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  3. 佐々木 なおこさんのレビュー一覧

佐々木 なおこさんのレビュー一覧

投稿者:佐々木 なおこ

1,066 件中 16 件~ 30 件を表示

紙の本パリのおばあさんの物語

2009/08/22 20:47

女優の岸惠子さん、初の絵本翻訳!

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

表紙の薄ぼんやりとしたトーンがまさにパリっぽいなぁと思いました。

漆黒の夜空が広がる少し前、美しい夕暮れどきの風景。ビルが立ち並び、いくつもの窓がある中、ひとつだけ灯りの燈った部屋がありました。
きっと部屋には、この絵本の主人公のおばあさんが、身体をしっかりと包み込んでくれるピンク色のひじかけいすに座り、緑のチェックのひざかけをして、物思いにふけっているに違いありません。

一人暮らしのおばあさん、夫はすでに亡くなり、子どもとは離れて暮らしていましています。週一回の息子からの電話を、そしてたまに遊びに来る孫たちとのひとときを生きるよすがに、日々を暮らしています。

ときおり、おばあさんは昔のことをあれこれ思い出します。それは戦争中のつらい思い出、おばあさんの一家はユダヤの人たちだったのです。
もちろん、家族そろっての楽しい思い出もたくさんありました。今、それを思い返す時、まるで昨日のことのように、おばあさんの胸ははずむのでした。
身体が思うように動かない日があったとしても、持ち前の明るさで、発想の転換をして、暮らす毎日…。「今日うまくいかなくても、明日になればきっと良くなるわ」今いる環境、自分の状況をきっぱりと受けて立つ姿が、そのいさぎよさが心を打ちました。

訳者は女優の岸惠子さん。
初めての絵本翻訳だそうです。
「生まれて、生きて、死ぬ。
これは人間だれもが持つ平等なさだめです。」
「人間が持つもう一つの平等なさだめは、年老いていくことです。」
訳者あとがきに記された彼女の言葉がことさら印象深かったです。

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紙の本幸田文きもの帖

2009/05/23 13:42

幸田文さんのきもの指南

12人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

幸田文さんから心の行儀を教わる三冊シリーズの中の一冊。
私にとっては、先月読んだばかりの『幸田文 台所帖』に続く、きもの帖です。

「きものは心意気で着るものです」と帯にあり、
一生和服で通した幸田文の、ふだん着の、きもの入門。とも書いてありました。

文さんは全編できものの良さを伝えます。
きものを楽しさを伝えます。
そして「ただ単に着物を着るというのではなく、女ごころを身に纏うといったらいいでしょうか」ときものを着る心構えを伝えています。

あれこれ着物のきまりやしきたりについても、懇切丁寧に、ときに「美しくよき身ごなしでなければだめです。鏡によくご相談ください」などとぴしゃり。でも、それ以前に「意地悪ばあさんのへらず口みたいになるので、嫌なのですが、わる気ではありませんから、どうぞ我慢なさってください」と言われるのですから、不思議なことに真摯に学ばせてもらおうという気持ちになっています。「私も若い頃には、着こなしよくなりたい一心で、いくらか努力もしてみましたが、短気なのでとうとう途中で引きさがりました」ともあり、一生きもので過ごされた文さんでさえ、そうなのだ…ときものの世界の奥深さを感じたのでした。

きものにまつわる文さんの数々の思い出。
心に残ったのは、早くに母を亡くした文さんが結婚衣装という気持も金額も張る買物のに、一緒に行ってくれる人がいなかったと打ち明けていた場面。そして生母が貧しい暮しのために、自分の着物は夫の着古しを仕立てなおしできていて、文さんが「いったいどんな長襦袢を着ていたか」と想いをめぐらすところ。ここはしみじみ心に沁みました。

きものは高価なものだけに、懐ぐあいで持てる数も決まってきます。そこでも文さんは「無ければないように工夫が必要なのである。着物は、自分の肌を覆えばいいというだけでなく、人の目に不快感を与えないのが、ことに女の場合は、責任といってもいいのである。」と言い、続けて「ある人はあるようにやっぱり、工夫しなくては、着物は駄目なのである。」と言われる。 なんだか胸のすくような言葉に、文さんのきものに対する心意気を感じました。

