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yurippeさんのレビュー一覧

投稿者:yurippe

40 件中 16 件~ 30 件を表示

紙の本草の海 モンゴル奥地への旅

2003/06/04 00:36

モンゴリアンブルーの空のもと

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「蒼く深く澄み切った空。雲はなく、飛行機も鳥の姿も見えない」そんなモンゴル独特の空の色を、モンゴリアンブルーというのだそうです。

人口256万人(2001年現在)、首都ウランバートル、 国家元首はバガバンディ大統領、主要宗教はチベット仏教(ラマ教)。 通貨単位はツグリク、円換算は1ツグリク=0.11円。距離的にも近く、横綱・朝青龍の活躍などで身近のような気もするのですが、意外と知らない「モンゴル」という国。

本書は、草原の国モンゴルへの憧れと想像を大きく膨らませてくれる、雄大な旅行記です。甘くて濃厚な馬乳酒「アイラグ」、塩茹での羊肉のごちそう、軽やかで勇壮なモンゴルの馬たち、騎馬民族ならではの凛とした馬上の雄姿、移動式円形住居「ゲル」、チンギス・ハーンの時代を髣髴(ほうふつ)とさせる民族衣装デール、牧民の祭典ナーダムの祭……。

椎名さんの優しい目線で描かれたユーモアたっぷりの旅物語と、あたたかくおおらかなモンゴルの人々を活写した高橋さんの鮮やかなカラー写真が、本当に目を楽しませてくれます。いつの間にか自分まで草原の只中にいるような、ステキな錯覚を体験させてくれる作品です。

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紙の本コックサッカーブルース

2003/05/01 02:21

ソフィスティケイテッド・キッチュ

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村上龍は、俗悪なものをスタイリッシュに描き出すことにかけては天才です。
さながら錬金術師のように。
全編を貫く強烈なセックス描写も、彼の手にかかれば、爛熟しきった大都会の片隅で見た酔夢のような趣です。

「丸顔・ワンピースのスワッパーと細面の舞台デザイナーは幼児がオシッコをさせて貰うような格好でセックスを始めた。ウエイトレスは証券マンに足の指を一本ずつていねいにしゃぶらせ、ミツコはすでに二回オナニーによるオルガスムを得てパンティを脱ぎ捨て荒々しくスカートをまくり上げて指を二本おまんこに入れ汚れでも落とすような感じで激しく掻きあげている。カオリは両手をカウンターについて尻を突き出しママからバイブでやられているが双頭バイブが長いためかオレはセルフサービスのガソリンスタンドを思い出したのだった。」
(文中より)

随所に散りばめられた、卑猥(ひわい)な単語の数々。
文面には生々しい淫語が露悪趣味的に連ねられているだけなのに、読み進んでいくうち、この作品が単に性欲を喚起するだけのものではなく、鑑賞に堪える芸術の領域にあることに気づきます。
単なるポルノを超越している一因は、無秩序に見えるエログロ世界を構成しているのが、実は非常に明晰な文章だ、という点にあるでしょう。
明快な文章でグロテスクな幻想世界を描出し、しかも芸術的な美しさすらかもしだす…。『コックサッカーブルース』は村上マジックの真骨頂です。

本書の主人公・堀坂は、ポルノ雑誌が主力商品の弱小出版社を経営する男盛りの三十代。かつては大手広告代理店に勤めていた経歴を持つアウトローで、妻子とは別居中。そんなある日、見知らぬ女が家に現れ、謎のメモを冷蔵庫に残していった—。メモに記されたキーワードが発端となり、堀坂は日本の上流階級の性の禁域へと飲み込まれてゆく。

主人公の独白形式をとるエロと狂気の世界は、村上文学の18番。
SM嬢、変態性癖を持つ金持ち連中、エキセントリックな女、アウトロー中年男性…、と村上龍お得意のモチーフが総結集です。
読み始めたら、彼らのノンストップ変態乱痴気騒ぎに我を忘れてのめりこんでしまうでしょう。
退廃と官能に身を委ねたいひととき、抜群の牽引力を持った本書に、めくるめくエロスの世界へと連れ出してもらいましょう。
※村上龍による独白小説の傑作、類書としては『エクスタシー』(集英社文庫)、『ストレンジ・デイズ』(講談社文庫)も見逃せません。

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ヘビィ級のパンチを浴びた一作

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一流大学医学部卒、研修医・斉藤英二郎25歳。
理想を抱いて医者になった。
けれど、医者って一体なんだ…?

