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バカの壁 みんなのレビュー

新書 第38回新風賞 受賞作品

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みんなのレビュー861件

みんなの評価3.4

評価内訳

高い評価の役に立ったレビュー

38人中、23人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2010/03/24 11:43

本=タイトル、人間=表情、両者とも中身は評価に連動しない。これも「バカの壁」か?

投稿者:トム君 - この投稿者のレビュー一覧を見る

こんな本が400万部超も売れたというのだから驚きである。内容を仔細に見れば、これは100万人以上の共感を勝ち得るような本ではない。むしろ特定少数のアッパーな人(東大等超一流の国立大学を卒業し、頭脳明晰で高い教養を積んだ秀才で金持ち)以外、多くの人は反発を覚える内容ばかり書いてあるように思えて仕方がないのである。辛口の批評で知られたコラムニスト山本夏彦の大ファンである私には、養老さんのコメントは、ほとんど山本夏彦が言っている内容と瓜二つに思えた。例を挙げると、「二軍の選手がイチローの10倍練習したからといって、彼に追いつけるようになるものではない。私たちには、もともと与えられているものしかないのです」と養老さんは言う。これって、山本さん流に言えば「ロバが旅に出たからといって、馬になって帰ってくるわけではない(だから凡百の阿呆どもがいくら海外旅行したって何も学ばないし何も理解できないで終わる。故に日本人の大多数にとって、海外旅行はムダである)」と言うことになるし、「分際を知れ、分際を」という罵声にもつながる話だ。しかし、私たち「巨人の星」を見て育った昭和の人間は「アメリカ人も日本人も同じ五本の指でボールを投げている。大リーグの人間に出来て日本人に出来ないはずがない」という努力至上主義を信じて研鑽を重ね、ここまで偉大で豊かな国を作り上げることに成功したのだ。養老さんの大脳決定論は、一歩間違うと、「人種決定論」に変化し、「所詮すべての文明は神にもっとも近い存在=白色人種が生み出したのだ。白色人種は文明を創造し人類を主導する崇高な使命を神から与えられているのだ。黄色人種や黒人土人は、所詮、いくら努力しても白人様には敵わないのだ」という人種差別にショートカットしかねない危険性を持っている。こんなこと、養老さんの文章を読めば、すぐに鼻についてくるはずなんだが、多くの人は、この点に気がつかなかったのだろうか。養老さんは別のところで「猫も杓子も学習塾に子どもを通わせて進学熱が高まっているそうだが、あんな無駄なことどうしてやるのか。バカな子はいくら詰め込んでも利口にはならない」とも書いていた。こんなこと言われて多くの読者は平気なのだろうか。不思議だ。

また養老さんは、脳の研究の重要性を繰り返し説く。基本的にはすべての国民の脳の構造をまず徹底的に調べてデータベース化し、次に異常犯罪者や精神疾患者、殺人犯、例えば宮崎勤の脳を徹底的に調べてその特徴を洗い出せば、もしかすると今後、類似の犯罪を予防することが出来ると養老さんは説く。人間の脳を類型化すれば、そこから「あなたはキレやすい衝動殺人を犯しやすいタイプ」「あなたは快楽殺人を犯しやすいタイプ」「あなたは連続殺人を犯しやすいタイプ」等の分類が明らかになるので、タイプ別に指導教育を施せば、より円満な社会が構築出来るかのように養老さんは提案する。しかし、これって神をも恐れぬ所業と私には思える。これも一歩間違えるとナチスドイツ顔負けの優性医学思想をダイレクトに社会に適用し、不具者を社会から駆逐するという思想に迷い込みやすいと私は恐れるのである。こういう極端な思想を平然と養老さんは垂れ流すのである。

それなのにどうして「こんな本」が400万部超も売れたのか。答えはタイトルにある。「バカの壁」というタイトルこそが、本書の売れ行きを決定付けた唯一の理由であり、それ以上でもそれ以下でもない。本書に書いてあることを仔細に知れば、多くの読者は本書を投げ捨てたことだろう。本の売れ行きは中身とは関係ない。タイトルで全てが決まるのである。同様のことは養老さん自身にも言える。これだけ辛らつで厳しいコメント、突拍子もなく危険な発想を垂れ流す養老さんは、別に個人的に批判もされず、マスメディアからも追放されず、いまだにご意見番としてテレビや雑誌に登場し続けている。こんなに弱者を見下した意見の持ち主が、どうして大衆に受け入れられ続けているのか。その理由は、ひとえに養老さんの表情にあるのではないかと私は疑っている。養老さんの口から出たことを文字にすると、読みようによっては実に辛らつで救いがなく危険なことを言っているように思える。しかし、その危険な差別思想を、養老さんは常にニコニコニコニコしながら楽しげに語るのである。あの独特のイントネーションとリズム、周波数とニコニコ顔に大衆は騙されているのではないか。非常に辛らつなことを言われているにもかかわらず、養老さんのニコニコ顔を見ると「ありがたいお話」に聞こえてしまうのではないか。脳科学を知り抜いた脳学者養老孟司は、もしかするととんでもない極悪人で、人間の脳のメカニズムを悪用して、大衆を欺いているのかもしれない。少なくとも養老さんと同じことを舛添要一が目じりを吊り上げて早口でまくし立てたら、彼は即日マスコミはもちろん日本社会からも永遠に追放されてしまうのではないか。人間の評価で一番重要なのは中身ではない。それが他人にどう映るかである。その点において表情というのは極めて重要なファクターなのである。

