たあまるさんのレビュー一覧
投稿者:たあまる
紙の本何が困るかって
2019/06/11 21:35
たしかに奇妙な味
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『何が困るかって』には、短篇より短くショートショートよりは長めのショートストーリーが18編と、おまけの1編が入っている。
いわゆる「奇妙な味」の作品群である。
たしかに奇妙な味で、こりゃあ誰の口にも合うとは限らないぞ。
こんな味もいいね、と思った作品もあれば、ちょっとこれは……もあったし、うわ、こりゃいただけませんというのもあったね。
これまでの坂木司を楽しんで読んできた身とすれば、普通においしい味の作品があればいいんですけど。
紙の本星降り山荘の殺人 新装版
2018/05/25 21:35
ちょっと物足りない
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『星降り山荘の殺人』(倉知淳)は、いわゆる本格ミステリー。
つまり、謎解き、犯人当てを楽しむ小説ということです。
こういうの、若い頃は好きだったんですけど、いつのまにか、人間模様とか社会問題とかが絡んだ方が面白くなってきました。
というわけで、ちょっと物足りない作品でした。
じゃあなんで読んだのかと聞かれると、実は別の作家とかんちがいして買ってしまったのです(とほほ)。
でも、最後まで読むと、読後感は悪くなかったです。ミステリー作家としての力量はある作家なんだなあと思いました。
2018/05/09 22:06
題名そのものの内容
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『「超常現象」を本気で科学する』新潮新書 を読みました。
題名そのものの内容ですが、幽霊や超能力を、ウソかホントかと科学的に判定するのではなく、そういう現象が役に立つか立たないかで考える、という姿勢はとても面白かったです。
血液型で性格を云々するのはとんでもないことですが、お守りや占いなどもそれにとらわれたり依存したりしないで、自分の安心感やモチベーションに生かせればいいんですね。
紙の本安保論争
2018/05/05 22:47
平和のあり方を考える出発点
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なるほどそういう考えもあるなとか、いやそれはちょっとちがうやろ、とか思いながら読みました。
いまの違憲論争は統帥権干犯問題と似ているという指摘は、じっくり考えたいところです。かねてから、かつて日本が戦争への道を歩んだのは、統帥権干犯問題がポイントだと思っていたので。
いずれにせよ、このたびの安保論争が、平和のあり方を考える出発点である、という意見には賛成です。
紙の本臨床真理
2020/02/29 12:01
読ませる力があるが、おぞましい。
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旅先のホテルで、一晩で読んでしまった。
緻密な描写で、読ませる力がある。
読後感は、ぎりぎりで解決したわりには、
あまり爽やかでない。
なにせ、おぞましい話だから。
性暴力のシーンも描写が詳しいので、
これは忠実に映像化するのは無理だ。
特殊な能力のからむミステリーとしては悪くないと思うが。
紙の本花の鎖
2019/10/22 08:59
きんつばが食べたくなる
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湊かなえ『花の鎖』を、おそるおそる読みました。
なんで、おそるおそるかというと、
この人の作品は、さいごにいやーな感じが残ることがよくあるからです。
なのになぜ読むのかといえば、
話のもっていき方がうまくて、ひきこまれるからです。
この作品は、さいごがすっきりまとまって(さいごまでいやな人も出てたけど)、
読後感はよかったです。
またちがうのも読もうと思いました。
それから、きんつばが食べたくなりました。
紙の本怖い俳句
2019/07/02 22:04
文字通りこわ~い俳句
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倉阪鬼一郎という人の『怖い俳句』という本は、
文字通りこわ~い俳句を集めた本です。
「幽霊が写って通るステンレス」(池田澄子)とか
「百物語果てて点せば不思議な空席」(内藤吐天)とか。
俳句でホラーとは意外でしたが、想像力が凝縮された句がいくつもあるのですね。
ついていけないような感覚の作品もけっこうありました。
こわさは人それぞれということでしょうか。
そういえばホラーではないけど、有名な一茶の「やせがえる負けるな一茶ここにあり」も、弱い者への賛歌ではなく、どろどろした情念の句なんですよね。
紙の本絶滅寸前季語辞典
2019/05/01 19:21
少しずつ少しずつ読むのがよさそう
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温風という言葉はエアコンとか暖房器具とか、とにかく電化製品がつくる風だと思っていました。
夏井いつきの『絶滅寸前季語辞典』を読んで知ったのですが、この言葉は夏の季語なんですね。
調べると、「うんぷう」とも読んで、温かく湿った風のこと。
さっとふくような明るいイメージではなく、じめじめした感じが残る風なんですって。
「小暑」の初侯、すなわち7月の7日から11日頃に吹く風が温風。
暑い時に暖房に当たる不快さを想像すると、温風という季語、昔と違う実感が生まれてきそうです。