大学病院では、研究論文を量産し、上に取り入る者が出世する。
患者のために駆け回り、無数の手術をこなし、腕を磨き続けた医者に出世はない。
助からないと分かっていても、手術をすれば金になる。
とにかく患者の腹を割け!

英二郎の前に次々と立ちはだかるのは、巨大な矛盾を孕(はら)んだ日本の医療制度。
懊悩する英二郎を軸に、医療の膿(うみ)があぶり出されます。
コミックスでありながら、医療界を震撼させたその読み応えは重量級。
4月11日(金)から妻夫木聡主演で始まるドラマの方も楽しみです。
※手塚治虫さんの『ブラックジャック』もよろしく☆

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紙の本読書案内 世界文学

2003/04/02 22:46

世界の文学に出逢える本

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筆者は言うまでもなく、『月と六ペンス』などの作品で知れられるイギリス文学の巨匠です。
そして、大変な読書家でもあったモームは、後世の本好きのために素晴らしいガイドブックを遺してくれました。
本書は「イギリス文学」「ヨーロッパ文学」「アメリカ文学」の3章からなり、それぞれの名作の魅力を余すところなく伝えてくれます。
スウィフト、ディケンズ、エミリー・ブロンテ、セルバンテス、ゲーテ、トルストイ、モンテーニュ、スタンダール、プルースト、ホーソーン、メルヴィル、ポー……etc.
何だか見ているだけでもワクワクするラインナップです!
 
「以下にかかげる書物は、あなたが学位をとる助けにもならなければ、生計を立てる役にも立たないであろう。そのかわりに、あなたがより充実した生活を送ることには役立つであろう。」(本文より)

このポリシーのもと、モームが編んだ本書は世界の文学の入門書として、比類なき秀作です。
「難しそうだから…」と敬遠しがちな文豪たちの著書も、するりと手に取れるよう、心のバリアを溶かしてくれるステキな読書案内です。

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紙の本王妃の離婚

2003/04/02 16:27

青春を取り戻したいお父さんたちへ

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見渡せば世は不景気、気を吐いていた学生時代の青春はどこへやら−。
そんなお父さんたちに贈る、エールのような一冊だと思います。

1498年パリ。
カルチェ・ラタンの伝説の男が帰ってきた。
その年、国中の耳目を集めた離婚裁判が行われた。
原告は美男子の誉れ高いフランス王ルイ12世、被告は醜女で知られた王妃ジャンヌ・ドゥ・フランス。
敬虔な王妃には何の罪もなかったが、男盛りの国王が醜女の妻を離縁したいと思うのは当然の成り行きだった。
もちろん判事も陪審も皆、国王の寵臣たちで占められ、国王の勝訴は最初から決まっていた…はずだった。
白々しい茶番の中で、まるで役に立たない弁護団に剛を煮やし、王妃は新たな弁護士を雇い入れる決意をする。
落ちぶれた田舎弁護士、フランソワ・ベトゥーラスは、かつて知性の殿堂パリ大学で音に聞こえた気鋭の学僧だった。
数々の武勇伝を残し、その後も伝説として語り継がれるほどの−。
そのフランソワが立ち上がった。
あまりに理不尽な仕打ちを受けている王妃のために。
そして収束しかけていた裁判の成り行きは一転する。

豪快な法廷ドラマにして、歴史小説としても非常に楽しい読み物です。
閉塞した日常に疲れた心も、この作品の読後は充電満タン間違いナシ。
第121回直木賞受賞の、エンターテインメント傑作です。

