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紙の本
内向的だっていいじゃない
2005/08/07 11:44
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:UMI - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ひきこもり」をテーマにした本は何冊か読んだことがある。外に出られない人間に少なからず興味があるし、興味があるというのは自分が社会人としてまともに生活はしているけれど、「ひきこもり気質」というか素質というかそういったものをあわせもっているからだと思う。ソツなく社会に溶け込んでいるけれど、やっぱりどこかで無理をしている。社交的な振りはしているけれど、本当は手広く人間関係を築きたいなんてちっとも思っていない。『ひきこもれ』なんてタイトルに惹かれてしまったのには、それなりの理由がある。
読んだ後、なんだか気持ちがふわっと軽くなったような、自分はヘンテコな人間ではないんだと認めてもらえたような、そんな安心感がある。じっくりものを考えたり、自分の殻に閉じこもって内側に向かって掘り下げてみたり、そんな作業工程も必要なのだと、自信を持って良いんだと、優しく頭を撫でられたような気持ちになる。
新刊でもないし、大ベストセラーというわけでもないけれど、ボクは誰かにこの本を読んでもらいたい。自分を騙し騙し外へ向かおうとする人にも、実際に今ひきこもりがちになっている人にも、何かしらの作用があると思うから。外交的であることが優で、内向的であることが劣とする風潮に、こうも真っ直ぐに、こうもバカ正直に抗っている本があるということに、小さな爽快感がある。
紙の本
いろんな生き方の一つ
2006/05/05 12:30
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:半久 - この投稿者のレビュー一覧を見る
現代は「明るく前向きに、何事にも積極的に取り組む姿勢」が、異常なほどのウエイトで価値づけされている。反対に「ひきこもり」は、ネガティブなイメージを強く背負い込まされている。吉本氏はこれに否、を唱えてくれた。
だが、「徹底的にひきこもれ!」と過激にアジっているわけではない。働くことは大事であるが、自立が遅くなっている時代であり、それはいけなくはないとする。ただ早めに引っ込み思案の気質にあった仕事は見つけた方がいい、どんな仕事も熟練が必要だからと言う。
案外、穏当で「良識派風」の発言も織り込まれている。この常識的な社会観相が、本書の「まっとうさ」を支えるものであり、幾ばくかの「物足りなさ」を覚える所以なのではあるが、基本的には良書だと思う。
さて、本書の全体像は、bk1評者の皆さんが的確なコメントを寄せていらっしゃるので、私は例によってピンポイント的に、気になる箇所に意見をつけさせて頂きます。
《もっと別の言い方をすると、人間の性格は胎内で人間として身体の器官がそろって働くようになった胎児のころから一歳未満の乳児のころまでのあいだに、主に母親との関係で大部分が決まってしまうと考えるようになりました。》
あとがきで「大部分」を7〜8割と修正しているが、私はその後の環境の影響次第で、性格は大きく変わりうる可能性があると思う。極端なケースが「戦場体験」後の兵士。また、学校その他で長くいじめを受け続けたために、性格が変わってしまう人もいる。
ただし、変わりうるからといって、むりに「性格改造」をする必要なんて全くない。そこは、おそらく著者とも一致できるのではないかと思う。
《ぼくは、ひきこもりの人が、好きな異性ができたことをきっかけに社会との関わりを回復していくということはあると思います。実際問題として、「この人と結婚したい」と思ったら、仕事もしないといけないわけですから。》
《異性というのは、そういう状況から抜け出すひとつの契機になりうるのかもしれません。親に食べさせてもらっている状態では、好きな人と暮らすことはできないわけですから。》
しかしこれが女性であれば、専業主婦を選ぶなら、もちろん家事労働はするのだが、意志次第でかなり「ひきこもり」的な生活を送る(に戻る)ことはできると思う。
専業主婦は、産業社会(表の社会)からはブラインドされてきた。しかし、そこには一部のフェミニストが指弾するような、デメリットだけがあるのではない。むろん、女性の「社会参加」は結構なことだが、その場合の「社会」を意味する言説の大半は賃労働市場への参加を促すものにすぎない。そうではない「内向き」な生き方があってもいい。そして、これからは男性の専業主夫(ひきこもり型であってもなくても)もどんどん出てきてくれていい。多様なライフスタイルの承認は、内向的な人々にとっても福音となる。
あと、好きな言い方ではないが、昔から「ヒモ」と呼ばれる異性関係を持つ人もいる。これも世間的には「ダメダメ」なイメージが強いが、まあ、いいんじゃないんでしょうかね、本人達が幸せなら。
