ホラーだけじゃない！SF＆ミステリーもおもしろい小林泰三の小説

頭上に地面、足元に星が広がる天と地が逆さまの、人間が生きていくには過酷すぎる世界で楽園「地国」を目指す。そんな設定とストーリーで星雲賞日本長編部門を受賞したSFです。間に差し込まれる登場人物のエピソードが強烈な印象を残し、これだけでも読む価値があります。著者の奇想天外っぷりが存分に楽しめる長編です。

SF7編が収録された短編集です。時間の流れが違う世界での恋愛譚である表題作、冷凍睡眠中に見る仮想世界の話「キャッシュ」、戦争を終結させる方法をSF的に描いた「独裁者の掟」など傑作揃いです。地球の物理法則が通用しない世界でセンス・オブ・ワンダーを体感できる、SFファンにもSF初心者にもオススメの一冊です。

犯人当て、倒叙、安楽椅子探偵、日常の謎などさまざまなジャンルのミステリーが楽しめる連作集ですが、捻りが加えられているため一筋縄ではいきません。とはいえバカミスっぽい話が多く、肩の力を抜いて読むにはちょうどいい、著者の別の一面を垣間見ることができる一冊です。

なんでも直すという玩具修理者に死んだ弟を直すよう依頼するデビュー作「玩具修理者」、ホラーというよりは時間SFの傑作「酔歩する男」の2編を収録。展開される奇妙な論理とも言うべき登場人物たちの会話に、自分の存在をもぐらつかせるような酩酊感が味わえることでしょう。

「不思議の国のアリス」をモチーフとした夢世界で殺人が起きると現実世界でも人が死に、二つの世界がリンクしているという舞台設定で事件解決を目指すミステリーです。「アリス」のおなじみのキャラクターが登場し、癖のある会話で著者独特の世界が堪能できます。『クララ殺し』『ドロシイ殺し』へと続くシリーズ第1弾です。