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紙の本バカの壁

2003/06/07 10:11

「壁」を越えるものは何

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まずは表題のインパクトが見事です。目にしたら思わず手に取りたくなってしまう誘引力を秘めています。

表題の「バカの壁」とは養老先生が命名した“知りたくないことに耳を貸さない”人間の習性です。この習性があるため“「話せばわかる」は欺瞞である”とも断じています。解剖学者の養老先生ですが、書中では人間の肉体にではなく「わかっている」「知っている」と安易に思ってしまう人間の意識の危うさに鋭くメスを入れていきます。以下は文中からの抜粋です。

「話してもわからない」ということを大学で痛感した例があります。イギリスのBBC放送が制作した、ある夫婦の妊娠から出産までを詳細に追ったドキュメンタリー番組を、北里大学薬学部の学生に見せたときのことです。ビデオを見た女子学生のほとんどは「大変勉強になりました。新しい発見が沢山ありました」という感想でした。一方、それに対して、男子学生は皆一様に「こんなことは既に保健の授業で知っているようなことばかりだ」という答え。同じものを見ても正反対といってもよいくらいの違いが出てきたのです。男というものは、「出産」ということについて実感を持ちたくない。だから同じビデオを見ても、女子のような発見ができなかった、むしろ積極的に発見をしようとしなかったということです。つまり、自分が知りたくないことについては自主的に情報を遮断してしまっている。ここに壁が存在しています。(文中より)

また、2001年9月11日の米同時多発テロを例にとって、“テレビで二機の飛行機がツインタワーに突撃する映像を繰り返し見ただけで、あのときニューヨークで起きたことを本当に「わかって」いると言えるのか”と問いを投げかけてもいます。

他者と同じ情報を共有している、という意味での「わかる」ことの危うさを軸に、
養老先生は現在の教育の怪しさや、子どもたちがキレる現象へと議論を発展させていきます。その論旨には諭される部分も多々あり、読み応えも確かにあります。

しかしこの本で残念な点は、「バカの壁」をどうすれば越えられるのか、あるいはどうすれば少しでも壁を低くできるのかについての提議がなされていないことです。自ら理解を遮断してしまう、その心理的バリアを越えることができるもの。それが「想像力」なのではないでしょうか。

生まれた国、育った環境、家庭の事情…。それらが人間をつくり、同時に異なる事情の人間への理解を遮断します。けれども、人間には想像力があります。全く異なる事情の人間が生み出した多くの書物や文化には、それに触れるものの想像力をかきたて壁を越えさせる力があるのではないでしょうか。もう少し壁を克服する手段についての言及が欲しかったように思いました。

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紙の本プラダを着た悪魔

2004/05/31 00:53

やっぱり「暴露本」はオモシロイ!

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 『プラダを着た悪魔』、サイコーです。モード界って、マジおもしろい! と快哉を叫びたくなる一冊でした。

 ヒロインのアンドレアは、ひょんなことから世界一のファッション誌『ランウェイ』編集部にアシスタントとして就職。「何百万という女の子の憧れの職業」を射止めたアンドレアの恐るべき勤務内容とは?!

 マノロの新作ハイヒール、グッチやプラダのお洋服などはもらい放題(しかもタダ!!)、マンハッタンの最高級レストランでの食事も全部経費、夜ごと開かれるパーティーにはハリウッドスターをはじめセレブがウヨウヨ!! けれど朝7時から深夜まで、悪魔のような編集長、ミランダ=プリーストリーに奴隷のごとく使いっパシリをさせられる毎日。その内容たるや壮絶です。

 実際、作者のローレンー=ワイズバーガーがアメリカ版『VOGUE』編集部でアシスタントととして働いていたことを考えれば、鬼上司ミランダをVOGUEの名物編集長“アナ・ウィンター”に置き換えると、抜群のリアリティ。(しかも、アナ・ウィンターはプラダ好きでも有名です!)

