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yurippeさんのレビュー一覧

投稿者:yurippe

40 件中 1 件~ 15 件を表示

イヂワルで、ごめんあそばせ!

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 女どうしの人間関係って、ほんとうに厄介!
…と、女性ならきっと誰しも一度は思ったことがあるのではないでしょうか。

 『女の子どうしって、ややこしい!』(草思社刊)は、女の子のイジメと人間関係を明るみに出した、全米のベストセラーです。ああ〜、それってわかる、わかる、と思わず頷いてしまう箇所がしばしば。

 女の子のイジメは、皆で無視をする、といった非暴力的なものなので、周囲の目には止まりにくいもの。人間関係を武器にした女の子のイジメの実態と背景、原因を、著者のレイチェル・シモンズが綿密なインタビューを基にリサーチしています。

 インタビュー対象は数百名にのぼるでしょうか。小・中・高校生の女の子を中心にイジメる側とイジメられる側、教師、母親、社会で働く女性たち…。社会から無言のうちに「いい子」「やさしさ」「かわいらしさ」を求められる女の子たちの鬱積は、外ではなく内なる人間関係に向かいがち。

 あ〜、イジメって絶対なくならないだろうなぁ、とブルーな気分にもなりますが、とにもかくにも興味深い一冊でした。

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紙の本プラダを着た悪魔

2004/05/31 00:53

やっぱり「暴露本」はオモシロイ!

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 『プラダを着た悪魔』、サイコーです。モード界って、マジおもしろい! と快哉を叫びたくなる一冊でした。

 ヒロインのアンドレアは、ひょんなことから世界一のファッション誌『ランウェイ』編集部にアシスタントとして就職。「何百万という女の子の憧れの職業」を射止めたアンドレアの恐るべき勤務内容とは?!

 マノロの新作ハイヒール、グッチやプラダのお洋服などはもらい放題(しかもタダ!!)、マンハッタンの最高級レストランでの食事も全部経費、夜ごと開かれるパーティーにはハリウッドスターをはじめセレブがウヨウヨ!! けれど朝7時から深夜まで、悪魔のような編集長、ミランダ=プリーストリーに奴隷のごとく使いっパシリをさせられる毎日。その内容たるや壮絶です。

 実際、作者のローレンー=ワイズバーガーがアメリカ版『VOGUE』編集部でアシスタントととして働いていたことを考えれば、鬼上司ミランダをVOGUEの名物編集長“アナ・ウィンター”に置き換えると、抜群のリアリティ。(しかも、アナ・ウィンターはプラダ好きでも有名です!)

 コレクションシーズンは、あらゆるモード雑誌にそのファッションがフォーカスされる、あの素晴らしくお洒落なモードの女帝、アナ・ウィンターって、こんなにキョーレツな人なの?! と、勘繰ってしまったり…。

 もちろん本書は小説である以上、フィクションですが、限りなくノンフィクションに近い楽しみを味わえるモードマニア必読の一冊。『ニューヨーク・タイムズ』や米国『アマゾン』のベストセラーリスト上位に入り続けた実績も頷けます。モード界の内幕を暴いたこの作品、20世紀FOXでの映画化もとても楽しみです。

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紙の本口のきき方

2004/03/14 18:17

言葉遣いのほう、よろしかったでしょうか?

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話しコトバに敏感になれる一冊である。
昨今、日本語本のブームであるが、本書は日常のフランクな「話し言葉」を扱ったものだ。

アナウンサー暦30年、という話し言葉のプロフェッショナルである著者が教えてくれる、数々のアドバイスは貴重だ。言葉遣いが乱れてきた、と感じたらその都度読み返したい一冊である。

また、日常にジワジワと浸透している若者コトバを、ただけなすだけでないところも好感度が高い。
■〜のほう ■ぶっちゃけ ■〜みたいな ■ビミョー ■〜とか ■〜系
■私的(ワタシテキ)には〜 ■よろしかったでしょうか ……etc.
などなど、年配者達の眉をひそめさせてやまないこれらの言葉も、著者は頭ごなしに批判するのではなく、若者達の心理分析をしつつ新しい話し言葉の潮流を解説している。

間違った言葉遣いの指摘、正しい話し言葉のススメをしつつも、ヘンな言葉、違和感のある言葉、時代の文脈で生まれ出た新しい言葉もきちんと評してくれているのだ。もっと、自分もコトバのアンテナを立てて行きたいなぁ、と感じさせてくれた一冊だった。

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紙の本世界比較文化事典 60カ国

2004/02/13 01:33

世界を駆ける、すべてのビジネスパーソンへ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「外国人だから知らない」よりも、「外国人だけど知っている」方がずっとステキだと思いませんか?