そうして「着物は『その時、その場、その気持」で着るものだというのもその昔からの智恵の一つとして教えられたのである」と伝えながら「その時と場と気持とがみなしっくりすることは、なかなか出来難いのである。」と、その上で、「あまりああでもない、こうでもないと面倒に考えれば、世の中はつまらなくなる。着物は楽しく着、気軽に着るのがいいし、それで結構ひとの目にも快くうつる。」と読者を導く。まさに文さんは着物の魅力の伝道師と言えそうですね。

読後、自分を振り返ってみれば、長い間着物を着てないなぁ~と思う。この春の娘の卒業式、入学式も着物を着ようかな~とちらりと思ったが、どちらも洋服にしてしまった。
次の機会にはいつだろう…そのときが少し楽しみになってきた一冊、でした。

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紙の本幸田家のしつけ

2009/02/22 18:22

幸田露伴からその娘へ 受け継がれたもの

12人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

文豪といわれた幸田露伴は、その娘・文に家事一切を教えた。幸田家の特有の事情があったからで、それは文が六歳のときに生母が亡くなり、新しい母親は文に家事を教えることがなかったからである。

一体、露伴はどんなしつけを文にしたのだろうか…。
たいそう厳しいしつけであったには違いない。
ただ、娘へのあふれんばかりの想いはけっして並々ならぬものであったのではないだろうかと想像しながら、読み進めた。

印象深いエピソードがある。

文がふろのたきつけをこしらえるためになたで木を割った。しかし彼女の細腕では、木がなたに食い込み、一度で木を割ることが出来なかった。
そのとき露伴はこう言ったのだ。
「おまえはもっと力を出せる筈だ、働くときに力の出し惜しみをするのはしみったれで、醜で、渾身の力を籠めてする活動には美がある」「薪割りをしていても女は美しくなくてはいけない。目に爽やかでなくてはいけない。」

私はこれまた厳しい父親だなぁと、驚いた。それにしても、年若い娘に薪割りまでをさせるなんて!となかばプンプンしながら…。
当時は反抗と捨てばちで父親へ立ち向かった娘。しかし後日この時のことを回想する文の想いを知って、心が大きく揺さぶられたのです。

「父の教えたものは技ではなくて、これ渾身ということであった」
はぁぁぁ~すごいなぁ~しっかり父の真意を汲んでいるなぁ。この父親にしてこの娘ありだなと、しみじみ思い知ったのでした。

各章の最後に、露伴語録が紹介してあって、これが実に良かった。
その中で私が一番好きだなぁ~と思ったのは
「かぜがどこにいるか、さがしてごらん」というもの。
これは障子やふすまをきちんと閉めない娘にそれとなく注意したときのものだそうで、なんともユーモアあふれる言葉に、ふっと心がほどける感じだ。これは父と娘ならでのものなのだろうか、母と娘ではこうはいかないよなぁ~なんて思いながら、ニコニコしてしまった。
このほか露伴ならではのしつけのあれこれに一喜一憂しつつ、衣食住すべてにわたってのしつけが文の生活に隅々にまで浸透していること、さらには孫娘まで受け継がれていることに、凄いもんだなぁ~と思うことしきり、でした。

著者の橋本敏男さんは少年時代、幸田露伴宅のご近所に住まいがあり、葬儀を目の当たりにしたそうです。その橋本さんはこの本の中で、露伴のしつけを引き合いに、最近の親子関係についての問題提議もされています。学ぶところの多い一冊でした。

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紙の本京都てくてくはんなり散歩

2008/11/02 11:25

伊藤まさこさんが選んだ京都散歩コースがあれこれ 黄色い表紙に心つかまれ…

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

私にしては珍しく書店で初めてこの本を見つけて、そしてそのまま買った。
同じ伊藤まさこさんの『まいにち、まいにち』でさえ、図書館予約(ただいま19人待ち)をひたすら待っているのに、である。

衝動買いをしたこの一冊、
なにより装丁に惹かれた。
黄色い表紙に、同じ色の黄色い帯…、ぐぐぐと心をつかまれた。
同じ色の表紙と帯なのだ、それも私好みの黄色!
おびただしく並ぶ平積みの本のなかでもこの本が一番輝いていた。
「き、きれい!」
たぶん言葉を発していたはずだ。