 コレクションシーズンは、あらゆるモード雑誌にそのファッションがフォーカスされる、あの素晴らしくお洒落なモードの女帝、アナ・ウィンターって、こんなにキョーレツな人なの?! と、勘繰ってしまったり…。

 もちろん本書は小説である以上、フィクションですが、限りなくノンフィクションに近い楽しみを味わえるモードマニア必読の一冊。『ニューヨーク・タイムズ』や米国『アマゾン』のベストセラーリスト上位に入り続けた実績も頷けます。モード界の内幕を暴いたこの作品、20世紀FOXでの映画化もとても楽しみです。

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紙の本世界比較文化事典 60カ国

2004/02/13 01:33

世界を駆ける、すべてのビジネスパーソンへ

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「外国人だから知らない」よりも、「外国人だけど知っている」方がずっとステキだと思いませんか?

たとえば、家の中で靴を脱ぐ習慣のない欧米人が、日本のわが家の玄関先で靴を脱ぎ、しかも丁寧に揃えてくれたら…。
「外国人だけど、知っているのね!」とたいへん好感が持てます。だって、日本の習慣を知っていてくれた=日本の文化に敬意を払ってくれた、相手への感謝の気持ちが沸きますもの。当然、その外国人への好感度は一気にアップです。

好印象を持たれた上でお付き合いを始めた方が有利なのは、恋愛も海外ビジネスも一緒です。意中の相手に合わせる、それはいかなる時代のいかなる国でも、ラブ(or商談成立)を手に入れるための「基本のき」であります。
世界60カ国の文化を簡潔にして、要領よくまとめた本書があれば、海の向こうの彼や彼女とも、きっとうまくやれるはず。すべての国について、以下の内容が記されています。

 ■国の概要(歴史/政体/言語/宗教/人口統計)
 ■文化的特徴(考え方/判断基準/価値観)
 ■ビジネス慣行(アポイントメント/商談/接待/時間)
 ■儀礼(あいさつ/名前の呼び方/身ぶり言語/プレゼント/服装)

本書には、相手を知らなかったがゆえのこんな悲劇も記されています。

大手自動車メーカーのフォード社は、ブラジルでFord Pintoという名の車を販売しようとして失敗した。Pintoがポルトガル語のスラングで「小さなペニス」を意味するということを知らなかったのだ。なるほど、誰もPintoに乗りたがらなかったわけである。(文中より)

このほか、くれぐれも、インド人の社長さんの幼い御子息の頭をなでたり、コロンビアの社交場へ定刻通りに行ったり、ウルグアイ人社員に家族についての質問をしたりなど、されませんように。インド人にとって頭は神の宿る神聖な場所、コロンビアでは遅刻が美徳、ウルグアイは長い独裁政治によって多くの痛ましい犠牲者が出ているからです。

「郷に入っては郷に従え」。手垢にまみれたことわざですが、至言です。ビジネスパーソンの方々の、海外赴任・海外出張のお供に、ぜひともオススメしたい一冊です。

—参考—
【収録されている60カ国】アルゼンチン、オーストラリア、ベラルーシ、ベルギー、ボリビア、ブラジル、カナダ、チリ、中国、コロンビア、コスタリカ、チェコ、デンマーク、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、イギリス、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、グアテマラ、ホンジュラス、香港、ハンガリー、インド、インドネシア、イスラエル、イタリア、日本、クウェート、マレーシア、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ニカラグア、ノルウェー、パキスタン、パナマ、パラグアイ、ペルー、フィリピン、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、サウジアラビア、シンガポール、韓国、スペイン、スリランカ、スウェーデン、スイス、台湾、タイ、トルコ、ウクライナ、アメリカ合衆国、ウルグアイ、ベネズエラ 
…以上の国にお出かけの方には、きっと損にはならない一冊だと思います。

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紙の本市場占有率 2004年版

2003/11/11 01:16

トップシェア攻防戦に待ったなし

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今年も出ました、日経の『市場占有率』。
約180品目のシェア(市場占有率)が収録されており、様々な業界・企業の動きを数値で知ることのできる貴重なデータブックです。