たとえば、家の中で靴を脱ぐ習慣のない欧米人が、日本のわが家の玄関先で靴を脱ぎ、しかも丁寧に揃えてくれたら…。
「外国人だけど、知っているのね!」とたいへん好感が持てます。だって、日本の習慣を知っていてくれた=日本の文化に敬意を払ってくれた、相手への感謝の気持ちが沸きますもの。当然、その外国人への好感度は一気にアップです。

好印象を持たれた上でお付き合いを始めた方が有利なのは、恋愛も海外ビジネスも一緒です。意中の相手に合わせる、それはいかなる時代のいかなる国でも、ラブ(or商談成立)を手に入れるための「基本のき」であります。
世界60カ国の文化を簡潔にして、要領よくまとめた本書があれば、海の向こうの彼や彼女とも、きっとうまくやれるはず。すべての国について、以下の内容が記されています。

 ■国の概要(歴史/政体/言語/宗教/人口統計)
 ■文化的特徴(考え方/判断基準/価値観)
 ■ビジネス慣行(アポイントメント/商談/接待/時間)
 ■儀礼(あいさつ/名前の呼び方/身ぶり言語/プレゼント/服装)

本書には、相手を知らなかったがゆえのこんな悲劇も記されています。

大手自動車メーカーのフォード社は、ブラジルでFord Pintoという名の車を販売しようとして失敗した。Pintoがポルトガル語のスラングで「小さなペニス」を意味するということを知らなかったのだ。なるほど、誰もPintoに乗りたがらなかったわけである。(文中より)

このほか、くれぐれも、インド人の社長さんの幼い御子息の頭をなでたり、コロンビアの社交場へ定刻通りに行ったり、ウルグアイ人社員に家族についての質問をしたりなど、されませんように。インド人にとって頭は神の宿る神聖な場所、コロンビアでは遅刻が美徳、ウルグアイは長い独裁政治によって多くの痛ましい犠牲者が出ているからです。

「郷に入っては郷に従え」。手垢にまみれたことわざですが、至言です。ビジネスパーソンの方々の、海外赴任・海外出張のお供に、ぜひともオススメしたい一冊です。

—参考—
【収録されている60カ国】アルゼンチン、オーストラリア、ベラルーシ、ベルギー、ボリビア、ブラジル、カナダ、チリ、中国、コロンビア、コスタリカ、チェコ、デンマーク、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、イギリス、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、グアテマラ、ホンジュラス、香港、ハンガリー、インド、インドネシア、イスラエル、イタリア、日本、クウェート、マレーシア、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ニカラグア、ノルウェー、パキスタン、パナマ、パラグアイ、ペルー、フィリピン、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、サウジアラビア、シンガポール、韓国、スペイン、スリランカ、スウェーデン、スイス、台湾、タイ、トルコ、ウクライナ、アメリカ合衆国、ウルグアイ、ベネズエラ 
…以上の国にお出かけの方には、きっと損にはならない一冊だと思います。

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紙の本マリー・アントワネットの生涯

2004/02/01 13:50

人間マリー・アントワネットに迫った、緻密な取材に感服

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ヨーロッパ一の名門ハプスブルク家の皇女に生まれ、フランス王妃となりながら、革命により断頭台で最期を迎えた「悲劇の王妃」マリー・アントワネット。その「悲劇」の発端となった彼女のケタ外れの愚かさ、人間臭さを、著者はアントワネットの生育環境や取り巻きの人々の性格など、丹念に調べ上げた史実を元に描ききりました。約50点のカラー図版(・写真)も見所の、またとない“マリー・アントワネット読本”です。

興味深い史実が満載の本書ですが、特に印象深いのは、夫のフランス国王ルイ16世をあれほどないがしろにして好き勝手をしたアントワネットの性格は、祖国オーストリアの父帝の影響だ、という著者の見解です。母の女帝マリア・テレジアは、当時の王族には珍しい恋愛結婚。しかも相手は小国の公子。マリア・テレジアの夫となった小国出身のフランツ・シュテファンは、結婚により神聖ローマ皇帝の地位に就くも、政治・軍事にことごとく才能を欠き、偉大なマリア・テレジアの影で享楽的に生きていたそうです。

