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誰が侵入者なのか?
2002/08/16 19:31
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ごんだぬき - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み終えて、切なくなった。名作「地球最後の男」や「呪われた町」などを
思い出した。かつて「ピープル」シリーズへのオマージュとして、泣くほど
素晴らしい名作を執筆された恩田陸氏だが、今回もやはり一筋縄ではいかなかった。
立場を替えれば「誰」が「侵入者」なのか。「誰」が平和を乱しているのか。
それは見方によって、見事に反転する。まるでフィルムのネガのように。
それでいて、ひたひたと忍び寄る静かな恐怖。恐怖であるはずなのに、押し寄せてくるのは不思議な安堵感。交錯する自身の、今までの人生、想い。
自分は自分なのか……。
自我の確立は何歳になろうとも、非常に複雑で難解だ。
この小説は一見、侵略モノテーマに見えながら、その実、深く深く「人間」を描いている。思春期の若者だけではなく、あらゆる世代にも共通するであろう、「孤独」と「疎外感」。そして「共同意識」。
日本人による日本人社会を描いた作品とも言えるかもしれない。
アメリカ人にはこの静かな情趣を描くのは、ちょっと難しいかもしれない。
小野不由美氏の「屍鬼」と比べて読むと、それぞれの作品の違いが見えてきて、とても面白く感じた。「似て非なるもの」である。ただし、どちらも素晴らしい作品だという共通点を除けば。
手に汗握る
2017/02/16 16:49
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mino - この投稿者のレビュー一覧を見る
仕事の合間に夢中になって読んだ一冊。恩田さんお得意のミステリ・ホラー作品。だいぶ前に読んだんで細かいストーリーはだいぶ忘れてしまったんですが、とにかく怖くてドキドキした。水辺のまちで人がだんだん消えていく・・・かと思いきや突然戻ってきて、特に体の異常は訴えないし、いっそキョトンとしている。なんかそういうのって余計恐怖を煽りますよね。ラストは恩田さんらしい尻すぼみというか、「あれ?」っていうなんとなくスッキリしない終わり方で(そういう終わり方が好きな方らしいですね)ちょっと納得できないんですが(まぁユージニアよりはマシ)、読んでる間中楽しませてもらいました。結局主人公たちはあちら側とこちら側に分かれてしまったのかどうか・・・
そしてみんなひとつになった
2003/11/01 21:31
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:piyota - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品の舞台となる箭納倉の空は、いつもどんよりと曇っていて、
町を縦横に走る水郷から重苦しい湿気が立ち上り、そして
雨が降る。
恩田陸さんの軟らかい語り口は、その箭納倉の水路をしっとり
と描きながら、徐々に徐々に怪異と恐怖を浮かび上がらせて
くれる。だがその怪異にとりくむ4人の主人公たちのキャラクターと
感情の機微が、とても細やかに書き込まれている。海外のB級ホラー
映画にかならずでてくる、危機に巻き込まれてただただ騒ぐだけの
間抜け役は、誰も出てこない。そして謎を超人的に解き明かす
スーパーヒーローも出てこない。ありきたりの人々が、だがなぜか
底抜けにユーモラスな温かみのあるキャラクターが、直面している問題を
たんたんと記録していこうとする…その視点がすごく怖い。
ラストはとても切ないです。恋愛ホラー小説といってもいいでしょう。
とても控えめにしか表面に出てこないかもしれませんが、きっとこの
物語は恋愛小説なのです…
静かに怖い
2023/05/31 22:58
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投稿者:a - この投稿者のレビュー一覧を見る
ひとつになることに対する拒絶と委ねの両視点からの捉え方とかそれにともなう人間の戦略とかの話をしてる部分がかなり興味深く、バタイユの不連続性のはなしを思い出しておもしろかったです。
やっぱり、人間はコワイ
2004/06/30 18:14
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:luke - この投稿者のレビュー一覧を見る
何と言って良いのやら…。恩田陸を初めて出会ったのが球形の季節、久しぶりに出会えた二重丸と次の出会いを楽しみにして来ましたが、やっと再会できたのが「月の裏側」でした。思ったとおり、いやそれ以上に楽しませていただきました。桐野夏生、宮部みゆき、との出会いにそっくりです。「ビビッと来た」ってヤツですね。(^_^)
