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情状酌量の余地、ありやいなや、今日の犯罪。
2009/03/17 13:38
9人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み終えて最初に感じたのは違和感だった。
今時、妹や母を守るために父親を殺害する殊勝な(?)中高生がいるとは思えないし、理由があって人殺しをするというよりはさしたる動機も意味もなく、突発的に殺人を行う悪質な犯罪が急激に増えている今日の「青少年犯罪」とはあまりに大きな温度差があるからだ。
少年は思いやりなんてなまぬるい「思い」から父親を殺害したのではないし、思いやりが動機なら人を殺してもよいというわけでは、ない。
が、彼が読者の同情なり涙なりを誘ったことを考えれば・・・また世の中に「情状酌量」などという言葉があることをふまえれば、犯罪は周囲の同情によって許されることになる。
勧善懲悪が主体となっている犯罪小説の多くは「悪者」の心情やいきさつは描かれない。たいてい善=犯罪者がそうしなくてはならなかった経緯を、その心情の吐露から周囲の同情的な反応から社会的な反応まで多面から描かれる。そして読者は彼が悪者を「殺されてもしょうがない存在」と思うところから犯罪=殺人が始まる。正義の鉄槌だ。
あの時はああするしかなかった・・・そういう認識を読者に認めさせることが大前提になっている、そんな時代が本書が生まれた「当時」だったのだろう。
少し前大ブレイクした「DEATH NOTE」の主人公ライトは自らを神とするべく、そして世界を平和へと導くべく、死神のノートを利用して次々と悪を排除する。罪の意識を一切介せず殺害というか、始末し続ける。
彼には「こうするより他なかった」という弁解も苦悩の形跡もない。つまり犯罪をおかすまでの経緯がぶっとんでいる。よって世間の同情や感情や世論の介入する間がどこにもない。これぞ今日おきている凶悪犯罪ではないか?
私は犯罪に理由があればそれでよいといっているのでは、もちろんない。
けれどこうした作品を目にすると、その「理由」に安堵すらするのだ。
殺した相手が誰であるかは関係ない、人を殺したという事実だけが一生自分を攻め続けるのだと少年は言っている。
罪の意識といってしまうには軽いかもしれない。人を殺すと言うことの重大さを、彼は感じている、背負っている、押しつぶされそうになりながら生きている。
そうした重みを感じられる人間が、今少なくなっているのではないかと思う。こうするしかなかった、から こうすべきだった への転換。
自己の欲望が先走る世の中に、本書はもう一度人間らしさを訴える。
新しい感覚だった
2003/04/24 20:16
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:じりくん - この投稿者のレビュー一覧を見る
貴志祐介さんのことは、『クリムゾンの迷宮』を読んで知っていた。
あの作品は、角川ホラー文庫だったから、この貴志さんという著者は、ホラー専門の人なのだろうかと、ずっと思いた。
「貴志祐介さん原作の、『青の炎』が映画化」と聞き(そのときは、まだ読んでいなかった)、ああ、あの人の作品かと思っただけだった。
内容は、未成年の少年が(高校生が)、完全犯罪を行うという作品。まず、この『未成年』という部分に惹かれた。自分も未成年で、この主人公はどういう経緯で犯行を行うのだろうかと思った。
殺害目標は、無理やり家に住み着いた義父。傍若無人に振舞う義父は、秀一(主人公)の母だけでなく、妹までにも手を出す——
この小説のすごいところは、主人公に共感できるというところだ。主人公の秀一が犯罪を犯すのだが、読み手の自分は、ずっと「頑張れ」と秀一を応援していた。警察の動きにも、僕はドギマギしていた。緊張感がこちらまで届いてくるのだ。
ほんとうに切ない作品だった。かわいそうだった。しかしこれを、かわいそうで終わらせていいのだろうか。
最後の最後まで、涙が流れている自分に驚いた。自分の胸も、ちりちりと痛んだ。
ただの殺人小説と思って読んだのだが、これは、傑作である。想像以上に傑作だった。これは、一生、僕の『オススメ作品』に存在し続けるだろう。
読み終えたとき、ずっと興奮はやまなかった。この興奮は、今も続いている。いったい、いつになったら冷めるのか。それとも一生、なくならないのか。まさしく、若者に読んでほしいと思った。共感できた。
友達に、「オレ、殺人系より、ファンタジーとか好きだから」と断固として言い切る人がいる。しかし、やはり、これを読んでもらいたい。いろんな人に、これを読んでもらいたい。
こんな感情は、今まで感じたことがなかった。だからずっと、この感動は、心の中に居続け、そして、力を与えてくれるのだ。
まさしく、傑作である。
共犯
2002/12/16 11:18
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:郁江 - この投稿者のレビュー一覧を見る
彼の気持ちが 痛いほど入り込んできて、正直 本を読む進めていくのが辛かった。
