あんじゅう 三島屋変調百物語事続
著者 著者:宮部 みゆき
一度にひとりずつ、百物語の聞き集めを始めた三島屋伊兵衛の姪・おちか。ある事件を境に心を閉ざしていたおちかだったが、訪れる人々の不思議な話を聞くうちに、徐々にその心は溶け始...
あんじゅう 三島屋変調百物語事続
商品説明
一度にひとりずつ、百物語の聞き集めを始めた三島屋伊兵衛の姪・おちか。ある事件を境に心を閉ざしていたおちかだったが、訪れる人々の不思議な話を聞くうちに、徐々にその心は溶け始めていた。ある日おちかは、深考塾の若先生・青野利一郎から「紫陽花屋敷」の話を聞く。それは、暗獣“くろすけ”にまつわる切ない物語であった。人を恋いながら人のそばでは生きられない“くろすけ”とは―。三島屋シリーズ第二弾!
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にぎやかになるおちかの周りと人間の身勝手さを描いた作品
2022/02/07 07:30
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しん - この投稿者のレビュー一覧を見る
宮部みゆきの三島屋シリーズ第2作目。4編の短編ホラーが収載されている。前作はおちかの境遇に多くを割いていたが、今回はおちかはすでに安定の聞き役となっている。
1作目の「逃げ水」はなんだかお旱さんと平太のほのほのした仲の良さがかわいい作品である一方、のどもと過ぎると熱さを忘れて神様を敬わなくなる人間の身勝手さを描いている。神様だって見捨てられたら寂しいよね。
2作目の「薮から千本」は、わかる、と妙に納得。張り合う二つの家族、相手が少し出すぎると気になってしょうがないけど、うまく付き合っていくために口に出せない。そんな大人たちの妙な張り合いの間に挟まれて犠牲になってしまっていたお梅さんがかわいそう。怪談というより、世の中にある怖い話。
このシリーズには家を取り上げた作品が多いようだ。3話目の暗獣も、打ち捨てられたさみしい家の思いと、その思いの塊に心を寄せる夫婦のお話。夫婦は暗獣に出会ってとても幸せそうに見えたが、やはり別の世界の生き物同士にとって、交流を深めることはお互いの負担となることだった。この交流を経て主人夫婦がまた新たな生活をスタートさせる前向きなお話で明るくなれる。
4話目の吼える仏はまた怖い話。他の村と隔絶された小さな里では、せまい世界の中で、常識とは異なる特異な風習や妙な結束ができていくのだろう。そういうせまい世界の人達が結束して動くときに行き過ぎてしまうことの怖さ。
こういう怖い話、重い話であっても、その背景で、おちかと越後屋の清太郎との間の縁談、そしてなんとなく青の利一郎が気になる様子のおちか、とおちかが立ち直ってきている様子が垣間見えるのがほっとさせる。青野先生に加え、お勝、金太、捨松、良介の3人組など、新たな登場人物が加わってますますにぎやかになったおちかの周り。続きも楽しみ。
心のありよう
2023/11/27 12:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たかぽん - この投稿者のレビュー一覧を見る
1巻に続き、三島屋の叔父夫婦のもとで暮らすおちかが、「黒白の間」で聞いた4編の不思議物語が収められています。
冒頭には、おちかが叔父夫婦の元へ来ることになったいきさつにも触れられ、新たな物語へすんなりと導かれました。
表題作の「あんじゅう」は、空き家が人を恋う思いが生み出した妖獣と新たな住人との、温かさがありながらもの悲しい、どこか涙を誘う物語でした。
他に、嫉妬や妬み、信じる心など、人の心のあり方を問われるような物語など、じっくりと読み応えのある4編でした。
おちかと、彼女の大切な人々が、現実の中で前に少しずつ進んでいく物語。 その姿は、心の奥の大事なものに火を灯してくれる。
2022/09/01 09:32
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
神田三島町の袋物屋の三島屋。
主人伊兵衛の姪のおちかは、実家の川崎宿の旅籠丸千から行儀見習いの名目で託されている。
おちかには、三島屋に託されるわけがあった。
「人は、身体を動かしていると物想いを忘れる。だからこそおちかは働きたがったのだし、同時にそれは、厳しく躾けられ使われることによって己を罰したい、罰してほしいという切実な願いでもあったろう」(序 変わり百物語 P6)
少しの偶然から伊兵衛の趣味の囲碁部屋「黒白の間」で、一度に一人ずつ、一話語りの百物語の聞き集めが始まった。
「『神様でも人でもさ、およそ心があるものならば、何がいちばん寂しいだろう』
それは、必要とされないということさ」(第一話 逃げ水 P113)
「人は、心という器に様々な話を隠し持っている。その器から溢れ出てくる言葉に触れることで、おちかはこれまで見たこともないものを、普通に暮らしていたなら、生涯見ることができないであろうものを見せてもらってきた。
そこに惹かれている」(第二話 藪から千本 P151)
「『世間に交じり、良きにつけ悪しきにつけ人の情に触れていなくては、何の学問ぞ、何の知識ぞ。くろすけはそれを教えてくれた。人を恋ながら人のそばでは生きることのできぬあの奇矯な命が、儂の傲慢を諫めてくれたのだよ』
