ブックキュレーターhonto編集員
読書家にこそオススメしたい「書物」そのものをテーマにした小説
書物とは無限の可能性を秘めている宝箱であり、その魅力はひと言で語り切れません。文学の世界では書物という存在を物語に組み込み、書物に魅せられた人々の奇妙な人生や体験が表現されてきました。純文学、SF、ホラー、サスペンスなどジャンルの壁を越えて描写され、愛読されてきた「書物」の世界。そんな書物をテーマにした小説を紹介します。
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書物の所持を禁じられた近未来を舞台に、焚書を担当する昇火士(ファイアマン)の数奇な運命を描き、映画化もされたレイ・ブラッドベリの代表作。読書が悪と見なされる世界で、人々との出会いのなかで自分の任務に疑問を抱く昇火士の視点を通して、統制社会の脅威と「読書」の意義を明らかにしていくSF小説の傑作です。
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『ネクロノミコン』の物語
H.P.ラヴクラフト(著),中央東口(著),森瀬繚(訳)
アメリカの怪奇小説家ラヴクラフトが創始したクトゥルー神話において、重要なアイテムとなる魔道書「ネクロノミコン」にまつわる小説を8編収録したアンソロジー。未知の文明、狂気の画家、異形の存在。魔道書に翻弄される人間の表現が印象的であり、後世の作家たちに受け継がれていく宇宙的恐怖の源流が辿れる一冊です。
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ウクライナの作家、ミハイル・エリザーロフによる問題作。ソ連崩壊後のロシアで7冊の希少本を巡り、「読者」たちによる共同体「図書館」と「図書室」が血なまぐさい激戦を繰り広げます。その強烈な戦闘描写は圧倒的です。ソ連時代に対する風刺に加え、冒険記と生きるか死ぬかのサバイバルという側面を兼ねたインパクトのある快作です。
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