最新の情勢を元にした名作
2016/09/25 02:14
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投稿者:ライサ - この投稿者のレビュー一覧を見る
2016年4月段階の情勢を元に2016年5月に書き上げている。
まさに最新の情勢を元にした中東問題の参考書である
東大准教授が書いているだけあって読み応えはある
テレビでも中途半端な理解でしか語れない人たちばかりでウンザリしていたがこの本は別格だった
一応、日本史選択者の人でも読めるが背景知識にどうやっても世界史の知識は必要になるのが唯一の難点といえば難点か
日本の右派もこの中東問題でのイギリスの手法を見習ってもっと強かになってもらいたいもんだとも感じた
中東情勢の理解を深めてくれる好著
2016/08/06 10:38
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投稿者:クッキーパパ - この投稿者のレビュー一覧を見る
放送大学の高橋教授が講義の最後に「これで分かったと軽々に言ってほしくないが」と補足していたが、確かに複雑で迷路のような中東情勢。その迷路を案内してくれる本書は、気鋭の専門家の好著であり、140ページの量を遥かに超える濃厚な内容なので、予想以上に読了に時間を要した。中東を巡る歴史ばかりか、クーデターが発生したトルコの位置付けの重要性も再認識した。欧米のビッグニュースで、日本では多少報道が減った印象の中東情勢に今後も注目したいと感じさせてくれた本書を、その理解を深める為の教科書として再読していきたい。一方で、最新情勢を盛り込んだ著者の新刊も楽しみに待っている。
サイクスピコ協定以後の中東
2024/09/15 17:08
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投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る
今の中東問題はサイクスピコ協定に求められがちだがそう単純に語るのではなく100年前から現代まで何があってどんな問題が生じているのかが分かりやすく記述されており理解の助けになる。
国民国家は自明のことではない
2023/11/01 09:16
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
ガザのハマスがイスラエルに攻撃を仕掛けた今、事態を理解するために急ぎ読んでみた。なんとなくわかった気にさせるところはなかなかの本である。しかし感銘を受けたのは、本前半の大国間の手前勝手な密約の話ではなく、後半の民族とは とか難民や民族浄化の話である。日本は人手不足対策として、どんどん外国人を入国させようとしている。混迷しているヨーロッパ諸国のマネをしようとしているような危うさを感じてしまう。
中東の混迷や争いをずっと見ていると、宗教というものは人類に対して益よりも害をより多くもたらしてきたのではないかと思ってしまう。
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投稿者:ぴーすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「サイコス=ピコ協定」と言われてもピンとこない人は多いかもしれない。
私もその一人、私も、「アラビアのロレンス(映画や評伝)」の中で
欧州と中東の中でそのような協定があったということをかろうじて知っているようなものだ。
しかし、中東の問題は、今や極東である日本でも無関係ではいられないし、東西冷戦が終結したことにより余計に混乱していると思う。
そんな時に、この本のタイトルを見て、これはいま私たちに必要な情報だと思った。
一読してわかるものではないが、まずは歴史認識を新たにしないと
と思わせてくれる一冊。
繰り返し読んでみようと思える一冊。
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1916年に結ばれたサイクス=ピコ協定から,その後の100年間の中東世界や地中海東岸世界の動向や構造をまとめた,著者が「中東ブックレット」と呼ぶ作品の一作目です。
この地域のこの100年の動向を把握できる良い作品だと思います。より深い考察はできると思いますが,背景と概略,現在の動向を把握するにはいい位置づけと分量の内容だと思って読んでいました。
現在でも激動のさなかにある地域であり,常に状況が変わるとともに,世界の各地のいろんな分野に影響を与えている地域ですが,その背景の概略を把握するためには良い本だと考えます。
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イスラーム世界の…以来の著者の本だったけど、かなりわかりやすい。とはいえ地理がまだ完全に把握しきれていないので、右から左な部分が多い自覚はある。とりあえずアラビアのロレンスみよう
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アラビアのロレンスから、「イスラム国」そして英国のEU離脱までが、頭の中でスーッとつながる。快読の一冊。
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サイクスピコ協定が今の中東の混乱を招いたというのが、最近富に聞こえる話だが、どうやらそれだけではないというのが本書の内容。
