待望の原典に忠実な新訳。
2007/11/03 13:00
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投稿者:わたなべ - この投稿者のレビュー一覧を見る
カフカの原典は、これまで新潮社の決定版全集のもとになったマックス・ブロート編集版と、白水社の小説全集やコレクションのもとになった批判版全集(ブロートが編集する以前の草稿を専門家たちが校訂して出したもの)の二種があったが、1995年に草稿をそのまま写真やCD-ROMを駆使してまとめた「史的批判版」というのが出たのだそうで、今回の文庫版はその「史的批判版」をもとにできるだけ原文のニュアンス(改行や表現)をそのまま伝えることを目指した新訳となっている。知っている人は知っていることだが、カフカの翻訳はこれまで相当翻訳者の解釈や読みやすさへの配慮が行われていて、池内氏の訳などは原文を知るものにはたいそう評判が悪いのだが(私は岩波文庫版を読んで後は読んでいない)、せっかくの批判版があまりに自由な意訳で出ている(しかも確か翻訳権を独占している)という事態にかなりの疑問を持っていたので、今回の忠実な翻訳(本人はクラシックのピリオド奏法に例えている)はとてもありがたいし、喜ばしいことだと思う。で、訳文の印象だが、なるほど現代的なカフカで、とても新鮮であり、かつ、やはりカフカであってとても面白いのは変わらない。時代を超えた核にある部分と、翻訳される時代を反映した現代日本の状況を彷彿とさせる部分がすっきりと混ざり合って、ぐいぐい読まされてしまう。このスタイルによる更なる翻訳を熱望。
短いので読みやすいは読みやすい
2022/05/31 22:43
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投稿者:じゃび - この投稿者のレビュー一覧を見る
でも内容は手強い。一番どういうことなのと困惑し、でもなぜかどきっとさせられたのは『判決』。やっぱり父親の言葉は図星だったということなんだろうか。
『変身』は、まさか介護疲れ(を連想させる)の話だとは思ってなかったからびっくりした。解釈は色々あるんだろうけど、自分はそう思ってしまったので、結末のシビアさに震えた。
カフカのどこかユーモラスで浮ついたような孤独感と不安を感じさせてくれる短編集です!
2020/05/10 11:08
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、チェコ出身のドイツ語作家で、プラハのユダヤ人の家庭に生まれたフランツ・カフカによって1912年に書かれたを表題作「変身」を含む短編集です。彼の作品は、どこかユーモラスで浮ついたような孤独感と不安の横溢する、夢の世界を想起させるような独特のものとして高く評価されています。その中でも特に有名な「変身」は、布地の販売員をしている青年グレーゴル・ザムザは、ある朝自室のベッドで目覚めると、自分が巨大な毒虫になってしまっていることに気が付くというストーリーです。同書では、その他、「掟の前で」、「判決」、「アカデミーで報告する」の全4編が収録され、カフカ文学が十分に味わえます。
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投稿者:鶴 - この投稿者のレビュー一覧を見る
短編が多く、有名な作品「変身」も読める。一番は「判決」だな。
文章の短さの割に、読み応えがある
2022/01/22 06:29
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投稿者:Pana - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある朝、主人公が目を覚ますと虫に変身していた。
虫に変身するまでは、一家の大黒柱として家族を思い働いていたが、醜い虫の姿に変身してからは、両親だけでなく信頼していた妹からも嫌悪感を抱かれる。
主人公目線での、自分自身の感情の変化・家族の様子は書かれているが、家族目線でのそのような変化は記載さてれていない。
それぞれ読者が考えることができるよう、敢えて記載されていないのかなと。
家族の誰かが、醜い姿に変身したら、、あなたは耐えられますか?私は無理です。という、カフカの考えかハッキリとしているなと思った。
ラストはハッピーエンドとも、バッドエンドとも捉えられる。
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新訳でも、カフカはカフカだ・・・
解説なしでは良くわからん。
逆に深読みしたくなるのが、カフカなんだろう
ただ変身だけは痛いほど判る
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どうしても意味を考えてしまった。そして意味がわからず頭を抱えてみる。もう少し意義ある読み方ができればな・・・と久々に思った。
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やはり「変身」が圧倒的に面白い。ラストがこんなにも悲しくも素敵だとは知らなかった。いろんな事が言われたり考えられたりしてきていますが、家族の中で疎外感を持った経験のある少年が読んで何も感じなかったのかい。と思ってしまいました。なんのかんの言ってもお気楽少年ですから・・・
