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半世紀以上を経て事件究明の決定版
2018/11/29 01:21
9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:水那月 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は誠実に事実に取り組んで原因究明に向かっており、呆気ないけれども納得の行く結論が示されている。それはこの十数年の知見によって得られた結論であり、当時の科学的知見や手法では原因究明が不可能であったことも了解される。著者はグラスノスチとソ連崩壊のおかげで公開された一次資料であるメンバーたちが自ら撮影した写真や証拠物品・捜査資料と報告書をじっくりと読み込んでおり、巷間伝えられる事件の尾ひれをバッサリ取り除いている。また途中で持病のリューマチの悪化のために引き返したことで、メンバー唯一の生き残りとなったユーリ・ユーディン氏(原著刊行の2013年に没)にインタビューすることに成功しているが、これは著者の誠実な態度が窺われるエピソードである。ユーディン氏はソビエト崩壊後のロシア国内の「ディアトロフ峠事件」ブームによる扇情的なゴシップ的取材や解説に悩ませられてきたためインタビューを拒絶してきたのである。この本を読めば、ウィキペディア日本語版の「ディアトロフ峠事件」の記述にも胡散臭くまことしやかな記述が満載されていることも分かる。冷戦構造下ソビエト体制における秘密主義・官僚的事なかれ主義で放置された遺族の無念にも思いを馳せているが、そのことから派生した数々の陰謀論的またはゴシップ的な情報も明確に否定している。そのことは却て著者がこの事件に実事求是の態度で臨んでいることが分かる。惜しむらくは、原著者がロシアへの偏見・先入観をできる限り抑えて記述しているのに対して(観察という形での国民性への感想やその歴史的経緯は書かれているが)、本書の巻末の解説は、少なからずロシアへの偏見を滲ませ、前世紀半ばから今世紀にかけてのオカルトの歴史へ粗雑な説明を行なっている点であろうか。執筆者の活動の傾向からして、ワザとおどろおどろしさを演出した解説なのかもしれないが、原著者の認識にややそぐわない感を与える。
原因不明の遭難事件に迫ったノンフィクション。妥協しない科学的検証は秀逸
2019/05/15 15:01
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
1959年、冷戦下のソ連・ウラル山脈で起きた遭難事件。キャリアを積み重ねた9名の大学生パーティーの全員が不気味な死に様で発見されました。極寒のウラル山脈の山麓であるにも関わらず、9名全員がまともに防寒具も身に着けず、靴も履いていない状態で、しかもその内の3人は頭がい骨骨折、1名は舌がないという状況でした。
当時、直ちに捜索隊が結成され、遭難の原因が追究されたのですが、明確な原因は特定できずじまいで当局が下した結論は「未知の不可抗力」によるものでした。それ故に様々な原因が独り歩きする状況となりました。雪崩、突風、地元少数民族の襲撃、野生動物の襲撃、武装集団の襲撃、ソ連軍の核実験の巻き添え、隕石の落下、雪男説やUFOが関与しているという突飛な説まで…。
そのどれもが説得力を持ちえず、50年近くの間に渡って「謎の遭難事件」として語り継がれてきました。
筆者はこの謎の遭難事件の原因を科学的に究明しようと遭難現場にまで足を運び、そして見事に科学的に説得力のある原因を同定しています。その原因が何かというのはネタバレになるので割愛しますが、読了するまで全く予測していないものでした。
遭難するまでの9名の動向、遭難後の捜索隊の動向、そして筆者による調査の3つの時系列によってこの事件の真相に迫る、読み応え十分のノンフィクションです。結構なボリュームですが、どんどん引き込まれて読み進めることができます。
死に山
2022/09/23 08:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネット上で様々な憶測をもって語られているディアトロフ峠事件の真相を推理している本。多くの憶測や噂と違い、実際に現地に行ってデータを取り、途中で引き返したメンバーにも会うなど、自分の足で稼いだような情報がこの本の価値を高めている。また、小説のように語られる当時の情況がリアリティがあっていい。
この本で結論付けられた事件の原因についても、科学的な理由付けがされていて、とてもよかった。
すべての不可能を消去するなんて
2021/09/27 21:41
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
ここ10年ほどネットで話題となっている、旧ソ連で起きた冬山遭難事件の謎に挑んだアメリカのドキュメンタリー映像作家の苦難に満ちた3年間の記録と、遭難者たちの人間性、さらには当時の捜査体制までも網羅した、非常に明快で説得力のある作品だ。
この作品は視点をどこにおくかによって、遭難者たちやその遺族たちの無念さ、隠蔽体質の当局の捜査過程への不信、さらには捜索に参加した広範囲の人たちや周辺住民の証言から垣間見える事件の不可解さ、とかなり作品のイメージが左右される危険性がある。それらを回避するために、作者が選んだ構成が、遭難者である学生たちの視点、事件発覚後の捜索と捜査を担った担当官と、当時の人々の視点、そしてこれらを踏まえたうえでの作者がたどった現在の視点・・・と複数の視点を同時進行的に短く切り替えて読者に提示する方法が、ついついどれかの視点に偏りがちになる我々をしっかり導く役目を果たしていると思う。
とかく政府の陰謀や隠蔽、事件の奇怪さにばかり目が行きがちなこのような事件のノンフィクションとしては、とても良心的でどの視点の当事者にも配慮の行き届いた姿勢だったと高く評価したい。
作者が謎の解明で何度か言及しているシャーロック・ホームズの言葉『すべての不可能を排除後に残った可能性こそが、どんなにありえなさそうに見えても真実だ』は、私が思うに、現時点で想起できるすべての可能性しか検証できない、という人間の想像力の限界を示す一つの例だという点だ。他の可能性を排除したあとに何も残らないときは、まだ納得のいく可能性を誰も思いついていないということは当然ありうる。
