漫画でわかる競技かるたを描く青春ドラマ「ちはやふる」の徹底解剖
ちはやふるは競技かるたを題材にした青春漫画です
漫画雑誌「BE・LOVE」(講談社)で、現在も連載中の少女漫画「ちはやふる」(末次由紀著)について徹底解剖しました。
「ちはやふる」の単行本は、最新刊の29巻まで発刊されています(2015年12月現在)。累計発行部数が1,300万部を超える大人気の漫画です。
2011年からテレビアニメも放映されていて、今春、ちはやふるアニメ3期の放送が決定していることからも人気の高さは衰えを知りません。
最近の話題は、今年3月に実写映画化が決定していることです。実写映画化では、主人公の千早(ちはや)役が「広瀬すず」はもちろんのこと、真島太一役のキャストは特に注目が集まったことでも話題になりました。
数々の賞を総ナメにしている「ちはやふる」
【ちはやふるの受賞歴】
・2009年 マンガ大賞受賞
・第35回 講談社漫画賞少女部門受賞
・宝島社「このマンガがすごい!2014年オンナ編」1位獲得
ネタバレにならない程度に「ちはやふる」あらすじをご紹介します
「ちはやふる」の続きが待ち遠しくて、youtube動画やネタバレのサイトなどを検索している人は多いようですが、「ちはやふる」で検索してみると、ヒット件数はなんと77万件もあります。
「ちはやふる」は、主人公の千早(ちはや)が転校生の新(あらた)との出会いをきっかけに、「小倉百人一首競技かるた」の存在を知り、その奥深さに魅了されるところから始まります。
競技かるたを通して、主人公の千早が次第に自身の夢を見つけていき、新(あらた)、太一(たいち)をはじめとした、そのほかの仲間たちと競技かるたを通して成長していく姿が主軸になっています。
「ちはやふる」の魅力について
少女漫画というと、単なる恋愛モノのように思いがちですが、この「ちはやふる」はよくある少女漫画ではありません。「よくある少女漫画でない」ことが、この作品の魅力のひとつなのです。
<魅力1>これまでにない「競技かるた」を題材にした作品
ちはやふるをきっかけに「競技かるた」を知った人も多いでしょう。かるたの専門用語もたくさん出てくるので、古文に興味のある人にとっては唯一無二の漫画ではないでしょうか。
<魅力2>少女漫画のイメージを裏切る本格的「スポ根」作品
「かるた」と言えば、文化的でおっとりとしたイメージですが、「競技かるた」は「畳の上の格闘技」と言われています。
「競技かるた」に魅了された主人公の千早(ちはや)は、もっと強くなりたい、腕を磨きたいと思い、ライバルたちと切磋琢磨し、たくさん悔しい思いも重ねながら前進していきます。
千早は、幼なじみの新(あらた)、太一(たいち)らと共に、「かるた部」を創設します。そのチームメイトたちとも、数々の試練を乗り越え、競技かるたという勝負の世界で勝利を目指して行きます。彼らの活躍や葛藤していく姿が「ちはやふる」の魅力のひとつです。
<魅力3>少女漫画のときめきと少年漫画の熱さとのバランスが絶妙
ストーリーの始まりから、先の展開が気になる恋愛の要素もちりばめられています。
主人公の千早をとりまく登場人物(キャスト)の相関図は、リアリティ感十分です。下に、「ちはやふる」の登場人物相関図を書いておきました。
この相関図をよく見たうえで、漫画「ちはやふる」を読んでみてください。これらの人間関係は、少女のみならず、いわゆる"オトナ女子"にもウケている理由です。
【ちはやふる 登場人物の相関図】
「ちはやふる」の由来
作品のタイトルである「ちはやふる」には、主人公の名前の「千早(ちはや)」という呼び名も含まれていますが、小倉百人一首の撰歌の藤原業平(ふじわらのなりひら)が詠んだ「千早(ちはや)ぶる 神代(かみよ)もきかず 龍田川(たつたがは)・・・」に由来していると言われています。
「千早(ちはや)ぶる」とは、次の言葉の「神」にかかる枕詞です。正確な意味としては「いちはやぶる」で、「いち早く振る舞う」という言葉を短縮したものです。
