これが星新一の最高傑作！ショートショートの魅力が堪能できる本

収録作「殉教」は、霊界にいる死者と通信できる機械を発明した男の話。男は亡くなった妻との交信を行いますが、周囲の人々はなかなか信用してくれません。そこで男は自死して、自ら霊界から死の素晴らしさを訴えかけます。それからの人々の混乱した様子がなんとも不気味。背筋がヒヤッとする、スパイスの利いた物語です。

本書に収められている「新鮮さの薬」の主人公は、毎日を退屈に過ごしているエフ博士。そんな博士の前に現れた謎の男性は、退屈に効くという薬を売りつけてきます。その薬を飲むとどんなことでも楽しく感じられるのですが、それにはある理由があり・・・。星新一らしい、ブラックユーモアの効いた物語です。

本書に収録された「外郭団体」は、社会で起きているさまざまな事件とそれらに対する多くの訴えを扱った物語です。何かが起きると「国の責任だ」と訴えられる官僚が、悩んだ末に生み出したのは得体のしれない秘密組織。彼らの陰謀ということにして、次第にエスカレートしていく官僚のユーモラスな対応をお楽しみください。

やや長めのショートショートが11編が掲載された一冊。その中でも秀逸なのが「あの男この病気」。主人公の男性は、1年以内にある人物を見つけないと死んでしまうというサバイバルゲームに巻き込まれます。男性の行く末と結末は思いもよらぬ方向に進んでいき・・・。繰り広げられる命懸けの鬼ごっこは、臨場感も抜群です。

収録作「ゆきとどいた生活」は、人間が何もしなくても周りにある装置がすべてをやってくれる世界がテーマ。主人公が仕事に行こうとすると、装置がすべての準備をしてくれます。そうして会社に行ったとき、主人公が投げかけられる同僚からのひと言に誰もがアッとなるはず。ショートショートの真髄が味わえます。