絶望の中に差し込むひと筋の希望！読後も余韻に浸れるディストピア小説

イギリスのオールドスクール風の古きよき寄宿学校。その中での生活を懐かしむように、物語は始まります。あらかじめ未来が奪われている主人公たちが、愛をつなぎたい一心で小さな世界を変えるために奔走する姿はあまりにも人間らしく、心に迫ってきます。権利、倫理、可能性、そして生を足元から揺るがす小説ですが、読後は深い感動に包まれるはずです。

超能力によって自然と文明が共存する未来の世界で、主人公たちは自分の能力を開花させるための学校に通っていますが、ある秘密を知ってしまい・・・。種族間の争いが世界の縮図を彷彿とさせ、隅々まで驚かせる仕掛けに満ちた長編小説。また、信仰と支配の共存関係を浮き彫りにする舞台設定も巧みです。

人類は発展し尽くしてしまい、自然は破壊されて滅びに向かう近未来。交通事故に遭った少女は記憶の移植手術を受けて、チンパンジーとして目覚めます。人間としての記憶、野生の本能、人類からの期待を一身に背負った少女の物語は壮絶な決断の連続で、一度読むと忘れられないインパクトがあります。

平凡な家庭でやさしい両親と妹に囲まれ、何一つ不自由無く暮らす少年。12歳で迎える職業任命で「記憶を伝える者」となり、生々しい孤独、愛、痛み、自由を知ります。生死や感情まで作り込まれた究極の管理社会の描写は、空疎な人間関係を思うと妙にリアルで、ひょっとするとすでに・・・と感じさせる卓抜な物語です。

緑も食物も豊かな無人島に不時着した少年たちは、大人のいない桃源郷に沸き立ちます。集会を開いたり焚き火をしたり、自由で満ち足りた生活が、小さな不満や不安からおぞましい様相を呈していく描写に、閉塞感の強い教室を覗いているかのようなリアリティがあります。力の強い者に飲み込まれてしまう空気に鳥肌必至。