知らなかった!知らなければいけない!
2017/09/11 17:02
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:RASCAL - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本が、米国では、「ジェイン・エア」などと並んで古典として読まれている本だとは全く知らなかった。この本を文庫化し、今年の「新潮文庫の100冊」に選んだ新潮社に拍手を送りたい。
この本を日本に照会した堀越ゆきさんにも敬意を表したい。彼女はこの本の訳者だが、小説家でも、翻訳家でも、歴史学者でもない。東京外語大学、米国の大学院を卒業、大手コンサル会社に勤務するエリート会社員である。
訳者は、出張の新幹線の中で開いたkindleで偶然にこの本に出会い、心を打たれた。彼女は、自分の人生を自分で切り開いていくタイプの人なのだろう。そんな彼女だから、格差社会、限定された未来、閉塞感のある世の中で、自らの力で変わっていける意志を日本の女性に持ってもらいたいと思ったのではないだろうか。
奴隷所有者が、女性の奴隷との間に子どもをもうける。子どもの肌の色から父親が白人であることは明らかだが、その父親は公然の秘密となる。女主人は嫉妬と猜疑心の塊になり、その女性を鞭打ち、やがて子供は主人の所有物として売られていく。
奴隷に産ませた子供に父性愛を感じることはないのだろうか。奴隷制は、奴隷とされた人たちの人権はもちろん、所有者の社会の倫理感も破壊する。
それにしてもドクター・フリントのリンダに対する執着心はストーカー以上に変質的である。リンダは奴隷の身分で彼をとことん嫌い、別の白人の子を産んだり、屋根裏部屋に7年もの間潜伏したり、手段を選ばずに戦い抜いた彼女の原動力は何だったのだろうか。
少し残念なのは、抽象的、間接的な表現で意味が分かりにくい箇所があり、読みづらいこと。中高生に勧めたい本であるが、そこはちょっと残念。
原文のせいか、それとも訳者のせいか、機会があれば、原作を読んでみたい。
奴隷少女の自伝小説
2022/02/11 15:42
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカでBLM運動が盛んになってから手に取って、いろいろ驚いた。
まず、この小説が、実話であること。歴史などで多少学び、知識も多少あり、奴隷の置かれた状況はなんとなく想像はしていたものの、それを絶する壮絶な内容だったこと。
次にこの小説がアメリカでは有名な古典であること。著者不詳のフィクションだと言い伝えられていたこと、さらにしばらく忘れられていたが、調査研究により、黒人女性であるハリエット・アン・ジェイコブスによる手記だったと判明して、ベストセラーになったこと。
訳者あとがきによれば、偶然を経て、日本語に訳され、自分がこうして読めたこと。
帯に杏さんが「160年前の異国の話だけど、知らない、分からないですませたくない」と書いているが、本当にその通り。
佐藤優氏の巻末の解説も素晴らしい。
信じたくない事実
2022/11/03 08:56
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投稿者:なっとう - この投稿者のレビュー一覧を見る
奴隷制度の非道さを、これでもかと思い知らされました。
書くのも躊躇うような出来事が、奴隷制の犠牲者それぞれに起きたのだと思うと悲しい。
同じ人間同士でこういったことが行われることが、それを良しとできる世界があるのが何より恐ろしいです。
自由を追い求め果敢に運命に立ち向かった少女の物語
2022/08/30 09:51
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投稿者:タラ子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間が人間を物のように売買し、そして死ぬまで過酷な労働や、時としてひどい罰まで与える。肌の色が異なるというだけでここまでひどいことが同じ人間に対してできるものかと、この物語を読んで何度も感じた。しかも非道なことを行なっている人がキリスト教を崇拝し、ミサにまで行っているというから皮肉なものだ。
時には人に裏切られ、さらに命の危険をおかしてしかこの主人公が手に入れられなかった自由。生まれたときから当たり前のようにあった自由がこんなにも尊いものに感じられたのは始めてだった。
今なお続く人種差別。私達は歴史から学ばなければならない。
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投稿者:ねったいぎょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
