ブックキュレーター哲学読書室
「ポリティカル・コレクトネス」を再考するための5冊
「ポリティカル・コレクトネス」を説明できる人は、意外と少ないのではないでしょうか。にもかかわらず、この言葉をめぐって不毛な論争が日々起こっています。ここでは少しでも見通しをよくするための5冊を紹介します。手前味噌で恐縮ですが、拙著もぜひお読みください。【選者:綿野恵太(わたの・けいた:1988-:批評家)】
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「アイデンティティ」(民主主義)と「シティズンシップ」(自由主義)の対立という観点から、「ポリティカル・コレクトネス」をめぐる閉塞状況を整理した。民主主義と自由主義という視点は非常に便利で、トランプ現象、英国EU離脱から、平成の天皇制まで読み解ける。
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心の中のブラインド・スポット 善良な人々に潜む非意識のバイアス
M.R.バナージ(著) , A.G.グリーンワルド(著) , 北村 英哉(訳) , 小林 知博(訳)
「差別はいけない」というひとにも、潜在意識には差別につながるバイアスがある。そのバイアスが白人と黒人の不平等をもたらしている、と本書は指摘する。ポリコレが徹底されても簡単に差別がなくならない原因は、私たちの人間本性に潜んでいる。
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ドイツの新右翼
フォルカー・ヴァイス(著) , 長谷川 晴生(訳)
ドイツの新右翼はいう。イスラームはわれわれの敵ではない。むしろ、われわれを頽廃させるアメリカニズムを共通の敵とする良きライバルである、と。たしかに両者ともにアイデンティティに依拠した運動である。そして、アメリカ発祥であるポリコレはアメリカニズムの最たるものといえる。
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ニック・ランドと新反動主義 現代世界を覆う〈ダーク〉な思想
木澤佐登志(著)
白人至上主義を評価するニック・ランドは単なる差別主義者ではない。本書が指摘するように、ランドはウィティッグ『女ゲリラたち』といったフェミニズムにかつて可能性を見ていた。アイデンティティ・ポリティクスはリベラルの欺瞞性を撃つが、本質主義に陥る危険もある。遺伝子研究や進化論がそのために利用される。
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拙著のタイトル案が『超「ポリコレ」宣言』だったので、本書刊行時は驚いた。ポリコレを「超」える姿勢は同じだが、拙著にはない「欲望」という精神分析的な視点から議論が展開され、PCをめぐる閉塞状況を展望できる。とくに「傷」と「主体」は考察されるべき重要なテーマであって、拙著との併読を是非お勧めする。
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哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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