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ミステリーなどよりも恐ろしい
2024/07/02 10:19
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投稿者:s-cachi - この投稿者のレビュー一覧を見る
クリスティの作品ですが、ミステリーではありません。
死体などは出て来ませんが、ある意味、私が読んだ中で最も恐ろしかった一冊です。
大陸鉄道の不具合によって砂漠の町で足止めを食らった老婦人が徒然なるままに自分の人生や生き様を振り返ってみるという内容です。
彼女はそれまで理想的な妻及び母親として家族に尽くして来た心算でいました。
しかし、もしもそれが愛情によるものではなく、自己満足や自己欺瞞によるものだったとしたら。
一旦疑い始めると勢いは止まらず、これまで自分と接してきた人たちの態度や言動を思い出すにつれて「もしかして私はあの人たちに嫌われ疎まれていたのでは」という考えに至ります。
そのまま自分の非を認めて周囲の人たちに謝罪し、態度を改めることが出来たなら、きっと幸福な老後を過ごすことが出来たでしょうが。
彼女がどちらの選択肢を取ったのか、作品の最後で明かされますが、この部分で私は最も恐怖しました。何しろ夫を始めとして彼女の周囲の人間は誰一人、彼女を対等の感情(是非はともかくとして)を向ける相手として見做していないのですから。
人は死なないけれど…
2023/09/26 10:04
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投稿者:もちもちの木 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリの女王、クリスティの作ですが、特別な事件が起こったり人が死んだりは一切しません。しかし並の殺人事件モノよりよっぽど怖い本。最初は主人公ジョーンの上から目線なところにイラッとして、「いやいや、アンタ客観的に見たらソレやばくない?」と思うのですが、だんだん「…あれ、自分にもジョーンみたいなとこってあるんじゃない?」とジョーンを笑えなくなってくる。いつの間にかジョーンと一緒に、砂漠の真ん中でポツンと脳天を太陽にジリジリ焼かれながら今までの自分の所業をジョーンに重ね合わせ始めている。しかし最後にジョーンが出した答えは…。ゾッとするけどある意味リアル。時代も国も違うのに、こんなに共感できるのってどうしてなんだろう。
謎を自ら探して読み耽る…
2022/08/28 16:30
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投稿者:PJ64 - この投稿者のレビュー一覧を見る
実年齢よりも若く美しい裕福な主婦のモノローグで、ある家族の生き様が語られる。
ポワロとミス・マープルを読んできたので新しい視点に驚きよりも引き込まれました。
殺人やトリックが無いのにミステリアスで謎めいていて
自分で謎を探して「ああ~、そうだったのか」と納得したりして。
最後まで控え目なドキドキ、どちらに展開するのかと一気に読み終わりました。
面白かったのは間違いない。
モヤモヤは残るけれど。
人生という謎に答は一つでは無い、と実感する小説でした。
さすがアガサ・クリスティ。何度も脱帽です。
ただ………愛されているヒロイン。焼け野原で一人生き残る。
それを支えるヒーロー、、愛、してるんですね。1番の驚きでしたが。
最後まで読むと怖い作品
2022/06/19 09:07
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
クリスティの異色作。最後はどういうオチになるんだろー?と思いながら、読みました。娘を見舞ったバグダッドからの帰りの途中で、列車に乗り遅れたため何日か足止めをくらい、その間、夫や子供についてあれこれ思い巡らす一人の妻の空想がメインのストーリー。自分が良かれと思ってしていることが、実は他人の思想や考えを踏み躙っているということはよくあること。最後のエピローグまで読んでしまうと、怖いなぁと思わず、考えさせられる内容でした。
身近にある世界
2021/10/06 18:46
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投稿者:マリコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
アガサさんの作品はこれまで見たり、読んだりしてきたけど、最高傑作かもしれない。母方の家庭環境そっくりだったので。
邦題が名訳
2021/08/22 09:53
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投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
確か原題はAbsent in the springだったと思うが、それをこの邦題にしたのは名訳だったと思う。イギリスの上流階級に属する女性が、娘を見舞ってバグダッドを訪れそこから帰国する中で回想する家族との一見平和な確執の日々。最後の一文でそれがひっくり返されるわけだが、勘違い小説とでもいうのか面白く読んだ。ちなみに殺人事件は起こらない。
解説も読みどころ
2021/05/07 09:14
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投稿者:アキノ - この投稿者のレビュー一覧を見る
スゴ本の人がクリスティ最恐と評していたので読んでみた。否応なく自分を見直さずにはいられない本であり、万一これを読んで、主人公みたいな人いるよねーこわいねー、とかいう人がいたらそいつが一番ヤバいやつである。毒親を描いた本としても読めるが、毒親にならずにすんだ可能性はあったと思う。聞きかじった限りでは、もっとどうしようもなく恐ろしい毒としか表現しようがない親もいる。どうすれば毒親にならずにすんだかは、栗本薫の解説を読めばわかる。どうでもいいけど、中島梓ではなく栗本薫なんだな。
独善は自分らしさの現れ
2021/04/17 13:48
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投稿者:BenchAndBook - この投稿者のレビュー一覧を見る
独善的な人生の変遷。でも独善であることにすら気づいていない。しかし何かのきっかけでそれを思い知らされ、気付く事に遭遇する。強い悔悟の念に囚われる。これからは悔い改めた人生を送ろうと誓う。
しかしその思いに至った環境や意識から解放され日常に戻ると、その反動によって何事もなかった様に気持ちのバランスを取ろうと振る舞う。私にも同様の経験があります。人間ってそういうものかな〜と思う。
自分に関わる他者も又、そうなのでは?