奴隷が、その実情を書いた本というのは初めて読みました。奴隷は読み書きができないことが多いですから、本当に貴重な史料だと思います。しばらくは小説だと思われていたらしいですが、それも納得できます。文章が上手で、ひきこまれてしまいます。文庫で買いやすい値段ですし、買って読みたい一冊です。
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
奴隷制度と自らの経験を淡々と記している自伝。序盤話が前後していたり、登場人物の紹介が乏しいので、相関図必須。主人公が利己的で、更に周りに恵まれ過ぎていた様に思え、そこまで悲劇に感じなかった
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
実話とあったのですが、これは本当にフィクションではないのですか?と言いたくなりました。つい、100年あまり前のお話ですよね……。奴隷の女に、子を産ませた、血のつながりのある父親、つまり雇い主は、親として愛情持たないのに驚き。
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投稿者:ハム - この投稿者のレビュー一覧を見る
奴隷の経験のある女性が執筆なさった貴重な歴史だと思います。特に女性は大変な辛い目に遭ったんだろうと思うと辛い。
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ハリエット・アン・ジェイコブズ『ある奴隷少女に起こった出来事』新潮文庫。
出版から120年以上経過し、やっと陽の目をみたという貴重な自伝的ノンフィクション小説。本作に描かれているのは生まれてから物心がつくまで自身が奴隷であることを知らなかった著者が、奴隷として生きてもなお希望を失わずに、自由を求める物語である。
奴隷制度について描いた作品と言えば、アレックス・へイリーの『ルーツ』が有名である。しかし、『ルーツ』は、あくまでも事実に基づいたフィクションということで読み物としては確かに面白い作品だった。一方、本作は奴隷という身分に身を置いた経験を持つ著者が書いただけに恐ろしいまでのリアリティを感じると共に人間の残虐さを再認識する内容になっている。そして、読み進むうちに知らぬ間に著者の奴隷という視点で考えることを追体験することとなり、本当に不思議な感覚を味わうこととなった。
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ある奴隷少女リンダの伝記小説
126年後に実話と証明され作者が主人公の奴隷少女だったとわかるという長い時を得て日の目を見た本
奴隷少女が書いたとは思えないほど知的でセンスの溢れる文章
だからこそ、執筆者を著名な白人に間違われていたのかもしれない
それほど物語としての惹きつける力がある
そして彼女に起こる残酷で凄惨な現実に打ちのめされる
死を選ばなかったことを単純に賞賛できないほど苛烈だった
実際自分に置き換えたら...
リンダの弟ウィリアムは言う
鞭で打たれる痛みには耐えられる
でも、人間を鞭で打つという考えに耐えられない
リンダは思う
大きな毒ヘビですら文明社会と呼ばれる地に住む白人男性ほどは怖くはなかった
リンダは奴隷売買に思う
自分の心が啓発されていくに従い自分自身を財産の一部とみなすことはますます困難になった
正しく自分のものでは決してなかった何かに対し、支払いを要求した悪人のことは嫌悪している
私は売られる
私の自由を売買される
リンダは奴隷逃亡生活の苦しい中で尊厳は取り戻していく
自分を差別しない友との交流で
リンダは自分の子供を奴隷制度から逃れさせるため逃亡をするが、人間の自由が売買される制度に強烈な嫌悪感を抱く
剥奪されるのは人権だけではない
尊厳や自主性、主張も持つ事を許されない
奴隷のくせに傲慢だとみなされる
聖書がなんの救いになるのだろう
何を我慢すればいいのだろう
なぜ なぜ なぜ
と憤るしかなかった
弱者に押し付けられる清廉という欺瞞の中で
これだけの意見を持つ彼らはその聡明さが故に理不尽極まりない現実に苦しみ悶えた
リンダの戦いは自由になったから終わるわけではない
奴隷制度が撤廃されても歴史は残る
リンダの言葉は今を生きる私にも必要なもの
先人が血と汗と涙をふり絞って手に入れた人権、尊厳を権力の元に投げ出してはいけないと
リンダという名も無き奴隷少女が綴った小さくて聡明で抗う力を与えてくれる本
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偶然出会った本。届いて一気に読みました。
150年前に実在した女性が実体験を忠実に綴った、奴隷少女の話。
当時、奴隷は読み書きができなかった時代に
運良く読み書きができたアメリカ南部の黒人女性。
自由州と呼ばれた北部の女性に、南部の奴隷女性のことを知らせたくて
筆をとったそうです。
当時は、フィクションと思われ、自費出版だったこともあり
埋もれてしまったそうですが、
