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マックス・ブロート氏に多大なる感謝を!
2005/05/30 00:35
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ツキ カオリ - この投稿者のレビュー一覧を見る
訳者の池内紀氏の「解説」の冒頭部には、こう記されている。
カフカ(一八八三--一九二四)は生前、『観察』や『変身』や『田舎医者』など、薄っぺらな短篇集を公にしただけたった。死に際して友人マックス・ブロートに、草稿、メモ、書簡類をも含めて自作のいっさいを焼きすてるように頼んだ。もしブロートが友人の「遺言」を守っていたら、世界文学はフランツ・カフカを知らなかったはずである。幸いにもブロートは友人の頼みを無視した。この「誠実な裏切り」がフランツ・カフカという二十世紀の代表的な作家を生み出した。
この短篇集には、比較的長いものから、全くもって短いものまで、20の短篇が収められている。
そのうちの比較的長い2つを、ご紹介したい。
『流刑地にて』は、このような話だ。
ある流刑地に、旅行家は、学術調査のために赴く。丁度、ある囚人が、上官侮辱の罪で処刑されるところだという。囚人は、首、手首、足首に、鎖を付けられ、その鎖は、兵士が握っている。処刑を実行するのは、将校の役目だ。処刑には、特殊な機械を使うのだ。将校は旅行家に対して熱心に、機械のしくみ、処刑のしくみを説明する。機械はずいぶんと古くなっているようだ。果たして処刑は、滞りなく、なされるのか?
『中年のひとり者ブルームフェルト』は、このような話だ。
ある夜、中年の独身男、ブルームフェルトが帰宅すると、部屋の中では、白いセルロイドのボールが二つ、交互に上下して、カチカチと、床を叩いている。ブルームフェルトは、ボールをつかまえようとするが、うまくいかず、不快ではあるが、その状況を受け入れる。翌朝、ボールを洋服箪笥の中に閉じ込め、ブルームフェルトは会社に出掛ける。ブルームフェルトは高級下着の製造工場に勤めている。会社は年々忙しくなる一方なので、工場主に直談判して、部下、すなわち助手を付けてもらった。この助手がちっとも役に立たないのだ。
何度か読んでいるはずのこの短篇集だが、一部はかなり忘れてしまっていた。今回は、タイトルを見ただけで、内容が即座に思い浮かぶくらいの回数を、各々読み返した。特に、『喩えについて』の後半部は、何度も何度も読み返さざるを得なかった(笑)。
この、小さな、沢山の「世にも不思議な物語」を葬りさることなく、我々に提供してくれた、カフカにも、もちろんだが、彼の友人であったマックスブロート氏にも、強い強い感謝を捧げねばなるまい。
脳みそが、まるでぞうきんのように、捻(ねじ)られて、絞られてしまうような錯覚を起こすかもしれない、名作集である。
よく解らないけど引き込まれる
2022/07/19 22:48
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こっこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
カフカは色々な解釈ができて、専門家でも解釈が分かれるみたいだから、いっそ何も考えずに引き込まれれば、読者それぞれの気づきが生まれるんじゃないのかなあと、読み終わって思いました。単純に文章が面白かったと感じました。訳者の力量も大いにあると思います。
分からん!
2021/03/14 18:08
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:帛門臣昂 - この投稿者のレビュー一覧を見る
前評判より、読んでみよう!の精神で読みました。
分からない!
不思議な短編たちでした。
しかし、かくも分からない、奇妙奇天烈だと面白くなってくる。
頭を空っぽにして読んでみてほしい。興味が湧いたら、論文や解説を読もう。
フランツ・カフカの短編20篇を収録した書です!