そしてこの11月に京都行きの話がある。
なんというタイミング!
まさにちょうどよい。

てなわけで、すぐさま私のものになった伊藤まさこさんの京都本。
嬉しい、嬉しいと思いつつページをめくるので、にやけっぱなした。

ページを開いたそうそう、またまた嬉しくなる。
京都地図ならぬ、京都のあんこ地図!
一ページまるまる、京都に来たらはずせないあんこを配した、その名もずばり「あんこ地図」が登場だ。
この時期だとやっぱり栗目当てかなぁ~と
「栗餅所・澤屋」の栗餅や「松屋常盤」のきんとんをすかさずチェック!
なにしろ自分の本であるからして、二重丸でもなんでも書き込めるというわけだ。

哲学の道を一人歩くまさこさんの写真。
たっぷりと巻いたマフラーがなんともいい感じ。
今の季節だとこれくらいのマフラーがいるかな~なんて、旅行のワードローブ計画も頭のすみにチラとかすめる。
南禅寺三門の上から見晴らす紅葉の風景…。
ここの裏手側からは東山が間近なのねと頭の手帳にメモメモ。
光悦寺(初めて知りました)の紅葉のなんと見事なこと!
きいろ、だいだい、赤…そのグラデーションの美しさは圧巻、でした。

南禅寺近くのカレーうどん、
銀閣寺近くの白味噌のお雑煮、寒い季節だから美味しさがひっそう引き立つ美味しいもの…。
マンションの二階にひっそりと店を構える古本屋さんも寄ってみたいなぁ~。
そしてJR京都伊勢丹のデパ地下情報も、これは重宝しそう…と早くも心は京都へひとっとび、でした。

伊藤まさこさんが選んだ京都散歩コースがあれこれ、彼女のセンスにいつも憧れている私にとってはそのどれもが行きたくなるコースばかり。
しばらくは手放せない一冊となりそう、です。

「ここは、町中が宝箱のようだ」
帯の言葉も素敵だったなぁ~。

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紙の本こぎれい、こざっぱり

2008/04/20 07:21

底知れぬ面白みを、日々の生活から気づいて生きる

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

今からもう10年くらい前のことです。
娘がまだベビーカー時代だった頃の私の楽しみは
月1回の移動図書館の日でした。
娘とたくさんの本をベビーカーに乗せて、移動図書館のバスが来る広場へ行く足取りのなんと軽かったこと!
今でもあの弾む気持ちを思い出します。
その移動図書館バスの棚で出合ったのが山本ふみこさんのエッセイでした。
なにげなく手に取った彼女の本に、私はどれだけ楽しませてもらい、そして救われたでしょうか。
日々のなにげない出来事から感じたことや子どもたちとの関わりかた、
美味しいものを作る話や食べる話、そして季節の移り変わるさま…。
彼女の文章やイラストが子育てにどっぷりの生活を送っていた私の身体に沁みこむ、沁みこむ…。
それ以来、何度彼女の本を借りたことか!
図書館で借りて借りて借り倒し、どうしても手元に置きたい何冊かは買いました。
そして今、娘は11歳となり、移動図書館のバスとはすっかりご無沙汰の日々を過ごしています。
去年だったか、ひょんなことから山本ふみこさんのブログがあることを知りました。
その時の嬉しさはもう飛び上がるほどでした。
週一程度に更新され、しかもコメント欄があったのです。
私が書いたコメントに返事が来たときはもう嬉しくて嬉しくて、
娘に自慢しました。
「山本ふみこさんから返事もらったよ!」って。

前置きが長くなりましたが、このエッセイは
彼女のブログ「山本ふみこさんの家事手帖」を再構成して本になったものです。
ブログで読んだ文章を本で読むとまた違った印象がして、
また新たな気持ちで楽しめました。

「家のなかのあれこれや。家人たちとのやりとり。家を訪ねてきてくれるひとたちとのささやかな交流。
こんな、底知れぬ面白みを、気づいて生きていきたい。というのが、私の想いです。」
おわりに、のところにこう書いてありました。
そう、日々に息づく底知れぬ面白みを気づいて生きる…
これは私がふみこさんのたくさんの著書から教わったことだなぁとしみじみ思いました。

