サイレント・ブレス 看取りのカルテ みんなのレビュー
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高い評価の役に立ったレビュー
終末期医療のことを教えてくれる連作小説
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
長く大学病院で診療を続けていた医者・水戸倫子が、いわゆる医局人事というやつで在宅医療特に在宅での終末期医療を行なうクリニックで働くことになって遭遇する何人かの患者とのエピソードが綴られている小説。
プロローグとエピローグで挟まれた6つの話が収められている。それぞれ、「スピリチュアル・ペイン」「イノバン」などと医療に関係した単語がエピローグのタイトルにつけられており、各々のエピローグを象徴するような言葉となっている。
古くは医者は病気(主に感染症などの急性疾患)を治し、人の命を救うことを使命と感じているところがあるので、人の命を救えない、人が死んでいくのを目の前にして或る意味何もしないということがなかなか馴染めないというのが正直なところだろう。
この話の主人公倫子もそんな医者であり、急に在宅医療に携わることになれば戸惑うことばかりだというのがよく分かる。
それでも、何人かの在宅医療に携わることになり少しずつ終末期にどう対してゆけば良いのか気づき、理解していくところが、エピソードごとに丁寧に描かれていて、ついつい引き込まれて読んでしまった。また、そこに倫子と患者が相対する話だけでなく、クリニックの看護師や事務職、近所の飲み屋のママ(?)、倫子の上司になるだろう大学教授がつかず離れずして関わっているところも、全体として重めの話を柔らかい雰囲気にしていて良かった。
そして、最後に看取るのが患者ではなく、長く植物状態にあった自分の父親であるところに繋がっていくわけであり、そこで改めて倫子が医者として経験したことと家族として体験していくことを繋ぎ合わせていくことが出来ていくという話になっており、単にエピソードを並べた短編連作小説となっていないところも良かった。欲を言えば、初めのうちからもう少しずつ倫子の父親のことを語っておいてくれると、最後のエピソードに至った時の倫子の気持ちが読んでいる者にもっと近づいたのではないかと思う。
さらに、医療の端くれにいる者からすると、倫子が勤めることになる在宅クリニックが単なる民間のクリニックなのか、大学病院の附属機関なのかはっきりしないし、そもそも倫子のようなキャリアで大学病院に居続けることは難しいようにも思えるし、といったツッコミどころはあるけれど、総じて終末期医療や緩和ケアといったこれからさらに重要とされる分野を取り上げているところに一読の意味があるように思う。
低い評価の役に立ったレビュー
10 件中 1 件~ 10 件を表示 |
2018/07/29 22:30
リアリティーを感じる在宅看護、終末医療の内容です。
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:謙信 - この投稿者のレビュー一覧を見る
父の緊急入院、在宅看護、看取りを経験した後、本書を読みました。経験したから思えるのでしょうが、“もっと早く本書を読んで入れば・・・”と今は痛切に感じます。自身の後悔、医療現場への不信感、など作者や主人公の気持ちに共感する場面が多くありました。作者が医師である点が小説という形の中で存分に活かされており、作品のリアリティーさに感銘しました。また、結論に至る経過が本文にしっかり記載されていて、後から該当ページを参照することで納得できました。歯がゆさや悔しさは今後もなくなることはないでしょうが、ライフワークとして父と同じような症状の方がより良い形で人生を送れるような活動をしていきたいと思います。
2021/04/30 21:46
一番のミステリーは・・・
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ヤマキヨ - この投稿者のレビュー一覧を見る
サングラスでスキンヘッドの男や、忽然と消えた遺体に、言葉を発しない身元不明の少女・・・。各エピソードには、見取りや安らかな最期といったメインテーマとともに、判然としないミステリー的なトピックも加えられています。もちろん最後には状況が明かされテーマとともに収斂していくのですが、重くなりがちな本書のようなテーマにささやかな軽みも添えてくれているように思います。
もちろん本書最大のミステリーは、決して唯一の正解が見つかることはないであろう、いかに安らかに死を受容するのか、そして最後を迎えられるのかでしょうか。各エピソードごとに異なる終わりの迎え方があってもいいのだと教えてくれています。でも一方で、どの答えがいいのか、結局自ら選ぶしかないぞと迫っているようにも思えます。
2022/03/28 10:39
医療という概念を考えさせてくれる作品。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
医療という概念を考えさせてくれる作品。
医療といえば治る病気を治療するものと考えがちだが、限りある命を生きる人間にとって避けられないのがゴールとしての“死”。ゴールである“死”を中心に考え直すなら、医療とはひたすらゴールに向けて歩き続ける人間をサポートするものであり、終末期医療から臨終(看取り)まで含めて医療だと言える。
様々な看取りの形を具体的に描写することで自分自身の死生観を考えさせてくれる。特に、最後のブレス6で自分の親の臨終(看取り)を描くことで見事に読者自身の心に浸透する構成になっているのも素晴らしい。普段は敢えて考えないようしている事柄だけに、このような問題提起は実にありがたい。
また、暗くなりがちな“死”を前提とした終末期医療であるが、少しいやかなり惚けたキャラクターやエーッ?と思うようなC級グルメが売りの“ケイズ・キッチン”など、暗さを緩和する息抜きも適宜配置されており、流石、緩和医療に精通したベテラン医師らしさを感じさせてくれる。
