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収容所から来た遺書 みんなのレビュー

文庫 第11回講談社ノンフィクション賞 受賞作品 第21回大宅壮一ノンフィクション賞 受賞作品

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みんなのレビュー145件

みんなの評価4.6

評価内訳

140 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

俳句が収容所生活にダモイ(帰還)への希望をもたらしたという真実。

2005/09/04 12:16

12人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:佐々木 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 敗戦の一週間前、ソ連は一方的に日ソ不可侵条約を破って満州に攻め込んだ。
 シベリアの刑務所に入っていた犯罪人を俄仕立ての兵隊として進軍させ、兵員を輸送してきた貨物列車には略奪した関東軍の軍需物資を満載してソ連内地へと引返していく。その繰り返しの果てには一般市民の財産を没収し、略奪し、婦女子を強姦して廻った。まさに鬼畜の仕業である。
 更には、日本軍の兵隊を「日本に帰還させる」と偽ってソ連各地の収容所に送り込んだのである。日本軍の兵隊だけでは頭数が足りないとみたのか、民間人の男までもがソ連各地の収容所に送り込まれた。
 これは大きな国際法違反であり、人道に対する罪、平和に対する罪であるが、軍事裁判が開かれた形跡は無く、処罰されたソ連軍人がいたなどとは聞いたためしもない。
そして、なんと、驚くことに、日本政府はこの違法行為に関する賠償請求権を放棄してしまっている。不可侵条約に続いて、またもや赤いキツネに騙されている。
 本書はこの収容所に送られた日本の軍人のうち、ソ連の国内法に抵触したという戦争犯罪人を集めた収容所での話である。戦争犯罪人といっても東京裁判、横浜裁判、その他の裁判同様、満足な裁判も受けられずに判決が下りている茶番劇裁判の結果である。
 ここでも、多くの収容所と同じく、わずか一塊の黒パンを食べたいが故に罪もない仲間を売ったり、一刻も早く帰還したいがために仲間を告発したりと、同じ日本人とは思えない仕業が繰り広げられていた。
そんな殺伐とした収容所の中で山本幡男という人物が俳句の会を開いた。
 無断の集会や紙への記録はご法度の収容所であるが故に、地面に木の枝で俳句を書いて楽しむという方法で一人二人と同好の士を集めていく。
 ダモイ(帰還)、という希望の言葉を胸に抑留者は理不尽な重労働、栄養失調に耐えていたが、その苦しい生活の中での俳句は生きる喜びを収容者に与えていった。
 その俳句の会を主催していた山本幡男が帰還を目前に病に倒れ、日本で帰りを待つ家族にあてた遺書を仲間が届けたのである。紙に書いたものは全てソ連側に没収されるので、山本幡男の仲間たちは手分けして遺書を暗記し、頭に叩き込んで帰国したのである。
 かつての収容所仲間から届く部分、部分の遺書に山本幡男の家族も驚くばかりであったと思うが、地獄の底に咲いた一片の花の美しさに驚きと感嘆の声をあげるしかなかった。アウシュビッツの収容所で過酷な労働と死を待つしかないユダヤ人も、ほんのいっときの夕日の美しさに心を奪われたそうであるが、過酷な条件下でも人は人として生きることができることを山本幡男は証明したのである。

 本書のクライマックス、引揚船がソ連領海を出たところで興安丸のマストに日の丸が掲揚される。この瞬間、抑留者の間から感嘆の声があがるが、この描写だけで言葉以上の喜びを感じる。
 昭和31年、「もはや戦後ではない」と経済企画庁が宣言したそうであるが、その年の暮れ、山本幡男の遺書を頭に叩き込んだ男たちを乗せた興安丸は舞鶴に入港したのである。

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紙の本

感動しました。

2016/11/26 10:33

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る

感動しました。前半は、むしろ淡々としたソ連での抑留生活の描写であり、ソ連の理不尽さや仲間を売ってでも自分は助かろうとする同じ日本人抑留者へのいきどおりを感じる程度であるが、後半になるとそのような逆境の中でも正義を信じて自分らしい生き方を貫き通した主人公・山本幡男の強さに涙を誘われる。そして、そうした生き方に賛同し、それを支えた同胞たちの努力にも敬意を表したい。山本幡男が呼びかけたアムール句会に集まった人々を観ると、優れた軍人は優れた文化人でもなければいけないとつくづく感じさせられる。さて、山本幡男なる人物像は下記のとおりであるが、むしろ共産主義思想家で、かつロシア文化にも造詣の深かった山本が、「反共」「反ソ」思想の持ち主として過酷な戦犯としての抑留生活を強いられたことに時代の矛盾・不幸を感じると同時に、ソ連型共産主義=スターリン体制の異常さを伺わせる。
 なお、著者である辺見 じゅんはむしろ歌人として有名な人らしいが、本書を読む限り綿密な取材を通じて素材を完全に消化し、それを再構成することにより物語性も兼ね備えた“ノンフィクション小説”に仕上げており、小説家としての実力もかなりのものとみえる。残念ながら、2011年9月21日に逝去している。

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紙の本

日本人の原点を感じました

2013/11/20 22:09

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:BACO - この投稿者のレビュー一覧を見る

ノンフィクション作品です。
この本はぜひ読んで頂きたいと思います(「あとがき」までしっかりと)。
読みやすいかと聞かれると正直言って読みにくいところはありました。
実際、詩の紹介のところなどは斜め読みしてしまいました...。
特に中盤は場面設定がころころ変わって話の流れが折れてしまった感もありました。
しかし、そこをグッとこらえて終盤まで頑張って読み続けて頂きたいと思います。
終盤の山本の病床のところからは一気に「遺書」のところまで読み続けてもらいたいです。
私はこの「遺書」(特に「子供等へ」のところ)を読んで現代の日本人に欠けているものを感じました。
そこを感じ取るだけでも読む価値はあるかと思います。
また、山本の「遺書」を遺族に如何にして伝えたか、にも敬意を払うところです。
余談ですが、鹿児島の知覧にある特攻記念館で読んだ遺書と通じるものを感じました。