一冊100円とすれば、これで養老さんの手元には4億円超の印税が転がり込んだことになる。65歳を超えた老人に4億のカネは使いきれない額である。これをわたし続けるのを養老さんは「強欲」と決めつけ、「欲をかくのは良くないというのが仏教の教え」と本書にも書いているので、それが養老さんの信念なら、使いきれない印税を養老さんは寄付するなり寄贈するなりするはずだ。本書の印税で稼いだアブク銭を養老さんがどのように処分しているのか、是非、知りたいところである。

厳しいことばかり書いてきたが、私は基本的に養老さんの発想が好きだ。特にキリスト教やイスラム教のような一神教は、要するに「自分だけが正しい」「真実はひとつ」という強烈な思い込みを具現した危険思想であり争いの元であるという考えに私は200%同意する。「真実はひとつではない」「それぞれに言い分がある」「喧嘩両成敗」を旨とする日本の発想が世界を平和にするうえで、案外ユニバーサルな可能性を持っているという養老さんの発想に私は「我が意を得たり」と膝を打つのである。

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低い評価の役に立ったレビュー

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2003/09/08 22:30

一人揚げ足取り

投稿者:bamboobat - この投稿者のレビュー一覧を見る

まず第一章、ピーター・バラカンの「日本人は常識を雑学のことだと思っているのではないか」という意見に著者は諸手を挙げて賛同する。しかし、恐らくそんな風に思っている日本人は皆無に近いだろう。雑学のある人は、単に物知りとして片付けられてしまうのが現実だろう。誰もが知っているべき常識と異なるのは明らかだ。
9・11の同時テロ事件について、テレビを見ただけで分かったような気になっている、と著者は述べるが、ええ、分かっていますよ、分かるにも色々なレベルがあるというのも分かっていますよ、とでもお答えするしかなかろう。
また第二章で、出産ビデオに対する女子学生の熱心さと男子学生の無感動について、著者はa=0などと方程式まで持ち出して説明するが、単に「男子は出産できないから自ずと関心の度合いが女子と異なる」じゃ何かまずいことあるんですか、とツッコミを入れたくなる。このようなバカバカしいくどい説明がこの本全体に散見された。
著者は本の中で何度も「誤解なきよう」などと断っているが、読者が誤解する前に著者が誤解しているケースがほとんどではあるまいか。
はっきり言って、第一、第二章を読んだだけで著者の独り善がりにウンザリさせられる。いくら編集部の聞き書きによるアルバイト出版だからといって、あんまりではないか。
(古舘伊知郎風に)おーとっ、出ました! 歩く脳内常識、養老孟司の必殺技、一人揚げ足取りだあぁぁーーー!(ちと古いか)

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861 件中 31 件~ 45 件を表示

紙の本

思っていたよりも、気楽に読めました。

2004/01/22 00:48

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オレンジマリー - この投稿者のレビュー一覧を見る

 人から聞いたりテレビで観たりしている限り、結構厳しいことをずばずば言っていて、ちょっと怖い印象を受ける、と思っていたが硬すぎず砕けすぎずで終始気楽に読んでいた。

 まだ、人の考えだとか心だとか、そういう小難しいことを考えもしなかった時代を思い出す。ただ毎日が楽しくて、土にまみれて鉄棒にぶらさがっていたが、年を重ねていくうちにうまくいかないことも増え、悩むようにもなった。以前は嫌われるのが嫌だとか、理解し合える、なんて思っていたが今となっては平行線になった思考は重ならないと思っている。合わない人とは合わない。でも格別深く関わっていくとかではないし、気にすることないかと割り切っている。まっさらだった心は、辛いことや悩みを受けて頑強になっていく。

