わすれていた感情があふれだす――勇敢で繊細な思春期を描いた傑作

達観した高校生の理帆子が「写真を撮らせてほしい」と言う青年と出会い成長していく物語。「引かれるの、嫌ですから」と感情を抑える理帆子は、「一緒がいい。でも一緒はいや」だったあの頃を思い出させます。どこでもドアなど『ドラえもん』の秘密道具に沿った展開は、そのポップさでより本書の切なさを増しています。

外界から隔絶された「階段島」。気づくとここにいた住人たちは、「落し物」を見つけて元の世界に帰ろうとする。どこか諦めたような青年・七草は、元の世界で友人だった強すぎる正義感を持つ真辺と再会し、周囲を巻き込みながら謎を解明する。思春期の不思議な絶望感や、正義感と勇敢さを思い出させてくれる作品です。

全校集会でいじめられていた女子生徒と彼女を助ける青年・濱田の物語。濱田の助けを「あああああ！」と拒否した少女は、だんだん少女らしいかわいらしさも見せてくるが――。レーベル独自のライトなタッチが少女の狂気をテンポよく描いていてするりと読めます。ラストは謎が多く含まれていて、いろいろな読み方ができる作品。

いませんでしたか？気をひくためのちょっとした嘘を繰り返す女の子。七緒はまさにそんな女の子。でも、ちょっとした嘘は、七緒の中では嘘であり本当なのです。不思議で狂気の魅力を持つ七緒と、多感な雪子の少し奇妙な友情を優しく描いた作品。

告白でドキドキの卒業式、アイドルの卒業、あの頃の私からの卒業――。いろいろな卒業を切りとった短編集。加藤千恵らしく甘やかでさわやかでどこか悲しい卒業が、自分自身の「卒業」を思い出させます。『あたしだけ卒業してく　心から祝われたならきっと悲しい』など、短歌で始まるそれぞれの短編は叙情的で魅力的。