いくつもの偶然が重なり、時をこえて掘り起こされたアメリカの名著です。
この本の翻訳者と同様に、
自分も読まずにはいられず、一気に読みました。
内容は大変過酷なものです。
でも、こういった歴史のうえに世界が続いていて、
今があるということを知っておくことは
のちのち大変重要な要素になると思うのです。
そういった側面で、この本に出会えてよかったと思います。
気になった方は、ぜひ読んだ方がいいと思います。
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奴隷制とは何か。ただ単に酷い制度だろうと思っていたが、これを読むと当時の黒人に対する白人への仕打ちは想像を絶するものがあった。
それは、人間ではなく物であり家畜でもありペット以下の扱い。
言葉には言い表せない行いは人間の業による利己的な感情から起こり、こうも人を人とは思わない愚劣なやり方ができるのかと思うと恐ろしい。
この作品から国家とは何か。法律とは何か。自由とは何か。生きるとは何か。そもそも人間とは何かを問題提起している気がする。
未だに黒人と白人の差別があるが、こういった遺恨のDNAが伝承している限り、本当の意味で心穏やかな平和はないのかもしれない。
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黒人奴隷を母に生まれた少女。ある程度の教育を受ける事ができ、何とか生き延びたので、自分の境遇を書き残すことができた。
社会的な制度の上に縛られてはいない今の日本では有るけれど、昔からの習慣に縛られているのは感じる。曰く、女のくせに 女だてらに 女の子でしょ。まぁ年も年だし、今ではそんな縛りには目もくれないで、好きなことをしているけどね。
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『ある奴隷少女に起こった出来事』
ハリエット・アン・ジェイコブズ
'Incidents In The Life Of A Slave Girl'
Harriet Ann Jacobs
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好色な医師フリントの奴隷となった美少女、リンダ。
卑劣な虐待に苦しむ彼女は決意した。
自由を掴むため、他の白人男性の子を身篭ることを―。
奴隷制の真実を知的な文章で綴った本書は、小説と誤認され一度は忘れ去られる。
しかし126年後、実話と証明されるやいなや米国でベストセラーに。
人間の残虐性に不屈の精神で抗い続け、現代を遙かに凌ぐ“格差”の闇を打ち破った究極の魂の物語。
(表紙裏、内容説明より)
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あまりの内容に、ちょっと言葉が出ない…。
人間の愚かさと残酷さと想像力の欠如に、震えが走った。
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一部本文を抜粋。
「奴隷制から生まれる、品位の堕落、悪事、不道徳について、どんなに言葉をつくしてもわたしは言い表すことができない」
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内容説明を読んでちょっと読むのを躊躇ったんだけど、黒柳徹子さんの言葉に後押しされて読んでみた。
これは、皆さん読んだ方が良いと思う。
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正直、読みやすい文章ではないし目を背けたくなるような、悲しい記述で溢れてるんだけどこれは知っておくべき事だなと思った。
きっと、世界のどこかでは未だにこんな現実があるのかも知れない…。
考えさせられる。
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図書館より。
ブクロブで発見し、気になったので。文庫しかないので、こちらでレビューを。
スゴい作品。始めはさらっと読み飛ばすつもりだったけど、いつの間にかがっつり読んでた(笑)。
主人公の考え方がスゴい。奴隷制度って黒人だけじゃない、白人男性を豹変させ、白人女性を鬼と化す制度なんだって(ちょっと表現に語弊がありそうだけど(笑))。いいこと何にもない制度だってあの若さでしっかり考えてるところがスゴい。
私的にもうちょっと性的表現があるのかと思って読んでいたけど、そんな事もなく(想像すれば分かる程度)。それでも、この時代・宗教感覚からすれば、好きでもない男性と...は衝撃的なんだろうな(尊敬できる白人、だったのかも知れないけど)。
自分ひとりの為でなく、家族や子どもの為に頑張る女性って兎に角スゴい!
奴隷制度とか、気になる人にはオススメかな(でも、目線は偏っているのかもしれないが)。勉強になりました。