主人公 秀一の心理描写が 淡々と見事に描かれていて、まるで自分が秀一の共犯者になったような感覚にさえなった。しかし 彼の殺人をとめることは出来ない。それは私がただの読者であるとか そういうことではなく、もしクラスメートであったとしても仮に 彼の言動から彼の犯罪を知りえたとしても、彼の固い決意を変える事は 誰にも出来なかったであろう。そして彼の気持ちが理解できる…といったら言い過ぎかもしれないがやっぱり 分かる気がする。もし自分が同じ立場にあったら…と考えるとやはり私の心の中にも殺意が芽生えてもおかしくないのだ。そしてそう思わせてくれるのは作者の力量だと思います。
殺人…その膨大なリスクを犯してまで 守りたいものが彼にはあったんだから
ラストは本当に切なかった…次第に追い詰められていく彼を 見ているのが偲びなくさえあった。彼が挑んだ完全犯罪 その成功の行方はあなたの目で確かめてください。
素晴らしい本です
2024/07/30 17:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:a - この投稿者のレビュー一覧を見る
完全犯罪の作り方をじっくり読みながら、どうバレるかを考える楽しみです。それと並行して、ヒロインとの恋愛部分の楽しみでもあります。
殺人
2023/10/30 18:47
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投稿者:悟空 - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公が自分の家族を守るため、自分の家に居候している男を殺すというお話しです。ラストは自殺するのでなく、きちんと罪を償って欲しかったと思いました。
見事な心理描写
2021/09/18 04:25
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投稿者:なのはな - この投稿者のレビュー一覧を見る
倒叙ミステリの形式ですが、心理描写が巧みな見事な犯罪小説でした。細部に渡る緻密な犯行計画、完璧と思われた計画か犯行後に徐々に綻びを生じる過程はゾクゾクするものがありました。秀一の悩み苦しむ姿、冷静に犯行計画を練る姿、緊張しながら犯行に挑む姿、犯行後に不安に怯える姿、そのどれもが克明に丁寧に描かれていて、秀一に密着した描写になっていると感じました。せつないラストへと向かう悲壮感も特徴的です。一見冷徹とも思える犯行ですが、その動機があまりに同情を誘うものなので、読後感は決して悪くはありませんでした。
切なく緻密な倒叙
2020/11/05 20:22
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
完全に犯人も犯行手口も全て読み手に丸分かりの倒叙形式だが、それが逆に有効性のある緊張感を孕んで凄く良かった。少し特別な人間になった気になってしまう危うい年頃の主人公の痛々しさがとても切なく沁みて、後引く素敵な作品でした
映画を見たら、原作も読もう
2017/12/11 13:33
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投稿者:his - この投稿者のレビュー一覧を見る
二宮和也主演映画を見て、原作も読みたくなり、読みました。映画も良かったのですが、原作は主人公の心理描写、「無敵の大門」のエピソード等、とても細やかで読んで良かったです。映画ではおとなしい紀子が、原作では性格が違っていて気が強くて、秀一とのやり取りがとても可愛らしくて、映画版の紀子は物足りない感じがしました。二宮くんも原作を何度か読んだそうですが、何度読んでも面白いです。
出来すぎる高校生
2017/06/09 12:32
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投稿者:kohei - この投稿者のレビュー一覧を見る
この主人公ほど思考が働く高校生は、果たしてこの世にどれくらいいるだろうか。
それはさておき、この主人公には同情の余地がないではない。
一人目の殺人は、ある意味正当防衛(過剰防衛)のようなものだったといえるかもしれない。
ただ、二人目の殺人に関しては、いろんな意味で無念としかいいようがない。
非常に切ない気持ちにさせる小説だった。
悲しくなるお話
2017/02/09 04:11
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
悲しい、本当に悲しい小説です。高校生で殺人に手を染めてしまった話。めちゃめちゃ感情移入して読んでしまいました。読んでいるうちにどんどん主人公が孤独になり、切なくて、何度も読みたくなくなり、読まへんかったらよかったって何度も思いましたが、最後に救われるのではという期待感だけで、早く読み切ってしまいたいと思う一心で読んだという感じです。悪いことは周りのみんなを不幸にする。本当に家族、友人、そして本人が、可愛そうでたまりませんでした。
他の手段なんて、知らない。
2015/10/26 18:23
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投稿者:ひでり - この投稿者のレビュー一覧を見る