本書には「こぎれい、こざっぱり」のタイトルどおり、
生活をいかにこぎれいに、こざっぱりするにはどうすればよいのか…が、
ふみこさんアレンジでたくさん紹介されています。
例えば、掃除当番表だったり、くるくる布団だったり、小さな模様がえの話だったり、
そうそう、へんてこ棚の紹介や冷蔵庫の垂れ幕の話もありました。

ブログで初めて読んだときの気持ちがよみがえります。
「こんな方法があったのか!」と感嘆し、そして共感…。
今回はアンダーラインをひいたり(この本は買いました)、自分の手帖に重要事項を書き付けたり…。
そしてあいまに数々のふみこさんエピソードに、思わずにんまり。
誰もいない昼下がりに「あらあら、こんなに汚して」と自分で自分の足の裏を拭くふみこさん、
台所に入るなりあわて、あわてながらうかれるふみこさん、
いろんな要求に、少しだけ芝居がかった顔つきで「はい、ただいま」というふみこさん…。
ほんと、読んでるだけで肩の力がすっと抜け、
なんだかチカラが沸いてくるなんとも頼もしいエッセイです。


最後に一つだけ。
ふみこさんの台所仕事三箇条をご紹介しますね。
「自分が、楽しむ」
「いやになってしまわないように、なまける、休む」
「ときどき変化させる」

私もこの三か条を心に刻みました。

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紙の本黒ねこのおきゃくさま

2008/01/04 12:29

とてもしあわせ

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この絵本は娘がもらったクリスマスプレゼントの一つ。
私も一緒に読んで、とてもしあわせな気分となりました。

一人暮らしのまずしいおじいさんのところに、黒ねこがやってきます。
とても寒い晩のことでした。
みすぼらしいやせた猫は、おじいさんの家で
ミルクやパンやにくをご馳走になります。
それはおじいさんにとって残り少ない大切な食料でしたが、
おしげもなくすべて黒ねこに与えました。
そして残り少ないまきも寒がる猫のためにすべて使い尽くしてしまいます。

みすぼらしかった猫はおじいさんのもてなしのおかげで
すっかりまるまるとなり、まるで女王様の猫のようになりました。

おじいさんは黒ねこが満足している様子を見て、
お腹がぺこぺこだったのもすっかり忘れてしまいます。


「おじいさんはとてもしあわせでした。
 なんて心地がいいんだろう。
 なんてしずかな気持ちなんだろう。
 なんて心がいっぱいなんだろう。」

黒ねこが去った後に、おじいさんには思いがけない出来事が待ち構えています。
それは読んでからのお楽しみ!

黒ねこの緑色の目と、おじいさんの優しいまなざしが心に残ります。



 

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紙の本知ることより考えること

2007/04/30 09:31

そうなのだと、腑に落ちる

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

連休の最中、付箋を片手にこの本を読み続けました。
途中でやめられない、のです。
読み終わった今、付箋だらけのこの本をしみじみながめながら、
考える。
そしてもう一度、目次に目を通す。
第一章 自分とは何か?
第二章 悪いものは悪い
第三章 人間の品格
第四章 哲学のすすめ
池田さんのさまざまな言葉が甦ってくる。
私が驚きとともに大いに納得したのは
第一章の最後にあった「見たいもの見えるもの」。
池田さん曰く
「人は見事に、自分の見たいものしか見ていない。
自分の見えるようにしか見られないという大常識を、
今さらながら凄いと思うのである。」
そうなのだ…。
「すなわち、世界とは、「その人の」世界でしかありえないのである。」
そうなのだ!
「人間は、いかなる場合も、自分のうちなるものを自分の外に見出す。」
腑に落ちた。
ところで、池田さんは人を疑うことをしないと言う。
続けて、疑うことを知らないのではなく、疑うことが面倒くさいと言う。
他人のあれこれを憶測するのが面倒くさい。
人生における無駄な時間だと感じると。
無防備すぎると言われ、それがおそらく当たっていて、それなりの面倒も生じているそうだ。
しかし面倒くさいものは面倒くさい。
そして唯一覚えた防衛策が「君子あやうきに近寄らず」。
来る者拒まず去るもの追わずは合理的だとも。
彼女は今年の二月に癌のため46歳の若さで亡くなられました。
聞けば、彼女のほとんどの著書は絶版にならず、版を重ねているそうです。
私は彼女の幾多の著書をこれからもずっと大切に読み続けようと思うのでした。

