おそろし 三島屋変調百物語事始
著者 著者:宮部 みゆき
ある事件を境にぴたりと他人に心を閉ざしてしまった十七歳のおちか。ふさぎ込む日々を、叔父夫婦が江戸で営む袋物屋「三島屋」に身を寄せ、黙々と働くことでやり過ごしている。ある日...
おそろし 三島屋変調百物語事始
商品説明
ある事件を境にぴたりと他人に心を閉ざしてしまった十七歳のおちか。ふさぎ込む日々を、叔父夫婦が江戸で営む袋物屋「三島屋」に身を寄せ、黙々と働くことでやり過ごしている。ある日、叔父の伊兵衛はおちかに、これから訪ねてくるという客の応対を任せると告げ、出かけてしまう。客と会ったおちかは、次第にその話に引き込まれていき、いつしか次々に訪れる客のふしぎ話は、おちかの心を溶かし始める。三島屋百物語、ここに開幕。
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泣ける怪談
2012/06/09 11:43
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぽかぽか - この投稿者のレビュー一覧を見る
いやー、面白かった。一気に読んでしまった!
5つの怪談が互いに入れ子になりながら織り込まれていて、そのどれもが濃密で面白い。一度も中だるみすることなく、次々と現れる登場人物が主人公のおちかを狂言回しに絡み合って、物語全体を濃厚に味つけしていく。怪談と言っても薄っぺらい現代ホラーでは当然ないし、小泉八雲のような怪談とも、昭和初期の怪奇幻想ものとも違う。どちらかと言えば三遊亭円朝や、夏の夜に落語家が語る怪談に近いように思う。その違いはどこからくるかというと、あとがきにも書かれていたけれど、人情味があるということなのではないだろうか。
もちろん背筋が凍るような恐~い場面も出てくるのだけれど、この本の面白さは、「怪談」というジャンルの面白さというよりも、登場人物一人ひとりが何かを語る度に、まるで自分がその台詞を語っているような気持ちになって、恐がったり、笑ったり、焦れたり、心配したり、泣いたりできる感覚的なところにあるんじゃないかと思う。それはファンタジーだろうが、時代物だろうが関係なくて、昔から面白い映画や演劇や小説に共通するものなのだろうなぁ。いや~、ほんと面白かった~。
なんて幸せ
2022/07/28 21:07
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みぽこぽこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
単行本で読んだ…はず…ですが「黒武御神火御殿」を読み終えて火がついて(笑)また、最初から読みたくなり、電子書籍で購入。丁度良い事に、単行本の新刊も発売されたので、まだまだしばらくシリーズを楽しめます。
もう、寝る間も喰う間も惜しむ感じで、読みたい読みたい。
仕事していても、何をしていても、本の中のあの時代、あの空間に早く戻りたい。
本を読む事は、別の世界に旅をする事、本の中に深く潜って行く事が幸せなのですが、やはり面白くないと、日常に気を取られてなかなか潜れません。
しばらくは、夢中で潜れる世界があるということが、本当に幸せです!
夜明けの来ない夜はない。 冬は必ず春となる。 宮部みゆきのライフワークの百物語事始。 対話とレジリエンスの物語。
2022/08/29 09:43
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
神田三崎町の袋物屋の主人の伊兵衛夫妻は、川崎の旅籠屋の兄夫妻の娘おちかを預かることになった。
おちかには、誰にも話すことのできない、そして誰とも会いたくなくなる、辛く悲しい出来事があった。
そのために実家を離れ、叔父夫妻のもとで働くことになった。
働いていれば、無心になれる。
それでも、思い浮かんでくる言葉にできない苦しみ。
悔やんでも悔やみきれない悲しい過去。
ある日、おちかは叔父夫婦の代わりに客の応対をすることになる。
「黒白の間」で、相手の話にじっくりと耳を傾ける。
「この話をすっかり聞き出してしまうことは、今や、おちかにとっても大切な試みとなっていた。なぜかはわからない。が、どうしてもそうだという気がした」(「第一話 曼珠沙華」P47)
「伊兵衛はかまわず続けた。『聞き手はおまえ一人だ。そういう約束で人を集めたから、違えるわけにはいかない。話を聞き終えたら、おまえはそれを心のなかでよく吟味して、次のお客がくるまでのあいだに、今度は私に語ってきかせておくれ』」(「第二話 凶宅」P99)
「でも、思いがけず早くに、今こそそのときが来ているのではないか。おちかは語りたくなっていた。吐き出したくなっていた。おちかにそうし向けてくれたのは、おしまのあの気取りのない腕の頼もしさと温かさであったのだ」(「第三話 邪恋」P194)
「これまでも、何度となく自問自答してきた。その答えが、今のおちかには、やっとわかったような気がする。これもまた、おしまに語ったことで、事件の直後から今まで、混乱したまましまいこまれていたものが整理されたからだろう」(「第四話 魔鏡」P247)
