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どうしてもやり遂げたいことがあるのです
2006/05/03 00:38
9人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
高校の教科書に載っていた「山月記」が中島敦との初めての出会いでした。自分の理想といまある現実の間に生じる心の葛藤とやさしくも力強い描写が印象に残りました。
それから数年たって手にしたのがこの本です。もう一つの表題作である「李陵」は匈奴との戦いで捕虜となった漢の武官である李陵と、漢を裏切った(と思い込んだ)ことに対する怒りのあまり一族皆殺しを命じる武帝を諌めた司馬遷、それぞれの葛藤を描いた物語です。
それぞれが短編です。あっという間に読めます。ほんの少しでも興味を惹かれたなら、ご一読されてみてはいかがでしょうか。
常懐悲観(じょうえひかん) 心遂醒悟(しんすいしょうご)
2009/09/26 02:10
8人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みどりのひかり - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本の中の悟浄嘆異について
悟浄が師父・三蔵法師についてひとりつぶやくように語る。
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青白い大きな星のそばに、紅(あか)い小さな星がある。そのずっと下の方に、やや黄色味を帯びた暖かそうな星があるのだが、それは風が吹いて葉が揺れるたびに、見えたり隠れたりする。流れ星が尾を曳(ひ)いて、消える。なぜか知らないが、そのときふと俺は、三蔵法師の澄んだ寂しげな眼を思いだした。常に遠くを見つめているような、何物かに対する憫(あわ)れみをいつも湛えているような眼である。それが何に対する憫れみなのか、平生はいっこう見当が付かないでいたが、今、ひょいと、判ったような気がした。
師父はいつも永遠を見ていられる。それから、その永遠と対比された地上のなべてのものの運命(さだめ)をもはっきりと見ておられる。いつかは来る滅亡(ほろび)の前に、それでも可憐に花開こうとする叡智(ちえ)や愛情(なさけ)や、そうした数々の善きものの上に師父は絶えず凝乎(じっ)と愍(あわ)れみの眼差を注いでおられるのではなかろうか。星を見ていると、なんだかそんな気がしてきた。俺は起上がって、隣に寝ておられる師父の顔を覗き込む。しばらくその安らかな寝顔を見、静かな寝息を聞いているうちに、俺は、心の奥に何かポッと点火されたようなほの温かさを感じてきた。
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中島敦は、この世界のこと、いのちのこと、みんな分かっていたのではないかと思います。そしていつも心の奥に温かいものを灯している。この悟浄嘆異の文章を読むと涙が出て仕方がありません。
隆慶一郎と中島敦の本が読める時代に生まれたことは奇跡なような気がします。他にもこの昭和の時代は大変な人たちを生みました。紀野一義、吉田満、今西祐行。戦争の中に身を投じたこの方々の書はやはり涙が出て仕方がありません。
紹介したい本は他にもあります。
坂村真民
金子みすゞ
岩男潔
ただ、実際に戦地に赴いた紀野一義、隆慶一郎、吉田満、今西祐行 の文章は
常懐悲観(じょうえひかん) 心遂醒悟(しんすいしょうご)
という言葉を思いだします。
今、手元に資料がないので、うろ覚えで上の漢字は間違っているかもしれませんが、意味は、悲しみはふところにいだいて胸の奥底にしまっておきなさい。そうするといつかその悲しみがあなたの心を本当に深く素晴らしいものにする。というようなものだったと思います。
中島敦の「李陵」にも「山月記」にもそういうものがあって慟哭してしまうのです。
李陵・山月記以外にも沁みる作品が沢山あります
2020/01/28 11:22
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この文庫には、中国古典の歴史世界を題材にした作品「山月記」「李陵」「弟子」「名人伝」や、南洋庁に勤務していたころの思い出を基にした作品「環礁」、奇譚・寓意物(わが西遊記)、私小説的なもの「斗南先生」などが収録されている。「山月記」「李陵」等の作品は、よく”漢文調に基づいた硬質な文章の中に美しく響く叙情詩的な一節が印象的”と評されていて有名であり、私も好きな作品なのだが、南洋の島での思い出を綴った「環礁」や伯父のことを語った私小説「斗南先生」のような作品があることをこの文庫を読むまで知らなかったのだが、これらの作品も心地の良い余韻がありとても好きになった
わずか33年という短い生涯の中で秀作を残した中島敦氏の世界が十分に味わえる一冊です!
