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高い評価の役に立ったレビュー
38人中、23人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2010/03/24 11:43
本=タイトル、人間=表情、両者とも中身は評価に連動しない。これも「バカの壁」か?
投稿者:トム君 - この投稿者のレビュー一覧を見る
こんな本が400万部超も売れたというのだから驚きである。内容を仔細に見れば、これは100万人以上の共感を勝ち得るような本ではない。むしろ特定少数のアッパーな人(東大等超一流の国立大学を卒業し、頭脳明晰で高い教養を積んだ秀才で金持ち)以外、多くの人は反発を覚える内容ばかり書いてあるように思えて仕方がないのである。辛口の批評で知られたコラムニスト山本夏彦の大ファンである私には、養老さんのコメントは、ほとんど山本夏彦が言っている内容と瓜二つに思えた。例を挙げると、「二軍の選手がイチローの10倍練習したからといって、彼に追いつけるようになるものではない。私たちには、もともと与えられているものしかないのです」と養老さんは言う。これって、山本さん流に言えば「ロバが旅に出たからといって、馬になって帰ってくるわけではない(だから凡百の阿呆どもがいくら海外旅行したって何も学ばないし何も理解できないで終わる。故に日本人の大多数にとって、海外旅行はムダである)」と言うことになるし、「分際を知れ、分際を」という罵声にもつながる話だ。しかし、私たち「巨人の星」を見て育った昭和の人間は「アメリカ人も日本人も同じ五本の指でボールを投げている。大リーグの人間に出来て日本人に出来ないはずがない」という努力至上主義を信じて研鑽を重ね、ここまで偉大で豊かな国を作り上げることに成功したのだ。養老さんの大脳決定論は、一歩間違うと、「人種決定論」に変化し、「所詮すべての文明は神にもっとも近い存在=白色人種が生み出したのだ。白色人種は文明を創造し人類を主導する崇高な使命を神から与えられているのだ。黄色人種や黒人土人は、所詮、いくら努力しても白人様には敵わないのだ」という人種差別にショートカットしかねない危険性を持っている。こんなこと、養老さんの文章を読めば、すぐに鼻についてくるはずなんだが、多くの人は、この点に気がつかなかったのだろうか。養老さんは別のところで「猫も杓子も学習塾に子どもを通わせて進学熱が高まっているそうだが、あんな無駄なことどうしてやるのか。バカな子はいくら詰め込んでも利口にはならない」とも書いていた。こんなこと言われて多くの読者は平気なのだろうか。不思議だ。
また養老さんは、脳の研究の重要性を繰り返し説く。基本的にはすべての国民の脳の構造をまず徹底的に調べてデータベース化し、次に異常犯罪者や精神疾患者、殺人犯、例えば宮崎勤の脳を徹底的に調べてその特徴を洗い出せば、もしかすると今後、類似の犯罪を予防することが出来ると養老さんは説く。人間の脳を類型化すれば、そこから「あなたはキレやすい衝動殺人を犯しやすいタイプ」「あなたは快楽殺人を犯しやすいタイプ」「あなたは連続殺人を犯しやすいタイプ」等の分類が明らかになるので、タイプ別に指導教育を施せば、より円満な社会が構築出来るかのように養老さんは提案する。しかし、これって神をも恐れぬ所業と私には思える。これも一歩間違えるとナチスドイツ顔負けの優性医学思想をダイレクトに社会に適用し、不具者を社会から駆逐するという思想に迷い込みやすいと私は恐れるのである。こういう極端な思想を平然と養老さんは垂れ流すのである。
それなのにどうして「こんな本」が400万部超も売れたのか。答えはタイトルにある。「バカの壁」というタイトルこそが、本書の売れ行きを決定付けた唯一の理由であり、それ以上でもそれ以下でもない。本書に書いてあることを仔細に知れば、多くの読者は本書を投げ捨てたことだろう。本の売れ行きは中身とは関係ない。タイトルで全てが決まるのである。同様のことは養老さん自身にも言える。これだけ辛らつで厳しいコメント、突拍子もなく危険な発想を垂れ流す養老さんは、別に個人的に批判もされず、マスメディアからも追放されず、いまだにご意見番としてテレビや雑誌に登場し続けている。こんなに弱者を見下した意見の持ち主が、どうして大衆に受け入れられ続けているのか。その理由は、ひとえに養老さんの表情にあるのではないかと私は疑っている。養老さんの口から出たことを文字にすると、読みようによっては実に辛らつで救いがなく危険なことを言っているように思える。しかし、その危険な差別思想を、養老さんは常にニコニコニコニコしながら楽しげに語るのである。あの独特のイントネーションとリズム、周波数とニコニコ顔に大衆は騙されているのではないか。非常に辛らつなことを言われているにもかかわらず、養老さんのニコニコ顔を見ると「ありがたいお話」に聞こえてしまうのではないか。脳科学を知り抜いた脳学者養老孟司は、もしかするととんでもない極悪人で、人間の脳のメカニズムを悪用して、大衆を欺いているのかもしれない。少なくとも養老さんと同じことを舛添要一が目じりを吊り上げて早口でまくし立てたら、彼は即日マスコミはもちろん日本社会からも永遠に追放されてしまうのではないか。人間の評価で一番重要なのは中身ではない。それが他人にどう映るかである。その点において表情というのは極めて重要なファクターなのである。