「効いているという実感は、今の今までなかった。でも、兄さんに会ってわかった。そうだ、あたしはいつの間にか、暗い落とし穴の底でうずくまることをやめていた。自分で自分の膝を抱えて、膝頭におでこをくっつけて、口に入るものは自分の涙だけ--という心の持ちようから抜け出していた」(「第五話 家鳴り」P366)
明日が全く見えない闇の中でも。
出口の見えないトンネルの中でも。
夜明けの来ない夜はない。
冬は必ず春となる。
宮部みゆきのライフワークの百物語事始。
対話とレジリエンスの物語。
三島屋変調百物語のはじめのはじめ
2022/08/08 18:25
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
三島屋変調百物語のシリーズを読んでいるうちに、ふとこの「事始め」を読んでいないことに気づき、手に取った。いつか読もうと積読状態であった。読み進めるうちに、どんどんと引き込まれ、人間の心の身勝手さ、見たくないものを見ないことにする心の揺らぎなどを、優しく赦し、包み込む温かい慈しみを感じる。怪異でありホラーなのだが、読後には温か気持ちになれる。うまい作りだなあ。
江戸の人情の中にある怪談
2022/01/22 04:19
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しん - この投稿者のレビュー一覧を見る
叔父夫婦が営む袋物屋「三島屋」に住まうことになったおちか。おちかはある事件をきっかけに自分を責め、心を閉ざしてしまっている。そんなおちかに叔父がふしぎな物語の聞き手をつとめるよう手筈をつける。
人と人は、ほんのかけ違いですれ違ってしまい、それが悲惨な事件や悲しい結末につながってしまうこともあるけれど、心に引っかかった思いを誰かに打ち明けることで、自分を見つめなおし、改めてその出来事について心の中にしまえるのだと思う。おちかに語ることで聞き手は満足し、おちかもまた自分のことを見つめなおすことができた。こうした効果があることを知っていたのであれば、叔父さんすごいな、と。
また、宮部先生の時代小説の素敵なところは、人々の人情。崖から落ちて木に引っかかっていた松太郎を宿場のみんなでひっぱりあげ、育て、大きくなったらその手に職をつけるべく、たくさんの人が名乗りを上げる。落ち込むおちかを心配してかつての奉公先のお嬢さんに来てもらうよう頼むおしま、奇妙な屋敷にひとり残された女の子おかつを引き取って面倒をみる越後屋夫妻。このほっこりした人々との生活の中にあるから、怪談だけれどどこか優しいのでしょうね、この話は。
夜明けの来ない夜はない。 冬は必ず春となる。 宮部みゆきのライフワークの百物語事始。 対話とレジリエンスの物語。
2021/09/12 11:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
神田三崎町の袋物屋の主人の伊兵衛夫妻は、川崎の旅籠屋の兄夫妻の娘おちかを預かることになった。
おちかには、誰にも話すことのできない、そして誰とも会いたくなくなる、辛く悲しい出来事があった。
そのために実家を離れ、叔父夫妻のもとで働くことになった。
働いていれば、無心になれる。
それでも、思い浮かんでくる言葉にできない苦しみ。
悔やんでも悔やみきれない悲しい過去。
ある日、おちかは叔父夫婦の代わりに客の応対をすることになる。
「黒白の間」で、相手の話にじっくりと耳を傾ける。
「この話をすっかり聞き出してしまうことは、今や、おちかにとっても大切な試みとなっていた。なぜかはわからない。が、どうしてもそうだという気がした」(「第一話 曼珠沙華」P47)
「伊兵衛はかまわず続けた。『聞き手はおまえ一人だ。そういう約束で人を集めたから、違えるわけにはいかない。話を聞き終えたら、おまえはそれを心のなかでよく吟味して、次のお客がくるまでのあいだに、今度は私に語ってきかせておくれ』」(「第二話 凶宅」P99)
「でも、思いがけず早くに、今こそそのときが来ているのではないか。おちかは語りたくなっていた。吐き出したくなっていた。おちかにそうし向けてくれたのは、おしまのあの気取りのない腕の頼もしさと温かさであったのだ」(「第三話 邪恋」P194)
「これまでも、何度となく自問自答してきた。その答えが、今のおちかには、やっとわかったような気がする。これもまた、おしまに語ったことで、事件の直後から今まで、混乱したまましまいこまれていたものが整理されたからだろう」(「第四話 魔鏡」P247)
「効いているという実感は、今の今までなかった。でも、兄さんに会ってわかった。そうだ、あたしはいつの間にか、暗い落とし穴の底でうずくまることをやめていた。自分で自分の膝を抱えて、膝頭におでこをくっつけて、口に入るものは自分の涙だけ--という心の持ちようから抜け出していた」(「第五話 家鳴り」P366)
明日が全く見えない闇の中でも。
出口の見えないトンネルの中でも。
夜明けの来ない夜はない。
冬は必ず春となる。
宮部みゆきのライフワークの百物語事始。
対話とレジリエンスの物語。
始まり
2021/08/30 22:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:やさし - この投稿者のレビュー一覧を見る
