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想像力の結晶を読む。不思議な世界を描き出した幻想小説
幻想文学とは、超自然的現象を表現する文学ジャンル。その定義は広範で、近現代では空想、神秘、幻覚などさまざまな概念が取り込まれています。たとえば、「架空の世界」の表現を味わうことも幻想文学を読む醍醐味の一つ。無から生み出された世界には表現者の想像力が凝縮されています。ここでは、そうした「架空の世界」を描いた幻想小説を紹介します。
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イタリアの作家・カルヴィーノの小説。フビライ汗の寵臣であるマルコ・ポーロが、派遣使として訪れた諸都市で遭遇した不思議な出来事を報告します。オアシスの都市、呪われた都市、巨大な連続都市など、彼の話には想像を絶する都市が次々に現れ、皇帝を驚かせます。2人の会話から創造されていく架空都市の情景は実に壮観です。
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著者はアメリカの詩人でもあるブローティガン。西瓜糖の街・アイデスで共同体を築く人々を詩情あふれる文体で描き出した幻想小説です。満ち足りた世界であるアイデスと「忘れられた世界」が対比的に登場し、静謐ながらもどこか空虚な印象を漂わせます。言葉を発する虎たちの存在も相まって、寓意的な世界を味わえる物語です。
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著者はボヘミア生まれの怪奇幻想画家・クビーン。夢の国・ペルレを創設した富豪に招かれた画家は、色とりどりの建築物で暮らす住民と奇妙な交流を始めることに。自身を思わせる画家を主役に中央アジア辺境に建設されたペルレの栄枯盛衰を表現し、国内外の幻想文学界を揺るがした快作です。著者の挿絵が雰囲気を引き立てます。
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チェコの小説家による物語。幼いころに母と生き別れた少年・ナミは、湖に面した街・ボロスで祖父母と暮らしていました。しかし祖父母を失い、家には粗暴な農場長の家族が移り住んできます。居場所をなくしたナミは母を探すため首都を目指すことに。時代も場所も不明で、ただただ湖を象徴とする世界の寂寞たる情景が胸に残ります。
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蕃東国年代記
西崎憲(著)
著者の西崎憲は翻訳家・アンソロジストとしても活躍しています。本書は架空の小国・蕃東の不可思議な現象に、貴族の宇内と従者の藍佐が遭遇する連作小説集。日本の古典や西洋の神話をかけ合わせることで、独特のアジアン・ファンタジーを創造しています。怪奇幻想文学の新境地を開いた意欲作と言えるでしょう。
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