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連続インタビュー<クリエイターズ・ファイル>

Creative Works Interview25
FPO法人 10代少女の為の気持ちホスピタル「ガーベラ」代表
清瀬まさ子(キヨちゃん先生)(55歳)

各界で活躍するクリエイターを紹介するシリーズ、今回は、10代の心に寄り添う「下町の救世主」に密着取材しました。

*クリエイターズ・ファイルの単行本が発売されました。
クリエイターズ・ファイルVol.1
2016年9月20日発売。価格1,400円+税(DVD付き)
詳細はこちら。

撮影:浅田政志

In Downtown

―東京下町の繁華街に来ています。この辺りで、FPO法人なる組織を運営している代表者に会えると聞いたのだ。そこで、取材陣一同の目をひときわ引いたのは、明るくなんとも優しい雰囲気のキヨちゃん先生だった。
清瀬 こんにちは。寒いのにご苦労様です。取材に来てくださった方々ですよね? こんなにたくさんで来られるなんて驚いた(笑)。FPO法人・10代少女の為の気持ちホスピタル「ガーベラ」という支援団体をやっております、清瀬まさ子です。おばさんでガッカリでしょ?(笑) この前、孫もできたからもうおばさんどころかおばあちゃんなの。
―本日はお邪魔いたします。清瀬さんは、今何をなさっている最中ですか?
清瀬 私たちやあなたたちよりもっともっともっと若い子、いわゆる10代の女の子たちが何かに対し少しだけ迷っていないか、困っていないか、寂しくはないか、お腹空いていないか、すべてを見回っているの。わかりやすく言うと、若者の為のパトロールというか、「おせっかいおばさんのパトロール」というか。どっかのおばさんのクッキーみたいになっちゃったわね(笑)。昼も夜も、晴れの日も雨の日も歩きますよ。困っている10代なんてたくさんいるんです。特に女子は、十分な注意を払ってあげないと見落としちゃう。同じ女性だからこそわかるっていうこともありますしね。とにかく現在は人手が足りないということもあり、私自身がパトロールをやっているのです。
―たとえば、そういった少女たちは、どういうところにたむろしているんでしょうか。
清瀬 やっぱり、まずはじめに行くのが駅前のコインロッカーかな。家出した子が荷物を置いて、タンス代わりに使うことも多いですね。
―その後、一同コインロッカーに向かうと、清瀬の言うとおり、そこには10代と思われる二人の女性の姿があった。
清瀬 お話ししていい? 女子トークとなると、おばさん邪魔かな(笑)。二人はおいくつ? お名前は? おばさんのこと、キヨちゃんでもいいし、キヨちゃん先生でもいいし、へんてこおばさんでもいいし、好きに呼んでね。おばさん慣れてるから。
アイリ ……17歳。アイリ。
キアラ 私は18。高3……。キアラ。
清瀬 まあ素敵。キラキラネームね。うらやましい。おばさん、古い名前なの。まさ子と交換してほしいな(笑)。アイリ・キアラ フフフフフ(笑)。
―そこにはあっという間に表情が笑みに変わった少女たちがいた。どこか懐かしく誰もが話したことのある地元のオバチャン、親戚のような雰囲気で知らないうちに取材陣一同誰もが心を開いていた。
清瀬 あれれ、今日は平日だけど、学校はどうしたの? どこから来たの?
アイリ ……埼玉。
清瀬 いいところよね、埼玉。おいしいものがたくさんあるし。私も何回も何回も行ったことある。大好きだから。おばさんね、よく甘酒を作るの。川越の酒蔵にどうしてもこれじゃなきゃって米麹があってね。月に一度は買いに行くの。あらら、また話が逸れちゃった。学校は? サボったのかな? ダメでしょ! ……なんて私は言わないの。元々お説教するつもりはないですから。これからどこに行くの?
キアラ 別に……。何も。
清瀬 そう、じゃあちょうどよかった。ここは寒いし、あったかいものでも食べて元気出しましょう。これじゃかっこいい男も寄って来ないよ。なんて言ってたら、おばさんがお腹空いてきちゃった。
アイリ ……フフフ(笑)。
キアラ ……フフ(笑)。

