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地味だけど技巧が光る味わい深さ。答えがわかっても、解きたくなるクイズ。
2011/12/13 17:58
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:きゃべつちょうちょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリーはあまり読まないのだが、クリスティーはときどき読みたくなる。
これはそのかわいらしいタイトルと新訳の限定カバーということで、手にとった。
マザーグースになぞらえた重要参考人たちとポアロのやりとりで、
16年前の殺人事件の真実を追う、クリスティーの回想殺人もの。
探偵ポアロの元に現れたのは亡くなった母親とおなじ名を持つ女性。
彼女は一通の手紙を手に固く握りしめていた。
夫殺しの罪により、獄中で病死した母が娘だけに書き残した手紙。
そこには、わたしは夫を殺してはいない、と書かれていた。
母・キャロラインの無実を証明すべく、女性は事件の解明をポアロに依頼する。
ポアロはまず当時の裁判の関係者に会って、参考人を洗い出していく。
夫が殺されたその現場にいた重要参考人は、5人。
5人はいまも存命中で、直接会いに行くことができる。
獄中で死亡したキャロラインのほかに、犯人になりえる可能性がある5人。
マーケットに行った(株の売買で成功した)子豚。
家にいた(引きこもりがち。趣味は薬草学)子豚。
ローストビーフを食べた(欲しいものを手に入れた)子豚。
何も持っていなかった(質素で堅実な)子豚。
ウィーウィーと鳴く(犯人はキャロラインではないと唯一主張する)子豚。
このうち、マーケットと家にいた子豚は兄弟であり、キャロラインの幼馴染みだった。
株で成功し、性格はすこし攻撃的な兄と、ひかえめだが時に大胆な弟。
ローストビーフを食べた子豚は、キャロラインの夫の愛人だった。
富と美貌に恵まれ、自分の欲しいものは必ず手に入れようとする。
ウィーウィー鳴いている子豚は、キャロラインと父親違いの妹。
つまりキャロラインの母が離婚して再婚したときに生まれた妹・アンジェラである。
アンジェラは幼くして障害を持ち、〈ウィーウィー〉と鳴かずにはいられなかった過去が。
何も持っていなかった子豚は、アンジェラの家庭教師。
まじめを絵に描いたような女性だった。
ポアロはこの5人に接触し、事件当時の記憶を掘り起こして書いてくれ、と依頼する。
そしてそれぞれが書いた手記をふまえて、5人を一堂に会し、質問をかける。
この最初の接触のときの会話、手記、質問という構成のながれは見事である。
最初の接触時には得られなかった当人だけが知る事実が、読者を困惑させていく。
殺人がおこなわれたとき、誰が何を思い、そしてその思考はどこからきたのか。
どういう因果関係でそれを思うに至ったか。
事件そのものではなく、そこに至るまでの心理を、
手記というかたちで無理なく描き切り、キャラクターの深部を探る。
そのキャラクターの知られざる一面が否応なく浮き上がる。
読んでいくうち、あれ?こいつもあやしいな。こいつも・・・・・・となってくるわけだ。
そしてそれぞれ手記のなかで語られるいくつかの類似点。
5人のうち、だれかひとりが嘘をついているわけだけれど、
そのことの辻褄を合わせてしまう、みんなの類型的な思い込み。
たった一片の言葉の切れ端を頼りに思考をめぐらせ、
この思い込みを打ち破っていくポアロの推理が冴えわたる。
現場に足を運び、関係者の話を頼りに、当時の風を感じ、においを嗅ぐポアロ。
いにしえの音楽や物語を現代に生き返らせることができるように、
16年まえの殺人事件もポアロによりよみがえるのだった。
小説が中盤にさしかかろうとするところで、ポアロとある男性の会話が書かれる。
「事実というのは、誰もが認めるものを指すのだと思っていましたが」
という男性に対し、
「そうです。だが、事実の解釈となると、また違ってきます」
と答えるポアロ。とうぜん男性はぽかんとしてその意味を求める。
ポアロは歴史上の事実であるスコットランドのメアリ女王について書かれた本を例に、
(たとえば殉教者であると書かれたり、聖女である、または淫乱である、策略家である等)
じつに色々な解釈があり、読者は好きなものが選べるのだ、と答える。
ポアロのこのせりふは、じつにこれからの事件の謎ときのゆくえを暗示していたのだ!