一冊100円とすれば、これで養老さんの手元には4億円超の印税が転がり込んだことになる。65歳を超えた老人に4億のカネは使いきれない額である。これをわたし続けるのを養老さんは「強欲」と決めつけ、「欲をかくのは良くないというのが仏教の教え」と本書にも書いているので、それが養老さんの信念なら、使いきれない印税を養老さんは寄付するなり寄贈するなりするはずだ。本書の印税で稼いだアブク銭を養老さんがどのように処分しているのか、是非、知りたいところである。
厳しいことばかり書いてきたが、私は基本的に養老さんの発想が好きだ。特にキリスト教やイスラム教のような一神教は、要するに「自分だけが正しい」「真実はひとつ」という強烈な思い込みを具現した危険思想であり争いの元であるという考えに私は200%同意する。「真実はひとつではない」「それぞれに言い分がある」「喧嘩両成敗」を旨とする日本の発想が世界を平和にするうえで、案外ユニバーサルな可能性を持っているという養老さんの発想に私は「我が意を得たり」と膝を打つのである。
低い評価の役に立ったレビュー
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2003/09/08 22:30
一人揚げ足取り
投稿者:bamboobat - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず第一章、ピーター・バラカンの「日本人は常識を雑学のことだと思っているのではないか」という意見に著者は諸手を挙げて賛同する。しかし、恐らくそんな風に思っている日本人は皆無に近いだろう。雑学のある人は、単に物知りとして片付けられてしまうのが現実だろう。誰もが知っているべき常識と異なるのは明らかだ。
9・11の同時テロ事件について、テレビを見ただけで分かったような気になっている、と著者は述べるが、ええ、分かっていますよ、分かるにも色々なレベルがあるというのも分かっていますよ、とでもお答えするしかなかろう。
また第二章で、出産ビデオに対する女子学生の熱心さと男子学生の無感動について、著者はa=0などと方程式まで持ち出して説明するが、単に「男子は出産できないから自ずと関心の度合いが女子と異なる」じゃ何かまずいことあるんですか、とツッコミを入れたくなる。このようなバカバカしいくどい説明がこの本全体に散見された。
著者は本の中で何度も「誤解なきよう」などと断っているが、読者が誤解する前に著者が誤解しているケースがほとんどではあるまいか。
はっきり言って、第一、第二章を読んだだけで著者の独り善がりにウンザリさせられる。いくら編集部の聞き書きによるアルバイト出版だからといって、あんまりではないか。
(古舘伊知郎風に)おーとっ、出ました! 歩く脳内常識、養老孟司の必殺技、一人揚げ足取りだあぁぁーーー!(ちと古いか)
紙の本
僕はバカ側の人間でした
2023/09/01 12:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:もゆ - この投稿者のレビュー一覧を見る
全体を通して何を言いたいのかわからなかったです。しかし、有名な本なのでいつかは必ず理解したいと思います。
紙の本
著者の性格がでている本
2022/04/21 06:46
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
一言で言うと思考停止に陥ることの悪を書いた本。世界一受けたい授業で100刷本として紹介され、そういえば昔売れてたなぁと思って、今更読もうと思って読んだ本。今の時代に読むと、どうしてもこの作者の考え方が偉そうで差別的で、共感できないことが多いという印象。上から目線で、みんなこう思っているはず、と決めつけていて、良くも悪くも著者の性格がよく出ています。例えば、犯罪者の脳のCTをとって特徴を分析し、将来犯罪者になり得る人にはそれに応じた教育をすべきなど、結構人権問題になり得る考えも。この著者の考えは分かりましたが、自分には合いませんでした。
紙の本
気づかなかったことに、意識が向きました。
2022/01/30 16:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:satonoaki - この投稿者のレビュー一覧を見る
やっと読んだのですが、よくわからない本でした。
しかし、全く気づかずにいたことに気づかされたのはラッキーでした。
養老さんの考えが正しいかどうかなんて、わかりません。けれど、いろんな考え方受け止め方があることを心に留めておかないと、もったいない生き方をしてしまいそうだなと、ドキッとしました。
そういう価値は十分にありました。
電子書籍
久しぶりに読んでみたが
2021/10/14 12:26
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
久しぶりに読んでみたが この本がこれほど売れた理由が今ひとつわからない。現在でも通用する様々な問題点 課題を提起していることは確かなのだが、その課題に対して踏込不足と思われる点が多々ある。何よりも「壁の壊し方」 そして「壁は壊すべきなのか?」について、これと言った見解が書かれていない点に不満を覚える。