元大学教授三隅協一郎の誘いで水郷の町「やなくら」へ教え子の塚崎はやって来た。協一郎から最近この町で突然失踪するものの数週間後に何事もなく戻ってきている事件が数件起きた事を聞かされる。その間の記憶は無いらしい。協一郎と懇意の新聞記者高安を紹介され、3人で謎を推理し始める。失踪者の共通点は町を縦横に走るカッパ伝説がある堀で、失踪者は掘り割りに居住していた。そんな時に協一郎の一人娘であり、塚崎の学生時代の後輩にもあたり、京都の料理屋へ嫁いでいた藍子が帰省する。そして、藍子から協一郎の兄夫婦も昔失踪して戻ってきた経歴を持ち、藍子は戻ってきたのは別人だと聞かされる。誘拐され戻された時には元の人間じゃない? 何がこの町で起きているのか? 誰が、何故?
いつも水を蓄え静かな流れを作りながら町を縦横に走る水路は舟での観光や生活道路の役目も持っている。一見のどかそうな水路に何か秘密が隠されていそうであり、ひきりなしに降る雨と相まって水が得体の知れない不気味さを蓄え始めます。刻々と調べが進むにつれ、推理が進むにつれ、浮かび上がってくるものは正体不明の見えない力、人間が対抗できないような大きな力。雨が町を包み込むように降り注ぎ町を飲み込もうとし始めるのだ。…と、徐々に見えない恐怖を感じるの同時にそれを検証する会話も十分コワイです。月の裏側は果たしてぼくらが想像しているようなものなのか? 当たり前に存在しなくてはならないものが果たして当たり前に存在しているのか? いや、見えているものさえ、その存在は確かなものなのか? ぼくらの意志は本当に自分の意志なのか? …こっちの方が数倍もコワイかも知れません。
月の裏側
2022/07/18 10:12
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投稿者:なみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
舞台のモデルは、柳川かな、と思いながら、昔乗った柳川川下りなど思い出しつつ、読んだ。
家の周りの水溜りが、大雨でどんどん大きくなって繋がっていき、道路の水溜りへ、そして堀へと流れ込み、そこにはあれがいて…。
現実的でないし、漠然としたあれの話なのだが、なんだかリアリティがあって、ゾクッとする。藍子がコンビニで事故を目撃した時のことなど、想像すると鳥肌ものだった。
しばらくは、夜の黒々とした水溜りから、何か出てきそうな気がしてしまいそう。
箭納倉の10日間
2020/02/16 08:47
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投稿者:さくら - この投稿者のレビュー一覧を見る
三隅協一郎、多聞、藍子、高安の四人が巻き込まれる壮大なミステリー。協一郎は何故、多聞たちを箭納倉に呼び寄せたのか…。知らぬ間に自分も彼らと箭納倉をめぐる水路と降り続く重い雨の中にいる。情景が身に染みついたころから、この街で起こる不気味な現象に引き込まれる。自分だったらどのように現実を受け止めるだろうか。
ダークサイド
2017/01/28 19:19
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投稿者:ねこる - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み進めるうちに自分も季節や空気を感じるほど、情景描写がとてもうまく後半は次々読み進めてしまいました。
何かが起こりそうで起きないようで、、『何か』ってのがスティーブン・キングの小説チック。
いろんな解釈がありそうな小説でした。
ぬらーん
2016/12/03 06:52
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投稿者:ひややっこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
にゅるん、にゅらん、ぬらーん、ひたひたひた・・・。 浸食する側とされる側、そして統合されてしまう。敵は味方、味方は敵?敵と味方はかなり近い。というようなテーマは「オセロゲーム」でもありましたね。統合されていく物語。終わり方もすっきりではなくにゅらーんとしています。
恐怖の裏側
2004/03/29 23:43
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投稿者:中乃造 - この投稿者のレビュー一覧を見る
水の町、箭納倉にて。
失踪した人が、ある日ひょっこり帰って来る。けれども、消えていた期間のことは一切覚えていない。そんな事件が相次いで、登場人物達が調べ始めると。
得体の知れない、あるものの存在に気がついてしまう。
ソイツは、徐々に、しかし確実に、人々の平穏な日々に浸食してくる。その正体は何?
