朝ドラよりも面白い
2017/10/13 08:36
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第39回直木賞受賞作。(1958年)
今や157回を数える直木賞だから、この作品がどれだけ古いかわかろうというもの。
そして、このあと『白い巨塔』『不毛地帯』『大地の子』といった社会派長編小説を手掛けた山崎豊子の出世作といえる作品である。
選考では大方の委員の評価を集めたようで、中でも川口松太郎は「今度の作品中では、どれよりも優れているような気がして自信を持って推薦」と絶賛。海音寺潮五郎は「材料を豊富に用意しておいて、速射砲的にポンポン撃ち出して行く手法が面白い」と評価するも、小島政二郎は「彼女の成功のイキサツが実にイージー・ゴーイング」と厳しい点をつけている。
この長編小説は現在の吉本興業の創業者吉本せいをモデルとした女一代ものである。
大阪船場の老舗に嫁いだ多加だが、その夫吉三郎の道楽がひどく、店もつぶれてしまう。そんなに道楽が好きならいっそのこと好きな芸能興行をしてみてはと吉三郎にもちかけたのが、多加の商いの始まりであった。
少し芽のでてきた商いに吉三郎の道楽がまた顔を出し、ついには愛人の家で命をおとしてしまう始末。
その葬儀、二人の夫にまみえないという覚悟の白い喪服を着て、多加は商いへの覚悟を決める。
ここまでがおよそ三分の一。これから先、多加がほのかに想いを寄せる男の登場もあるが、それをふりきっても商いにまい進する女性の強さが見事に描かれて、面白かった。
桂春団治やエンタツ・アチャコといったお笑い界の名人とのエピソードもうまくはめこまれて、満足の一編である。
細腕繁盛記
2013/11/16 16:19
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ジミーぺージ - この投稿者のレビュー一覧を見る
起承転結がハッキリしていてとても読みやすく痛快な細腕繁盛記です。
とにかく、男っぽいお金の出し方、使い方は爽快そのものです。
しかも、使い方が無鉄砲そうに見えていて、実に思惑があり、
これが次々に成功していくのは、読んでいて非常に心地良いです。
商売をされている方は是非読んで下さい。
吉本興業の女興行師、吉本せいをモデルにした作品。
2001/07/11 03:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みんみん - この投稿者のレビュー一覧を見る
吉本興業の女興行師、吉本せいをモデルにした作品。寄席道楽で呉服店をつぶした夫に妻の多加は、寄席を商売にすることを勧め、場末の寄席を買いとり、席亭となる。
多加の働きで寄席の経営は順調であったが、次は夫が女道楽に手を出し、妾宅で死んでしまう。多加はあの手この手を使い、金貸しの老婆に金を借り、大師匠たちを寄席に引き抜き、果ては安来節のスカウトのために自ら島根に足を運ぶなど、ど根性で次々と寄席を作り出していく。
大阪の女商人のどんどん突き進んでいく姿に、圧倒され、女性の強さやど根性がものすごいものだと思わされた。
山崎豊子氏の長編2作目。もうデビュー当時からゆるぎないリアリティと面白さ。
2021/06/06 14:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
故・山崎豊子によって描かれた、吉本興業の創業者・吉本せいをモデルにした女性の一代記。
NHKの朝ドラで放映された「わろてんか」も同じ吉本せいをヒロインとして描かれたドラマであったことで興味を持って読みはじめたが、物語の印象はかなり違う。
大阪という生き馬の目を抜くような商売の世界で、しかも商売のアイテムは興業。NHKの朝のドラマでは描けないダーティな話も多数。しかし、そこを乗り越え、利用して、商売を成り立たせてゆく様は面白く。一貫して、徹底取材を通して、リアリティを追求しようとした山崎豊子氏らしい作品と思う。
大看板が実名ででてくるのが楽しい
2019/01/28 14:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
今、朝のテレビ小説で放送されている「笑ろてんか」は吉本せいをモデルにしている。そして、この「花のれん」も吉本せいをモデルといているが、やはり前者は朝のドラマであるからかなりソフトにまとめられており、後者のように旦那が愛人宅で腹上死するといった場面はもちろん登場しないし、そこまで道楽者にも描かれていない。「花のれん」の面白いところは、そのころの大看板であった桂春団治、桂文枝、エンタツアチャコらの名前が実名でポンポン飛びだしてくるリアル感であろう。そして、あのバカ旦那が早死にしてくれたればこそ今日の吉本があるのかなと思ったりもした
度胸でっせ
2004/04/05 13:11
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏川 - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦前の芸能の発信地であった「寄席」舞台にした物語。
といっても出演者である芸人さんではなく、寄席の経営者の物語である。
商売というものは、これまでの業績のうえにあぐらをかいていては凋落するということが印象深かった。
この物語の主人公のように、新しいものをより早く取り入れること。
そして、人間としての人情を失わないことが何より大切なのだと感じた。
振り返るに今の世の中は、そういう意味では無味乾燥であるような気がする。
商売人生
2015/09/23 19:13
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マツゲン - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み終わってから改めてこの小説は、主人公の『商売』人生だけにスポットを当てていると思います。
物語の始まりは嫁ぎ先での節季の日。取引先に払う金がなく、旦那は遊び歩き、借金は膨れ上がりとうとう店が立ち行かなくなってしまう。
しかしここから、どうせなら旦那の好きなことを本業にさせようと寄席興行を始めることによって主人公の『商売』人生が始まります。
時にはなりふりかまわず、時には少ない物資でアイデアを閃かせる、また時にはどんと一発勝負に出る。大阪商人すごいでっせ。
吉本興業の歴史
2021/06/23 16:41
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:deka - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本が吉本興業の初代社長がベースになっているということで驚いた。
今お笑い芸人の事務所は色々あるけれどひと昔前は吉本がかなり占めていて、
その分色々な問題が話題にもなるが、地方から芸人を見つけ出したり、震災のときには東京へ見舞にいったり、、、初代の女社長の人・世の中を見る目が違ったからできたことなのか~と感心した。
大阪女
2017/10/02 18:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者の独特な世界の女性像が活きている作品。モデルがいたにせよ船場女の小気味よく純粋な生き方がよく描かれている。