『絶滅寸前季語辞典』には、こんな知られざる季語が満載で、それぞれに夏井センセイの、時に辛辣な、時にあっけらかんとしたエッセイといろんな作家の無名句が載っています。
少しずつ少しずつ読むのがよさそう。
カバンのポケットに入れてます。
紙の本風土記の世界
2018/05/07 22:28
視点が変わるって、面白い
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記紀万葉などと大ざっぱにまとめますが、そのころのこの国のようすを想像させる本です。
出雲国風土記の章をを見てると、いまの地図とはちがう日本地図が見えるような気がしました。島根あたりに視点を置いて日本列島を見ると、広がり方が全然ちがう。それはもう、くらくらするほどです。。
2020/04/09 15:33
作品リストは圧巻
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古関裕而が朝ドラになるとは知らずに買った。
単純に、どんな人だろうと思ったので読んでみた。
数え切れないほどの作曲をした古関裕而の自伝。
勝ってくるぞと勇ましく……など、軍にまつわる数々の歌。
「長崎の鐘」「ひめゆりの塔」など、平和を祈る歌。
高校野球にオリンピックに、はてはモスラまで。
巨人の歌も作れば阪神の歌も作る。
その懐の深さというか、幅広さというか、節操がないというか。
作った曲がどう使われるかというより、
音楽そのものが好きでたまらなかったんだろうな。
巻末の、作品リストは圧巻。
これでも一部に過ぎないというから驚きだ。
幼なじみと組んで歌を作るというのは、
ドラマ的な演出かと思ったら、
ほんとうのことだったので、びっくり。
紙の本ロマンシエ
2020/03/02 10:08
現実か妄想か
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ぶっとんだ設定、饒舌な文体。
原田マハらしからぬ、というべきか、
一皮むけたのか、
新境地開拓なのか。
なじむまでは、
心の声をそのまま書く、心の声の言文一致体に
戸惑いながら読んだ。
現実か妄想か、しばらく読まないと判然としないんだから。
途中から物語が動き出すと、おもしろくなってきた。
原田マハらしい、芸術賛歌もありで。
最初からこういう話だと分かってたら、安心して読めたのにな。
2019/10/23 08:24
日本史的にもマニアックな本
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「ふしぎな」というほど不思議ではないと思うが、
鉄道路線には、なぜそこにあるのか、という理由が厳然として、ある。
地形に左右されるのは当然だろう。
ただ、草創期の鉄道では(今もそうなのかな?)
勾配が想像以上に大きな障害なのであった。
それは本書を読んでよくわかった。
もうひとつの、軍事的な理由。
これについての議論が長くて、ちょっとうんざり。
ただ、いまの見方と全然違う見方ができるのはプラス面。
議論の雰囲気を伝えるために、原文と大意とが併記してあるので、
どちらかを読めばいい。
気が向いたら、両方読む。
この頃の軍人はまだ、権威風を吹かさないで、ちゃんと議論していたんだと分かる。
そういう意味も含めて、マニアックな本。
鉄ちゃん的な意味だけでなくて、日本史的にもマニアックな本でした。
紙の本東京プリズン
2019/07/05 20:45
歴史を見る視点が面白い
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赤坂真理『東京プリズン』という小説を読みました。
「16歳の少女マリがたった一人で挑む現代の「東京裁判」」
という帯の文句にひかれて読んだのですが、正直いささかしんどかったです。
マリの回想と心の中のイメージと現実とがごっちゃになってわかりづらいし、
いやなことばかり起こるストーリー展開。
でも、ところどころ、歴史を見る視点に面白いものがあって、
読んだ甲斐はありました。
紙の本内村鑑三 悲しみの使徒
2019/06/18 22:32
非戦論者として
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岩波新書の『内村鑑三 悲しみの使徒』を読んだのは、
内村鑑三は一般に非戦論者として知られているからです。
その非戦論もそうですが、すべてキリスト教の「預言者」としての内村を描き出す本ですので、宗教心のない私にはけっこう難解な本でした。
非戦論の考え方は、やっぱり難しいのかなあ。
紙の本北天の馬たち
2019/06/17 11:44
裏切られたのか?
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舞台は横浜、馬車道あたり。
登場人物が正義の味方か悪人か、ずっと迷いながら読んだ。
一人称の語りなので、どこかで裏切られるのではないか、と、語り手とともにどきどきしながら読み進む。
で、さいごまで読むと、うーん、これは裏切られた! ような気にもなるが、やっぱりそうか、という気にもなる。
もう続きはないような終わり方なんだけど、それも裏切って、シリーズになるのも面白い気がする。
キャラの安定した脇役を固めてるんだから、それもありだと思うんだけど。
ま、ひとこと言えば、あまり貫井徳郎っぽくない作品です。
いかにも貫井徳郎!ってのを期待する人は、ちょっと残念かも。
舞台が馬車道、それで、読みながらアタマの中には中村雅俊の「恋人も濡れる街角」がずっと流れてた。
地方人にとっては馬車道と言われると「馬車道あたりで待ぁっているぅ」というフレーズが自然に浮かぶのです。
この曲、この本のBGMに、ぴったり。