変わっているからこそ際立つ想い。奥深い愛の形を描いた小説

木に恋をする女性、男のいない島で育てられた少女たち、自分を捨てた恋人が乗っている宇宙船を追いかける男性など、「変愛」の名にふさわしい現代英米文学を集めた一冊です。編者は本書の翻訳も務めた岸本佐知子。変わっているけれど、だからこそピュアで純粋な気持ちが刺さる短編小説集です。

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9歳で孤児となった腐野花を引き取ったのは、遠縁の淳悟。物語は花の結婚から始まり、だんだんと時をさかのぼってゆきます。世間からどう思われようと2人はお互いを濃密に求め合い、許されない関係に落ちてゆき・・・。純粋であるがゆえの狂気を味わってみてください。

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すべてのものを標本にする標本技術士から贈られたのは一足の靴。そのぴったりの靴を履いているうちに、「わたし」はどんどん寡黙な技術士に傾倒するようになります。くらくらするほど官能的な技術士との時間はどこかひんやりとしいて、密やかで静かな狂気の愛が流れる小説です。フランスで映画化もされています。

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隅田川で心中を図る少女「隅田川」。変死した作家の愛と妄執を描いた「定家」。天使の声を持つ男を探すために妻を捨てる「蝉丸」。能楽を題材に、現代風に大幅なアレンジを加えた短編集です。どの短編も一筋縄ではいかない壮絶な愛が描かれています。どろりとした悲しさが印象的な小説です。

お見合いで結婚した躁鬱でアルコール依存症の笑子と、同性愛者の睦月。そして睦月の恋人である紺の奇妙でやさしい愛の物語です。打算で始まった結婚生活は、だんだんとお互いを大切な存在へ変えてゆきます。一見すると普通じゃない3人の関係が不思議と調和していて、登場人物みんなが愛おしくなります。