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紙の本わたしから、ありがとう。

2006/12/22 23:43

いじめにあっていたわたしのお話〜「ありがとう」はかあさんが教えてくれた魔法の言葉〜

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「ありがとう」の一言が
相手の目を見て心から言えた時、
それはどんな相手にもきっと届く
魔法の言葉。

ももちゃんは学校でブラッキーにいつもいじめられていた。
まわりのお友達もブラッキーが怖いから、ももちゃんから離れていく。
だから、ももちゃんはいつもひとりぽっち。
そんなももちゃんのお引越しが決まる。
ももちゃんのかあさんはお別れのプレゼントを渡すときに、こうしてねと言う。
「ひとりひとりのめをまっすぐにみるの。
それから『ありがとう』っていうのよ」
ほんとうはブラッキーに「ありがとう」なんて
言いたくなかったけど、ももちゃんはかあさんとの約束を守った。
ブラッキーはぽろりと涙を流し、「ごめんなさい」そして「ありがとう」と言った。
ももちゃんの「ありがとう」がブラッキーの「ありがとう」に繋がった時、
ももちゃんはいじめっ子のブラッキーを許そうと思い、心が軽くなった。
ももちゃんの気持ちを実に丁寧に描き、
心の成長をゆっくりと見守る視線がとても優しい。
彼女のひとりぽっちの切ない気持ちや
いじめっ子をいやだいやだと思う気持ちが
美しい色彩のいろんな場面から飛び出してくる。
かあさんが抱きしめてくれるところや
心を込めて「さよなら」と言ってくれるお友達の顔を見ると、
ほっと温かくなる。

この絵本は明るくて包容力のある歌い手として知られている中島啓江さん原案。
「まぎれもなく愛がいっぱいです」と絵本への想いを語っていました。

「最後にブラッキーも泣いたね。
ブラッキーもひとりぽっちだったのかなぁ?」
一緒に絵本を読んだ小学四年生の娘がポツリと言いました。

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紙の本ソーネチカ

2005/12/14 11:49

何事にもひるまない、穏やかな人生を送る女性

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ロシアの女性、ソーネチカの一生。
本に囲まれた生活を愛する女性であったソーネチカは
勤め先の図書館で運命的な出会いをして
ある革命家と結婚する。
家庭に入り、娘が生まれ、そして続く淡々とした日々。
どうしようもない状況に突き落とされても、
どんな出来事が起ころうと、
それを淡々と受け入れる人生を選び取る彼女の生きる姿勢。
何事にもひるまず、穏やかさをたたえるその顔を想像しながら、
ソーネチカは強いなと思った。
そして、心が満たされていると、強くなるのかなと思った。

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紙の本本屋さんに行きたい

2009/07/24 11:38

新刊書店、古書店、ブックカフェ…ユニークなお店が15軒

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

私は驚きあわてふためきました!
図書館で借りてきたこの本をパラリパラリと見ていたのです。

そこで、なんと私の理想の部屋を見つけたのですよ。
そうです、5月だったか、ふと見たNHK教育で放送中の「Jブンガク」、その撮影をしている部屋、です。「Jブンガク」は海外視点からのニッポンブンガク再発見…というクールな番組。例えば、夏目漱石の『三四郎』や山田詠美の『ぼくは勉強ができない』などを取上げ、日本語と英文の両方で解釈するという実にユニークな内容の五分間番組なのです。
私は「Jブンガク」の講師であるロバートさんの大学の教官室を使って撮影しているのかな?なんて勝手に想像していたのですが、なんとここは本屋さんだったのですね!
もう、ビックリです!
築80年以上のモダンなビルの一室、ここ森岡書店は美術洋書を中心とした古書店、東京は茅場町にあるそうです。
それにしても大学の教官室なら行くのは無理かも~なんて思っていましたが、本屋さんなら、いつかきっと行けますね!