2023/10/27 19:54
命とは
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:再び本の虜に - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間の死がテーマの内容ですが読後感は何故か穏やかな気持ちです。ヒロインの女医先生の成長を読みながら見守っているような気持ちにさせられました。私自身も高齢なのでいろいろ考えさせられました。この本を選んでよかったです。
2019/02/17 00:19
終末期医療のことを教えてくれる連作小説
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
長く大学病院で診療を続けていた医者・水戸倫子が、いわゆる医局人事というやつで在宅医療特に在宅での終末期医療を行なうクリニックで働くことになって遭遇する何人かの患者とのエピソードが綴られている小説。
プロローグとエピローグで挟まれた6つの話が収められている。それぞれ、「スピリチュアル・ペイン」「イノバン」などと医療に関係した単語がエピローグのタイトルにつけられており、各々のエピローグを象徴するような言葉となっている。
古くは医者は病気(主に感染症などの急性疾患)を治し、人の命を救うことを使命と感じているところがあるので、人の命を救えない、人が死んでいくのを目の前にして或る意味何もしないということがなかなか馴染めないというのが正直なところだろう。
この話の主人公倫子もそんな医者であり、急に在宅医療に携わることになれば戸惑うことばかりだというのがよく分かる。
それでも、何人かの在宅医療に携わることになり少しずつ終末期にどう対してゆけば良いのか気づき、理解していくところが、エピソードごとに丁寧に描かれていて、ついつい引き込まれて読んでしまった。また、そこに倫子と患者が相対する話だけでなく、クリニックの看護師や事務職、近所の飲み屋のママ(?)、倫子の上司になるだろう大学教授がつかず離れずして関わっているところも、全体として重めの話を柔らかい雰囲気にしていて良かった。
そして、最後に看取るのが患者ではなく、長く植物状態にあった自分の父親であるところに繋がっていくわけであり、そこで改めて倫子が医者として経験したことと家族として体験していくことを繋ぎ合わせていくことが出来ていくという話になっており、単にエピソードを並べた短編連作小説となっていないところも良かった。欲を言えば、初めのうちからもう少しずつ倫子の父親のことを語っておいてくれると、最後のエピソードに至った時の倫子の気持ちが読んでいる者にもっと近づいたのではないかと思う。
さらに、医療の端くれにいる者からすると、倫子が勤めることになる在宅クリニックが単なる民間のクリニックなのか、大学病院の附属機関なのかはっきりしないし、そもそも倫子のようなキャリアで大学病院に居続けることは難しいようにも思えるし、といったツッコミどころはあるけれど、総じて終末期医療や緩和ケアといったこれからさらに重要とされる分野を取り上げているところに一読の意味があるように思う。
2020/04/11 15:37
難しいテーマ
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あおたいがー - この投稿者のレビュー一覧を見る
終末期医療をするために在宅医療医として働くこととなった主人公と、死を目前にどう死ぬか人生と向き合った患者たちの話で、患者は亡くなってしまうのだけど、ちゃんと生きて、自分らしく死んでいったのだと思った。
色々難しいテーマだ。
残された家族や、治療して回復させることだけが仕事だと思う医師や、患者本人の意思…
看取ることの難しさや覚悟。
どう死にたいか、安らかに死なせてくれる医師も大切なんだろうなと思った。
2023/02/21 21:53
終末医療
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
すごく考えさせられました。良かったです。今の日本の問題点がそのまま……。大学病院の総合診療科から、「むさし訪問クリニック」への“左遷“を命じられた37歳の水戸倫子さんの物語。むさしは、在宅で「最期」を迎える患者さんのクリニック。
2022/07/24 17:17
最期はどうするか
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わかめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
大切な人が人生の最期を告げられたとき、どうするか悩むものだと思う。この本は、人の最期をどう迎えるかがテーマになっているが、決して暗いものではない。そんな悩みがあっても、前向きな気持ちにさせてくれるストーリーである。
2018/08/17 05:06
出来すぎ
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴょんきち - この投稿者のレビュー一覧を見る
大学病院から訪問診療へ。
左遷と思い込んだ主人公が、悩みながらも周りのスタッフに助けられながら成長していく。
手強い患者にも、最期は受け入れてもらえる等、読んでいて先がわかる。
こんなに分かりやすい患者ばかりではない!とケアマネジャーをしている私は感じました。
もっとも医療と介護では、利用者の受け入れが根本から違いますから、この本のような事は日常なのかな?
2019/05/20 14:57
最期
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ハム - この投稿者のレビュー一覧を見る
誰もが平等に必ず訪れる最期。現場を経験しているからこそ書ける作品だなと感じました。とてもリアルですね。
10 件中 1 件~ 10 件を表示 |