ドストエフスキーに影響を受けた日本作家によるオススメ小説

衝撃のデビュー作『告白』で、ドストエフスキー『罪と罰』を引用した湊かなえ。そんな彼女が手掛ける本書は、究極の愛は罪の共有、愛と狂気は常に紙一重であることを読者に突きつけます。人の欲望や心理描写を巧みに表現するドストエフスキーのように、登場人物たちの欲望が複雑に絡み合う物語をお楽しみください。

ドストエフスキーの文学がきっかけで正教徒になった、とインタビューで公言している鹿島田真希。芥川賞を受賞した本書は、主人公が体の不自由な夫と一緒に旅をしながら家族と過去を振り返る物語。ドストエフスキーと同様に宗教的テーマを軸とし、理不尽な状況で生きる意味を見出す人の姿が描かれています。

若いころからドストエフスキー文学を耽読し、自ら新釈を執筆したこともある三田誠広。本書は、主人公の少年と難病を抱えている少女の繊細で切ない青春ストーリー。感受性が豊かな少年少女の心の模様だけでなく、人の生と死、愛の根本もリアルに描かれていて、読後には豊潤な余韻を残します。

たった少しのきっかけが価値観や考えを大きく変えることがあるし、苦しさの中にも希望は必ず生まれる・・・。そう思わせてくれるのがドストエフスキー好きで知られる角田光代による本書です。立場の異なる女性2人の友情の中に人間関係の煩わしさと希望を描き、ドストエフスキー文学と同様に、人間の奥深さを感じることができるでしょう。

SNSでもたびたびドストエフスキーを賞賛している平野啓一郎によるSF小説。宇宙飛行士である主人公のスキャンダルが政治的問題へと発展していく物語です。人種差別、人工妊娠を政治的観点で描く点は、ドストエフスキーに通ずるものがあるでしょう。著者が提唱している「分人主義」も衝撃的です。