例えば自動車のトップシェアはトヨタ、パソコンはNEC、などのメジャーな業界は誰もが知るところです。けれど、自動販売機、システムキッチン、アイスクリーム、産業用ロボットのトップは——? というと、なかなか出てこないのではないでしょうか。意外な品目で意外な企業が活躍していたり、まったく知らない企業が実は身近な製品のトップシェアを持っていたり…。本書は企業とシェアの視点から、経済を俯瞰させてくれるまたとない一冊です。

長引く景気低迷とデフレの影響で、シェアの寡占化が進んでいる。市場が拡大しないなかではブランド力、マーケティング力、価格競争力が問われる。トップ企業を中心とした上位企業のシェアが高まるのは当然。(文中より)

と、近年のシェアの動向は、上位企業が下位企業に差をつける二極化だと本書は分析しています。こうした興味深いシェア動向の分析と共に、数値から業界各社の経営戦略をウラヨミするのも本書の醍醐味です。

経営戦略の極意は「勝ちの演出にあり」といわれます。どんなに調子が悪くても、いかに「勝ち」を演出するかが重要というわけです。たとえば、サントリーのビール・発泡酒のシェアは10.5%(本書287ページ)。アサヒ、キリン、サッポロの後塵を拝し、社内的にも不採算部門であるため、はっきり言ってビール業界では「負け組」です。けれど、サントリーには「負け組」のイメージはありません。それどころか、オシャレでスノッブなイメージ。もちろん、ビール以外の清涼飲料やウイスキーの好調があるわけですが、明らかなイメージ戦略勝ちです。

また、ソニーのプレイステーション。本書(103ページ)によれば家庭用ゲーム機のシェアで、78.2%の圧倒的トップシェアを誇ります。かつて栄華を謳歌した2位の任天堂に大差をつけてのトップ独走です。ソニーの圧倒的な強さを見せつけられた感がありますが、実はプレイステーション本体(ハード)は、小売価格が原価割れをしているため、売れば売るほど赤字です。ゲームソフトで儲けるビジネスシステムなので、ハードはとにかく赤字を承知で普及させなければならないのです。ですから、ハードがいかにシェアトップといえどもソフトが売れなければ大赤字。昨年はプレイステーションに特筆すべきメガヒットソフトはありませんでしたが、やはりシェアNo.1という称号は圧倒的な「勝ち」の演出です。

そんな各社の「勝ち組」演出戦略をウラヨミするのも一興。数値は時に言葉以上に物語ります。精読、深読み、斜め読み—。どんな読み方でも、きっと数値は何かを伝えてくれるはず。『市場占有率』は、ビジネスマンにとって、きっと読んで損にはならない一冊です。

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紙の本寂しい国の殺人

2003/09/05 12:09

時代を見はるかす、先鋭な眼差し

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何気なく書棚から抜き出した本のページを繰ると、ドキッとする警句に行き当たった。誰しもそんな経験があるのではないだろうか。久しぶりに『寂しい国の殺人』を取り出し、身がすくんだ。やはり村上龍は時代のフロントランナーである。少々長くなるが、警句に満ちた以下の文章は本文からの抜粋だ。

「金とブランド品にしか価値を認めない女子高生は今の日本人の価値観を忠実になぞっているだけだ。言うまでもなく、金とブランド品という価値観は近代化を果たしていない開発途上国のものだ。」
「わかりやすい例として、芥川・直木賞とレコード大賞がある。この十年間の芥川・直木賞の受賞者を十人あげてみろ、と文芸編集者に質問してもほとんど答えられない。この五年間のレコード大賞にしても同じことだ。国民的な賞を設定して、国民への励みを与える。国民は受賞者を讃え、尊敬する。というような構図は開発途上にある国のものだ。レコード大賞にしても、役目は終わっているのだと、ほとんどの国民が無意識のうちに気づいている。この十年間の首相の名前をほとんど覚えていないのも、甲子園の全国高校野球の優勝校をすぐ忘れるのも同じ理由に依る。」
「だがどんなメディアもそういうことを言わない。もう国家的な目標はい、だから個人としての目標を設定しないといけない、その目標というのは君の将来を支える仕事のことだ、そういう風にわかりやすく親切にアナウンスしてあげないとわからない人々がいる。子どもたちだ。」
「今この国で尊敬されているのは、家族を顧みず猛烈に働くサラリーマンではない。コマーシャルに登場し微笑んでいるのは、先端機器を上手に使いこなし余裕のある生活をして趣味を楽しむ人々であり、雑誌のグラビアで賞賛されているのは、海外旅行によく行き、おしゃれをして、スクーバダイビングやガーデニングやアウトドアライフを楽しむ人である。女性でも、働く夫を支え家庭を守る主婦がテレビドラマの主役の座を降りて久しい。実社会で働き高収入を得て、華やかな恋をして、人生を楽しむ女性だけが脚光を浴びている。」
「それではどうやってそういう余裕のある生活を楽しむ身分になればいいのか、誰も子どもたちに教えない」
(文中より)