のっけからオドロキのあまり、熱く語ってしまいましたが、
この一冊はユニークで個性的な15の新刊書店、古書店、ブックカフェが美しい写真とともに登場。
女性4人で経営している貸本喫茶「ちょうちょぼっこ」、リゾートホテル内にある「リゾナーレブックス&カフェ」、大阪の古本屋ブームの先駆け的存在の「Berlin Books」、京都の名物本屋さん「恵文社一乗寺店」などなど…。

出久根達郎さんが言われるところの図書館浴、
この本ではちょっとした本屋浴がぞんぶんに楽しめます。
もちろん、この本をきっかけに本屋さんへでかけたくなること、間違いなし!です。

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紙の本女三人のシベリア鉄道

2009/06/24 16:02

シベリア鉄道、時空を超えて…

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

読み終わったとき、私はへろへろでした。
しかし、自分ながらに読み込めてないな~、あと数回は読まないとなぁ~とも思いました。
圧倒的なボリュームと力強さを感じました。
森まゆみさんの、この本への思い入れの深さをひしひしと感じました。
「シベリア鉄道へのわたしの関心がかくも長く持続したのはひとえに、学生時代にこれに乗って欧州へ行くという夢をはたせなかったことによる。」とあとがきの冒頭にありました。

近代文学史上で、大きな仕事をした女性三人。
与謝野晶子さんと、中條百合子さんと、林芙美子さん、この三人が時代こそ違え、同じシベリア鉄道経由で陸路ヨーロッパに行ったことに気づいた森さん、「これをテーマに思い残しの鉄道に乗ろうという考え」が浮かんだのだそうです。
期間にして約一ヶ月あまり。
この三人の旅に時空を超えて、まさに同行しているかのごとく森さんのシベリア鉄道の旅は始まります。
与謝野晶子さんのときと同じ、水曜日の夜汽車での出発でした。旅の同行はロシアと中国の二人の大学院生。娘と同じ年頃の女性との二人旅は、ときに気をつかいあいながらも、楽しそうなものでした。

森さんのシベリア旅行記と三人の女性たちのシベリア旅行記が、度々重なり合います。過去にぐっと引き戻されたり、車窓を流れる風景に心癒されたり…。
「はっと目が覚めると、窓にオレンジ色の太陽がしずしずと昇るところだった」私もすっかりシベリア鉄道の車中の人になっていました。

鉄道の旅は、時間がたっぷりある。
だから思うままに時間を楽しめる。
森さんは本をたくさん持ち込んでシベリア鉄道の旅を楽しみました。私はこの本を読みながら武田百合子さんの『犬が星を見た』を思い出していたら、森さんがこの本を読んでいるくだりが出てきて、とても嬉しくなりました。

それにしても、と思う。
与謝野晶子さんのあふれんばかりのエネルギー、
中條百合子さんのはてしない向上心、
そして林芙美子さんの積みあげていった底力、
そのどれもが強く心をゆさぶります。
すごい女性がいたもんだなぁ~っと。

旅の途中、森さんが大学生の息子さんとワルシャワで合流する場面がありました。森さんの母親の顔が見え隠れして、ここのところはほんわかして、なんともいいなぁ~と。

いつものごとく今回も図書館で借りたので、返す期日が決まっています。
延長をしようかとネット検索してみたら、すでに予約の人がいました。後ろ髪ひかれながらも、早く返却しなきゃなぁ~、次の人が待ってるもんなぁ~と思いながら、本を閉じたのでした。

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紙の本幸田文台所帖

2009/04/14 17:16

エッセイと極上の小説が一編

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

桜の咲き始めた頃から読み始め、そしてしみじみとかみしめながらようやく読み終わったときは桜の花が散ったあとでした。
表紙の桜の花、なんと美しいことでしょう。

幸田文さんのいろんなエッセイと極上の小説が一編。
この本を編んだのは文さんの娘、そしてお孫さんで随筆家の青木奈緒さんがあとがきを書かれています。

幸田文さんの文書はこれまで何度となく読んできたように思いますが、今回もまた深く深く読み込んでしまいました。
台所の話、です。
それぞれのエッセイの最後に、その当時の文さんの年令が書き記してあるのです。
その年令を見ながら、またその書かれた内容の重さもひしと感じるのです。

例えば、「いま私は、ようやく静かな台所にいる。四十八年が必要だった。静かで平安な台所である。業は一生つきるよしもなかろうが、静かさを得て台所に感謝するのである。」
これを書かれた時が文さん六十一歳のとき。

「あるとき、はっと一時に、自分は台所で、どれほど育てられたか、と思い当たったのである」といわれる文さん。
私はここを読みながら、まだまだ修行中の身であるなぁ~といまさらながらに思ったのでした。