辛かった。読み進めたくないとページを捲る手を何度止めたことか。中学生という未熟な年齢で読んだことが原因ではなく。完全犯罪。なんて甘美で、脆い響きなのだろう。読後、映画を観て更に辛くなった。カセットテープの演出が堪らない。
嵐・二宮さんの過去映画作品の原作本
2012/06/25 16:59
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投稿者:Mi-Mi - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品は主人公が愛する人を守るために、一人の男の殺害を企てる話です。殺害といっても完全犯罪です。主人公は完全犯罪にこだわりますが、これは自分のためでも自己満足のためでもありません。その理由はただひとつ。愛する家族のためです。完全犯罪が完成しなければ、罪が露呈し家族が、殺人を犯した子供の母親。もしくは妹ととして見られてしまい、社会的地位を失ってしまうことを恐れたからです。
犯罪を犯すことは絶対に許されることではありません。このことを許してしまえば、我が日本国は崩壊の一途を辿ることが推測されます。けれど、人の心情を深く捉えれば犯罪を犯すことさえも正当化されるような恐ろしささえ感じました。
家族を守りたい。しかし、家族を守るということは一人の男を殺さなければいけない。そうすることでしか幸せが約束されない。そんな矛盾の中で主人公の下した決断と、家族や友人の関わりあいを読んで感じ、本当の正義とは何かということを考えていただければこの本の真に伝えたいことが理解できるのではないかと思います。
運命を変えてあげられるのならば変えてあげたい主人公。
2004/09/07 15:56
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投稿者:エルフ - この投稿者のレビュー一覧を見る
久々に読んで泣けた本。
やるせなさと切なさの気持ちで一杯になりました。
犯罪を犯した少年・秀一の一人称で事件は語られます。
その為自然と彼へ感情移入してしまうのですよね…。
見逃してあげたくなる犯行、犯罪ってあるのだなぁとこの本を読んで改めて思いました。
殺人は許せない、それでも秀一を見ていると悪いのは彼等じゃないのか?と思ってしまいます…。
私の中で最も哀しい殺人者は宮部氏の作品に出てきた青木淳子だったのですが、櫛森秀一は彼女に並ぶ哀しい殺人者になりました。
いや幼い分彼の方が哀しいかもしれないですね。
物語の中盤を越えた辺りから、秀一のラストは想像できました。
出来ればこれ以外のラストがあればと願うほどそれは哀しすぎるラストだったまのですが、やはりこれ以外にこの少年が辿り着く道はなかったのだろうなと思います。
最後の一章はかなり泣けました。
ホラーよりも、ミステリよりも
2003/02/06 21:30
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:亜李子⇔Alice - この投稿者のレビュー一覧を見る
貴志祐介氏の今までの作品を顧みると、どれも『ホラー』に属するものだった。ならばこの作品も『ホラー』なのかというとそうではない。
——バンッ!
と大きな音がして観客を驚かせるようなものは一回だけ(若しくは精々二回止まり)通用する手口で、大抵の三流ホラーがその手口を使用している。映画は特にその傾向にあるのが嘆かわしい。寧ろそれが『ホラー』なのだと割り切ってしまったら、青の炎にはこのジャンルは当てはまらないことは明確だ。
ならば、『ミステリ』なのかと云われると、どうにもそうだと納得できない。貴志氏はミステリとしてのこの作品に一体納得がいっているのだろうか。ミステリにしてしまうには勿体無いと思うのだ。
この作品は、きっとホラーが嫌いなひとでもミステリにアレルギヰを持っているひとでも難なく読めると思うのだ。
作品紹介は他の評者方もしていることだから割愛することにするが、この内容からも両ジャンルには当てはまらない気がする。敢えて云うなれば『青春+恋愛+スリル』。——嗚呼、スリル小説というのが一番しっくりくるかも知れない。数々のスリラー映画を残したヒッチコックの映画を観るときのように、連続した緊張感。そして、戦慄。
適度の興奮を幻滅により掻き消すことなく、貴志氏はこの作品を書ききっている。
買って良かった!
2003/01/09 05:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちゅーりっぷ - この投稿者のレビュー一覧を見る
貴志祐介さんの作品を初めて読みましたが、
物語の中に完璧に引きずり込まれてしまいました。
「殺人を犯す」というシビアな状況に陥った主人公の、
危機感、焦り、不安、安堵、恐怖、快感…。
次々に移りゆく感情が、圧倒されるくらいのリアリティさで
私の中に入り込んできました。
愛する家族を必死に守ろうとし、それ故に完全犯罪をもくろむ17歳の男の子。
一気に駆け抜けるストーリーの中に、完全にはまりこんでしまった私。
読み終わった後、柔らかな哀しみが胸の辺りに漂っていました。