作者の末次先生は、本作についてのインタビューで次のように語られています。
"勢いの強いさま"という"ちはやふる"の本当の意味を、主人公が知り、表現していく物語なのだと思う。
ちなみに、競技かるたでは「ちはやふる」は「ちはやぶる」と、「ふ」を濁音にして発音しますが、本作のタイトルはそのまま清音で発音します。
また作品中でも、主人公の千早(ちはや)に競技かるたの存在を教えてくれた新(あらた)が千早(ちはや)に対し、「ちはやっていい名前やな」と百人一首の撰歌の句を紹介しつつ話すシーンがあります。普段クールな新が、千早に初めて心からの笑顔を見せたことは、ちはやふるのファンにとって感慨深い場面のひとつなのです。
UROKOより
ちょっとネタバレして「ちはやふる」のあらすじ解説
ちはやふるのストーリーは、年代ごとの時系列に分けて展開していきます。
<小学校編>
ブログだったより
自分の夢がまだ見つからない小学校6年生の主人公・千早(ちはや)は、自慢の美人の姉の千歳(ちとせ)が「美人コンテストで日本一になる」という他人事を夢にもつ少女でした。
千早が福井県からの転校生の新(あらた)と出会います。普段は静かで無口な新が、真剣にかるたに取り組む姿に触発されます。そして、千早自身も「情熱を持てるもの」を見つけ、自分が変わっていく姿がよく描かれています。
千早と新の二人は、千早の幼なじみの太一を巻き込んで、三人で競技かるたにのめり込んでいきます。
小学校編では、かるたの魅力へどんどん惹き込まれていく三人のそれぞれの姿と、彼らの関係の変化を楽しめます。最初はぎこちなかった三人が、地域の「かるた会」へ入会したことから徐々に変化していくのです。日々の練習や試合を通じて絆を強めていく三人の関係は、高校生に成長した後もストーリーの主軸になっていきます。
物語の序章である第1巻(第1首~第5首)から盛り上がる展開で始まり、第6首以降へと続く伏線の数々に目が離せなくなります。
個人的には、東野圭吾さんの小説が大好きなのですが、漫画にも伏線を仕掛けてあると、こういうふうに面白くなるんだと思いました。
<高校一年編>
小学校を卒業してからの千早・新・太一の三人は、それぞれの道を歩み始めたのですが、中学生になっても、ひとり、かるた会を辞めずにかるたを続けていたのは千早でした。
千早は、太一が自分と同じ瑞沢高校に進学していたことを知り、「またかるたを本気でやろう」と太一を促します。太一は、最初は乗り気でなかったのですが、千早の情熱に心を動かされ、二人で瑞沢高校かるた部の設立を目指します。
いっぽう、新は小学校卒業後、生まれ育った故郷の福井へ戻っていました。かるたへの情熱を密かに持ち続けながらも、祖父の逝去をきっかけに、かるたからは離れていました。千早は新と一年以上の間、連絡を取ることができなくなっていました。
小学校編のクライマックスで三人が交わした、「かるたを続けていればまた会える」という約束を胸に、千早と太一は新との再会を期待して、より一層かるたへ情熱を傾けていきます。
しかし新は、かるたを始めるきっかけだった祖父の逝去と、その悲しい出来事から、かるたに向き合うことが出来なくなっていました。千早・新・太一の三人は、再びかるたで繋がることができるのでしょうか。
<高校二年編>
まんが栄養素より
職員会議において決まった「部員があと5名増えなければ部室を返上」という条件を突きつけられた千早たちのかるた部は、新入部員の獲得に一度は成功するのですが、新入部員との結束を固めることについては、大きな苦難が待ち受けていました。
それでも数々の試練を乗り越えるうちに、メンバーそれぞれの力を強めながら、自分の弱点に気づき、変わっていく千早の姿が描かれています。
新メンバーを加えて、部員数7名になった端沢高校かるた部は、高校選手権団体戦へ挑むことになります。そこには、新や現かるた女王「クイーン」の姿もあり、波乱の展開が満載です。