父帝の影が薄く、強い母帝の支配する宮廷で育ったアントワネットにとって、王妃の自分が主導権を握るのはごく当然のことだった、というわけです。しかも父フランツ・シュテファンは語学の才能もまるでなく、フランスに嫁いだ後も、フランス語をろくに読み書きできなかったというアントワネットの語学能力の欠如は、明らかに父のDNAだ…などなど、興味深い話が盛りだくさんです。

マリー・アントワネットを語るときに欠かすことのできない傑作『ベルサイユのばら』でも、アントワネットの派手好き・遊び好きさ加減や、わずか14歳で愛のない結婚をしなければならなかった女性としての悲しさ、などは劇的に描かれています。が、なぜあれほど享楽的な性格が形成されたのか、という点の細部にまでは言及されていません。また母マリア・テレジアは偉大な女帝として描かれていますが、父の神聖ローマ皇帝フランツ・シュテファンは1コマすら登場しません。そうか、アントワネットには父帝がいたのか、という当たり前のことにしみじみと気づかされたりするのも、本書の魅力です。(本書は『ベルばら』の副読本として読むと、ますます面白いかもしれません。)

それにしても、ここまでマリー・アントワネットにまつわる史実を集めた著者の取材力には、驚嘆です。フランス革命時代の書物をひもとき、アントワネットが過ごした同じ場所を辿り、日欧の歴史家たちを訪ね歩き…。著者が取材に費やした膨大な時間と足労は、一体どれほどなのでしょう。少女小説の分野で一時代を築いた、藤本ひとみならではの筆致と力量です。

現在はフランス政府観光局名誉委員なども務め、西欧史への深い造詣に基づく著作を発表し続ける著者の作品の面白さは、少女小説時代を凌駕し、一層の磨きがかかっています。

本書の他にもフランス革命やブルボン家を濃密に描きあげた著者の作品、『マリー・アントワネットの遺言』(『マダムの幻影』を文庫化に際し改題)、『ブルボンの封印』なども併せてオススメの太鼓判です。

※久しぶりに『ベルサイユのばら』を通読した後、本書が目に留まりました。やっぱり絶対王政時代のフランスは最高です。数多く出ている映画や本のうち、オススメをいくつか挙げてみました。
■映画:『宮廷料理人ヴァテール』『女優マルキーズ』『王は踊る』『仮面の男』『マリー・アントワネットの首飾り』『マリー・アントワネット』
■本:『マリー・アントワネット』上・下巻(シュテファン・ツワイク著)、『ベルサイユのばらの街歩き』(JTB刊)

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紙の本平成よっぱらい研究所 完全版

2004/01/02 01:01

VIVA!よっぱらい人生

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

よっぱらいの、よっぱらいによる、よっぱらいのための一冊。
お酒を飲んでは醜態を晒し、深い自己嫌悪に陥り、また飲んでしまってはその繰り返し…。そんなお酒のデフレスパイラルにはまりこんだよっぱらいの方に、オススメのエッセー漫画です。

よっぱらい研究所・所長を標榜する著者が、身をもって体験(研究?)した酒乱の日々を、おもしろおかしく綴ったのが本書。記憶の消滅、野球拳でスッ裸、公園のカップル襲撃、歌い狂ったあげくの寝ゲロ、なんて序の口です。おバカでおゲレツな酒宴の刹那——。365日のうち、お酒を飲まない日は10指で足りるくらい、私もお酒が大好きですが…。著者の酒気帯びエッセーは本当に痛快、お酒のもたらす快楽を、存分に伝えてくれます。

思うに、お酒のもたらす快楽の本質は、「よっぱらう」という表層的なことではありません。もちろん、よっぱらっていい気持ち〜、というゴキゲンさもあります。が、よっぱらってブッとんで、言いたいことを言って「痴態をさらす」という内なる自分の解放・露出こそが、お酒の本当の快楽なのではないでしょうか(翌日の二日酔いと自己嫌悪の元凶でもありますが)。著者も本書の中で絶叫しています、「バカは楽しい!」と。

その、おそらく大抵のよっぱらいに共通する露出快楽を、本書は余すところなく縦横無尽に描いています。

この本は、よっぱらいなんてみっともないと眉をひそめる淑女の皆様や、オンナのよっぱらいほど醜いものはないとおっしゃる紳士の皆様にはオススメできません。が、お酒をこよなく愛し、よっぱらいのダメな自分を嫌悪しつつも愛おしく思ってしまう、そんな酒飲みの皆様にはぜひともオススメしたい一冊です。さあ今日からは、深酒だって怖くはないゾ!