 本書を読んでいて、日々疑問に思っていることがいくつも登場した。けれど私の場合、民族紛争や国家などについて疑問に思っても、疑問のまま終わる。自分が考えたところで答えなんて出せそうにないし、本音を言えばそれ以前にそんなことでアタマを抱えたくない。そんなことを悶々と悩むよりも自分の将来を案じる。
 養老氏の考えは本当に興味深かった。ああ、なるほどねって思わず唸っていたり、それはひどい、と養老氏と共に呆れたりした。
 日頃から知り合いに「自分が正しいと思うことは時には危険だよ」と言われている。最初、その意味をよく把握できなかったが最近ようやく理解し始めている。正しいとは、一体だれが決めたことなのだろうと不意に疑問が浮いた時、熟考した。正しいと思い、それが積み重なっていくと、たとえ思い違いをしたと気付いても、それを認めるのに時間がかかると思う。

 久しぶりに考え方などについて思いを巡らせた。本書を手にしなければこんなこと考えなかったかもしれない。養老氏のような考え方の人もいるんだなと、ひどく客観的に読み終えました。短編のように短く区切られていて、読み易かったです。飽きずに読めてほっとしました。
 本書は自分の考えと養老氏の考えを比較したりぶつけたりするよりも、うんうん、と頷いたり聞き手となって読んだ方が楽しめるだろう。

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紙の本

真実はいつもひとつ…ではない

2003/06/26 14:41

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:べあとりーちぇ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 この世に絶対的な真理などありえない。100%の公平性も、文句なしに客観的なコメントも、未来永劫中立な立場もマボロシである。もしそれが「ある」と信じている人がいたとしたら、それは単なる思い込みなのだ。

 養老先生はこの「思い込み」を「バカの壁」と表現していらっしゃる。人は何かを思い込むことで自分の思考に限界を作り、それ以上の展開や異なる視点の存在を否定する。まったく違う立場の人から見たら全然別な局面が現われるかも知れないなどということは想像すらできなくなってしまうのだと。

 パレスチナ vs イスラエル問題といいイスラム vs 非イスラムといい、そもそもの根底に辛うじて存在した「普通人間ならこうでしょう」という常識さえもが揺らいでいる現代において、バカの壁を取り払う努力は欠かせないものである。どのような努力をすれば良いのかは、本書を読めば判る。養老先生の語りおろしという形を取っているために平易な言葉で書かれているから、するりと飲み込めるはずである。
 ただし「この本こそが絶対に正しい」と思い込んだとしたら、それはすなわちバカの壁に囲まれてしまったことを意味するのである。ゆめゆめ忘れてはならない。

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紙の本

壁の向こうを想う人になれるかな

2003/06/08 01:55

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:詠み人知らず一丁目 - この投稿者のレビュー一覧を見る

インパクトのある名前。
それに惹かれて新幹線の中で読むために購入。
楽に読める快適な本でした。

タイトルの「バカの壁」の話は最初と最後だけで、
真ん中は別の話(関係ないわけではないが)続くだけの様な気もしますが。
でも読んで良かった本です。

要約すると。
誰にだって壁があると。
そこで大事なのは壁の向こうの存在を認めること。
自分がぶつかった壁を「なるほどこれが世界の端か」なんて思わないこと。
そしてできるならばその壁の向こうの世界を想像してみようと。
そんな感じでしょうか。

別に世の中悪人ばかりでもないのに(人が生み出す)悲しいことがたくさん起こっているのは、
この壁の向こうを想えない頭の良くない人(俺もだ)ばかりだからなのでしょうかね。

あと、おもしろかったのが睡眠に関する見解。
人間は4分の1か3分の1は寝ている。そして寝ている間は自身は意識下にない。
ゆえに君の意識が「これが正しい!」と考えたとしても、それは自分の中ですら4分の3の認証しか得られていない意見にすぎない。

なるほどなぁと。

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紙の本

著者の性格がでている本

2022/04/21 06:46

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る

一言で言うと思考停止に陥ることの悪を書いた本。世界一受けたい授業で100刷本として紹介され、そういえば昔売れてたなぁと思って、今更読もうと思って読んだ本。今の時代に読むと、どうしてもこの作者の考え方が偉そうで差別的で、共感できないことが多いという印象。上から目線で、みんなこう思っているはず、と決めつけていて、良くも悪くも著者の性格がよく出ています。例えば、犯罪者の脳のCTをとって特徴を分析し、将来犯罪者になり得る人にはそれに応じた教育をすべきなど、結構人権問題になり得る考えも。この著者の考えは分かりましたが、自分には合いませんでした。

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電子書籍

物事の根本知る道しるべ

2021/03/31 12:57

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:BenchAndBook - この投稿者のレビュー一覧を見る

