ブックキュレーターhonto編集員
はっきりしないことに意味がある。物事の「間(あわい)」を描いた本
生と死、男と女、美と醜。物事すべてに白黒つけばいいけれど、生きていれば曖昧な「間(あわい)」に立ち尽くすことがあります。心細く不安ですが、「人間」を人の間と書くように、はっきりしない場面にこそ人間の本質があるのかもしれません。「間」を描いた本は懐中電灯のように私たちの足元を照らし、不安のなかを歩む力になってくれるはずです。
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時は大正。画家を志すも芽が出ず焦燥する主人公は、死者と意思疎通する能力を持った画家と出会います。彼と過ごす日々は奇妙な出来事だらけ。やがて生前の未練や執着から、生ける屍となった人々が起こす悲しい事件に巻き込まれてゆきます。割り切れない感情こそ人間の証、今を存分に生きよ、と語りかけてくる小説です。
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祭の夜、少年はいつの間にか親友とともに銀河を駆ける鉄道に乗っていました。現実に戻った彼には悲しい報せがあり・・・。時空の間で少年が得た想いは、つらい現実を生き抜く力になります。岩波文庫版は「ブルカニロ博士」が登場する希少なバージョン。歴史や宗教の葛藤を超えたい、と願う博士の言葉は一読の価値があります。
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著者は、生まれてすぐこの世を去った姉に体を貸し、街を歩き、物を考え、書いてみることにしました。姉が生きていれば自分は生まれず、自分が生きるには姉がいてはならない。この世で共存し得ない姉と思考の間で対面することで、著者の生への不安とこれからの希望が浮き彫りになります。白にこだわった装丁も秀逸です。
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柳宗悦コレクション 3 こころ
柳 宗悦(著) , 日本民藝館(監修)
日本の手仕事が再び注目され、「民藝」という言葉もよく使われています。民藝運動の中心人物である柳宗悦の哲学をまとめたこの一冊。柳は、真の美しさとは見かけの美醜ではないばかりか、両極端な美醜という概念から自由になった段階だと説きます。白黒はっきりしないことは悪ではなく、もう一歩上の次元への足がかりなのかもしれません。
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