電子書籍
物事の根本知る道しるべ
2021/03/31 12:57
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投稿者:BenchAndBook - この投稿者のレビュー一覧を見る
ベストセラーになった時期耳にしていたが、本に向かい合う環境になく読んでなかった。
NHKの養老さんと愛猫まるとの生活を紹介したドラマを観て、あらためて同氏に関心を持ち読んでみた。 テーマのいくつかは(はなせば、、。知識と常識、、。科学には反証、、。)既に自分の見方や捉え方などに身についていると思うが、この本によってそれらが社会的に認知されて会社の中での教育や指導に反映されていたのかもしれない。
NHKについてはなるほど、それはそうだと思った。が、一方で民放の報道はどうかというと政権への批判一色、コメントも局間の差異なし。批判自体はOKなのだがどこも一緒というのはいかがなものかと。その舌の根も乾かないうちに、“個性が大事だと、、”???である。
意識と無意識は面白かった。
物事の根源的な捉え方に大変参考になる本だと思う。
時折、開いてみようと思う。
紙の本
マニュアル人間で何が悪い!
2020/12/26 09:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
積読本消化。バカの壁とは「壁の内側だけが世界で、向こう側が見えない。向こう側が存在していることすらわかっていない」ということ。個性、無意識、身体、共同体、一元論といったキーワードで展開。一読では理解できない箇所が多く、とても難しい本でした。一方で、外務省やマニュアル人間やNHK等をヒステリックに批判。特に鈴木宗男には恨みでもあるのでしょうか。叩きやすい対象を攻撃している印象で、敢えて書く必要はあったのかな。「マニュアル人間世代」の私には、残念ながら養老先生は合わないかもしれません。
紙の本
『壁』について、理解が深まる。
2020/09/11 10:44
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
個人的にはかなり本書は良かったと感じました。内容も多岐に亘って述べられており、非常に興味深いものでしたし、頷く点ばかりでした。
現代は何か歪な感じがします。何かがおかしい。故に息苦しい。その原因や内容を抉り出した一書だと思います。
電子書籍
思考しろ、と言っている割には…
2019/06/16 22:01
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MIC - この投稿者のレビュー一覧を見る
現代人が、自分の脳が理解できることしかできないのに、全てを理解できると勘違いして、他者への無理解を生んでいると現状を把握し、その無思考振りを嘆いている本でした。
2003年のベストセラーなので、それから16年の間の科学の発展があるとはいえ、あまりにも嘆かわしい内容でした。それこそ著者自身の無思考を披瀝しているかのようです。そもそも「考えろ」と言っているのに、断定調が繰り返されるのはおかしいです。
何かと「昔は良かった」的な言い方も多いです。それこそ人類が「不変の情報」の記録を始めてから現在に至るまでの「近頃の若者はー!」論です。
「キレる若者」の話なんかは、私はそもそも本当に若者が「キレる」ようになったのか疑問でした。日本で殺人事件が一番多かったのは終戦後ですし(PTSDと貧困、ヒロポンの蔓延)。
この本がベストセラーになったこと自体が、現代人の無思考ぶりを表しているのではないでしょうか。
紙の本
考えさせられる
2018/10/15 16:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ホノボン - この投稿者のレビュー一覧を見る
色々なバカの壁が立ちはだかって一つ一つのテーマについて考えさせられます。
とても勉強になりました。
紙の本
こういう本だったのか。
2018/10/10 21:54
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ROVA - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルは知っていたけども読むのは初めて。
猫にマヨネーズあげる人、という印象しかなかった養老先生に新たなイメージが。
結構危うげな文章が多くて不安になったし、これが多売れしたというのも意外。
たぶん「言いたいけど言えないことを堂々と言ってくれている」的需要に合致したのかな。
自分としてはまあ、合致するところもあり、しないところもあり、という感じかな。
犯罪者の脳の検査した方が良いってのには同意。
紙の本
結局、残ってないなぁ
2017/06/01 08:34
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ああ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ちゃんと頭に残るようにしないと。
紙の本
養老孟司氏のベストセラーです!