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紙の本東大生はAV男優

2003/12/15 00:31

エリート街道とエロ街道——二兎を追う者は一兎をも得ず

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何ともソソるタイトルである。東大生とAV男優、インテリジェンスとエロの両極。知的エリートはどんなプレイを見せるのかしら? と知的庶民の下世話な好奇心で買ってみた。「私小説」を謳(うた)っているが、果たしてどこからフィクションなのか…?

主人公の黒川龍一は東大の建築学科5年生(一浪・二留)。ミーハー根性でマスコミ業界を狙って就職活動をするも全滅。本命の広告代理店、電通を落ちた時点で“なんとなく”AV男優を志す。フーゾク嬢に「あなた、大きいわね。AV男優になるといいわ」と言われたことがきっかけだ。初仕事のSM撮影では、奴隷役の女優の手足を押さえつけるだけで、2万円の出演料を手にした。もちろん本番も絡みもナシ。あまりのボロさにハマり、芸名「ファンキー堺」でAV男優の顔を持つに至る。

主人公・黒川の特徴は中途半端さだ。人気AV男優たちのようにエロに対する真摯さがあるわけでもなく、かといって勉学への執着も浅い。中途半端な軟派気取りで、中途半端なエリート意識。だから、AV稼業も学生生活も就職活動もパッとしないのだ。

行動のすべてが「なんとなく」で、思想がどこにもないのである。なんとなくAV男優、なんとなく卒業もしたくない、でもなんとなく就職はしなきゃならないかな…。どちらの道にも腰を据える覚悟のない黒川に、読みながら苛立って仕方がないのだが——

けれど、何かと勝ち組、負け組とくくりたがる人々やマスコミの風潮を見るとき、ちょっと待てよと思うことがある。勝ち負けって何? そんなに大事? 何でもかんでも格付けしたがる世間にちょっと疲れを感じたとき、黒川の煮え切らなさにはどこかホッとするかもしれない。
ああ、こんな生き方もありなのかな…と。

大企業が簡単に倒産し、昨日の社長は明日のホームレスになり、いい大学を出ても就職はままならず、出会い系サイトやネットビジネスは隆盛をめ…。
流動的で、バーチャルで、勝敗や成否の指標も曖昧で、つかみどころのない今の時代——。黒川は、21世紀型の高等遊民なのかもしれない。

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紙の本エロイカより愛をこめて 29

2003/12/05 01:42

次なる舞台は、悠久のトルコ

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新刊が待ち遠しくてならないこの作品! 待望の29巻です。

NATOの情報部員(“鉄のクラウス”こと少佐)、旧KGB工作員(仔熊のミーシャ)、世界を股にかける大泥棒(伯爵)を中心に、キテレツな登場人物たちが、陰謀のあるところ右へ左へ、世界中を駆け巡るスパイ・アクション・コメディです。そして今回の舞台はエキゾチックな大地トルコ。KGB元工作員のテロ計画を阻止するため、鍵となるイスラムの宝剣を追って、一行の大追跡劇が繰り広げられます。

29巻に至っても作品のテンポは一向に衰えることなく、今回も読者を愉快な旅へと連れ出してくれます。少佐や伯爵や仔熊のミーシャ、そして彼らのユニークな部下達に会えるだけでも嬉しくて、毎回新刊を手に取ってしまうのですが…。

けれど、スパイ・アクションであるこの作品が本当に面白かったのは、やはり冷戦時代(単行本19巻まで)。東西対立構図が明確だったからこそ“NATO情報部(西側)の鉄のクラウス”V.S.“ソ連KGB(東側)の仔熊のミーシャ”との騙し合いは冴え渡りました。しかし今は、ロシアがNATOに加盟するかどうかというご時勢です。ベルリンの壁が崩壊し、東西のスパイがその役目を終えたとき、スパイ小説は絶滅の危機に瀕しましたが、本作も例外ではありません。

ストーリーの質も、人物達の魅力も今まで通り『エロイカ…』は続けられていますが、やはり往時の精彩は欠いています。そしてこの作品が冷戦時代のあの輝きを取り戻すことは、今後もうないでしょう。それはひとえに、時代のせい。

今現在、読者がこの作品を手に取る理由は、お馴染みの愛すべき登場人物達にまた会いたい、という一途なファン心ではないでしょうか。『エロイカより愛をこめて』と共に成長した読者達の、いわば“愛の残滓”なのかもしれません。