《ぼくは市民運動が嫌いです。》
《さらに言えば、市民運動の一番よくない点は、共産党や社民党が言ったりやったりしていることから、決して先には出ないことです。》
「ひきこもり」とは関係ない話だが、ちょっと乱暴。確かに「政府にもの申す」的な市民運動は目立つから、野党的な考えの人が参加する割合が多いのかもしれない。まんま「革新」政党系列の「市民団体」もあるだろう。
しかし、経験から言っても超党派的な立場での市民運動だって結構あるのだ。保守的な市民運動だってもちろんある。
「ひきこもり」を十把一絡げに「病的」と括ってはいけないのと同じように、市民運動も多様なんだということに目を向けて欲しい。
紙の本
教師のみなさんへ
2002/12/23 17:41
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夜の顔 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年も残り少なくなりました。思えば年初めに立てたささやかな目標は、人から顔を忘れられてしまわないように人の集まりにはなるべく参加しようというものでしたが、あまり達成されたとは言えません。人の集まりといってもたいしたものではなく、仕事仲間や同業者などとの会議や勉強会、飲み会ですけどこれがなかなかおっくうなのです。円卓で会議するというのはなぜか非常に苦痛だしそこで発言するのはもっと苦痛です。もちろん仕事ですからなるべく出てますが。また同業者といっても年長のえらい人もいてきゅうくつだし、酒は家で飲めば楽しいしわざわざ出て行く気がしません。この「ひきこもり」的な性質をなんとかできないかと立てた目標ですが、この本を読んで、別に無理して人前に出なくてもいいのかなと気が楽になりました。
小学生のころから大人、とくに教師から、積極的に発言しなさい、ものおじするななどといわれ続けていますから、僕の場合そういうのが理想でそれになるべく近づかなければいけないという思いがしみついています。そして近づけなくて落ち込むことが多いのです。教師という職業もしゃべってなんぼのところがあるから、吉本氏が言うキャスターなどと同じでコミュニケーション能力があり社交的な方がいいと思っている人が多いのではないでしょうか。もちろんそういう能力がある人は魅力的で今でもうらやましいですが、そうでないからといって教師のみなさん、生徒をしかったりして傷つけないで下さい。僕は今でも傷ついている。
なんだか学校の先生に文句つけているような文章になってしまいましたが、僕が教育を受けたのは20年以上前ですから、今の先生は違うのかも知れませんが。
紙の本
自分はこれでいいと思えるのはいつごろだろう
2003/02/02 12:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Shinji@py - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ひきこもれ」こんなことを言ってくれる大人が近くにいたら、子供は幸せだと思います。挑発的なタイトル、大きな活字に、広い行間、177ページにまとめたのも、ふだん本を読まない人にも手にとってもらうためかもしれません。先が見えない時だからこそ、年配の方の話を拝聴する価値を感じました。ひきこもりを「いい・悪い」でとらえる風潮に異議をとなえ、ひきこもって一人の時間を持つことの重要性をくりかえしくりかえし説きます。また、子供たちを取り巻く問題として、親の不安を反映して子供が心に傷を負うという主張には全く同感です。
でも、ひきこもりの人やその親たちにとっては、著名人に「自分もひきこもりだった」と言ってもらうことが、本当は、一番うれしいことなのかもしれません。全編を通して、世相や組織にとらわれず自分の頭で考えることの大切さを語っているのに、吉本隆明という名前がこの本の一番の価値かも、と思ったら、少し皮肉な気がしました。
「自分はこれでいいのだ」と思えるのはふつう何歳ぐらいの時でしょうか。ぼくは思えたり、思えなかったり。孔子でも不惑は四十、と時々開き直る。変ですが、「これでいい」とまれに思えるのは、むしろ挫折の後です。なぜか達成感とはあまり関係ありません。達成の後には次の不安がすぐにやってきます。人生を「いい・悪い」でとらえる人の「これがいい」になることと、本当の自己実現とは、どうも、かなり違うと最近は思っています。
最近の「自爆テロ」にふれて、戦時中の特攻隊の人たちを悪く言うことはできないというところでは、なぜかNHKのプロジェクトXを思い出しました。道路公団やダム建設が批判されるなか、せめてあれくらいは瀬戸大橋や黒四ダムをほめなければと思いました。特攻隊の人たちの苦悩も取り上げてくれというのは極論です。でも、「善・悪」に簡単に分けられることなんて何もないのではないでしょうか。