ベストセラーになった時期耳にしていたが、本に向かい合う環境になく読んでなかった。
NHKの養老さんと愛猫まるとの生活を紹介したドラマを観て、あらためて同氏に関心を持ち読んでみた。 テーマのいくつかは(はなせば、、。知識と常識、、。科学には反証、、。)既に自分の見方や捉え方などに身についていると思うが、この本によってそれらが社会的に認知されて会社の中での教育や指導に反映されていたのかもしれない。
NHKについてはなるほど、それはそうだと思った。が、一方で民放の報道はどうかというと政権への批判一色、コメントも局間の差異なし。批判自体はOKなのだがどこも一緒というのはいかがなものかと。その舌の根も乾かないうちに、“個性が大事だと、、”???である。
意識と無意識は面白かった。
物事の根源的な捉え方に大変参考になる本だと思う。
時折、開いてみようと思う。

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紙の本

考えさせられる

2018/10/15 16:47

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ホノボン - この投稿者のレビュー一覧を見る

色々なバカの壁が立ちはだかって一つ一つのテーマについて考えさせられます。
とても勉強になりました。

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紙の本

ベルリンの壁よりも厄介な存在

2003/06/07 21:57

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投稿者:佐々木 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る

「バカの壁」という題名を見て、こんな人をコケにするような言葉を使っていいのか、と思いもしたが、日常生活の中で気付かずに「バカ」という言葉を自身が使っているのを指摘されると、好奇心からページをめくりたくもなろうというものだった。
 「バカと言った人がバカ」と幼稚園や小学校では子供達に教えるが、この教えに従うと自身も他人からみれば相当なバカでしかない。そうであると解っていても、いつしか「バカ」と口にしている。フーテンの寅の無邪気な態度を見て、御前様やおいちゃんが「バカだねえ」とつぶやくが、そんな「バカ」は映画の世界だから笑ってすませられるが、現実は笑ってすませられないから腹立たしい。

 先般も幼稚園を経営している知人が「今時の母親はバカじゃないか」と憤慨していた。話を聞いてみると、「暑くなってきたので水筒を持たせて下さい」と連絡帳に書いていたら、本当に空っぽの水筒を子供に持たせてきた母親がいたそうである。現代の母親には「水筒にお茶を入れて持たせて下さい」と指示をしなければ理解できないとの事であった。高学歴であっても母親には具体的なマニュアルとして連絡事項にしなければならないそうである。
 冗談で「お茶の種類を聞いてきた母親がいたりして」と言うと、当たらずとも遠からずの問い合わせをしてきた母親がいたそうである。

 口述したものを文章にしているためか、文章を目で追いながら自分の周囲で見たり聞いたりしたものを思い浮かべながら読み進むことになり、脱線したり読み返していた。できれば、論述として構成されていた方が内容的には更に印象が強く残ったのではないかと思った。人間関係や社会についての問題点や現状認識の良いヒントがたくさんあったので、更に加筆修正をして再出版しても良いのではと思える。

 このような本が出て売れるということは物質的には特段の問題も無く平和な毎日を皆が送っているという証拠かもしれないが、精神的には「人生の意味」を考え始めたということだろうか。日常生活において、意味を見出せる場はまさに共同体でしかない、と本書に出ていたが、意識できる共同体すら先が見えないのだから自ら「壁」を立てて自分だけの共同体を作ってしまうのだろうか。
 まずは自分自身の「壁」を破壊しなければ、他人の「壁」は破れないということか。

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紙の本

一元論者がつくる、バカの壁。

2003/05/30 13:29

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投稿者:ソネアキラ - この投稿者のレビュー一覧を見る

作者のいうバカとは通常のバカとは違い、「一元的」なものの見方しかできない、きわめて偏狭なオツムの持ち主を意味している。あっちこっちにバカが蔓延していて、にっちもさっちもいかなくなっている。

NHKの「モットーである『公平・客観・中立』な報道」なんてありえない。地球温暖化現象の根元を炭酸ガスと決めつけるのはおかしいなど、社会、教育、経済など、作者は世の中の「バカの壁」現象を取り上げ、バッサバッサと斬っていく。

子供に「個性を伸ばせ」「オリジナリティを発揮しろ」という前に、「常識」を備えた大人になるための教育をしろと作者はいう。「『常識』というのは知識があるのではなく『当たり前』のことを指す」。

「戦後(日本人は)身体を忘れて脳だけで動くようになってしまった」学習は知識をひたすらインプットすればいいのかというと、そうではなくてアウトプットも大切なのだそうだ。なのに「行動」すなわち身体を動かすことを忘れている。

また、作者は、最近の学生、医学生は「情報を処理する」のは上手だが、「臨床」−患者と接するのが苦手である。臨床の知とは、そこにある「現場から学ぶ」ことであり、まさしくリアル体験なのだが、ヴァーチャル体験ですまそうとしていると。