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トルコ・シリアを中心に、第一次大戦から現在までの中東情勢を「サイクス・ピコ協定」「露土戦争」「東方問題」「難民」等を切り口に読み解いていく。時系列に事情を追うよりもかえって個々の事象の連関をクリアに浮かび上がらせることに成功しており、地図の豊富さとも相まって理解しやすい。イスラエル史を思い切って切り捨てたのも奏功していると思う。何より140頁程度と短いのが良。
著者はサイクス・ピコ協定以前と現代の情勢の異同について、西欧のアラブ諸国に対する相対的優位性の低下を指摘しているが、現代では西欧側が様々な不都合を押し込めておいた中東という「壁」が決壊したとの表現は言い得て妙。人権保護が不十分と批判しつつも、自らに影響がないうちは抜本的解決を望まないというご都合主義も限界に来たということだろう。同じく壁のこちら側で安穏としていられた日本にとっても、最早対岸の火事ではない。
サイクス・ピコ協定が中東の一時期を切り取った断面図に過ぎないことがよく理解できる本書だが、ではなぜこの題名が採用されたのか。恐らくは本文にあるように「わかった気になるマジック・ワード」なるがゆえに、専門家にとっても「題名にしたくなるアイキャッチング・ワード」でもあるのだろう。
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[解決策にして病巣]合意の形成から百年を迎え、日本の一部メディアでも改めて取りあげられることがあったサイクス=ピコ協定。外部から中東地図を描いたとして批判されることが多々あるこの協定の形成経緯やその他の条約に触れながら、現在の中東政治を高所から俯瞰した作品です。著者は、中東研究の第一人者と評しても過言ではなくなってきた池内恵。
「複雑だ」と評される中東政治を、その複雑さをそのままにゴロンと読者に突きつけてきた作品。決して読みやすい読み物ではないですが、中東政治や幅広く国際政治に興味のある方にはぜひオススメ。明快かつ安易な解決策など、現在の中東には存在しないということが痛感できる一冊です。
〜当時の超大国である列強という「医師」に、中東の国家と社会の「病」への処方箋を書く、その資格と能力があったかというと、それは疑わしい。しかしその当時の中東に、より適切に国家と社会を形成できる主体があったかというと、なかったと言わざるを得ない。それは現在でもなお残る問題でもある。〜
一気に通読できる分量も☆5つ
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混迷する中東の歴史について、中東を大国で切り分けたサイクス・ピコ協定だけが悪者扱いされているが、現地の諸勢力の意向を反映して細かく切り分けたセーブル条約や、それに反発したトルコ人による支配地域の拡大を諸大国に認めさせ、現在のトルコの国境をほぼ確定したローザンヌ条約も、あらゆる方法が試され、その度に済む土地を追われて、命を落とす人々を多く生み出した。
セーブル条約では細分化されすぎており、政治的にも経済的にも自立が困難だった。
結局は西欧や周辺大国による様々な思惑と介入、植民地化、侵略が昔から中東をゆるがしている。
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新しい職場であるNGOの先輩に薦められた本。現在のシリア難民の経緯を紐解く一助になる、サイクス=ピコ協定の経緯と詳細、そしてこの協定がいかに現在の中東情勢に影を落としているかを簡単に説明した本。セーブル条約による細かい民族や宗派へのトルコ領の割譲とローザンヌ条約によるトルコ国民主義を反映した国境線の策定を経て現在の中東があるが、情勢不安を抑制する手は果たしてあるのか。協定の話以外にも気になる三文字団体、PKK・PYD・YPG・KNCなどが簡単に説明されており助かった。領土を広げたいロシア、クルド独立を抑制するためシリア情勢を混沌のままにしておきたいトルコ、ISを抑えるために「テロ集団」を支援するアメリカなど、各国の思惑が錯綜する中での難民問題解決は気が遠くなる程難しい事を痛感した。結局害を被るのは一般市民なのに。
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現在もシリアを中心とした中東エリアは戦火と混乱の中にあり、悲惨な状況が終わる気配を見せていない。
この地域の争いの大元の原因は、オスマン帝国の衰退と解体に見いだせるが、そのときのサイクスピコ協定が諸悪の根源であるとの世の評判は的確ではない、と作者は述べている。
その理由をその後の歴史をたどりながら紹介説明していて、本書の題名だとそこが主眼に思えるが、実はその後の地域の状況や現在の考察が主体になっている。そして、現在の様相はオスマン帝国が崩壊した頃に状況が似てきたのではないかと心配し、大国の影響力など大きな違いもあるが、今後の激変を予想というか懸念している。
本書は、なんで中東はいつも戦争しているのか?と感心ある人向けのいい入門書になっていると思う。
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★難しさばかりを痛感★整然とした国境線にみえるように、中東は外部勢力による人為的なルールで縛られている。「少数民族」とは自然に生まれる民族ではない。多数派が自らと異なるものと決めて特定の政策を作るから誕生する。そして少数民族が独立すると新たな少数民族を生み出す。民族はどこまでも分裂していくだけに解決は簡単ではない。悲しいことに中東に解決できる勢力はないが、解決策に対する拒否権を持つものは多い。