不況のさなか、ルイ・ヴィトンは都心の最先端スポットに路面店をラッシュでオープンさせている。一方で、線路への飛び込み自殺をした中年男性の自宅に女子高生の腐乱死体があったり、練炭自殺した男の家には渋谷で遊んでいた4人の女児が拉致監禁されていたり…。コギャル、エンコー、ブランドブームが隆盛を極めたその後の世の中は、今、一層気味が悪くなった。一体どうなっているのだろう——、その有効なヒントが本書には散りばめられている。

女子高生、ネット社会、金融不安、不況、ひきこもり…。村上龍はいつだって、新しい現象や不可解な時代の産物に向き合ってきた。評価の定まらない新事象をとりあげるには勇気がいる。それ相応の見識が必要とされるからだ。大抵の識者は、見当違いを言って恥をかきたくないがため、従来の枠組み内で無難な発言をするか、だんまりを決め込む。だが村上龍は果敢だ。時には違和感のある記述もあるが、そうした違和感を補って余りある鋭い警鐘が、ガンガン鳴り響いているのである。しかし、違和感とて新しい世の時評にはつきもので、むしろ感じないほうが思考停止の受身である危険信号なのだ。

不可解な世の中に「なぜ?」の気持ちを抱いたとき、エッジを見つめ続ける作家が生み出したこの随筆集は、きっと紐解くヒントをくれる。本書の一読は、決して損ではない。

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紙の本取引

2003/08/24 22:51

疾駆する小役人

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『連鎖』に続く、真保裕一の小役人シリーズ第二弾。

事件は現場で起きている、という青島刑事の名言を引き合いに出すまでもなく、現場の名もない役人こそが最も矛盾とひずみを体感している。末端の役人を主役に据えるこのシリーズは、政官財の癒着をリアルかつダイナミックに見せてくれる極上のサスペンス・スリラーだ。

本書の主人公は公正取引委員会の審査官、伊田。伊田は、フィリピンへのODA供与で黒い利権をむさぼるゼネコン・大手総合商社・政治家たちの談合体質にメスを入れるべくマニラへ飛ぶ。ところが談合の実態を捜査する任務の傍ら、内偵対象者であり高校時代の友人でもある遠山の娘の誘拐事件捜査も手伝うことになり、物語はこの2つの捜査を軸に展開してゆく。そして、談合疑惑と誘拐事件の2軸が1本の太い線となり、迎えられる驚天動地の結末とは——。

真保裕一の傑作は『ホワイトアウト』のみにあらず。
抜群の構成力と巧みなストーリーテリングが冴え渡る670頁の肉厚ハードボイルドミステリーだ。やや古い作品だが、時代ズレの心配はご無用。今なお色褪せない題材である。ヘビィなミステリーを愛する方をも、十分に唸(うな)らせることができるだろう。

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紙の本ヤマトナデシコ七変化♡ 7

2003/06/26 17:38

ホラーな彼女

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久しぶりに、新刊発売日をチェックせずにはいられないコミックスに出会いました。

オシャレや恋とは無縁の根暗なヒロイン、スナコに4人の美少年がレディ教育をするという、シンデレラ物語の第7巻。血しぶきが飛び散り、チェーンソーやホルマリン漬けの生物が登場するなど、ホラー要素も盛りだくさんで、ありきたりのシンデレラ物語とは一線を画す本作。耽美でキレイな絵と、コミカルで豪快なストーリーは読み始めたら止まりません。