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紙の本市場占有率 2004年版

2003/11/11 01:16

トップシェア攻防戦に待ったなし

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今年も出ました、日経の『市場占有率』。
約180品目のシェア(市場占有率)が収録されており、様々な業界・企業の動きを数値で知ることのできる貴重なデータブックです。

例えば自動車のトップシェアはトヨタ、パソコンはNEC、などのメジャーな業界は誰もが知るところです。けれど、自動販売機、システムキッチン、アイスクリーム、産業用ロボットのトップは——? というと、なかなか出てこないのではないでしょうか。意外な品目で意外な企業が活躍していたり、まったく知らない企業が実は身近な製品のトップシェアを持っていたり…。本書は企業とシェアの視点から、経済を俯瞰させてくれるまたとない一冊です。

長引く景気低迷とデフレの影響で、シェアの寡占化が進んでいる。市場が拡大しないなかではブランド力、マーケティング力、価格競争力が問われる。トップ企業を中心とした上位企業のシェアが高まるのは当然。(文中より)

と、近年のシェアの動向は、上位企業が下位企業に差をつける二極化だと本書は分析しています。こうした興味深いシェア動向の分析と共に、数値から業界各社の経営戦略をウラヨミするのも本書の醍醐味です。

経営戦略の極意は「勝ちの演出にあり」といわれます。どんなに調子が悪くても、いかに「勝ち」を演出するかが重要というわけです。たとえば、サントリーのビール・発泡酒のシェアは10.5%(本書287ページ)。アサヒ、キリン、サッポロの後塵を拝し、社内的にも不採算部門であるため、はっきり言ってビール業界では「負け組」です。けれど、サントリーには「負け組」のイメージはありません。それどころか、オシャレでスノッブなイメージ。もちろん、ビール以外の清涼飲料やウイスキーの好調があるわけですが、明らかなイメージ戦略勝ちです。

また、ソニーのプレイステーション。本書(103ページ)によれば家庭用ゲーム機のシェアで、78.2%の圧倒的トップシェアを誇ります。かつて栄華を謳歌した2位の任天堂に大差をつけてのトップ独走です。ソニーの圧倒的な強さを見せつけられた感がありますが、実はプレイステーション本体(ハード)は、小売価格が原価割れをしているため、売れば売るほど赤字です。ゲームソフトで儲けるビジネスシステムなので、ハードはとにかく赤字を承知で普及させなければならないのです。ですから、ハードがいかにシェアトップといえどもソフトが売れなければ大赤字。昨年はプレイステーションに特筆すべきメガヒットソフトはありませんでしたが、やはりシェアNo.1という称号は圧倒的な「勝ち」の演出です。

そんな各社の「勝ち組」演出戦略をウラヨミするのも一興。数値は時に言葉以上に物語ります。精読、深読み、斜め読み—。どんな読み方でも、きっと数値は何かを伝えてくれるはず。『市場占有率』は、ビジネスマンにとって、きっと読んで損にはならない一冊です。

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五回の「なぜ」を繰り返せ!

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本書は、いうまでもなく経営学を学ぶ人にとって必読の古典です。英文学を学ぶ人にとってのシェイクスピアといったところでしょうか。世界中のメーカー経営者が手本と仰いだトヨタの“かんばん方式”について、生みの親である著者が記した本書は、しかし、単なる「経営学の古典」という枠組みを越えた、普遍の哲学書であるともいえると思います。

ソニーの会長兼CEOの出井さんも、自著のエッセイ『ONとOFF』において、トヨタの工場を見学したくだりで、その「品質に対する執念」に賛辞を捧げています。トヨタ生産方式の誕生から約五十年。世界に冠たる企業のトップたちが、いまだに一目も二目も置くトヨタ生産方式は、ただの生産ノウハウに留まらない奥深さを感じさせます。

「ジャスト・イン・タイム」「かんばん」「自働化」など、トヨタ生産方式の基本思想である“徹底したムダの排除”を表すキーワードはいくつかありますが、ここではそれらの根幹をなす「五回のなぜ」に注目したいと思います。以下は、長くなりますが文中からの抜粋です。

