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あなたの S・F はなんですか。
2009/10/07 13:00
14人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
辻村作品には少年少女たちの危うく脆く、繊細な感情がとてもリアルに描かれる。どこか取り繕わなくてはいられないように毎日を生きている、そんな危なっかしい彼らが登場する。
だからこそ「ああ、自分もそうだったよ」とか「そうなんだよな」と共感し、読者の胸に突き刺さるのだ。
ヒロインはSFをS=少しF=ナントカで名前をつける遊びを続けることで、自分以外の世界をカテゴライズする、名前をつけることで個性を付けて、顔を乗っけて「この人はこういう人」にする癖をもっている。
そうやって自分以外の「みんな」をSF(少しナントカ)に位置づけ、少しってあいまいにしておくことでいつも逃げ道を作っているのだろう。
彼女はそうやって自分のSF(=少し・不在)に酔い、現実から逃げ・・・いや、酔っていることにも気がつきたくない、正直言ってちょっとした困ったさんだ。「みんな」の世界に登場できないでいる自分がもどかしくて嫌で、認めたくないから「少し」不在で安心しておく。大人から見れば「甘ちゃん」で片付けられてしまう孤独な子、かもしれない。
けれど、誰でも覚えがあるんじゃないか?とふと思う。
「あの人はちょっと・・・だよね。~~っていう感じで。ーーっポイとこあるね」は日常茶飯事。日本人は断定を嫌う民俗だと言う。だから、「少し」は心地いい。
でも名づけることで安心する、という行為は何も日本人に限らない。人間万国共通だ。
主人公リホコは自分が入っていけない世界の「みんな」をSF少しナントカと名づけて自分の側の世界に登場させる。そうすることで自分が世界に少し不在=少し存在することにしている。
私はこういう感覚をうまく書き上げる辻村作品が好きだ。
流氷の中に閉じ込められて息も絶え絶えになっている凍りのクジラは、リホコ自身。
氷の中にいるかどうかも解らないで、なんだか毎日息苦しくしているのは私。
けれどこうした作品が出てくれることで、私に酸素を送り込んでくれる、いや、二酸化炭素を吐き出させてくれる。だからわたしは、SF=すごく、ふんばっていけるのだ。
読んだあと、また読み返したくなります
2012/02/15 21:06
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:お月見 - この投稿者のレビュー一覧を見る
辻村さんの小説のヒロインは、気が強くて、意地っぱりで、友人はいるけど孤高で誇り高い。そして美人でおしゃれ番長なイメージがあります。
だけど繊細で、いろんなとこを深読みしすぎちゃって疲れるし、実はもろい。
「凍りのくじら」も、思春期にふくれあがる自意識と他者、世間とのずれにもがく主人公が痛々しくて、傍目にも、本人にも自覚がないけど、実はかなりあやういとこにきていて読んでいてヒリヒリしました。
そして男性キャラは、優しくて、クール。寡黙な天才肌の人が多い気がする。(実に私好みの設定です)
意外に女子キャラのほうが、強そうなのにどっかなげやりであきらめてて、男子キャラのほうがあきらめていそうで、なげていない、達観した頼もしさがあるんですよね。
この作品は少女の成長と、少年の成長を軸に描かれていて、ラストにはちょっとしか仕掛けもあるので、読み終わったあとに、またはじめから読んでみて、このシーンには、こういう意味があったのかな、と確かめるのも楽しいです。
また別のお話なのですが、「ぼくのメジャースプーン」にも共通の人物が出てきて、あわせて読むと面白いですよ。そのせいか、本書と「ぼくのメジャースプーン」は、私の中では少年少女の成長ものとして、セットで楽しみたい存在になっています。
ドラえもんの道具が、私たちを照らすとき――
2009/08/17 18:08
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kou - この投稿者のレビュー一覧を見る
(あらすじ)
「少し・不在」な女子高生・理帆子のお話。
どこにでも溶け込める、でもいつでもどこか覚めている彼女は、5年前に失踪した父親の影響から、ドラえもんに絡めて「少し・ナントカ」で人の個性を見る習慣を持っている。
「ドラえもん」が大好きで、著名な写真家でもあり、自分の余命が幾ばくもないと知って失踪した、大好きだった父親。その数年後に発病して入院中の「少し・不幸」な母親。
家でたった一人で生活している理帆子は、「少し・フラット」な先輩・別所から写真のモデルを頼まれてから、少しずつ自分の内面を語り、覗き込んでいく。
けれど同時に、「少し・腐敗」だった元彼・若尾はしつこく理帆子につきまとい、その腐敗の度も以前の比ではなくなっていき、また母の病も深刻になっていくのだが・・・
おもしろかった!!