ヒロインのスナコは、広大な屋敷の一角にある暗幕で覆った闇の部屋に棲息する、うら若き女子高生。かつて好きな人から「ブス」と言われて以来、自分の容貌にすっかり自信をなくし、暗闇の部屋で親友の人体模型と、ホラー映画に心を癒される日々を送っています。ジェイソンとフレディ(『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』の殺人鬼)をこよなく愛するスナコが最も苦手なものは「美しいもの」と「光の当たる場所」。そんな孤高の彼女を美しいレディにするべく奮闘しているのが屋敷に下宿している4人の美少年、恭平・ 武長・蘭丸・ 雪。街中のアイドルである彼らとの同居は女の子たちの憧れですが、スナコにとってはまさに拷問。時おり美しさが垣間見えるものの、いっこうにレディにならないスナコですが…。

オンナを捨て、ホラーに生きる不気味な彼女ですが、正義感と優しさは人一倍で、料理上手という意外な特技もあります。噛めば噛むほど味が出るスナコの魅力と、ゴージャスな美少年4人組の織りなす物語は本当に爽快です! 笑いとホラーと女の子の夢が詰まった傑作です。

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紙の本顔が掟だ!

2003/06/16 00:32

顔のチカラ

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「論より顔。目に見える事実が重要なのだ」—女性誌や週刊誌の映画評などで活躍中のイラストレーター兼エッセイスト、石川三千花さんが数々の有名人を例にとり独自の「顔論」を展開します。

“リッチなクール・ガイ”が売りのリチャード・ギアをクワが似合う「農夫顔」と断じ、マイケル・ジャクソンのスター根性にエールを送りつつも「恐怖のろう人形顔」との評を下し、田中真紀子さんの有無を言わさぬド迫力の顔力を分析するなど、ふんだんなイラストつきで「顔力の持ち主」たちを面白おかしく徹底追究。「顔面ウォッチャー」を自認する石川さんの的確な批評に舌を巻きながらも、冴え渡る毒舌に抱腹絶倒です。

  顔に内面が出ようが出まいが、どちらでもいい。
  見たままが、すべてだ。
  性格が悪くたって、顔が時代にマッチしていれば一流のモデルになれる。
  ゴージャスな装いをしていても、ビンボ臭い顔ではしょうがない。
  もっとわかりやすいのは、格闘技やヤクザもんの世界。
  顔つきで勝負はついている的に、顔の力がものをいう。
  大なり小なり、人の顔はそれ自体が発する力を持っているものだ。
  (文中より)

心理学者メラニアンの法則によれば、人が初対面の相手に抱く第一印象は約6秒で決まるそうです。その第一印象の内訳は、顔や服装などの外見から得られる視覚的情報=非言語が90%以上を占め、話の内容=言語は6%程度であると言われています。つまり中身よりも外見、というわけです。したがって石川さんが主張している「論より顔」は心理学的にも至極まっとうな提言。本書は世間に根強く蔓延(はびこ)る「人は中身だ!」の呪縛から、読み手を気持ちよく解放してくれます。

顔で人を判断するような人間は薄っぺらだ、という一般論のもと、何となく反論できず肩身の狭い思いをしているメンクイの方々にオススメの一冊です。読後、私も堂々とメンクイ道を邁進しております。

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人と時代を創り出す、美しき衣装たち

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映画を語るとき、その衣装デザインが話題になることはしばしばあります。
しかし、あくまでも衣装は本編を引き立てる脇役で、主役として語られることはあまりありませんでした。
その「映画の中の衣装」を主役として取り上げ、ふんだんなスチール(映画の写真)やスタイル画を用いてモードの歴史を語り尽くしたのが本書。

「20世紀のファッション」「歴史を彩るセレブリティー・ファッション」「シネ・モード/ア・ラ・カルト」「アカデミー衣装デザイン賞小史」の4章からなり、筆者は映画史とモード史を双方向にリンクさせながら、読み手にわかりやすくファッションの魅力を伝えてくれています。