いつものごとく、付箋をつけながら読むと、たちまち付箋だらけとなり、さらに文さんの父である幸田露伴さんの言葉がぽんぽん胸に響いた。
あるとき、小学生の文さんが毎日の献立を書きとめるようにと渡された「だいどころ帖」。露伴さんはいっしょに見ながら『この帖面から音が聞こえてくるようにならなくちゃね』と言う。
そして『台所には是非とも音が生じる。その音を怖じたり恥じたりしないようになれ。厨房の音を美しくしろ、台所の音をかわいがれ。台所はたべるうまさをつくるところだ、うまい音があっていいはずじゃないか」と続ける。胸がなんだか弾んできます。

こんな言葉もありました。
「台所をなんとみているか。台所には、火と水と刃物がある。(略)火は山も野も町も焼き尽くす火災と同じ火、水は洪水の水と同じ水、刃物またまかりまちがえば人をあやめるものと同じ。台所の手元にあるからというだけのことで、心なく馴れなれしく扱うのは、いい気になりすぎている。家中探しても、火水刃物が揃って置いてあるのは台所だけ、台所ではもう少し緊張した態度、憚りある気持ちが必要だろう」と文さんをたしなめる。心して私も同じ言葉を聞く身になる。

それにしてもと、文さんのエッセイを読みながら、つくづく思う。
台所とはほんとうに偉大な場所であるのだなぁ~と、そして台所で人生の多くの時間を費やすことになる人にとっては、台所での作業こそ心のよりどころになるのだなぁ~と。
人間生きている限りは三度三度の食事はついてまわる。ならば…。このエッセイから学ぶことは、実に多い。

食べものにまつわるエピソードで忘れられないのは、文さんの同級生の母親がある事情で弁当を食べない文さんのためにこしらえたお弁当の話。事情も事情なら、そのお弁当に込められた友達の母の気持ちもまた年月を超えてとても温かい。このエッセイを書いたときの文さんは実に五十歳なのですよ。

小説のタイトルは『台所のおと』です。
病に臥せる料理人とその妻の話。なんだか露伴さんが見え隠れしませんか?

そうそう、一枚だけ写真がありました。
幸田文さんがお気に入りの着物を着た一枚です。
エッセイや小説をたっぷり楽しんだ後だけに、その一枚を見たときはとても他人とは思えませんでした。^^

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紙の本神様

2009/03/15 17:38

『神様』 のおかげか、今日も悪くない一日、でした

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読書の大波小波があるとすれば、
間違いなく、昨日から大波『神様』状態です。
川上弘美さんの生まれて初めて活字になった小説。

「くまにさそわれて散歩に出る。」
この一文から始まります。

幾度となく手にして、幾度となく読んでいるこの一冊。
今回の大波は、はたして何回目でしょうか?

初めて読んだときの気持ちが忘れられません。
ほんの数ページの小説なのですが、これほど引き込まれた小説はかつてないのです。

この思いのたけを伝えようにも、
どこがどれだけいいと伝えようにも、
言葉にすればするほど、その思いが遠くなるといういうか、なんと言うか、おろおろ泣き出してしまうかもしれないほど、私にとってはたまらない小説です。

大波の今は、しばらくこの一冊を鞄に入れて持ち歩きます。『神様』のおかげか、今日も悪くない一日、でした。

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紙の本伝言レシピ

2009/03/13 15:37

早速作ったのは、ごぼうの味噌汁、でした。

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雑誌「クウネル」に好評連載中の「高橋みどりの伝言レシピ」がよりパワーアップして一冊の本になりました。
このコーナーは「クウネル」を愛読する私にとっては、楽しみな連載の一つ、です。
なにしろ見るからに美味しそうな料理だし、その上、作り方が簡単、そう本当に気軽なレシピばかりなのです。

今回、改めて見てみると、レシピを教えてくれた人の中に平松洋子さんが何度も出ていて、ああ、そうだったのか…と思いました。
どうりでこの伝言レシピが気になるはずです。
彼女からの伝言レシピは帆立の蒸し豆腐だったり、梅干しごはんだったり、黒ごまごはんだったり、それはもうすぐにでも作りたくなるような極めつけレシピばかりでした。
ほかに高山なおみさん、米沢亜衣さん、船田キミエさん、などなどお名前を拝見して、あああの方の…と嬉しくなるレシピがいっぱい。