2016/09/20 08:27
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、2003年に養老孟司氏によって出版されたベストセラーです。当時は、各全国版の新聞でも大絶賛されました。本書には、「知りたくないことに耳を貸さない人間に藩士が通じないということは、日常でよく目にすることです。これをそのまま広げていった先には、戦争、テロ、民族間、宗教間の紛争があります。これを脳の面から説明してみますと。。。」といった具合に、世界の様々な出来事を、日常、あるいは脳の機能などから説明されていて、とてもわかりやすく、かつ興味深いのです。少し古い書ではありますが、ぜひ、読んでみられては如何でしょう。
紙の本
新書としては期待外れ
2015/09/02 18:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あじぇんだ - この投稿者のレビュー一覧を見る
非常に有名な新書であるということから本屋でこの本を手に取り、しばらく読み進めた。期待しすぎたことにも起因しているかもしれないが、かなり期待外れであった。
筆者の考えは非常に新鮮で痛快なもので、そこはなかなか面白かったが、一つ一つの話題があまりつながっておらず、コラム集を読んでいるようで、読み進めていくにつれて内容が発展していることもなく、一冊の新書としては連続性に欠けている。ただしそれぞれの話題に対する筆者の考えはかなり面白いので読む価値はあり。
紙の本
あまり頭に入ってこなかった
2015/03/26 17:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:september - この投稿者のレビュー一覧を見る
読みやすかったがあまり頭に入ってこなかった。自分で入ってくる情報を遮断することで、そこで終わらせてしまう。新書はやはり合わない。
紙の本
本=タイトル、人間=表情、両者とも中身は評価に連動しない。これも「バカの壁」か?
2010/03/24 11:43
38人中、23人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トム君 - この投稿者のレビュー一覧を見る
こんな本が400万部超も売れたというのだから驚きである。内容を仔細に見れば、これは100万人以上の共感を勝ち得るような本ではない。むしろ特定少数のアッパーな人(東大等超一流の国立大学を卒業し、頭脳明晰で高い教養を積んだ秀才で金持ち)以外、多くの人は反発を覚える内容ばかり書いてあるように思えて仕方がないのである。辛口の批評で知られたコラムニスト山本夏彦の大ファンである私には、養老さんのコメントは、ほとんど山本夏彦が言っている内容と瓜二つに思えた。例を挙げると、「二軍の選手がイチローの10倍練習したからといって、彼に追いつけるようになるものではない。私たちには、もともと与えられているものしかないのです」と養老さんは言う。これって、山本さん流に言えば「ロバが旅に出たからといって、馬になって帰ってくるわけではない(だから凡百の阿呆どもがいくら海外旅行したって何も学ばないし何も理解できないで終わる。故に日本人の大多数にとって、海外旅行はムダである)」と言うことになるし、「分際を知れ、分際を」という罵声にもつながる話だ。しかし、私たち「巨人の星」を見て育った昭和の人間は「アメリカ人も日本人も同じ五本の指でボールを投げている。大リーグの人間に出来て日本人に出来ないはずがない」という努力至上主義を信じて研鑽を重ね、ここまで偉大で豊かな国を作り上げることに成功したのだ。養老さんの大脳決定論は、一歩間違うと、「人種決定論」に変化し、「所詮すべての文明は神にもっとも近い存在=白色人種が生み出したのだ。白色人種は文明を創造し人類を主導する崇高な使命を神から与えられているのだ。黄色人種や黒人土人は、所詮、いくら努力しても白人様には敵わないのだ」という人種差別にショートカットしかねない危険性を持っている。こんなこと、養老さんの文章を読めば、すぐに鼻についてくるはずなんだが、多くの人は、この点に気がつかなかったのだろうか。養老さんは別のところで「猫も杓子も学習塾に子どもを通わせて進学熱が高まっているそうだが、あんな無駄なことどうしてやるのか。バカな子はいくら詰め込んでも利口にはならない」とも書いていた。こんなこと言われて多くの読者は平気なのだろうか。不思議だ。
