不思議な世界観に引き込まれる！ちょっと変わった物語

ミチオの夏休みは、終業式のあと友達の家に向かうところから始まります。そこで待っていたのは、首を吊った友達の死体。物語は一見普通のミステリー小説のように進んでいきますが、読み終わる頃には物語全体に張りめぐらされた壮大な仕掛けに圧倒されます。実はそういう世界だったのか!?という驚きが頭で弾ける小説です。

「掃除部」という部活、スポーツが当然のように存在している世界のお話です。しっかりとした歴史背景や設定がなされ、一つの社会として成立しています。主人公・樹は高校3年間しかできない掃除部の活動にどこか冷めた態度で臨んでいましたが、ある少女との出会いで少しずつ変わっていきます。

舞台は江戸時代――という時点で自動的に時代小説に分類されてしまいがちですが、この物語はとにかく現代社会への風刺に満ちています。牢人・十之進が金と職欲しさになんのゆかりもない老人を斬るところから物語は始まりますが、全員ふざけているのではないかと思うほどおかしなテンポで物語は進んでいきます。

「8年後に地球が消滅する」と発表され、それから5年が経過した世界が舞台となった物語です。残された時間のなかで人は何を思い、何を感じ、どう動いて生きていくのか？同じ条件で、それぞれのキャラクターが残る時間を多彩に消化していく8編が収録されています。自分ならどうするか？そんなことを考えさせられます。

主人公を置かず、誰でもない視点から物語を展開していく実験的な小説です。真夜中の都会というのは一種の異世界で、眠る人、起きて活動する人、それぞれに思惑と人生があります。夜更けから夜明け前までの街を記録的に描く淡々とした文章は、どこか不安な世界に迷い込んでしまった感覚を読み手に抱かせるでしょう。