そんな中、島るり子さんの名前を見つけたときは、「おお!」と声が出ました。
長野県は伊那市在住の陶芸家である彼女のことをつい先日知ったばかりだったからです。ひょんなことから「きっと」創刊号を取り寄せて読んでみました。伊那市高遠に住む女性三人が広告収入に頼らずに発行している小冊子、ほんのりあたたかい手渡しのぬくもりが伝わるような一冊でした。

私にとって伊那市高遠町はいつか行ってみたい憧れの土地で、飛びつくように読んでみたわけですが、創刊号の記事の一つに島るり子さんが登場されていたのです。島さん宅へ訪問。いろんな暮らしぶりやうつわが登場する中、「きのこのねじねじパスタ」のレシピも紹介されていました。で、「伝言レシピ」の方の島さんレシピはといえば、大根の漬けものと、ごはんのおとも(じゃこと大葉のちょことおかず)。どちらもごはんがどんどんすすみそうな一品でした。

こうしていろんな本や雑誌を読めば、読むほど、いろんな世界が繋がっていき、嬉しいこと、限りなし、です。

そうそう、早速作ってみたのは、ごほうの味噌汁、でした。
青木裕司さんが教えてくれたレシピ、たいへん美味しくいただきました。^^

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彗星のように消えてしまった幻の書店を追う…

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「ボン書店という小さな出版社が姿を表わした。出版社といっても社員を雇い事務所を設け、というのではない。
たった一人で活字を組み、自分で印刷もして、好きな詩集を作っていたらしい。(略)
そして数年後、彗星のように消えてしまった。」

目録販売の古書店を営む内堀弘さんは、そのボン書店の鳥羽茂さんについて丹念に調べ上げ、そして彼の生きた道筋を追った。
一冊にまとめられたのは今から10数年前の1992年、そして去年文庫化されたとき、あらたに文庫版のための少し長いあとがきが加わった。

読み終わって、しみじみ大分の梨の樹に想いを馳せた。
確実に今の世に残されている鳥羽さんの生きた証、彼が手がけた詩集もさることながら、この梨の樹をよくぞ内堀さんが探し当ててくださったことよと頭が下がった。

読後の感動のあまり、なにから書いてよいのか、気持があふれすぎて困ってしまうのだが、大分の地は、鳥羽さんの最期の地、そしてそこで枝を広く伸ばして生い茂っていた梨の樹は病身の鳥羽さんが息子さんと一緒に植えた梨の苗木にほかならない。

ボン書店、昭和七年から十三年にかけて活動し、十数冊の詩集を出した後、姿を消してしまった、幻の書店。
しかし、彼が手がけた詩集の見事さは、ほんのわずかにではあるにせよ、人々の心に残り続けた。
内堀さんは調べに調べた。幻の書店を、幻となった鳥羽さんを追った。

そして彼が慶応ボーイであったこと、
岡山出身であったこと、
ボン書店時代には奥さんと息子さんがいたということ、
奥さんと共に病気になってしまったこと、
息子さんと二人で大分に行ったこと(文庫版のための少し長いあとがき)
…などなどの事実を突き止めた。

なにがそこまで内堀さんの気持ちを奮い立たせたのか…。
それは、鳥羽さんの、ボン書店の詩集があまりに素敵だったからに違いない、そして彼の引き際があまりに唐突だったからなのではと想像した。
詩集作りへの鳥羽さんの熱い想い、時代を超えても伝わるもの…、心をゆさぶるものを感じてしまったなら、もはや止められないよなぁ~。
そういう私も内堀さんの文章に心底引き込まれてしまった。

ボン書店発行の詩集を一度、手にとって見たいものだ。
そして、「刊行人・鳥羽茂」と印刷されている文字を見たい…、そんな想いも強烈にこみ上げてきた。

関わった人は存在しなくなっても、書物は残る。
あらためて、この事実を思い知った。
古書に囲まれて生活をされている内堀さんだからこそ書けた一冊なのではないかとも思った。

あふれる気持の100分の一も書けず、もどかしい限りです。どうぞどうぞ読んでください。
ちょっと前のNHK週刊ブックレビューで岡崎武志さんが紹介された一冊でした。迷うことなく買った一冊でした。

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