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「判決」「変身」「アカデミーで報告する」「掟の前で」の4編が収録された本書。
読み手の数だけ解釈があるというカフカは、やはり色んな解釈を僕たちに問うている感じがあります。結末の直前で話を終えて、「じゃ、あとの解釈は君らに任せたから」と投げられたような気分になります。それがとてもカフカらしいのでしょう。
個人的には、有名な「変身」はもちろん、「アカデミーで報告する」が一番好きです。
果たして、アカデミーで報告しているのはサルなのか人間なのか。それとも、そのどちらでもないのか。
ただ、このサルは本当に人間化して幸せなのかしら、とつい思ってしまいます。必死に人間になろうとしたサル。その結果、このアカデミーでの報告は幸せだったのか、それとも・・・。
「変身」は、とにかく僕は切なくなります。虫の視点からというよりも、虫になって非人間となった人間の視点から描く家族。巨大な虫を、家族は必死に隠そうとして主人公(グレーゴル)との関係における様々な葛藤に悩まされる。人間と虫の違いは、果たして何なんでしょう。それこそ、僕らが勝手に考えるものなのでしょうね。
ただ、個人的に思うのは、「虫」とは何だったのか。僕らが思うような、ゴキブリやコガネムシみたいな虫なのか。確かにそのような状態を説明する描写はあるけれども、僕にはどうしても単なる「虫」だとは思えない。そうだとすると、グレーゴルがなった「虫」とは何だったのか。考えた回数だけ、回答が増えてしまいます。これも、カフカの面白いところですね。
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情景、人物の感情が鋭く描写されていて、主人公の不条理感に寄り添って読みすすめられる。まあ人間ならわざわざ芋虫にならなくても、普通に生きるだけで、もっと不条理なことはいくらでもあるものだろう。思い通りにはいかないことばかりが人生。そこでどう考え、適応するか。その一例がじっくり具体的、象徴的に描かれているのが「変身」だといってもさしつかえあるまい。他の3編も読み応えがある。
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言わずと知れた人間の不条理を扱った名作。あくまで解釈の仕方は人それぞれかつ自由なので、個人個人によってこの物語に対する想いは、天と地ほども違うでしょうが…。
改めて読み返してみると、どちらかというと悲劇というよりも喜劇を見たような読後感でした。読み手のそのときの気持ち等も反映されるのでしょうねきっと。カフカの寂しげな報告調の文章表現、僕は好きです。
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初めて読んだカフカの作品。
短編集だったので旅行中の韓国で一気に読んでしまった。
答えを最後までださない、何と無いもどかしさで
でもそれが反対に気持ちよかった。
久しぶりに『文学』という香りがした。
異色さでは『変身』が目を引くが、心に残ったのは『掟の前で』。
こちらの方がより宗教的。
07/10/26
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虫の気持ちがわかるザムザ
ザムザの気持ちがわかるカフカ
虫の気持ちもカフカの気持ちもわからないけど
ザムザの気持ちならわかる気がする
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フランツ・カフカの短編集。
「判決」「変身」「アカデミーで報告する」「掟の前で」
どの作品も不安感、絶望感が常に感じられる。
人間の本質を描いている気がした。
「変身」はさすが名作。すごいの一言。
個人的には「アカデミーで報告する」「掟の前で」が好き。
ここ数年話題の光文社の古典新訳。
現代的な言葉、わかりやすい翻訳で読みやすかった。
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内容:ある朝、グレーゴル・ザムザがベッドで目を覚ますと、
巨大な虫に変身していた。
家族の物語を虫の視点で描く。
どうも内容を勘違いしてるような気がして、
読み直してみました。
読みたいなーと思っていたら、偶然、パソコンデスクに置いてありました。
(これが、須藤元気のいつも言ってる、シンクロニシティってやつ?)
「変身」は、中学時代に背伸びして読んだけど、
どうやら、途中で読むのを諦めたみたいです。
最初の何ページかしか読んでなかったので、
「虫になったのに、何事も起こらないストーリー」やと
勘違いして記憶してました。
ちゃんと最後まで読んでみると、違うんですねー。
ホラー小説です。なんともおぞましい。
いつもいつも、カフカは何が言いたいんでしょう。
ただの皮肉屋のようなのに、人を引きつける魅力を持っています。
「変身」も、第三者から見ると、
とてもたんたんとした話の展開の仕方ですが、
虫になった主人公の心情がリアルに描かれているので、
話にぐいぐい引き込まれてしまいます。
これが文学ってやつですね。
最近の携帯小説にも見習ってもらいたいです。
ところで、虫になったグレーゴルは、少し不憫です。
虫になっても、営業の仕事に普通に行こうとします。
こんな事態にあっても、彼はまだ、仕事の方が大事なんですね。
カフカからの、企業戦士への痛切な皮肉でしょうか。
私は、光文社の古典新訳文庫で読みました。
なんかめっちゃ読みやすいんですけど!
岩波文庫とえらい違いです。