 一つの事象に対して、五回の「なぜ」をぶつけてみたことはあるだろうか。言うはやさしいが、行なうはむずかしいことである。たとえば、機械が動かなくなったと仮定しよう。
(1)「なぜ機械は止まったか」
  「オーバーロードがかかって、ヒューズがきれたからだ」
(2)「なぜオーバーロードがかかったのか」
  「軸受部の潤滑が十分でないからだ」
(3)「なぜ十分に潤滑しないのか」
  「潤滑ポンプが十分くみ上げていないからだ」
(4)「なぜ十分くみ上げないのか」
  「ポンプの軸が摩耗してしてガタガタになっているからだ」
(5)「なぜ摩耗したのか」
  「ストレーナー(濾過器)がついていないので、切粉が入ったからだ」
 以上、五回の「なぜ」を繰り返すことによって、ストレーナーを取りつけるという対策を発見できたのである。「なぜ」の追求の仕方が足りないとヒューズの取り替えやポンプの軸の取り替えの段階に終わってしまう。そうすると、数ヶ月後に同じトラブルが再発することになる。—中略—
 五回の「なぜ」を自問自答することによって、ものごとの因果関係とか、その裏にひそむ本当の原因をつきとめることができる。
(文中より)

地道に「なぜ」を繰り返し、根本的な問題解決の方法を探る態度の積み重ねが、他社に追髄を許さない高品質のトヨタを作り上げました。

モノづくりの生産現場のみならず、学問、仕事、人間関係、スポーツ、芸術…。根本的な真理、解決方法を求める「五回のなぜ」の問いは、あらゆる場面に応用できます。本書に出会ってからずいぶん経ちますが、困難な場面ではいつも「五回のなぜ」に助けられています。

このたびの、三菱自動車製品の脱輪事故多発や過去のクレーム情報隠蔽など、一連の三菱不祥事を耳にして、ふと、本書を思い出しました。

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紙の本コスメの魔法 13

2003/09/25 01:08

キレイは女の子のシアワセの素(もと)

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「キレイを怠けるのは犯罪なのです!」
——マ・ベール化粧品の美容部員にしてこの作品のヒロイン、高樹礼子サンのキメゼリフが素敵な『コスメの魔法』。13巻に至り、キレイの伝道師はより一層の健在ぶりです。

読みながら、メイクやお肌ケアの方法を自然と覚えられるのも本作の魅力ですが、一番の読みどころは何といっても礼子サン流の「本当のキレイ」の追求です。毎回、様々な悩みを抱えた女性たちに、厳しく(時にやさしく)その人自身に合ったキレイを手ほどきしていきます。その根底にあるのは、心の中からのキレイ。

メイクのハウツー漫画のように見えて、実は悩める女性たちへの丁寧なカウンセリング、という仕立てになっています。

誰が何といおうと、やはり女性とキレイは切っても切れない関係です。クレオパトラの古代から美人は人類最大ともいえる興味の対象でもあることですから。

オシャレやメイクといった虚飾になんて目もくれず、自分の目標に向かって歩む女性も素敵です。けれどそんな女性がひとたび虚飾の遊び心を取り入れるゆとりを持ったら、もっと素敵になるのではないでしょうか。『コスメの魔法』に登場するのは皆、芯のある一生懸命な女性たち。キレイに関心のあるなしにかかわらず、この作品はきっとすべての女性にとって読んで損のない一作です。

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紙の本クライマーズ・ハイ

2003/09/22 12:57

報道人に捧げられたノスタルジア

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専門紙の記者だった父は、この作品を読みながら泣いていた。全国紙ではなく地方紙、若きエリート記者ではなく中年のうらぶれた記者を描いたこの作品に、ひどくノスタルジーを感じたのだという。「泣ける」という理由で本を読むのは好きじゃない。だが、横山秀夫だ。今度はどんな人間ドラマで魅せてくれるのだろうか。その一心で本書を手にした。

舞台は群馬県の地方紙「北関東新聞」、題材は「日航機墜落事故」、主人公は四十歳のベテラン記者・悠木。四十にもかかわらず、いまだに昇格することなく一記者として燻(くすぶ)る一匹狼の悠木が、「世界最大の航空機事故」となった日航機墜落事故の全権デスクに抜擢されるところから物語は始まる。

連合赤軍事件の手柄話で生きてきた上層部の後輩記者に対する嫉妬と妨害、悠木の活躍を面白く思わない他部署の嫌がらせ——。事件を軸に泥臭い人間ドラマが描出されていく。あまりに大きな事件を誰もが扱いあぐね、だが、やがてしっかりと受け止めていく、という展開は沁(し)みる。

