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紙の本
新型コロナウイルスが拡大している今こそ読むべき名作
2020/03/06 07:37
42人中、41人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この長編小説は、44歳という若さで1957年にノーベル文学賞を受賞したアルベール・カミュが1947年に発表し、不条理小説として世界中の読書を惹きつけた作品である。
カミュは1913年に生まれたフランス文学者だが1960年不慮の自動車事故で47歳で亡くなっている。
個人的な思い出として、私は1955年生まれだが、この長編小説が新潮文庫のラインナップにはいったのが1969年、つまり私が14歳の頃で、当時新潮文庫版のカミュ作品は銀色の素敵な装幀(麹谷宏)でそれでカミュの作品を揃えるのがたまらなくうれしかったものだ。
その頃読んだ作品の何ほども記憶していないのだが、ずっと残っていたのはいい作品だったという獏とした、けれど作品の評価としては侮れない、印象である。
そんな作品をほぼ半世紀近く経って読み返すことになったきっかけは、2020年になって日本だけでなく世界中に広がった新型コロナウイルスだ。
カミュが書いた「ペスト」という感染病は「黒死病」とも呼ばれ、世界史の中でも数度最近よく耳にするパンデミック(全地球規模の流行)を引きおこしている。
そのペストに襲われ、外部と遮断された街にあって奮闘する人々を描いた作品ともいえるし、ペストを描くことで死んでゆく恐怖と対抗するも敗れていく人間の哀れを描いたともいえる。
主人公として果敢にペストと戦う医師がいるが、長編小説であるからさまざまな人間が、彼らは一様な人生を歩んできたわけでも、また死の感染病に向かう姿勢もまちまちであるから、読者によっては医師以外で気になる人物も出て来る。
この長編小説は決して読みやすい訳ではない。しかし、最後の最後に医師が直面する友人の死妻の死など劇的な構成の巧みさは読ませる。
ペストはある日突然広がり、ある日収束を迎える。その期間はほとんど半年。医師たちの努力はあったが、その収束の理由はよくわからない。
人間が勝ったのではない。
長い物語の最後にこう記されている。
「人間に不幸と教訓をもたらすために、(中略)どこかの幸福な都市に彼らを死なせに差向ける日が来るであろうということを。」
紙の本
隙のない作品
2005/02/18 22:05
15人中、15人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひつじ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ペストの災禍に見舞われたアルジェリア郊外、オラン市。そこに偶然居合わせた新聞記者のランベール、医師のベルナール・リウー、作家志望の小役人ジョゼフ・グラン。閉鎖された市門の中、彼らはそれぞれの静かな闘いに身を投じる……。
緻密な文章が描き出す小説世界もさることながら、そのじわじわと迫り来る心理的な閉塞感が見事に描出されている。
果たしてこの作品を超える小説が21世紀中に現れるのかどうか、私には分からない。
紙の本
テーマ性はもちろん、娯楽作としても
2018/07/15 14:28
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:M77 - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは単なる娯楽作品ではないと言われますが、僕はやっぱり娯楽作品としても優れていると思います。
一つの町が伝染病によって封鎖される恐怖や、囚われた人々の苦しみや足掻き、そして地道な戦いの末の解放。
感染パニック作品が溢れている現代の目で見ると多少読みにくい文章ではありますが、当時は殆ど初めてのジャンルだったんじゃないでしょうか。
一人のヒーローの話ではなく、それぞれが出来ることで戦う群像劇。
逃げ出そうとする者、上手く立ち回ろうとする者、戦いの先の見えなさ敵の大きさに壊れてしまいそうな者たちにすらも寛容な視線が注がれていて、語り手のくぐり抜けて来た戦いの厳しさを感じさせます。
紙の本
不条理に立ち向かう人々
2019/10/12 01:22
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
読者は『ペスト』という題から、この町の人々にペストの災いが襲い掛かることを事前知っているわけだが、それを踏まえたうえで、徐々に町に病が侵攻していく様子を描いた序盤の描写がすごかった。幼い子どもにも容赦なく襲い掛かる不条理に人々が立ち向かうさまもよく描かれている。
紙の本
自分だけの言葉を見つけてください
2015/08/23 16:31
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しろくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