だから加登新左衛門は、子供たちに交じって暮らす晩年を選んだのだ。
人は変わる。いくつになっても変わることができる。おちかは強く、心に思った」(第三話 暗獣 P502)
「『騙(かた)りが易しいのは、己は信じておらんことを、言葉だけをつるつると吐いて、他人に信じさせようとするからじゃ。真実(ほんとう)のことを語るのが難しいのは、己でも信じ難いことを、ただありのままに伝えようとするからでござろうな』」(第四話 吼える仏 P598)
人間にとって、最も難しいことのひとつは、人間関係だろう。
お互いに、そして世間に関わり合うからこそ、悩み、傷つき、苦しむ。
だが、それを癒やすヒントも人との関わりの中にこそある。
百物語は、始まったばかり。
おちかと、彼女の大切な人々が、現実の中で前に少しずつ進んでいく物語。
その姿は、心の奥の大事なものに火を灯してくれる。
読後しばらくすると、怖さが
2022/08/09 19:49
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
積読状態であった三島屋変調百物語シリーズの2作目は、やはり面白かった。黒白の間で、聞いて聞き捨て、語ってかあたり捨て、の怪異話が、人の心模様を炙り出す。心という器に様々な話を隠し持っているが、その器からあふれ出る言葉が、その怪異話であろう。4話の中で、「藪から千本」「あんじゅう(暗獣)」が、人の心の闇というか、いびつな想いを知らされたような気がした。
おちかと、彼女の大切な人々が、現実の中で前に少しずつ進んでいく物語。 その姿は、心の奥の大事なものに火を灯してくれる。
2021/10/13 13:09
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
神田三島町の袋物屋の三島屋。
主人伊兵衛の姪のおちかは、実家の川崎宿の旅籠丸千から行儀見習いの名目で託されている。
おちかには、三島屋に託されるわけがあった。
「人は、身体を動かしていると物想いを忘れる。だからこそおちかは働きたがったのだし、同時にそれは、厳しく躾けられ使われることによって己を罰したい、罰してほしいという切実な願いでもあったろう」(序 変わり百物語 P6)
少しの偶然から伊兵衛の趣味の囲碁部屋「黒白の間」で、一度に一人ずつ、一話語りの百物語の聞き集めが始まった。
「『神様でも人でもさ、およそ心があるものならば、何がいちばん寂しいだろう』
それは、必要とされないということさ」(第一話 逃げ水 P113)
「人は、心という器に様々な話を隠し持っている。その器から溢れ出てくる言葉に触れることで、おちかはこれまで見たこともないものを、普通に暮らしていたなら、生涯見ることができないであろうものを見せてもらってきた。
そこに惹かれている」(第二話 藪から千本 P151)
「『世間に交じり、良きにつけ悪しきにつけ人の情に触れていなくては、何の学問ぞ、何の知識ぞ。くろすけはそれを教えてくれた。人を恋ながら人のそばでは生きることのできぬあの奇矯な命が、儂の傲慢を諫めてくれたのだよ』
だから加登新左衛門は、子供たちに交じって暮らす晩年を選んだのだ。
人は変わる。いくつになっても変わることができる。おちかは強く、心に思った」(第三話 暗獣 P502)
「『騙(かた)りが易しいのは、己は信じておらんことを、言葉だけをつるつると吐いて、他人に信じさせようとするからじゃ。真実(ほんとう)のことを語るのが難しいのは、己でも信じ難いことを、ただありのままに伝えようとするからでござろうな』」(第四話 吼える仏 P598)
人間にとって、最も難しいことのひとつは、人間関係だろう。
お互いに、そして世間に関わり合うからこそ、悩み、傷つき、苦しむ。
だが、それを癒やすヒントも人との関わりの中にこそある。
百物語は、始まったばかり。
おちかと、彼女の大切な人々が、現実の中で前に少しずつ進んでいく物語。
その姿は、心の奥の大事なものに火を灯してくれる。
かわいい
2021/08/30 22:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:やさし - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み応えたっぷりの連作で恐ろしいシーンもありますが、今回はとてもかわいらしいいい子が出てきて、いい話でうれしいです。大事なキャラクターも続々登場。元気のいいいたずら小僧3人組とおしまさんの「わ、鬼女だ!」「誰が鬼女だよ!」やりとりが好き。
あんじゅう
2020/10/09 20:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ごんちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
おちかさんのために妖怪百物語の聞き役になっているが、実は妖怪というよりは人間の成長物語や妖怪を通した人間の生きざまを読んでいるようで良くできた作品だと思いました。奇数話は人間らはしいほのぼのとした話、偶数話はおどおどろしい話とかき分けているところにも読んでいてリズムがあり楽しめました。
宮部流の百物語の続編
2020/09/01 22:16