(わたしは、読み終えたあとに深くそう思った)
ちなみに、ここで使われているマザーグースをしらべてみると、
母親が幼児をあやすときに歌う歌のひとつであり、
子どもの親指をつまんで『この子豚はマーケットに行った』とはじまり、
ひとさし指をつまんで 『この子豚は家にいた』とつづき、
小指にきたら ウィー、ウィーと豚の鳴き声をまねして足の裏をくすぐるのだそう。
小指の子豚の歌詞には『この子豚は鳴く、ウィー、ウィー、ウィー』のあとに
『ぼくは迷子になっちゃった』というオチがつく。
(講談社文庫 谷川俊太郎訳「マザー・グース」1より)
新しい父親と、そのもとに生まれた妹。激変する家庭に育ったキャロラインの闇。
この歌詞のオチは小説に登場しないけれど、
複雑な環境のなかで自分を見失いそうにならざるを得なかったキャロラインを
暗示しているような気がするのだ。
五匹の子豚
2020/10/11 19:46
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
登場人物が少なく、回想シーンばかりなので地味なのかと思いきや、心理描写がものすごかったです。傑作です。
全員怪しい
2019/09/20 20:42
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
例によって関係者全員が怪しい。地味だけれども最後はやはり驚きの結末でした。是非未解決事件の犯人は全員捕まってほしいものです。
あなたは、真の犯人にたどりつけるだろうか。
2019/02/20 21:12
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
アガサ・クリスティーのミステリーの案内本として霜月蒼さんの『アガサ・クリスティー完全攻略』は欠かせない一冊で、その中で、これは「未読の者は書店に走れ!」という惹句まで付いた高評価の作品です。
「あまりに見事。完成度はおそろしく高い。疑いなくクリスティーのベスト」とまで書かれています。
私の感想としては、「ええい、じれったい、早く犯人教えてよ!」となります。
つまり、途中を飛ばしてでも、結論を読みたくなる。そんな作品でした。
これはアガサが1943年に発表したエルキュール・ポアロもののミステリーです。
ある時ポアロのもとに不思議な捜査依頼が届きます。
それは16年前の夫殺しで極刑となった妻が本当は無実でなかったかを調べてもらいたいという依頼でした。
依頼人は加害者と被害者の一人娘。獄中で亡くなった母が最後に娘に宛てた手紙には「自分は無実」と書かれていたという。
しかし、当時の状況からいって、妻の犯行は揺るがないもの。さて、ポアロはどう動くか。
当時この事件に関わったのは加害者と被害者を除けば五人。
タイトルの『五匹の子豚』はマザー・グースの遊戯の数え歌だという。つまり、この五人が五人ともに怪しい。
しかし、真実は一つでしかない。しかも、16年前にその真実は裁かれているはず。
そこポアロは当時の弁護士や刑事を訪ね歩き、この五人の関係者にもあっていく。
そして、五人に当時の話を文章にまとめてもらう。
真実は一つ、しかしそこに五つの話は生まれる。
途中で犯人がわかったと思いましたが、それはあまりにも単純すぎて、外れてしまいました。
あなたは、真の犯人にたどりつけるだろうか。
15年前の真相は果たして分かるのか?
2015/08/23 11:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:historian - この投稿者のレビュー一覧を見る
クリスティーのポアロ作品によくある、何年も前の事件をポアロが“灰色の脳細胞”を使って解決に導く、というあらすじ。ただ今回は事件自体は15年前(故に現場に残っている証拠は皆無)、おまけに明らかな証言と状況証拠があったため当時の捜査でも裁判でも犯人は被害者の妻と断定されていた、というケース。ポアロは彼女の無実を信じるその娘に依頼され、5人の容疑者を訪問して真相を導き出す。何年も前の事件が名探偵の活躍で真相が判明する、という内容は、事件として難解なだけに推理小説の中でも一段と味わいが深いように感じる。この小説はそれに加えて容疑者たちの証言(それも細かい嘘が混じっていたりする)のみから心理学的な洞察で真実にたどり着く過程が読み応えがあると思う。
そうきたか
2021/01/27 19:11
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投稿者:ケロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
16年前の事件の捜査を依頼されたポアロさん。
いったいどうやって手掛かりを探していくのかと思えば・・・。
見るべき場所を見ることができれば、真実は語りかけてくれるのですね。
文化と時代
2020/05/16 14:31
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投稿者:hid - この投稿者のレビュー一覧を見る
どうしても、作品の舞台となる場所の文化的・時代的な違和感がぬぐえない。
違和感ていうか、自分が背景を理解できてないだけの話なんですが。
作品としてはおもしろいです。