また養老さんは、脳の研究の重要性を繰り返し説く。基本的にはすべての国民の脳の構造をまず徹底的に調べてデータベース化し、次に異常犯罪者や精神疾患者、殺人犯、例えば宮崎勤の脳を徹底的に調べてその特徴を洗い出せば、もしかすると今後、類似の犯罪を予防することが出来ると養老さんは説く。人間の脳を類型化すれば、そこから「あなたはキレやすい衝動殺人を犯しやすいタイプ」「あなたは快楽殺人を犯しやすいタイプ」「あなたは連続殺人を犯しやすいタイプ」等の分類が明らかになるので、タイプ別に指導教育を施せば、より円満な社会が構築出来るかのように養老さんは提案する。しかし、これって神をも恐れぬ所業と私には思える。これも一歩間違えるとナチスドイツ顔負けの優性医学思想をダイレクトに社会に適用し、不具者を社会から駆逐するという思想に迷い込みやすいと私は恐れるのである。こういう極端な思想を平然と養老さんは垂れ流すのである。
それなのにどうして「こんな本」が400万部超も売れたのか。答えはタイトルにある。「バカの壁」というタイトルこそが、本書の売れ行きを決定付けた唯一の理由であり、それ以上でもそれ以下でもない。本書に書いてあることを仔細に知れば、多くの読者は本書を投げ捨てたことだろう。本の売れ行きは中身とは関係ない。タイトルで全てが決まるのである。同様のことは養老さん自身にも言える。これだけ辛らつで厳しいコメント、突拍子もなく危険な発想を垂れ流す養老さんは、別に個人的に批判もされず、マスメディアからも追放されず、いまだにご意見番としてテレビや雑誌に登場し続けている。こんなに弱者を見下した意見の持ち主が、どうして大衆に受け入れられ続けているのか。その理由は、ひとえに養老さんの表情にあるのではないかと私は疑っている。養老さんの口から出たことを文字にすると、読みようによっては実に辛らつで救いがなく危険なことを言っているように思える。しかし、その危険な差別思想を、養老さんは常にニコニコニコニコしながら楽しげに語るのである。あの独特のイントネーションとリズム、周波数とニコニコ顔に大衆は騙されているのではないか。非常に辛らつなことを言われているにもかかわらず、養老さんのニコニコ顔を見ると「ありがたいお話」に聞こえてしまうのではないか。脳科学を知り抜いた脳学者養老孟司は、もしかするととんでもない極悪人で、人間の脳のメカニズムを悪用して、大衆を欺いているのかもしれない。少なくとも養老さんと同じことを舛添要一が目じりを吊り上げて早口でまくし立てたら、彼は即日マスコミはもちろん日本社会からも永遠に追放されてしまうのではないか。人間の評価で一番重要なのは中身ではない。それが他人にどう映るかである。その点において表情というのは極めて重要なファクターなのである。
一冊100円とすれば、これで養老さんの手元には4億円超の印税が転がり込んだことになる。65歳を超えた老人に4億のカネは使いきれない額である。これをわたし続けるのを養老さんは「強欲」と決めつけ、「欲をかくのは良くないというのが仏教の教え」と本書にも書いているので、それが養老さんの信念なら、使いきれない印税を養老さんは寄付するなり寄贈するなりするはずだ。本書の印税で稼いだアブク銭を養老さんがどのように処分しているのか、是非、知りたいところである。
厳しいことばかり書いてきたが、私は基本的に養老さんの発想が好きだ。特にキリスト教やイスラム教のような一神教は、要するに「自分だけが正しい」「真実はひとつ」という強烈な思い込みを具現した危険思想であり争いの元であるという考えに私は200%同意する。「真実はひとつではない」「それぞれに言い分がある」「喧嘩両成敗」を旨とする日本の発想が世界を平和にするうえで、案外ユニバーサルな可能性を持っているという養老さんの発想に私は「我が意を得たり」と膝を打つのである。