作者が示した事件の原因も、やはり1959年当時には、現象としては知られていても、この事件と結び付けて考えるには、科学的根拠や検証に耐えられなかったということなのだ。未解決事件のDNAの検出なども、まさにこれに該当するものだろう。
そうすると、長年の謎というものも、思わぬ科学の光があたることによって一気に解明される可能性がでてくるはずだ。
いたずらに陰謀やオカルト的発想に誘導するものには、最初から疑惑の目を向けて考えるべきだろう。
そのうえで言えるのは、遭難直前まで書き継がれていた日誌と、数点のカメラに残されていた写真からうかがえる、学生たちの屈託のない素顔とトレッキングにかける彼らの真摯な情熱の素晴らしさだ。女子学生たちが一般的な恋愛論にかこつけて、メンバー男性の恋愛観を聞き出そうとしたり、当時としては結構反体制的な歌を記録に残さないために暗記して、よくみんなで歌っていたり、経済的格差のあるメンバー同士もそんなことを全く感じさせない友情で結ばれていたりなど、そのピュアさには正直胸を打たれた。このような彼らの関係をしっかり描いてくれたからこそ、ラストに示された事件当夜の彼らのとった行動は、納得のいくものであり、最後まで自分だけでなく友人を見捨てないためのものだったとわかるのである。
メンバーの唯一の生還者であるユーディンの巻末の2012年の写真と、若々しい1959年当時の写真を見比べると涙が止まらない。他の9人にも当然訪れていたはずの老後の写真がないことで、いっそう哀しさがこみ上げてくる。
不思議で、気持ちの悪い事故
2021/08/09 21:35
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ダイハード2」の監督であるレニー・ハーリンの作品に「ディアトロフ・インシデント」という作品がある。ディアトロフ峠で起こった1959年の遭難事故を調査していたクルーが現地で見たものは旧ソ連の実験施設だった、という話だったのだが、この映画の旧ソ連の兵器説のようにこの事件については、当時、遭難した登山隊のメンバーが裸だったり、舌がなくなっていたりしていたので、いろいろな仮説が立てられ続けた(UFO説も)、作者は結論として、カルマン渦と超低周波音のせいだったと述べる、一生懸命に読まないと、意味が分からなくなってしまうのは文系とつらいところだが、ホラーやオカルトの結末ではないが、余計におそろしい結末だと感じる
想像を超えていた
2020/05/07 20:07
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投稿者:飛行白秋男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルに魅かれて、安価ではない本を購入。
新型コロナウイルスのせいで、読み終えた。
読み終えた印象は、値段だけの価値ある内容でした。
是非是非、お買い求めいただき、読んでください。
執念ともいえる取材力には、ただただ感服いたします。
百聞は一見に如かず
2019/11/01 12:02
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投稿者:カズノリ - この投稿者のレビュー一覧を見る
インターネットでは都市伝説として扱われているこの事件ですが、この本は今後の調査考察に一筋の光明を指すと思います。
また著者が実際に事件現場に赴き調べたこの著書は事件以外にも当時のロシアの文化、歴史、政治背景を垣間見ることができます。
謎が持つ魅力
2019/10/28 22:35
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
不可解な謎がどれほど人を引き付けるか。そのことを思い知らされた。
どのような仮説を立てようとも整合性がなく、真相は誰にも分からないまま時が過ぎた事件、それがディアトロフ峠事件だ。
私は本書をきっかけにディアトロフ峠事件を知った。
本書ではディアトロフ峠事件が起きるまでの過程や被害者たちの人物像がとても丁寧に描かれているため、初めてディアトロフ峠事件を知る人でも大いに楽しめる作品になっている。
また、それと同時に本書の素晴らしい点はその構成にある。
本書は3つの章から成り立っており、
1つ目はディアトロフ峠事件の被害者である学生たちの日記や写真などを基にした事件当時の学生自身の行動を描いたパート。
2つ目は事件後の捜索に携わった人々のパート。
3つ目は著者が如何にして本書を書くに至ったか、また著者自身が真相を追うパートになっている。
この3つの章を交互に展開していくことによりテンポがとても良くなり、読者を全く飽きさせない。
古今東西様々な謎があるが、この事件がここまで人々を魅了した理由の1つに事件発生時期と世間に事件が認知された時期にズレがあったことが挙げられると思う。
事件が発生したのは今から60年前だが、この事件世界的に認知されたのは約10年前だという。その空白の50年が、この事件をある種伝説めいた状態にしたのだと思った。
インターネットが普及した昨今では情報の遅延というものは減少していく一方なので、
この様な世界規模の未解決事件というものは、今後現れることがないのかもしれない。
真相
2022/10/09 19:43
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投稿者:コンドル街道 - この投稿者のレビュー一覧を見る
状況の奇妙さという点では「世界一有名な遭難事件」と言われるディアトロフ峠事件の真相に迫るドキュメンタリー。真相は事件当時は知られていなかったある現象が原因とのこと。
現代の調査パートと、遭難に至るまでのパーティーの様子を記したパートが交互に載っている。
過去への登山
2020/05/06 07:43
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
謎に包まれた山岳事故の真相が明かされていく、迫真のドキュメントです。旧ソ連の秘密主義や、たったひとりの生存者の苦悩が衝撃的でした。