マレーネ・ディートリヒ主演の『モロッコ』(1930年)は、女性のファッションに初めてパンツルックを登場させました。彼女が作中で披露したパンツルックは「女性はスカートをはくもの」と決まっていた概念を覆し、守旧派の人々からは大変な非難を浴びたものの、その粋なスタイルで先進的な女性たちを魅了しました。
男性のもの、と決まっていたスタイルを女性が導入することによって、女性の社会進出がファッションの点からもなされていったという例です。

オードリー・ヘップバーンのイメージもまた、衣装と一体です。
『麗しのサブリナ』のぴったりとした黒のパンツ姿、『マイ・フェア・レディ』の大きな黒白ボーダー柄のリボンがついたドレス姿、『ティファニーで朝食を』の黒いイブニングドレス姿…などなど。こうした衣装がなければ、オードリーはこれほどまでに人々の記憶に残り続けることはなかったでしょう。
数々の印象的な衣装が、オードリーという名女優を作りあげたと言っても過言ではありません。

この他にも、タフでハードなイメージの醸成に成功しているハンフリー・ボガートのスタイルや、リッチで優雅な雰囲気の「G・Gルック」を流行させた『華麗なるギャツビー』のロバート・レッドフォードのスタイル、史劇作品で振り返る歴史上の豪奢なファッション、またファッションを語る上で欠かすことのできないデザイナー達の秘話などをはじめ、本当に盛りだくさんの内容となっています。

たかがファッション、と侮るなかれ。
ファッションには時代や人を創り出す力が確かにあることを、書中の数々の実例は教えてくれます。

本書は、映画ファンの方にはモードの視点で映画を観る新しい楽しみを、ファッションフリークの方にはハリウッドスターにまつわるファッションの薀蓄(うんちく)を、それぞれ提供してくれる大変お得な一冊です。
映画通、ファッション通を自認する方々には必携のバイブル!
華やかな銀幕とファッションの世界に、ひととき心を遊ばせてみませんか。

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フランス流の格付けは、華麗なるメニューで

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タイトルからして食欲・読書欲ともにそそられる一冊です。
エリゼ宮=フランス大統領官邸が来賓に供する晩餐会メニューには、フランス政府の相手国に対する敬意の度合いが、全て込められているといわれます。
その説が、筆者の綿密な取材に基づく詳細なメニュー紹介とともに裏付けられます。

クリントン大統領に供されたワインは「ル・モンラッシェ 1986年」でブルゴーニュの最高格付けの「特級」。
同時期にフランスを訪れた江沢民国家主席に出されたものは「シャトー・ディケム 1981年」。
これはボルドーの赤ワインだが格付けからは漏れており、社会主義国の元首ということで、恐らくランクを落としたのだろう。エリゼ宮では同じ西側同盟諸国か、準同盟国か、それとも社会主義国かで、供するワインにはっきりと差異をつける。(文中より)

ワインやフランス料理の薀蓄(うんちく)本としても勿論面白いのですが、フランスの食卓外交の視点で現代史を概観する、という楽しみも存分に味わえます。
エリザベス女王と天皇陛下ではどちらの料理が格上なのか、ゴルバチョフ大統領をもてなした際のトリュフの産地は二流だった…等々。
来賓たちの、国際社会における重要性や歴史的意義が、おのずと浮かび上がってきます。

それにしても、なんとフランス人は料理に心血を注ぐことでしょう!
大統領の外遊には必ずエリゼ宮の料理人が同行し、外遊先で答礼の宴を催すといいます。
そのため、食材、食器、テーブル掛けなどあらゆるものを空軍特別機に載せてフランスから持参するそうです。
武器弾薬のかわりに、フォアグラやセーブル焼きの食器、ワインやシャンパンを積む空軍機は、世界中でもフランスだけではないでしょうか?
料理に差をつけるなんていやらしい、と思いつつもフランスが妙にいとおしくなる、とても華麗な作品です。

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