あと、興味をひかれたのが、「忘れられた無意識」の話。「都市に住んでいるということは、すなわち意識の世界に住んでいる」そして「意識の世界に完全に浸りきってしまうことによって無意識を忘れてしまう」。しかし、「人間は三分の一は寝ている」ので「三分の一は無意識」なのだ。睡眠障害により引き起こされるさまざまな症例は、無意識の世界を軽んじた現代人への報いなのだろうか。ここんところ、もう少し、詳しく知りたい。

本書は、書き下ろしならぬ語り下ろし。話し言葉がベースとなっているので、作者の「唯脳」論なども、それなりにわかるはず。さらさら読めて、あとからピリッとくる。養老ワールドのポータルサイト的一冊である。

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紙の本

内容はおもしろいですが、これは養老先生のお説教というか、熱い思いだと思えばよいのでしょうか。

2003/05/24 12:44

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投稿者:piecemaker - この投稿者のレビュー一覧を見る

タイトルがかなりセンセーショナルなのですが、これは要は「その人の認識の限界」と申せましょうか。難しいこと、例えば高等数学に関しては、「あ、それ以上はもうわかんないや」という限界があるわけで、それを「バカの壁」と称しておられるものと思います。つまり、ひとりひとりにそういった限界があるために、養老先生の思いもきちんと伝わらないし、世間の常識やら、大人としてのわきまえるべき態度やらも、身につかないどころか意識さえ出来ない。そういった若者がいるのも、それを教育してきた(親や教師としての)団塊の世代にも責任あり、ということでしょうか。ここでも「自分探し」に関する、「間違った方法」への指摘があります(この課題は、哲学のお茶大・ツチヤ教授も指摘しておられました)。つまり「自己実現」にしてもそれが確認できるのはあくまでも他人との関係においてであって、ある日自分が何かに変身するのではなく、他人とか周囲から認められることにある、というお話です。なるほどですね。自分でいくら「わしはえらい」と威張っても何にもならず、人からの評価が大事ということですよね。この本、全体を通して、口語体というか説教調で、科学的に難解なところはほとんどないのですぐに読めました。

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紙の本

養老孟司スピークスオン教育

2003/04/17 20:59

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:GG - この投稿者のレビュー一覧を見る

人間の行動を最も単純にモデル化すると次のようになる。
1. 見る聞くなどで入力
2. 入ってきた情報を処理
3. 動く話すなどの出力
これが人間行動の最単純モデルだが、ここで2の役割を担うのが脳である。

上の形式で考えると、1の部分でできるだけ沢山の良質な情報を得ることが大切という結論が導かれそうだが、それは違う。いくら沢山の情報を得ても、われわれは自分の頭に入ることしか理解しない。つまり、いくら大量に入力があっても、結局自分が知りたくないことについては自主的に情報を遮断してしまうのである。これを称してバカの壁という。このバカの壁を理論の中心に据えて現代社会の諸問題、とくに教育や原理主義について論じたものが本書である。

編集者相手の独白を文章化したつくりなので、少しくだけた場で養老先生の話を聞く趣がある。著者独得の論法に他の著作で慣れている読者にはとても読みやすいはずだ。養老孟司入門にもよいかもしれない。

こういう話は、話し手の興が乗ってきて話題が脇にに入ったところで面白くなることが多い。本書の場合、評者には不定冠詞と定冠詞の議論が非常に興味深く感じられた。

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紙の本

本=タイトル、人間=表情、両者とも中身は評価に連動しない。これも「バカの壁」か?

2010/03/24 11:43

38人中、23人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:トム君 - この投稿者のレビュー一覧を見る

こんな本が400万部超も売れたというのだから驚きである。内容を仔細に見れば、これは100万人以上の共感を勝ち得るような本ではない。むしろ特定少数のアッパーな人(東大等超一流の国立大学を卒業し、頭脳明晰で高い教養を積んだ秀才で金持ち)以外、多くの人は反発を覚える内容ばかり書いてあるように思えて仕方がないのである。辛口の批評で知られたコラムニスト山本夏彦の大ファンである私には、養老さんのコメントは、ほとんど山本夏彦が言っている内容と瓜二つに思えた。例を挙げると、「二軍の選手がイチローの10倍練習したからといって、彼に追いつけるようになるものではない。私たちには、もともと与えられているものしかないのです」と養老さんは言う。これって、山本さん流に言えば「ロバが旅に出たからといって、馬になって帰ってくるわけではない(だから凡百の阿呆どもがいくら海外旅行したって何も学ばないし何も理解できないで終わる。故に日本人の大多数にとって、海外旅行はムダである)」と言うことになるし、「分際を知れ、分際を」という罵声にもつながる話だ。しかし、私たち「巨人の星」を見て育った昭和の人間は「アメリカ人も日本人も同じ五本の指でボールを投げている。大リーグの人間に出来て日本人に出来ないはずがない」という努力至上主義を信じて研鑽を重ね、ここまで偉大で豊かな国を作り上げることに成功したのだ。養老さんの大脳決定論は、一歩間違うと、「人種決定論」に変化し、「所詮すべての文明は神にもっとも近い存在=白色人種が生み出したのだ。白色人種は文明を創造し人類を主導する崇高な使命を神から与えられているのだ。黄色人種や黒人土人は、所詮、いくら努力しても白人様には敵わないのだ」という人種差別にショートカットしかねない危険性を持っている。こんなこと、養老さんの文章を読めば、すぐに鼻についてくるはずなんだが、多くの人は、この点に気がつかなかったのだろうか。養老さんは別のところで「猫も杓子も学習塾に子どもを通わせて進学熱が高まっているそうだが、あんな無駄なことどうしてやるのか。バカな子はいくら詰め込んでも利口にはならない」とも書いていた。こんなこと言われて多くの読者は平気なのだろうか。不思議だ。

