増補 普通の人びと ──ホロコーストと第101警察予備大隊 みんなのレビュー
- クリストファー・R・ブラウニング, 谷喬夫
- 税込価格:1,705円(15pt)
- 出版社:筑摩書房
- ブラウザ
- iOS
- Android
- Win
- Mac
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
悪も善も普通の人びとから生まれる
2019/05/12 10:32
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
ホロコーストの悲劇は、何故起きたのか。今まで様々な研究があり、様々な要因が指摘されている。その中で重要なのは、悪の担い手は「普通の人びと」であるということだ。もちろん、ユダヤ人を助けた普通の人びともいる。では、なぜ普通の人びとが悪に加担するのであろう。それを考える意義は、現在でもホロコーストと同じようなジェノサイドが起きている、これからも起きる可能性があるからだ。本書は、膨大な資料を読み込み、普通の人びと(主に警察大隊の兵士)が普通でなくなることを描いた。最初、本書をペンギンのペーパーブック(英語)で読んだ。その後、日本語訳が出て読書スピードが上がった。本書は、原書改訂版の増補も収録されているので、嬉しい。
一般市民がナチスの指導の下で、大量殺戮に手を貸す存在へと変貌した恐るべきメカニズムを解き明かした戦慄の書です!
2020/04/10 13:05
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、ドイツで編成された第101警察予備大隊とホロコーストについて膨大な史料を読み解き、史実に忠実に再現された画期的な一冊です。第101警察予備大隊とは、ナチスが台頭する以前に、一般市民が中心になって組織された団体で、当時は反ユダヤ主義者という訳では全くなかった人々が、ナチス指導の下で、膨大な数のユダヤ人虐殺を行いました。無抵抗なユダヤ人を並び立たせ、ひたすら銃殺し続けるという行為が、如何にして彼らに可能にさせたのでしょうか。一般市民が大量殺戮に手を貸す存在へと変貌した恐るべきメカニズムに迫った戦慄の書です。
真の恐ろしさ
2021/07/29 22:24
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
ナチスの真の恐ろしさはそのイデオロギーやそこからくる暴力性にあるのではなく、本書で描かれるような「普通の人びと」までもが蛮行に加わってしまうことにあり、これは過去の、そして現在の日本社会も決して無縁ではない。
衝撃の一冊
2020/11/30 12:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mt - この投稿者のレビュー一覧を見る
衝撃の一冊。反ユダヤ主義に染まった狂信者ではなく、市井に生きる「普通の人々」がなぜ虐殺者となったのか。泣きながら命令を伝える隊長、自らの行為に嫌悪感を覚え酒におぼれる隊員たち。彼らの弱い姿は一人の人間としてリアリティがあるが、そんな彼らも次第に感覚がマヒし、ホロコーストの一翼を担っていく。その理由を当事者の証言や社会心理学を駆使して探る。はっきりとした理由が出ないからこそ、これが当時のドイツ人に特有の心性ではなく、我々にも起こりうるものかと思わせる。ゴールドハーゲンとの論争も含む大幅な増補も読ませる内容。
あなたもまた当事者です。 最終章だけでもお読みいただきたい、人類必読書。
2019/06/09 15:19
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:L療法 - この投稿者のレビュー一覧を見る
地獄感の強い本だ。
『炎628』のあれ、あいつらは何者か人の形をした怪物は人であるのか。ためらいや躊躇罪悪感にたいしての、ケアシステムの構築が、かなり初期にはできていた。systematicにやり遂げさせる意思の存在とそれにしたがうこと。
ひたすら、殺していく記録で、結構メンタルにダメージが。
殺戮の合理化が宗教的に構築されるのもまたつらい。
数ページ読めば数十人から数千人の殺戮が報告されていく。