そして「北関東新聞」同様、群馬の地方紙である上毛新聞の記者出身の著者にとっては、半自伝的ともとれる設定と内容に、ついつい主人公と著者をかぶせて読んでしまうのである。

さて表題の“クライマーズ・ハイ”とは、「困難な山を前にして興奮状態が極限に達し、恐怖感がマヒして脇目もふらず登っていく」という意味の登山家の用語だ。不惑の年まで現場の一記者だった悠木が、巨大な事件(ヤマ)を任され、苦悩しながらもアドレナリン全開で事件の指揮を執っていく。その様が“クライマーズ・ハイ”に擬せられているのだろう。

本書の魅力の一つは、全編に漂う報道人のノスタルジアだ。新聞に限らず、出版でもテレビでもいい。この作品は、時事ネタを扱い、締め切りに追われる生活を経験したすべての人の琴線に触れるだろう。まして大きなヤマを踏んだ人になら尚更だ。降板ギリギリまで新鮮なネタを詰め込みたい、印刷所の営業を泣かせてでも鮮度のいい誌面にしたい、そんな報道人の持つ緊迫感と身勝手な傲慢さが、本書ではノスタルジックかつリアルに描かれている。

みっともなくても自分に嘘をついた生き方はしない。事件の扱いをめぐり、悠木の下した数々の決断と上司に対する不器用な行動は、そう言っているように感じられた。本書の一読は、平坦な日々を送る人にもヤマ場にある人にも、きっと何かのメッセージが届くだろう。手にとって、決して損ではない一冊だ。

さて、蛇足になるが、本書をちょっと面白おかしく楽しむには“田口トモロヲ”口調で読むのも一興。トモロヲ風に、「全権デスクの任は想像以上に重かった。自分の能力を遥かに超えていると悠木は思った」(文中より)という具合に。だってこの本は、美談仕立ての「プロジェクトX」を、もっと人間臭く塗り替えた一級のヒューマン・ドラマだから。

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紙の本寂しい国の殺人

2003/09/05 12:09

時代を見はるかす、先鋭な眼差し

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何気なく書棚から抜き出した本のページを繰ると、ドキッとする警句に行き当たった。誰しもそんな経験があるのではないだろうか。久しぶりに『寂しい国の殺人』を取り出し、身がすくんだ。やはり村上龍は時代のフロントランナーである。少々長くなるが、警句に満ちた以下の文章は本文からの抜粋だ。

「金とブランド品にしか価値を認めない女子高生は今の日本人の価値観を忠実になぞっているだけだ。言うまでもなく、金とブランド品という価値観は近代化を果たしていない開発途上国のものだ。」
「わかりやすい例として、芥川・直木賞とレコード大賞がある。この十年間の芥川・直木賞の受賞者を十人あげてみろ、と文芸編集者に質問してもほとんど答えられない。この五年間のレコード大賞にしても同じことだ。国民的な賞を設定して、国民への励みを与える。国民は受賞者を讃え、尊敬する。というような構図は開発途上にある国のものだ。レコード大賞にしても、役目は終わっているのだと、ほとんどの国民が無意識のうちに気づいている。この十年間の首相の名前をほとんど覚えていないのも、甲子園の全国高校野球の優勝校をすぐ忘れるのも同じ理由に依る。」
「だがどんなメディアもそういうことを言わない。もう国家的な目標はい、だから個人としての目標を設定しないといけない、その目標というのは君の将来を支える仕事のことだ、そういう風にわかりやすく親切にアナウンスしてあげないとわからない人々がいる。子どもたちだ。」
「今この国で尊敬されているのは、家族を顧みず猛烈に働くサラリーマンではない。コマーシャルに登場し微笑んでいるのは、先端機器を上手に使いこなし余裕のある生活をして趣味を楽しむ人々であり、雑誌のグラビアで賞賛されているのは、海外旅行によく行き、おしゃれをして、スクーバダイビングやガーデニングやアウトドアライフを楽しむ人である。女性でも、働く夫を支え家庭を守る主婦がテレビドラマの主役の座を降りて久しい。実社会で働き高収入を得て、華やかな恋をして、人生を楽しむ女性だけが脚光を浴びている。」
「それではどうやってそういう余裕のある生活を楽しむ身分になればいいのか、誰も子どもたちに教えない」
(文中より)