また養老さんは、脳の研究の重要性を繰り返し説く。基本的にはすべての国民の脳の構造をまず徹底的に調べてデータベース化し、次に異常犯罪者や精神疾患者、殺人犯、例えば宮崎勤の脳を徹底的に調べてその特徴を洗い出せば、もしかすると今後、類似の犯罪を予防することが出来ると養老さんは説く。人間の脳を類型化すれば、そこから「あなたはキレやすい衝動殺人を犯しやすいタイプ」「あなたは快楽殺人を犯しやすいタイプ」「あなたは連続殺人を犯しやすいタイプ」等の分類が明らかになるので、タイプ別に指導教育を施せば、より円満な社会が構築出来るかのように養老さんは提案する。しかし、これって神をも恐れぬ所業と私には思える。これも一歩間違えるとナチスドイツ顔負けの優性医学思想をダイレクトに社会に適用し、不具者を社会から駆逐するという思想に迷い込みやすいと私は恐れるのである。こういう極端な思想を平然と養老さんは垂れ流すのである。

それなのにどうして「こんな本」が400万部超も売れたのか。答えはタイトルにある。「バカの壁」というタイトルこそが、本書の売れ行きを決定付けた唯一の理由であり、それ以上でもそれ以下でもない。本書に書いてあることを仔細に知れば、多くの読者は本書を投げ捨てたことだろう。本の売れ行きは中身とは関係ない。タイトルで全てが決まるのである。同様のことは養老さん自身にも言える。これだけ辛らつで厳しいコメント、突拍子もなく危険な発想を垂れ流す養老さんは、別に個人的に批判もされず、マスメディアからも追放されず、いまだにご意見番としてテレビや雑誌に登場し続けている。こんなに弱者を見下した意見の持ち主が、どうして大衆に受け入れられ続けているのか。その理由は、ひとえに養老さんの表情にあるのではないかと私は疑っている。養老さんの口から出たことを文字にすると、読みようによっては実に辛らつで救いがなく危険なことを言っているように思える。しかし、その危険な差別思想を、養老さんは常にニコニコニコニコしながら楽しげに語るのである。あの独特のイントネーションとリズム、周波数とニコニコ顔に大衆は騙されているのではないか。非常に辛らつなことを言われているにもかかわらず、養老さんのニコニコ顔を見ると「ありがたいお話」に聞こえてしまうのではないか。脳科学を知り抜いた脳学者養老孟司は、もしかするととんでもない極悪人で、人間の脳のメカニズムを悪用して、大衆を欺いているのかもしれない。少なくとも養老さんと同じことを舛添要一が目じりを吊り上げて早口でまくし立てたら、彼は即日マスコミはもちろん日本社会からも永遠に追放されてしまうのではないか。人間の評価で一番重要なのは中身ではない。それが他人にどう映るかである。その点において表情というのは極めて重要なファクターなのである。

一冊100円とすれば、これで養老さんの手元には4億円超の印税が転がり込んだことになる。65歳を超えた老人に4億のカネは使いきれない額である。これをわたし続けるのを養老さんは「強欲」と決めつけ、「欲をかくのは良くないというのが仏教の教え」と本書にも書いているので、それが養老さんの信念なら、使いきれない印税を養老さんは寄付するなり寄贈するなりするはずだ。本書の印税で稼いだアブク銭を養老さんがどのように処分しているのか、是非、知りたいところである。

厳しいことばかり書いてきたが、私は基本的に養老さんの発想が好きだ。特にキリスト教やイスラム教のような一神教は、要するに「自分だけが正しい」「真実はひとつ」という強烈な思い込みを具現した危険思想であり争いの元であるという考えに私は200%同意する。「真実はひとつではない」「それぞれに言い分がある」「喧嘩両成敗」を旨とする日本の発想が世界を平和にするうえで、案外ユニバーサルな可能性を持っているという養老さんの発想に私は「我が意を得たり」と膝を打つのである。