辻村作品も4作目なので著者お得意の叙述トリックにも慣れ、そこにはそれ程驚きもしませんでしたが、そんなのはおまけで、今回は理帆子の精神のありかたと、その揺れが、とっても丁寧に描かれていて共感できました。
本が大好きなところとか、色々自分が共感しやすいところがあったのも理由の一つでしょうが、それ以外にも、ドラえもんの道具で色々な人や自分の傾向を説明するところが分かりやすく興味深かったし、何よりそこで改めて認識されるドラえもんの世界のやさしさに、じんわりきました。
そう、私も理帆子ほどではないけれど「ドラえもん」好きです。欲しいものは?と聞かれたら「どこでもドア」と答えるくらいには。
だから今作は、ミステリというよりは、ミステリ風味(いやむしろドラえもん風味)の理帆子の成長ものであり青春小説です。
現実を見つめ、自分の傲慢さも冷淡さも孤独も甘えも自覚しながらどうにもできずにきた理帆子が、怯え、逃げ、けれど少しずつ大切な人を見つめ、人に助けられ、ここに「生きている自分」を見つけていくまでの物語。
これまでに読んだ辻村作品の中では、これがダントツで好きですね。一番自然な仕上がりになっていた気がします。そして一番自然に楽しめました。あと途中涙が止まらない箇所も。家で読んでいてよかった。
ドラえもんの長編映画も見たくなってしまいました。
久々に胸に刺さった
2018/05/02 11:33
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『凍りのクジラ』は久々に胸に刺さりました。
カメラマンだった父・芹沢光(せりざわ あきら)の名を継いで新進フォトグラファーとして活躍する芹沢理帆子(せりざわ りほこ)がカメラをとるきっかけとなった高校時代を振り返り、その原体験から自分の写真に感じられるという「光」の説明を試みます。25歳の理帆子が登場するのはプロローグとエピローグのみで、本編は彼女の高2時代が描かれています。胃癌を患い、家族に迷惑をかけたくないと父が失踪してしまってから6年後、母もがんに侵されて、「持って2年」と言われたその2年が過ぎようとしていました。父と「藤子不二雄先生」の思い出。母との関係。迫ってくる死の予感と取り残される不安。「飲み会」を通じて知り合ったオトモダチ。その中で一人進学校に通う理帆子は浮いた存在。学校での親友にはまた別の顔を見せ、本音を隠す。彼女の(進学校にしては)派手な容貌が彼女を浮いた存在にする。藤子不二雄がSFのことを「すこし(S)不思議な(F)話」と形容したのを真似して周りの人たちを「すこし・なんとか」とカテゴライズして、距離を取り、自分のことは「少し・不在」と形容する。どこにでも入っていける代わりに、どこにいても少し浮いている、「少し・不在」。
弁護士を目指しているという元彼・若尾は、勉強のために自分から別れると言っておきながら理帆子を呼び出し、徐々にストーカー化する。
そういう状況の中で、ある日図書室で本を読んでいた理帆子に「写真のモデルになって欲しい」と声をかけた1年先輩の別所あきら。彼にはなぜかいろいろなことを話せてしまえる不思議な存在。彼の正体はーー?