独善はいい変えると、自らの価値観がそうさせるのであって、自分らしさでもあると思います。日常に戻っても、フラッシュバックの様に思い出され、きっとその後の人生にじわっと生かされるのでは。こんな事を感じさせてくれた、読みやすく面白い本でした。
推理モノでない
2021/02/27 08:11
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
アガサ・クリスティーの作品。でも、ストリーのテンポの良さ、筆の運びかたは、やはりクリスティーだと思う。第二次世界大戦前のどちらかというと女性の地位の低い時代の、ある女性の物語。ラストが……
時間があるとつい余計なことまで考えてしまいます
2021/01/20 15:53
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
アガサ・クリスティーといえば、名探偵ポアロとミス・マープルの2人の名前がすぐさま出てくるほど、2人が活躍するミステリーは有名だし、何より面白い。
しかし、それ以外にこの2人が登場しない「ノンシリーズ」がある。
例えば、『そして誰もいなくなった』もそのうちの一作。
さらに、「ノンシリーズ」の中に、アガサがその名前でなく、「メアリ・ウェストマコット」という名前で発表した何作かがある。それらは特に「女性向けロマンス」とも呼ばれたそうで、この作品もそのうちのひとつである。
しかも、この作品は世評が高く、『アガサ・クリスティー完全攻略』という著作のある霜月蒼氏によれば「未読のひとは即座に読むべし」というほどである。
実はこの長編はほとんど同じ場所での同じ人物の回想で進められていく。
主人公のジョーンはバクダッドに住む下の娘が体調を壊して見舞いに出掛けた帰りの途上、悪天候のせいで列車に乗り遅れ、砂漠の中の寂れた宿に一人取り残されてしまう。
テレビもない、手元の本も読んでしまった彼女は炎天下の砂漠に散歩に出るしかない。
そんな彼女の頭をよぎるのは、今まで過ごしてきた夫とのこと、息子と二人の娘との確執、さらにさかのぼって女学生の時の思い出。
つまり、することのない彼女は人生で初めてといえる、自分自身と面と向かい合うことになる。
そして、気づくのだ。自分が正しいと思っていたことが誤りだったと。
しかし、最後に彼女がとった行動というと…、女性の読者なら彼女の気持ちをわかるのだろうか。
女性は愚かなのか、それとも賢いのだろうか。
最も見えないもの
2020/11/06 20:27
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投稿者:うみしま - この投稿者のレビュー一覧を見る
アガサクリスティーの推理小説は幼い頃から慣れ親しんだものですが、心理サスペンスとも言える本作は初めて読みました。ブックツリーに、大人になったからこそわかるということが書かれていましたが、確かに妙齢の女性ならば痛いほどわかる心理の揺らぎなのではないでしょうか。人は他人のことはよく見えるのに、なぜ自分のことは見えないのでしょうか?誰もがジョーンを責めることができないと思いました。そして、夫であるロドニーのあとがきは、冷えびえと、心に突き刺さるものの、でも、あなたにも責任の一端はあるとも反論したくもなります。そして、あなたもジョーンと同じ感覚を持っていないとはいえないのでは?とも。
底なしの怖さ…でした
2020/03/08 08:49
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投稿者:pizzaco - この投稿者のレビュー一覧を見る
書店で何気なく手に取った本だった。それが、こんなに恐ろしい物語だったとは。
妻として、母として、一家の女主人として、完璧な私。と信じて疑わない主人公。
読者にはその綻びが少しずつ見えてくるが、彼女の
信念は揺らがない。
伸びやかな感性を彼女はどこで失ったのだろう。自分の価値観に合わない人を憐れむほどに。
これは彼女の物語であり、私自身の物語だと気づいたが、私は変わることができるだろうか。
面白いです。
2019/12/05 10:11
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投稿者:スッチー - この投稿者のレビュー一覧を見る
とても面白いです。良いです。興味のある方にはオススメです。
著者の、女性としての鋭い視点
2019/11/03 16:58
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投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
うーん、よくこんな作品が書けたなぁ、と感心、頻りです。アガサの人間描写は定評がありますが、鋭すぎて、もう刺身包丁レベルです。後半からの懺悔というか、思い起こしが、言い得て妙味があると思います。
家庭を持つ母親にとって、ジョ-ンと同じ経験は多かれ少なかれあると思います。母親という女性に限らず父親とて当て嵌まります。私の場合は、後者を感じました。恐れと言い知れね不安を憶えました。
家族の和と愛情とを大切にしたいと心に刻みました。
アガサの、心象描写の差し迫り感とストーリーの運びの滑らかさに脱帽しました。
呪いの言葉
2019/10/18 11:33
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投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
表紙がいまひとつ。ペディキュアにサンダルとはお堅い女であるジョーンのイメージに合わない。
この物語はロドニーからジョーンへのモノローグで終わる。
君はひとりぼっちだ、と。
これは彼女に人生の大事な部分を奪わた夫の呪いの言葉だ。
夫も子供達もとうにジョーンに絶望して諦めている。
家庭内の暴君だったジョーンには大切な人たちとの間に心の繋がりなどないのだ。
ジョーンは自分の過ちに気づきながら、全てに目をつぶる精神的な籠城を選んだ。
ブランチも貴族の女性も彼女を新しい道に進むきっかけになってくれる存在だったのに。
もう彼女には籠城戦に必要な援軍さえ来ない。
君はひとりぼっちだ。
ここまで優しく投げやりで絶望に満ちた呪いの言葉を私は知らない。