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紙の本

「壁」を打ち壊す論考

2003/05/03 23:11

7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:北祭 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 著者は近年、『唯脳論』以来の本格的な論考の書ともいうべき『人間科学』なる書を出した。その書では、現代の自然科学には物質・エネルギー系の他にもう一つの概念である「情報系」が必要なのだと説かれている。人間とはまさに情報のかたまりであるが故、情報系としての人間を知る科学こそ、現代科学となりうることを提唱している。自らを知れ、と。
 本書は、「自らを知る」という壮大な思索の弊害ともなろう、人の理解力の限界や自ら設けてしまう理解の「壁」を大胆にも「バカの壁」と称し、この世の人の営みに見られるバカな所業の根源がその「壁」にあるのだと語る独白集である。

 例えば、「自分は変わらない」という思い込み、これも一つの「バカの壁」である。私は私と自我を固定した瞬間から、自らの周りに壁が出来る。
 <バカにとっては、壁の内側だけが世界で、向こう側が見えない。向こう側が存在しているということすらわかっていなかったりする。P194>
 私利私欲の蛇と化す個人主義、他人の気持ちを分かろうともしない絶対的な原理主義はここから芽生えるといえよう。その弊害たるや計り知れない。著者は、この種の恐るべき「バカの壁」を打ち壊す論考として、第四章において「万物流転、情報不変」と銘打ち、「知る」ことは「死ぬ」ことであると謳う。「朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり」。学問をして何かを知ると、知る前の自分は死んで生まれ変わるのだという。人は何かを知って生まれ変わり続けているのだと。そうあらねばならない、との思いが伝わってくる。この著者の考えには、虚を突かれた。本来の「知る」ことの持つ意味は然様に深い。
 
 本書を読み終えたとき、ある種の爽快感を感じた。なにほどか自分が「生まれ変わりつつある」ことの証なのだと、そう思いたい。

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親の気持ちがわかるか?ホームレスの気持ちがわかるか?

2003/07/16 13:48

6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:hisao - この投稿者のレビュー一覧を見る

一昔前一世を風靡した“唯脳論”等でマスコミでも著名な 脳生理学者 養老孟司先生が又また ベストセラーを出しました。
現代人(都会人)の思考停止状況、あべこべ状況を 現代人が張り巡らす“バカの壁”から説明しておられます。
五感から入力して運動系から出力する間 脳は何をしているか?
入力をX、出力をYとして Y=aX と言う簡単な1次方程式を導きます。
脳の中で a と言う係数をかける訳です.
a の値がゼロの例として オヤジの説教や上司の注意を聞き流すバカ息子、a の無限大の例としてオウムかぶれのバカ青年や原理主義者が上げられます。
平たく言えば a は適応性、賢い脳とは適応性ある脳の事のようです。バカな脳とは外界から切り離された自給自足型の脳のようです。

バカの壁の起因とも言える一元論的物の見方に警鐘を与えます。
都会人の脆弱性、自然発生的多神教に対する都市宗教として発達した一神教等を例示して、一元論的見方の限界に迫ります。神様を引っ張り出し一元論で割り切るほうが楽です、思考停止状況は気持ちの良いものです。
しかし 今 必要とされるのは“人間ならこうだろう”と考える極めて常識的な考え方だと主張されます。思考停止に変えて 崖を1歩登って見晴らしを少しでも良くしようじゃないか、それが生きている事の意味だと言われます。

大分前になりますが 新聞の小さなコラムに養老先生が“企業にとって必要なのは競争心豊かな個性的人間だろうか、それより相手の事を思いやる協調的人間じゃなかろうか”と言う風な事を書かれていて 成るほどと思った事があります。
企業の本質に迫るものです。極論すると金太郎飴やマニュアル人間が欲しくなりますが、そんな没個性ではなく 一言で言えば“人の気持ちが解る”人間を欲し養成するのが企業であり社会です。
だから 養老先生の言う思考は 思考の堂々巡りではありません、身体運動を通して学習する 開かれた思考です。バーチャルな思考の無毛性、弊害を排します。

“若い人への教育現場において お前の個性を伸ばせなんてバカな事を言わないほうがいい、それより親の気持ちが分かるか、友達の気持ちが分かるか、ホームレスの気持ちが分かるかという風に話を持っていくほうが余程まともな教育じゃないか”と言っておられます。そして分かるという事の意味を 身体運動との関係として極めて実践的に捉えられています。企業で言えばあくまで現場密着型の開かれた脳こそ要求されます。

脳は社会生活を普通に営むため“個性”ではなく“共通性”を追求します。
まさに そのように人間は作られています。
そして 個性はもともと誰の身体にもあるものとして イチローや松井、中田選手等天才の脳と身体運動の興味ある話が語られます。