証言者たちは、だんだん殺戮に慣れてきている。
本編とあとがき読了。あとがきが、文章硬くて、批判対象を、こっちが読んでないことも相俟ってちょっと読みづらい。あとは、増補分と訳者あとがき。日本語訳のない文章がほとんどで、注は飛ばしているが、この本読むと、注の重要さがよくわかる。省略したらいかんよね。
あまりにも衝撃的な、記録をとおして、何がおきていたかを捉えていく試み。
映画『炎628』を加害者サイドが語っていくといえば、いいだろうか。加害者の苦しみなども描かれる一方で、冷徹な数字、記録が「人」に対する信頼を奪っていく。人は容易に変わる。
写真について
2019/05/13 22:54
4人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「増補」として加えられた章に掲載されている写真を見ていると、写真3が「モサド・ファイル」に同じ写真が掲載されていて、モサド長官のメイル・ダガンの祖父として紹介されているものだ。同じヤド・ヴァシェムが提供したものなのに、「増補」では「ポーランドのウークフ」で撮影された「ウークフのラビ、イゼク・ヴェローベル」とあるが、「モサド・ファイル」では「二人のナチス親衛隊の前でひざまずい」た「ダガンの実の祖父、ベール・エルリッヒ・スルシュニにまちがいなかった。チェコのルコフでこの写真が撮影された」とある。「増補」にあるように警察部隊でもSSでもなく、陸軍の兵士(これは「モサド・ファイル」のピンボケしたような写真でも帽章で分かる)だ。ただ「増補」では棍棒を持った兵士はホルスターを左腰にベルトから吊しているのに、「モサド・ファイル」では修正したらしくポーチに見える。国防軍展でソ連の内務人民委員部が映った写真を展示したので巡回展を一時中止にしたものだが、逆に言えばヤド・ヴァシェムは写真に映っている被写体が誰か曖昧にして提供しているようなものだ。こういう事だからワシントンD.C.のホロコースト博物館が「断片」のような出て来る地名を地図に書いたりマイダネクがどういう収容所か分かれば見抜けるはずのでっち上げを持ち上げてしまうのだろう。
写真15は「零時」の後、この本で取り上げられた警察部隊から「非ナチ化」されたはずの英軍軍政下の警察官になった時の写真だ。警察部隊は特別行動隊のように殺す事が目的なのでベルゲン・ベルゼン裁判のようなものはなかったわけだ。
英軍は自軍の捕虜を射殺した髑髏師団のクネッヒラインSS大尉を戦犯裁判で死刑にして、同時期に1941年にソ連でユダヤ人を虐殺する命令を出した尊敬に値する「ドイツ軍最高の戦略家」エーリヒ・フォン・マンシュタインをアメリカ軍がうるさいのと健康状態がいいのもあって渋々戦犯裁判を開いて有罪にしたが刑務所では妻と秘書と同居させる特別待遇をしたのだからいい加減なものだ。
写真40に映っている2番目の人物は着ている服装が警察ではなくポーランド総督府のポーランド警察官に見える。
「増補」に出て来るルクセンブルク人についての記述でゴールドハーゲンあたりと大違いの冷めた視線で書かれているように自分達が弁明しているのとは違って少なくとも最初のうちは自分の意思で志願して入隊して、その後は自分が思い浮かべていた事と違う任務に就かされたので脱走したり強制収容所送りになったりとある。勿論、ドイツ軍に協力した事は戦後のルクセンブルクではいい事ではないだろうから、事実と違う事を主張するのだろう。
人間性の研究
2019/10/25 07:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
ホロコーストといえば、ガス室の虐殺、
ナチズムに固まった狂信的な人々の冷酷な仕業。
そう思うのが一般的かもしれない。
この本に出てくるのは、普通の人びと、中年のおっさんたち。
そんなおっさんたちが、なぜ、銃殺による大量虐殺という行為に至ったのか。
それを考えていくことが、あの戦争だけでなく、今日の不安を考えることにもなる。
ドイツを始め、欧米のホロコースト研究は、人間性の研究でもある。
日本では、そこに立ち入ってあの戦争をしっかり検証しているか。
日本にとっては、それが大きな課題である。
裁判記録に基づく、虐殺の状況はまさに凄惨。
それを普通の人が、現実に行ったことに暗澹となる。