↑少女に優しく手を差し伸べるキヨちゃん先生。今まで更生させた少女たちは数知れず。

清瀬 二人は好物は何? 
アイリ ……唐揚げ。
キアラ ……チーズ。
清瀬 ちょうどよかった。おいしいところがあるの。さあ、行きましょう!
 ほら見て。どの花も花壇から栄養をもらって大きくなってるの。自分を育ててくれた土のこと、忘れちゃダメよ。土がカラカラになっていたら、今度はあなたたちが潤してあげなくちゃ。あなたたちの花壇は、今はまだ埼玉でしょ。もっともっと自分の花壇の栄養を吸収して大きくなってから、行くべき花壇に植え替えするの。もしかしたらまだ東京の土はおいしくないのかもね。もっともっと甘えて、埼玉の花壇にはまだまだ栄養余っているみたいだから、もっともっと栄養もらいなさい。だってタダよ、タダ。土が乾いちゃう前にさ。
アイリ・キアラ あの、私たち……。
―なんとキヨちゃん先生は、こんな短時間で少女たちを更生させてしまった。これには取材陣一同驚きを隠せなかった。

At the Office

―少女たちは埼玉へ帰りましたが、その足で「ガーベラ」の事務所へお邪魔しました。
清瀬 ここは私の住居兼事務所。少女たちの駆け込み寺になればいいかなと思って。
―ガーベラという名前にはどういう意味が込められているのですか?
清瀬 ガーベラってね、色々な種類の色があるの。少女たちも同じなの。みんなそれぞれ個性が違う。人それぞれタイプは違うけど、どれもみんな美しいの。がんばって成長した花たちはどれもきれいなの。仕方ないの。そうなの、私たちはこの世で一つだけのガーベラ。一輪一輪、違う性格。その花を成長させることだけに無我夢中になればいいの。
―なるほど。事務所には会社でパワハラを受け、悩みを相談しに訪れたレイさん、それから他にも卒業生の方々が集まっていた。
清瀬 たまり場になってしまうの。彼女たちにとって飾らない自分を出せる場所なんでしょうね。レイにも話すつもりですが、それに甘えていてはダメ。ここに頼りすぎちゃダメ。どんな職場にも問題はあります。ここの事務所だってそうです。事務の民代さんは先日まで仕事がまるっきりできなくて使える状況じゃなかった。カナコ(仮名)だって少し前までは手がつけられないほどの不良少女だった。だけど、みんな闘ってるんです。
 レイ、あなたは自分のなかで何ラウンド闘ったの? 
レイ いや、闘ってないかも……。
清瀬 それじゃ何も変わらない。変わるという字「変」。自分で「変」を起こさない限り、変わらないの。本能寺の変、桜田門外の変……、歴史を変えるのはいつだって「変」なの。レイが会社でパワハラを受けているのならば、「レイが会社でのパワハラに勝つ変」を起こ
さなくちゃ。今のあなたは「変」じゃない。「現」なの。現状維持、それじゃ、自分の年表には入らないね。
―今日密着しただけで3人の女性を更生させたキヨちゃん先生。どうしたらそんなに少女たちの心をつかめるのですか。
清瀬 私は若い人の背中をそっと後押ししているだけ。若い人は皆、若鶏のような弾力を持っているの。大人たちが軽く押すだけで、きちんと前に出るの。こちらとしても、お金をいただいている以上、絶対に手は抜けないのです。
―「ガーベラ」は慈善活動ではないのですか?
清瀬 私たちはお金はいただきます。社会貢献ではなく、営利目的です。私は、少女たちのためにも隠したりはしない。営利目的。そうしないと、私たちはどうやって生活していくんです? 私自身、若い頃から紅茶のサロンをやりたいという夢があったんです。しかし、10年前の主人の他界をきっかけに土地、その他のトラブルが続いたのもあり、この商売を始めました。少女たちにはこんな私でも夢があるということをわかってほしいのです。いつかお店を持てた時には彼女たちに一番のお客さんとして来てもらいたいものです。
―なるほど。

↑「ガーベラ」事務所にて。時計回り左から、清瀬さん、(奥)事務の民代さん、(右)カナコ、(中央)レイ。

↑同じ目線で10 代の全てを受け入れるキヨちゃん先生。

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