この作品は藤子不二雄の「ドラえもん」のオマージュで、様々なドラえもんの道具が登場します。もちろん道具だけではなく、そのストーリーに含まれる教訓や優しさが夜空の星々のごとく作品中にキラキラと散りばめられ、主人公理帆子の孤独や不安、また流氷に閉じ込められて息絶え絶えになっているクジラのような息苦しさをそっと包み込んでいるかのようです。
思春期の少女特有の繊細さやアンバランスさ、身勝手さも細やかに描写されていて、とても共感しやすく、「ああそういう風に思ってた時期あったよなあ」と懐かしく込み上げてくるものがありました。
辻村作品最高
2015/12/19 07:19
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:royal ballet - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間が大好きなのに人を心の中で馬鹿にしていて交わりきれない悲しさを感じている主人公りほこに共感を抱きながら、読み進めていくと、気が付けば辻村深月ワールドにどっぷりはまってしまいました。
なんて面白い本でしょうか
2023/05/29 17:19
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:a - この投稿者のレビュー一覧を見る
最初は意味があまりわかりませんでしたが、最後まで読むと全て納得できてすっきりします。是非お勧めします。
自分をふりかえる
2023/04/04 07:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴょんきち - この投稿者のレビュー一覧を見る
共感できること、自分の中で言葉にできなかったことが言葉になってストンと落ちる。
AI
2020/02/04 15:05
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:AI - この投稿者のレビュー一覧を見る
やや長めでしたが、他の辻村作品にも登場する芦沢理帆子の青春時代を絶妙な心理描写で描いていて、序盤からの過酷な出来事を思い起こすとラストがより感動的な物語でした。作者のドラえもんへの愛情もひしひしと感じられて、ドラえもんファンにもオススメの作品です。
「ドラえもん」が読みたくなりました
2019/06/20 19:50
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
辻村深月『凍りのくじら』を読みました。
前に読んだ『ツナグ』は、連作短篇のうち、半分ぐらいがよくて、あと半分はまあまあだったのです。
それで、おためしの気分でこれを読んでみました。
結論から言うと「やられた!」。
途中まではしんどいな~(特に人物造形が)と思いながら、少し我慢して読んでいたのですが、後半になるとぐっとよくなって、最後はいっきに。
仕掛けの部分は、ある程度は気づいていたのですが、エピローグは「ちょっとちょっと、ずるいよ」
という感じでした。
どういうことか気になる方は、お読みになってください。
この本を読んでいて、「ドラえもん」が読みたくなりました。
「ドラえもん」はほとんど読んだことがなく、藤子不二雄の作品なら、私は「パーマン」の世代です。
「オバQ」は気づいたらもうまわりにあって、「パーマン」は、さあ始まるぞ、と思って最初から見ていました。
テレビアニメとまんがの連載がほぼ同時だったように思います。
スーパーマン見習いみたいなパーマンが活躍する話。
平凡な小学生であるパーマン1号が特別な力を与えられて、その責任の重さに苦悩する場面が印象に残っています。
パーマン2号はチンパジーで、パーマン3号はアイドルの女の子(パー子)、4号は関西弁を使う小太りのパーやん。
特殊なマントを羽織ると時速91キロで空を飛べるという設定なのですが、連なって飛ぶと速さが足し算されて、4人で最高時速364キロになる、というのが面白く 、また、協力の大切さを教えてくれたように思います。
『凍りのくじら』の主人公は、大事なことは全部藤子不二雄とドラえもんに教わった、と言うのですが、私もまんがに教わったことは、かなり多いですね。
初めて読んだ辻村作品
2018/06/30 22:50
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投稿者:avocado - この投稿者のレビュー一覧を見る
ドラえもんの見方まで変わってしまいました。ドラえもんの魅力にも気づける作品です。
里帆子が別所を追って一人知らない街を歩くシーンが、なぜか読後何ヶ月経っても頭から離れない。なんでだろう。
いいお話です。
共感できた
2017/07/24 21:58
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投稿者:翡翠 - この投稿者のレビュー一覧を見る
独特の文の表現が次のページを開きたくなり、その中身も実際に生活していて共通する部分があり、何回も読んだ。
そうだったのか!
2016/04/21 23:35
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投稿者:saya - この投稿者のレビュー一覧を見る
辻村さんならではの少し不思議なお話。途中からもしかしてと思いましたが最後でそうだったのかと読み返したくなるお話です。松永くんが少しずつ変わっていくところが好きです。
どきどきしました
2015/11/29 06:42
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
客観的な部分が少し似ていると思いながら読んでました。
最後、かなりどきどきしました・・・
感想・・・書くのが難しいのですが・・・読んでいて不思議な世界に引き込まれました!
自分の居場所を探す少女
2015/10/08 22:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:papanpa - この投稿者のレビュー一覧を見る
いまさらですが,読んだ記念に一言だけ。
胸にキュウーとくる読後感。オチの部分の賛否はありましょうが,間違いなく良い作品です。オジサンは泣きました。おススメです。
藤子・F・不二雄ファンにはたまらない
2015/01/04 21:05
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:渉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
各章のタイトルがドラえもんの道具。
物語も引き込まれました。