外界に適応して人は変わります。今日の私は昨日の私ではありません。
変わらないのは生み出された情報です。其処のところを現代人は勘違いしている。
脳化社会になって脳が一人歩き、頑固に情報から自分の独自性を守ろうと思考のぐるぐる回し、観念論の袋小路に自ら追い込んでいる。欺瞞に満ちたクソ個性が横行する社会への科学者としての根源的怒りを感じました。
その他 科学論、共同体論、身体論、無意識論等 さすが面白いお話が展開されています。

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紙の本

バカちゃん!葉っぱが萎れている。

2003/07/08 21:51

8人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:栗山光司 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 養老孟司の【バカ壁エピソード】を紹介する。
 《私がかかわっている保育園が、毎年一回、契約している芋畑に行く。ある日、そこに行ったら、隣に同じような芋畑があって、全部、葉っぱがしおれている。そこのお百姓さんに、「あれ、何ですか」と聞いたら、/「お宅と同じで、幼稚園の芋掘り用の畑ですよ」/「だけど、全部、しおれているじゃないですか。どうしてですか」/「あそこの幼稚園の芋は、子供が引っ張ったらすぐに抜けるように最初から掘ってある。一遍、掘って埋め直してあるからしおれているんだよ」》
 別段、驚くに値しないありそうな話である。気がつかないで、似たような事をやっているのではないか? ひょっとして、見えないバカの壁に閉じこめられて日常生活を送っているかも知れぬ。思わず、我が身を振り返った。

 一神教(一元論)の世界は世界の三分の二を占めている。その普遍原理に抗して、そうでない人々はどういう普遍性を提示できるかというと、心許ないが、養老先生は「人間であればこうだろう」という「常識」を提示して、原理主義者たち、カルト宗教に身をゆだねる人たちに物申すことしかないと、極めてあたりまえのことをおっしゃる。
 「神」「イデオロギー」「金」の、いずれかで持ってすべて世界解釈出来ると信じる人たちの一元論的エネルギーの前で、「君の神、君の思想、君の金」の誘惑から逃げて、単に漠然とした「常識」では弱すぎる。まるで、裁判官のクリシェ「一般社会通念により…」と何ら変らない。NHK的「公平・客観・中立」と、どう違うのか? しかし、そこの差異を明確に表現することは「常識」を固定化することで、戦略として使えないものに堕する危険がある。そこが、悩ましいところでもある。 
 彼の「人間であればこうだろう」は「人間は変る」ことを前提にしている。恥ずかしい話であるが、私は「君子豹変」を俗に解釈して、考え方や態度が急に一変すると悪く考えていた。そうではなくて、「君子は過ちだと知れば、すぐに改め、善に移る」という意味である。
 第四章『万物流転・情報不変』は目から鱗であった。
 「人間は変る、言葉(情報)は不変」、だけど、この世の中、「私は私、私は不変、情報は日々更新で変ります」と、君子豹変を勘違いしているように、錯覚している人が多数派かも知れぬ。
 契約書の法的拘束力を考えれば、判ることだが、どうも日本では紳士協定なるものが信じられていたから、人間は不変と錯覚し易かったかも知れない。多分、それは共同体が有効に作用して責任保証していたのであろう。
 リストラによって会社共同体から追放されても、裸の個人が性懲りもなく「人間は不変、情報は流転」の一元論価値を信じ込む喜劇を【バカの壁】と呼んでいるのだ。
 読者の心を掴む表題であるが、この本の主題は『無意識・身体・共同体』である。脳と長年付き合った著者だけに意識・都市の脳化社会の行く末に警鐘を鳴らしているのだ。「花見酒経済」に酔いしれて、後は野となれ山となれ、「虚の経済」で遊ぶ輩に腹立てて、前頭葉機能が低下してキレることのないように注意しましょう。熊さん、八つぁんは人ごとでなく、はっと、気付いたら、酒樽に一滴の酒もなかったというバカの振るまいから少しずつ脱皮を計ろうかと、この本を読んで反省しました。

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紙の本

養老孟司氏のベストセラーです!

2016/09/20 08:27

4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

本書は、2003年に養老孟司氏によって出版されたベストセラーです。当時は、各全国版の新聞でも大絶賛されました。本書には、「知りたくないことに耳を貸さない人間に藩士が通じないということは、日常でよく目にすることです。これをそのまま広げていった先には、戦争、テロ、民族間、宗教間の紛争があります。これを脳の面から説明してみますと。。。」といった具合に、世界の様々な出来事を、日常、あるいは脳の機能などから説明されていて、とてもわかりやすく、かつ興味深いのです。少し古い書ではありますが、ぜひ、読んでみられては如何でしょう。

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