2020/05/03 11:34
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、わずか33歳という短い人生の中で秀作を残した小説家、中島敦氏の短編集です。彼は、『山月記』、『光と風と夢』、『弟子』、『李陵』などの名作で知られるほか、作品に中国古典の歴史世界を題材にしたものや、南島から材を得たもの、古代伝説の体裁を取った奇譚・寓意物、自身の身辺を題材にした私小説的なものなど、未完作も含めわずか20篇足らずにも関わらず、秀作を創作した人物として有名です。同書には、きわめて評価の高い「李陵」をはじめ、彼の名を多くの人に知らしめた「山月記」、さらに「弟子」、「名人伝」、「文字禍」、「悟浄出世」、「悟浄歎異」、「環礁」、「牛人」、「狼疾記」、「斗南先生」が収録され、中島敦氏の小説世界が堪能できる一冊となっています。
山月記・李陵
2018/10/21 21:10
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:すずき - この投稿者のレビュー一覧を見る
山月記
エゴと信念は紙一重。
李陵
逆らえない悲しい運命が降りかかった時、その後どのように生きていくかを問う作品。
人の心は誰にも消せないものだと思った。
山頂を目指した司馬遷も、現実と対話した李陵の決断も
現代のサラリーマンに通ずるものがあると思った。
有名処。
2019/05/26 11:54
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
李陵・山月記と言えば、著名な作品ですので、私も中学生の頃に新潮文庫で読んだ記憶はあったのですが、どうも内容の記憶が朦朧としていたのと、その文庫の実家での所在が不明だったので、岩波文庫で購入しました。ま、当然読み進めてみて内容を思い出した訳ですが、独特の漢文体の語調が、この年齢になって心地よい感じでした。今こういった文体の作品はまず無いといえるでしょう。音読すれば、言葉の持つ良い響きを堪能できると思います。
この二篇以外の作品は、かなりまた違う雰囲気でした。個人的には二篇のインパクトが強いので、二篇以外には特に食指は動きませんでしたが、経験値として読了できて良かったとは思います。
国語辞典が必要?
2002/01/03 22:27
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投稿者:ひーちゃんのパパ - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み返すに足る本ではないかと思う。はじめの1回は、文章のリズムを楽しみながら。もしかすると、音読するのもいいかもしれない。今1回は、意味を調べながら!
だって文章が難しいんだもん。しかし、自分が日ごろ使っている言葉を、何故彼が「この漢字」を充てたのか、それが発見できます。ボキャブラリーが増えますよ!
『山月記』だけで終わったらもったいない
2023/04/30 09:18
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投稿者:マーブル - この投稿者のレビュー一覧を見る
『山月記』があまりに有名なため、他の短編のがらりと変わる雰囲気に驚く。中国に題材を取った漢文調の作品。繊細さが感じられる南の島々を描いた作品。肩の力を抜いた自分自身の周辺を描いた随筆のような作品。33歳で亡くなってしまい、その先どのように変化しくはずだったのか、今となっては知るすべもないが、作者の哲学的指向がもっと発展、展開することを期待する読者も多かっただろう。善と悪。幸福と不幸。常識と非常識。正常と異常。その間に引かれる線の曖昧さに悩める個人の姿は、現代人の心に訴えかけるものになったに違いない。
山月記
2023/04/14 19:17
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投稿者:みみりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
山月記は以前読んだことのあるような・・・・・・
試験問題とかで切れ切れに読んだのかな。
中国の李徴は役人になるが、その地位に満足できず詩人になる夢を持つが大成せず、結局役人に戻る。しかしかつての仲間が自分より高い地位に上がったため発狂し、虎になる。李徴あらため虎が、かつての友人袁さんに会い、話をし、自分の詩を託すのだが。
袁さんはその詩を聞いて、「どこか欠けるところがある」と思うのだが、
その「欠けるところ」ってなんだろう。
それがわからない私は、まだ読み切れてないんだろうな。
文庫
2022/12/19 06:02
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投稿者:ないものねだり - この投稿者のレビュー一覧を見る
同じ高さ。同じ模様の装丁。本棚に並ぶ。違いは厚み。異なる作家が肩を並べている。歴史の一部になった作家。
読了
2020/05/03 22:43
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投稿者:ムギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
中島敦が沙悟浄の話を書いているというのが驚きだった。西遊記のメンバーの中で沙悟浄を選んだところも面白いと思う。好みだったので、この話に触発されたという万城目さんの悟浄出立も読んでみたいと思う。