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投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸は神田、筋違御門先の三島町、袋物屋・三島屋に身を寄せる主人の姪・おちかが聞いて捨てる「代わり百物語」のシリーズ2作目。
語り手を、口入屋-現代で言う人材派遣業者-を通し、江戸市中から公募。話を聞くのは三島屋の座敷、白黒の間で、そこでの話は門外不出と、かちっと決めた設定が、かえって、そこで語られる話にリアリティを与えているかのようでもあって、読者は、「色白おかっぱ頭の少女の姿をした神様」とか、空き家に住まうもものけ「くろすけ」とかの不思議キャストが、まるで本当に存在するもののような気分をもって、うきうきと江戸に遊ぶ。
しかし、そうして楽しんでいるうち、嫉妬とか差別とか、慢心と欲、そして狂気...など人間の持つ闇の部分の残忍さにぶち当たり。さらに、それを乗り越えようとする、やっぱり人間のチカラにも。この物語は、そのバランスみたいなものが心地よい。
途中、疱瘡を病んで、あばたが残った女が、厄払いの役割を担う「縁起物」として登場する。かつてこの国は、「疫神に触れた印を濃く残す者を、格別に敬う」風習があったのだ。病にかかり、もとどおりに戻らなかった者に、一段大きい役割を与えて、社会に迎えなおすということか。あやかしで溢れていた江戸時代らしい合理性。この作家の物語は、こうして、江戸時代にあった、古くて新しいことまで教えてくれる。
宮部みゆきは、江戸ものが好き
2019/07/16 07:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:男児の母 - この投稿者のレビュー一覧を見る
三島屋百物語第二弾。
今作もおもしろかった。
宮部作品は、時代物の方が好きだなぁと再確認しました。
やっと8話終了。 先は、長い。
日本漫画昔話みたいな怪談話
2018/09/06 19:37
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Buchi - この投稿者のレビュー一覧を見る
前の巻では人の情の怖さが際立っていましたが、この巻は少し趣が異なっています。
TVアニメの日本漫画昔話みたいな雰囲気なんです。
登場する物の怪に可愛らしさを覚えてしまうほどです。 それに著者一流の人情にあふれた描き方には あいもかわらず泣かされました。
新たな脇役達も増え、次作でも活躍してくれるかと思うと楽しみもひとしおです。
期待を裏切らない
2017/09/07 08:26
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:てけちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
宮部先生の時代物は、絶対に期待を裏切らない読み物です
良いです。
2016/01/11 08:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mao - この投稿者のレビュー一覧を見る
一気に読みました。今、新聞に連載中のものも、早く出版されないかなかなぁ~続きが早く読みたいです。
続きが気になる本
2015/02/08 23:43
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:いちごみるく - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品は『おそろし』に続く、三島屋百変調物語シリーズの第二弾だ。
今回も主人公のおちかが「黒白の間」で、客から不思議な話を聞く、というスタイルで話が進んでいく。
全四話のうち、タイトルにもなり、表紙の絵にもなっている、第三話の「暗獣」はとても良い話だった。あんじゅうが可愛らしくもあり、切なく悲しくもあり、思わず泣いてしまった。
とても続きが気になる作品だ。シリーズ第三弾の『泣き童子』が早く文庫化するのを心待ちにしている。
あんじゅうは暗獣か
2024/01/16 18:17
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ヤマキヨ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ひらがな表記のタイトル「あんじゅう」は暗獣。名前から闇夜に潜む猛獣かと思いきやさにあらず。どちらかというと愛すべき存在とも言えるけれど、悲しい定めも負った存在。
この百物語で描かれるのは、単なる化け物・妖怪譚ではなく、人の様々な情念がベースにあるように思います。
怪談?不思議な話では
2022/05/17 12:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:.ばっは - この投稿者のレビュー一覧を見る
元々、読売新聞の連載小説だったらしいが全く記憶にない。やはり読み出すと引きずり込まれてしまう。
一つ一つのまとまった話の中では区切りが無いから「今日はここまで」的な発想になりにくい点も一気読み作戦の一つでは?
本の厚さ(文庫で全629頁)に躊躇するが、読了が容易で独立した話の集合なのに関連付けが巧みで続編が読みたくなる。