2020/04/29 11:06
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、チェコ出身のドイツ語作家、フランツ・カフカの短編を20篇収録した一冊です。カフカは、生前は『変身』など数冊の著書がごく限られた範囲で知られるのみでしたが、死後中絶された長編『審判』、『城』、『失踪者』などが友人によって発見され、刊行されたことから、20世紀を代表する文学者とも呼ばれるようになりました。カフカの作品は、その意味が難解で知られていますが、それを知った上で、ある程度、想像して読んでいくことで、楽しさが味わえます。同書には、カフカのとっておきの20篇が収録されていますので、ぜひ、想像して読んでみてください。
幾種類もの解釈があるカフカの凄絶さ
2003/04/29 00:54
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風 - この投稿者のレビュー一覧を見る
稀代の名作家カフカ
カフカがなぜここまで人をひきつけてやまないかというと
カフカの小説に秘められたる
秘匿性といえようか
不可思議であるからだ。
人はわからないものを知ろうとするが知ることはできない
そしてカフカの作品を読み
それを理解しようとする。
自分なりの解釈をつけて
完結させたりする人もあるし
最後まで解釈をつけられないものもある。
私は本書の中では『判決』が最も気にいっているが
この話もカフカの『変身』に似た部分がある。
この結末が不可思議だと思わなかった人はほとんどいないだろう。
高等な批評家はともかくとして、一般に趣味として読むような
読者の方は必ず不可思議に思うはずである。
そういう神秘性、秘匿性が
人をひきつけてやまないカフカの魅力の一つである。
面白い
2016/02/12 23:31
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うどん99 - この投稿者のレビュー一覧を見る
カフカの独特の世界観が、短く楽しめてとても良かったです。
どっぷりと浸かるなら長編が読みたくなりますが、短くシンプルな短編だと、それぞれの話は何を表しているんだろうかと考えるのが楽しいです。
お気に入りは掟の門です。
カフカ短篇集
2001/04/25 15:35
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:55555 - この投稿者のレビュー一覧を見る
カフカの短篇集。ここに収められている作品はどれもカフカらしく、不可思議なものばかりである。たいてい、数十ページほどなので、少しづつ読んでいけば、あっという間に読み終わる。
真理をおびて始まるものは、しょせんは不可解なものとして終わらなくてはならないのだ
2000/12/25 06:34
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投稿者:子房 - この投稿者のレビュー一覧を見る
オドラデク、我が将来の姿。誰もが目的を抱き死していくなか、いつまでも残りつづけかさこそと笑う。何という虚無であろうか、この生物は。ぼくがカフカの短篇で最も愛する作品「父の気がかり」。
絶対の探求、欲してやまない何か。カフカの小説はそればかり描いている。父権の絶対性を望む主人公の「判決」。傷を覆い和らげてくれるものを願った少年「田舎医者」。あるいは機械の冷徹さに不可侵な何かを求める「流刑地にて」。だが見いだしたと喜び掴むやいなや消えてしまう「こま」。下準備からはじめようとすればただ混乱するばかり「町の紋章」。結局分不相応な望みを持つことは滅びを意味する「橋」と「禿鷹」。それでも走りつづけて築きつづけていきたい「万里の長城」。そしてさまよう運命の定められた「狩人グラフス」——
「掟の門」は『審判』のなかにも引用されている。解説もしている。評論家による百頁以上もの論文もあるらしい。そんな内容。「雑種」は変な動物。「火夫」は『アメリカ』における第一章。「夢」はたぶんほんとうにみた夢なんだろう。「中年のひとり者ブルームフェルト」は謎の生物と遭遇した男の話。「夜に」は率直な感慨。「喩えについて」の理屈は分かりません。「バケツの騎士」となるともう何がなにやら。
その他にギリシャ神話へのひねくれた解釈ともいうべき作品「人魚の沈黙」と「プロメテウス」。こういうのは安部公房もたしかやっていたな。
結局、カフカの作品を解釈しようなんて無理な話なんだよ。
寓話的短編集
2019/09/22 04:50
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Otto Rosenthal - この投稿者のレビュー一覧を見る
同じく岩波文庫で『カフカ寓話集』も編まれていますが、本短編集も寓意に富んだものが多いです。小品が多いので読み進めるのは容易ですが、その真意を読み解くには難解です。
読みやすいけど難解
2019/09/22 04:39
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投稿者:Otto Rosenthal - この投稿者のレビュー一覧を見る
3~4ページの小品から、まあまあ読み応えのある50ページ程度の作品2作(『流刑地にて』、『中年のひとり者ブルームフェルト』)を含む20タイトルを編んだ作品集です。読むだけなら簡単ですが、作品の真意をくみ取るのは困難です。
突然、宮沢賢治との類似を感じた。
2023/04/26 06:06
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投稿者:マーブル - この投稿者のレビュー一覧を見る
父親。そしてその父が象徴している規範、ルール。そこから逃れたい。しかし逃れてはならない。妄想の中ですら放逐され、居場所をなくした主人公たち。独立する強さもなく、別な居場所を期待することすら許されない。いや、自分にそれを禁じている。精神分析の立場から興味深く見られそうな数々のキーワード。とりとめもなく、それでいてどこかしら滲み出てしまっている願望や拘泥。夢そのもののスケッチであれば、頷きやすいあれこれ。裕福な家庭。強い父。世間に対する罪悪感。父の期待に応えられぬ罪悪感。突然、宮沢賢治との類似を感じた。