<高校三年編>
高校選手権の団体戦で、全国制覇を成し遂げた瑞沢高校かるた部ですが、競技かるた以外のストーリーもあります。
太一は、長年秘めていた千早への想いをついに告白しますが、千早はその想いに応えることができません。千早をめぐる太一と新の三人の関係はどうなるのでしょうか。恋愛に発展しそうでしない「純粋」な恋愛モノとしても楽しめるのが、漫画「ちはやふる」です。
「いい歳して、いまさらなにを・・・」と、考えるのは止めましょう。いくつになっても漫画を読むのは自由です。
ちはやふるの作者について
「ちはやふる」の大ヒットで有名になった作者の末次由紀先生について、ここでご紹介します。
末次由紀先生は、多数の有名漫画家を輩出している福岡県出身です。福岡県北九州市には、漫画ミュージアムという漫画専門の博物館が存在するほど、数々の伝説級の漫画家先生たちがこの地の出身です。
【北九州出身の有名漫画家】
松本零二先生(代表作「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」)
わたせせいぞう先生(イラストレーター)
畑中純先生(代表作「まんだら屋の良太」、版画家)
北条司先生(代表作「キャッツ・アイ」「シティーハンター」)
萩尾望都先生(代表作「ポーの一族」「トーマの心臓」)
古賀新一先生(代表作「エコエコアザラク」)
末次由紀先生の作品のうち最も有名な作品は、「ちはやふる」ですが、他の作品もオススメです。「クーベルチュール(2009年)」、「ハルコイ(2007年)」などです。
「ちはやふる」は、末次由紀先生にとって初めて手がけた連載作品だそうですが、連載のきっかけは、担当編集者から「かるた漫画」を提案されたからだそうです。ご自身もかるたを経験していて親近感があったこともあり、描き始めたそうです。
マンガ「ちはやふる」の最新情報
単行本「ちはやふる」(講談社)は、2015年の年末12月時点では29巻でした。そして「ちはやふる」30巻が、いよいよ1月13日に発売されました。
まとめ
出来るだけネタバレしないように、漫画「ちはやふる」を解説しました。「ちはやふる」をきっかけに競技かるたのことを知った人も多いのではないでしょうか。
かるた初心者の人でも、完全理解できるように説明しました。競技かるたを深く知るほど漫画「ちはやふる」をより楽しめるようになります。
次回以降は、「ちはやふる」のあらすじや展開予想、実写映画のキャスト情報などを含めて、さらに詳しく解説していきます。
以上、漫画でわかる競技かるたを描く青春ドラマ「ちはやふる」の徹底解剖でした。
ライタープロフィール
川添 勤(かわぞえ つとむ)
1968年生まれ。2010年フォロワー数20万人超えの「ハマコーTwitter」をプロデュース。
当時、日本のTwitterフォロワー数ランキングトップテン入りに貢献する。
2011年、故浜田幸一氏の最後の本となる「YUIGON」(ポプラ社)を監修。ベストセラーとなる。
2014年2月、キッザニア日本の創業者住谷栄之資氏の「キッザニア流!体験のすすめ」監修。
2014年10月には10万部を超えるベストセラーとなったゲッターズ飯田の「運命の変え方」に企画協力。
この記事で紹介した漫画
ちはやふる
まだ“情熱”って言葉さえ知らない、小学校6年生の千早(ちはや)。そんな彼女が出会ったのは、福井からやってきた転校生・新(あらた)。おとなしくて無口な新だったが、彼には意外な特技があった。それは、小倉百人一首競技かるた。千早は、誰よりも速く誰よりも夢中に札を払う新の姿に衝撃を受ける。しかし、そんな新を釘付けにしたのは千早のずば抜けた「才能」だった……。まぶしいほどに一途な思いが交差する青春ストーリー、いよいよ開幕!!
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