——そして、私は本当に私なの?
と書くと、いかにも現代ホラーだ。恐るべき大仰な敵、それと闘う人々や。そんなものを想像していると、肩すかしを食らうことになる。
確かに恐ろしいのだけれども、その恐怖は迫ってくるのではない。読者を包み込んでしまうのだ。
幻視的な独特な文章、不思議な魅力のある登場人物。それらは確かに、この作品が持つ包容力の一端には違いない。
しかし、一番の原因は、そこはかとないけれども物語の底に確かに流れている、優しさのせいなのだ。そう、この物語には優しいホラーという形容詞が一番似合う。
得体の知れない恐怖にどきどきしながら、心のどこかで安心を感じてしまう。その不思議さに戸惑いながら読み進めていくうちに——
気を緩めていると、すっかり包み込まれてしまって、後戻りできなくなっているかもしれない。ご注意あれ。
文学作品
2020/09/11 22:29
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投稿者:たま - この投稿者のレビュー一覧を見る
正しく文学作品のような読み口。
ミステリーかと思ったらSFホラーだった。…ホラー?
穏やかに淡々と、日常に滑り込む。清流に流れ込む泥のように、1頁目に真水だったものが、人が、読了後は茶色く変色してるような。そんな物語。感想が難しい
SFホラー?
2018/12/05 08:43
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投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『月の裏側』はどちらかというとホラーだと思うのですが、途中から得体の知れないものに対する恐怖は消えて、SF的な人類の進化みたいな展開になります。
小説の舞台は福岡県の水郷都市・柳川をモデルにした箭納倉で、そこでは昔から人が唐突に失踪し、しばらくすると失踪期間中の記憶をなくして何事もなかった戻ってくる事件が頻発していました。
ごく最近消えたのはいずれも掘割に面した日本家屋に住む老女で、彼女らも何事もなかったかのように1週間くらいで戻ってきました。事件に興味を持った元大学教授・協一郎はかつての教え子・多聞と新聞記者の高安を呼んで真相の究明に乗り出します。途中で里帰りした協一郎の娘・藍子も調査に加わります。
「あれ」は水の中からやってきて、生き物をさらっていき、入れ替えまたは作り変えて元に戻すらしい。多くの住民がすでに「盗まれて」いるかもしれない?!という具合に中盤までどんどん緊張感が増していき、ついに「そして誰もいなくなった」的な状況になります。取り残された協一郎、多聞、高安、藍子らは町を出ることも考えましたが、結局事態がどこまで広がっているのかわからないため、その場に留まり記録を残すことにします。その間の薄気味悪い状況はホラーというよりは終末世界のようです。彼らは記録はしますが、戦おうとはしません。むしろ「あれ」を受け入れる方向に向かいます。「あれ」の正体は最後まで明らかにはされません。その謎めいた感じがいかにも恩田ワールドという感じです。読後感はあんまりよくないですね。
ホラーっぽくて
2016/10/21 15:36
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投稿者:みるちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
こわいけど続きが気になって読んでいましたが、結局何かわからないまま終わりました。恩田さんの作品は好きやつはとても好きなんですがこれはちょっとって思いました。