと思われる刑期の長さがそれに相当するわけですが)
を変えてしまうかも、リアルに伝わってきます。
そしてそれは、被害者、証人に対しても同様なわけで…。
ぼんやり屋で白目がち、緊張すると挙動不審となる
わたしのような奴は、ぜったいに刑事事件を起こしてはならぬ、
と思いました。
雑誌連載当時の読者層もあってなんだろうけど、
北尾トロは、レイプ裁判や強制わいせつ裁判の傍聴にものすごくこだわるわけなんですね。しかも被害者の証言を聞きたくて聞きたくてたまらない。
それを「ちっ」とか思いながらも、物見高さを捨てきれずに
読み進める自分ってなんなんだ、と、思ったりするわけです。
本書の圧巻というのは、まあ、やりきれなさの圧巻でもあるのですが、
児童買春で12才の少女を買った37歳のロリキモ男が、
裁判官の前で「それは彼女を愛しているからです!」と
至福の表情で叫ぶシーンには、まじ脱力しました。
嘘つけ、やりてーだけだろ、ダマされてコケにされてるのを気づいていながら、金はらってればいつか少女とセックスできると思ってたから払いつづけたんだろが。愛があるんだったら脳内でやれ、馬鹿が。
と、本の中の被告席にむかって、男言葉で毒づくあたくし。
いったいロリキモ中年男の何割ぐらいが、
児童買春・児童ポルノの処罰にかかわる法律の存在を知っているのか。
メディアでのそっち系の隆盛に反して、法律の存在はほとんど知られてないんじゃないかという気がする。
法務省は広報活動にもっと力いれろと思う。
読め。
↓
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO052.html
それはともあれ、新���い裁判制度になったとき、
裁判員の心証も北尾トロさんのそれとさほど変わらないはず(人間だもの by みつを)。
いま読んどいていい本のひとつに、本書をあげときます。