不況のさなか、ルイ・ヴィトンは都心の最先端スポットに路面店をラッシュでオープンさせている。一方で、線路への飛び込み自殺をした中年男性の自宅に女子高生の腐乱死体があったり、練炭自殺した男の家には渋谷で遊んでいた4人の女児が拉致監禁されていたり…。コギャル、エンコー、ブランドブームが隆盛を極めたその後の世の中は、今、一層気味が悪くなった。一体どうなっているのだろう——、その有効なヒントが本書には散りばめられている。

女子高生、ネット社会、金融不安、不況、ひきこもり…。村上龍はいつだって、新しい現象や不可解な時代の産物に向き合ってきた。評価の定まらない新事象をとりあげるには勇気がいる。それ相応の見識が必要とされるからだ。大抵の識者は、見当違いを言って恥をかきたくないがため、従来の枠組み内で無難な発言をするか、だんまりを決め込む。だが村上龍は果敢だ。時には違和感のある記述もあるが、そうした違和感を補って余りある鋭い警鐘が、ガンガン鳴り響いているのである。しかし、違和感とて新しい世の時評にはつきもので、むしろ感じないほうが思考停止の受身である危険信号なのだ。

不可解な世の中に「なぜ?」の気持ちを抱いたとき、エッジを見つめ続ける作家が生み出したこの随筆集は、きっと紐解くヒントをくれる。本書の一読は、決して損ではない。

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高嶺の花か、アスファルトに咲く野の花か

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持ち続けるのも捨て去るのも、これほど難しいものはありません。プライドとの付き合い方は、誰にとっても永遠の課題なのではないでしょうか。本書で華麗に描かれるのは“プライドV.S.プライド”のバトルです。

ヒロインはオペラ歌手を目指す二人の女の子。それも全く対照的な二人です。才能・美貌・品位・財産・コネクションのすべてに恵まれた史緒と、場末のホステスの娘で苦学して音大に通う萌。高いプライドが邪魔して器用に生きられない根っからのお嬢様の史緒と、惨めな生活から這い上がるためにプライドをかなぐり捨てた萌が、ことあるごとにぶつかり合い、物語のテンションを引き上げていきます。中でも、父の会社の倒産で財産を失った史緒が、プライドだけでは生きられないことに気付き、お嬢様体質から徐々に脱皮していく様子は、細やかに描かれていて読みどころです。

前作『天使のツラノカワ』でも、お寺の娘でリッチな小悪魔美人の沙羅と、牧師の娘で図太くもかわいらしい貧乏娘の美花が好対照をなしました。対比によって登場人物の魅力を最大限に引き出すワザは一条先生の18番。今回も先がとても楽しみです。華やかなクラシック界が舞台なだけに、今のところ史緒に肩入れしたくなってしまいますが、これから萌がどう見せてくれるのか、目が離せません。

ただ、萌を見ていると「プライドを捨てるプライド」が、実は最も高いプライドなのではないかと感じます。平素の自分自身を振り返っても、何とつまらないことにカチンときていることか。ページを繰るたびに、しばし自省です。いつも華やかな一条ワールドですが、今回は生き方の示唆にも富んで抜群の読み応え。大御所の放つ“読ませる傑作”です。

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紙の本取引

2003/08/24 22:51

疾駆する小役人

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『連鎖』に続く、真保裕一の小役人シリーズ第二弾。

事件は現場で起きている、という青島刑事の名言を引き合いに出すまでもなく、現場の名もない役人こそが最も矛盾とひずみを体感している。末端の役人を主役に据えるこのシリーズは、政官財の癒着をリアルかつダイナミックに見せてくれる極上のサスペンス・スリラーだ。

本書の主人公は公正取引委員会の審査官、伊田。伊田は、フィリピンへのODA供与で黒い利権をむさぼるゼネコン・大手総合商社・政治家たちの談合体質にメスを入れるべくマニラへ飛ぶ。ところが談合の実態を捜査する任務の傍ら、内偵対象者であり高校時代の友人でもある遠山の娘の誘拐事件捜査も手伝うことになり、物語はこの2つの捜査を軸に展開してゆく。そして、談合疑惑と誘拐事件の2軸が1本の太い線となり、迎えられる驚天動地の結末とは——。

真保裕一の傑作は『ホワイトアウト』のみにあらず。
抜群の構成力と巧みなストーリーテリングが冴え渡る670頁の肉厚ハードボイルドミステリーだ。やや古い作品だが、時代ズレの心配はご無用。今なお色褪せない題材である。ヘビィなミステリーを愛する方をも、十分に唸(うな)らせることができるだろう。

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