これほど深い感動を味わった小説はありません。カミュを独特の難解さというものはありますが、不条理といかに戦うべきか、その術を身をもって教えてくれます。それは戦い続けるカミュ自身に重なっても見えます。決してはぐらかすことはせず、正々堂々、正面突破。カミュの肉声が詰まっている、そんな印象を受けます。
「異邦人」よりも本作を薦めたほうがファンが増えると思うのですが…。もっとカミュの長編を読んでみたかった。
紙の本
名作中の名作
2020/03/31 18:50
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Yu - この投稿者のレビュー一覧を見る
新型コロナウイルスの世界的流行の影響で、今注目されている本です。
わたしは昔読みましたが、改めて読み返しました。
名作中の名作といってよい本だと思うので、ぜひ一読することを勧めます。
電子書籍
後半から読める自分になった
2020/04/22 23:49
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わに♂ - この投稿者のレビュー一覧を見る
医師リウーが書いてあることは後々分かりだす。半分まで読むのが難しいけど、6割超えたあたりから慣れて読めるようになり、感情も入れやすくなった。
1番報われるはずの人が、友と愛する人を亡くした。ただ、それだけの話し合いではないものの、「ズルイ奴が笑う世界」なのかもしれない、と、今日感じたことと繋がった。
神が何であるか、や、死刑を知らずに受け入れていることについて、そこから本質というモノを考える新たな価値観が芽生えた。爺さんのように世を俯瞰して悪態をつくようになりたくもなったし、でもそれは逆に若者からすれば頭が堅いと言われかねないことだと思う。歳を取った人は経験からわかる、歳を取ってない人は経験を得てわかろうとする。歳を取った人は経験あるからモノを言うか言わない、歳を取ってない人は経験ないからモノを言えないか言う。いつまでも若くありたいと思ってた自分は体のことと気持ちのことであって、心と考えは老いぼれたいのだろう。
今のコロナが終息しかける時が怖い。再爆発もあるだろうし、ペストに書いてあったけど幸福が急にくるから噛みしめられないだろう。コロナ前は味の薄いガムで、今は味のしなくなったガム。もう(1年はかかるだろうが)捨てられる。次に食べる味のするガムは美味しく感じられるけど、また味は薄くなるんだろう。みんなのは、な。そこは違くありたい。俺は味をずっと感じてようとしたいし、感じたい。新しい味も噛みしめたい。絶対に俺はそう。「今だからできること」は前も今も後も出来ることだから。むしろ今はこれしかできないって言うべきだし、後ろ向きだけど前向きにその言葉を使って合ってると思う。
でも、ただこの本を読んだのも、読んでこんな想いがあるのも、それ全部コロナがあるからだから。その点においては、俺もその周りとなんら変わらない。みんな違う一緒なんだな。
紙の本
「リウーを待ちながら」からの
2020/12/30 08:51
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひめやまとおさがに - この投稿者のレビュー一覧を見る
コロナ禍の下で親の読んでた「リウーを待ちながら」を部屋にこっそり持ち帰って読み切って、次にこちらをセレクト。きっちり漫画の内容に影響されてます。漫画から活字へと自由自在に行き来する子供に驚愕。漫画一辺倒の親は。。。。
紙の本
これは人間についての本
2020/04/29 23:11
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:孤島の姫君 - この投稿者のレビュー一覧を見る
病気の蔓延というパニックものなのかと思いながら読むと見事に裏切られます。これは危機に直面した際の人間についての本。今現在コロナ渦ですが、今とまったく同じような対策・行動にでる人が文中で沢山出てきます。時を得ても人間はそんなに変わらないのだと改めて認識します。その中でも出会いがあり、友情を育んだり煌めきもある事。古い作品ですが学ぶべきところが多いです。名著として残る作品は違いますね。
紙の本
力をもらえる小説
2023/08/14 21:11
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:藤兵衛 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「絶望小説」と言われているらしい。確かに主人公たちの陥った状況は絶望的だ。しかし、登場人物たちの歩みは力強く、自分ももっと頑張れるはずだと力をもらった。災厄が去り、徐々に平常化する世界に少し寂しさを感じたのは、多分私だけではないだろう。
紙の本
そうだ
2021/02/28 23:21
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ヒマラヤハマラヤ - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間は恐れながら生きる人もいれば、忘れながら生きることのできる面白い生物やなと思いました。ぜひ一度手に取ってみては!