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紙の本

人間の力

2019/12/24 19:49

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る

人間の力に胸を打たれました。何も持ち帰れない中で、託された遺書を遺族に届けた方法。正直、読みやすいものではないと思いますが、若い人にも読んで欲しいです。

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紙の本

感動のノンフィクション

2017/02/12 12:28

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Takeshita - この投稿者のレビュー一覧を見る

この本を読んで泣かない日本人はいないと思う。最終章の帰国した戦友が「記憶した遺書」を次々に奥さんに届けるところでは涙で活字がゆがんだ。ここには、被害者意識丸出しの戦争体験記や特定の主義主張に偏った戦争論とは全く次元の違う人間の真実がある。「正しく生きる」とはどういうことかを深く考えさせる本。辺見じゅんさんは亡くなったが、この傑作は歴史に残る。

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紙の本

風化しないでー

2023/03/15 08:58

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:マンゴスチン - この投稿者のレビュー一覧を見る

映画『ラーゲリより愛を込めて』を観て素晴らしかったので原作も読んだ。映画とは登場人物やシーンが変わっていて違いも楽しめた。文章だと泣かずに済んだけれど映画はボロ泣き。実話とは思えないがこれが実話だという意識をしっかり持って読む本。

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紙の本

当たり前こそ、力強い文化である

2023/01/17 03:46

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:紅井無蘭 - この投稿者のレビュー一覧を見る

シベリアに抑留された日本人捕虜の山本幡男。亡くなるその瞬間まで、山本が日本文化を愛し、信じた奇跡を描くノンフィクションである。
そこには、不用意な愛国精神はない。そんな大上段に構えた厳めしい精神が作品に込められていれば、そんな作品は簡単に歴史の中に埋没したことだろう。むしろ、このノンフィクション作品に流れる精神は、ただ当たり前の生活や文化への愛着である。
収容所の苦しい生活の中で山本は、日本の暮らしや文化を忘れない。山本は、俳句の会を開催しては、仲間たちの帰国への希望を鼓舞し続ける。まさに文化の力を信じなければ、不可能な営みである。
最後、山本に鼓舞された仲間たちは、山本の遺書を彼の遺族へと届けるべく、並々ならぬ努力を傾ける。出会うはずのなかった人々が、強い文化の力によって結ばれ、奇跡を起こすさまは、久しぶりに涙なしには読めないものであった。

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想いを宿す言葉が届けられた<奇蹟>に涙するしかない

2023/12/18 19:54

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:永遠のチャレンジャー - この投稿者のレビュー一覧を見る

雪の降る京都舞鶴港に、昭和31(1956)年12月26日、復員兵を乗せた最終帰還船が着岸する。シベリア抑留の苦難に耐えた旧日本軍兵士たちが、やっと故国の土を踏み締めた。アムール句会を主宰した島根出身の山本幡男---本書の主人公の姿は無かった。シベリアの彼方から生きて日本海を渡ること叶わず、二年前に不帰の旅立ちをしたからだ。

代わりに山本が病床に残した遺書が、没収・焼却を免れるために戦友たちに暗記されて祖国日本に里帰りする。分担記憶し清書された六通の遺書が、翌年には遺族の許に届けられた。特に七通目は故人の三十三回忌に当たる昭和六十二年の夏、供養と呼ぶには奇縁めくお盆に、魂魄が呼び寄せたかのように届く…。

戦争終結後の方が、苛酷でより切実な状況下での「生きるための闘い」を余儀なくされる。大陸引き揚げ者然り、南方で収監されたB・C級戦犯容疑者然り、庇護なき戦災孤児然り、無差別爆撃を浴びた被災民然り…。なかでも、凍土シベリアの俘虜収容所で強制労働という貧乏籤を引いた山本たちは、悪運ここに極まれりか。

寒冷の大陸での重労働は「毎日が空腹との闘い」。酸味ある「黒パン」が最上の美味と化す。争いごとはすべてその争奪絡みだ。ロシア語に堪能なインテリの山本幡男は、「満鉄にいた反動(分子)」「反ソのスパイ」容疑で、リンチ(私的制裁)の標的となる。

「かならず生きて日本に帰ろう」「白樺の肥やし(埋葬死体)になるな」と言って、悲惨な逆境に抗うように、山本は仲間たちと俳句会を始める。疲弊した日々にも何かしらの楽しみがあれば、人は絶望に沈み込まない…。抜打ち検査を恐れず、手書きの文芸冊子を回覧する山本の大胆さの真骨頂が、身は囚われながらも心は自由だとの心意気に窺える。

本書には「俳号」で呼び合い、「単調で辛い労働」の合間に「だれもが相好を崩して嬉しそうな顔になる」アムール句会の様子が描かれる。会員作品が伝わるのも、山本の遺書と共に衣服に綴じ込むか暗記して持ち帰り、後に復元されたゆえだ。

地獄の収容所生活を共に過ごし、無念にも病篤く生還が叶わなかった山本幡男という人物に具わった人間性に魅せられ、救われた「戦友」たちの「記憶」と「口舌」を借りることで、一字一句は違っても、気高く生きた証しの想いが宿る最期の言葉が故国の遺族に届けられた。その奇蹟にただ涙するしかない。

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2007/11/02 17:50

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2008/07/30 09:52

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2008/08/04 00:02

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2009/01/17 16:33

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2009/05/10 11:21

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2009/07/19 18:28

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2009/09/26 05:37

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