こうして、この世の怖さ、生きていく中であう悲しみを知り、悼むことで自分の悲しみにも向き合い、強くなっていくおちかの変わり百物語が始まったんだなあ。一つ一つの話がどれも迫力がある。そして最後はファンタジックなムード。恋の話はやるせないけど、光にかえれてよかった。
ご縁
2020/12/30 22:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うみしま - この投稿者のレビュー一覧を見る
宮部さんの作品が徐々に電子化されていることは本当にうれしいことで、早速買い求めた1冊です。
変調百物語ということで、怪談ものに属する作品ではありますが、やはり宮部さんの作品ならではの、単なる怖い話ではなく、そこから立ち上がる勇気とそれを支える人の愛情や縁を強く感じました。つらい経験をしたおちかが、黒白の間で客から聴く話はたしかに「おそろし」なのかもしれませんが、もっと怖いのは人の心。しかし、その人の心も光の当たり方で全く違う表情を見せる。人を殺めた側も殺められた側も、ほんの紙一重の心だという怖ろしさと同時に、そこから立ち上がり、ご縁によって力を得て、立ち向かうことも人の心という、勇気を見せていただいたと思います。
時々読みたくなる、かわり百物語の最初。
2020/08/13 15:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
17歳のおちかは、わが身におこった不幸な事件から逃れるように実家・川崎を出て、叔父・伊兵衛が営む袋物屋・三島屋に身を寄せる。そこでおちかが任される、聞いて捨てる「代わり百物語」のシリーズの第一作。口入れ屋を通してやってくる人々が語る不思話はもちろん秀逸だが、物語を彩る江戸人の暮らしを読むのが楽しい。客人を迎えるときのおちかの装いに客人の身に着けるもの。庭に咲き、あるいは床の間に飾られる季節の華とあしらいとか。掛け軸とか。こまごまと細部に凝った物語ぶりは、シリーズ最新作まで続いています。そう思いながら再読するのも楽しいです。
最後に救われます
2019/07/09 17:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hid - この投稿者のレビュー一覧を見る
おちかさんの心が完全に救われたわけではないけれど、
物語として、最後に救われるような終わり方で、読後感が良かったです。
どの話も、考えさせっれるお話でした。
宮部みゆきは、江戸ものが好き
2019/06/14 10:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:男児の母 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最新刊を図書館で借りて、読んだが、人のつながりが思い出せず、第1弾を購入して再読。
再読でも、面白かった。
人物の整理もできて良かった。
第2弾も購入して、再読しようと思う。
人情小説のような百物語
2018/09/06 19:34
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Buchi - この投稿者のレビュー一覧を見る
題に百物語とありますが、蝋燭を百本立てて一本ずつ消していって最後に....なんておどろおどろしいものではなく、どちらかというと人情物のようなお話。
結末では、登場してきた人達(恐ろしいあるいは哀しい最後をとげて物の怪となった人達)が団結し、主人公助ける姿には心がほっとし、またホロリともさせられました。
続編があるということなので楽しいです。
一番恐ろしいのは人間?
2016/05/17 16:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kisuke - この投稿者のレビュー一覧を見る
生家の事件でとても辛い思いをしている少女が、身を寄せた叔父の家で、お客様の不思議な話の聞き役を務める物語です。この世のものではない、怖いものも出てくるのですが、登場人物が温かくて、小心者の私でも読み終えることができました。
一気に読みました
2016/01/11 08:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mao - この投稿者のレビュー一覧を見る
今読んでいる、新聞連載に前の話があることを知り、購入しました。
話に引き込まれ、一気に読みました。
お江戸ファンタジー、炸裂。
2023/10/09 09:23
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第一話から第四話が個別のストーリーです。それら個々の内容は、実におどろおどろしく、また悲哀に満ちたものです。そして最終章の第五話が総決算です。第一話から第四話に登場した登場人物たちが勢揃いします。そんな中、主人公の「おちか」がラスボス(やや朧気感が強過ぎるようにみてとれましたが)に立ち向かっていく・・、まさに江戸版RPGというべき展開でした。
といった内容の時代ものとは言え、人の深奥にある脆弱性、揺れ動く心境といった描写はかなりグッとくるものがありました。時代が変わっても人の心の態様は変わらないのだ、と。