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かえるくん 世界を救うか・・・
2023/10/19 09:32
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投稿者:えんぴつ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「神の子どもたちはみな踊る」は6つの短編からなる一冊。
背景には阪神淡路大震災がある。以降、東日本大震災や多くの災害、戦争を経て、今、再読してみると新たに見えてくるものがある。おかしくもちょっと切ない哀しみがみえる。
・UFOが釧路に降りる
何も入っていないからっぽの箱に、実は何かが入っているに違いない、こころ・・・
・アイロンのある風景
ジャック・ロンドンの「たき火」に重ねた思いは何?
・神の子どもたちはみな踊る
神の子どもは神をさがす・・・
・タイランド
言葉は石になる・・・か
・かえるくん、東京を救う
かえるくんは東京を救ったのか・・・そして
・蜂蜜パイ
とんきちとまさきちの蜂蜜パイを噛みしめよう
かえるくん、世界を救って・・・救えるものならば。暗澹!
こういう春樹作品は好きである。
阪神淡路大震災後
2022/11/19 10:50
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投稿者:令和4年・寅年 - この投稿者のレビュー一覧を見る
新興宗教の信者を母にもつ青年が自分の出自を知る短編。阪神淡路大震災後の世の中に取材した短編。時間が流れても現在につながっている問題に触れているところがあった。
宗教二世の話ほか
2022/08/23 12:55
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投稿者:えぐちよ - この投稿者のレビュー一覧を見る
連日メディアで某宗教が取りざたされているので、そう言えばこの本は宗教二世の話が入っているのだったっけ、と思い出して読んでみました。
以下ネタバレを含みます。
私はこの作者の下ネタワード満載感があまり得意ではなく(ファンの方はごめんなさい)、
表題作も男性器を中心としたワードが唐突に出てくるのでちょっとうんざりしました。それが登場キャラクターたちの男性性の現れ等を表現しているのはわかるのですが。
結果として、宗教二世としての話は主軸では無いので、そんなに深くは出てきません。
(宗教にハマる母親を若くエキセントリックな美人に設定してるところもちょっと作者の願望ぽくて嫌でした)
他の方も述べていらっしゃるように、
阪神・淡路大震災が短編をつなぐメインテーマになっているのだと思います。
私にとっては子どもの頃のかなり昔のニュースなのであまりピンとは来ないのですが、東日本大震災に置き換えて考えてみると、どれだけ衝撃的なことであったか…
主人公たちはみな被災者側ではないのですが、被災者ではない方はその目線に共感できるところはあると思います。
地震によって生活が変わったわけではないけれど、心境に揺さぶりをかけられる、という点で。
最後の「蜂蜜パイ」は結構好きだと思いました。他のお話も、救いがない話ではないので、読後感は悪くないと思います。
ハルキワールド
2003/07/01 22:15
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投稿者:Kay - この投稿者のレビュー一覧を見る
村上春樹の小説を読むと、ハルキワールドなるものの存在をいつも信じさせられる。この本はそんな世界へのプチ周遊旅行にぴったりだ。日常の中に潜む「非日常」。しかしそれは日常に完全に相反するものではなく、むしろその陰となり寄り添うもの。そんな世界を村上春樹の文章を通じて垣間見ると、そこには二度と帰らない「そこなわれてしまったもの」の抜け殻がある。本を閉じてハルキワールドから出ると、魔法は解けてしまって抜け殻は目の前で崩れていってしまうけれど、魔法にかかった記憶はいつまでも自分に残る。
神の子どもたちはみな踊る
2002/03/28 20:13
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投稿者:ポンタ - この投稿者のレビュー一覧を見る
阪神大震災後に書かれた連作の短篇集。それぞれの登場人物たちが静かに、ゆっくりそれぞれの関係を確認してゆく。短篇連作ならではの読書の楽しみがある。
さすが村上春樹。
2002/06/20 15:48
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投稿者:ヤス - この投稿者のレビュー一覧を見る
阪神大震災が大なり小なり影を落としている6つの短編を収録。
正直なところ、「スプートニクの恋人」があまり面白くなかったので、あまり期待していなかったのだが、読みやすかったし、どれもが完成度が高く、また単純に面白かった。
妻に、空気のかたまりと暮らしているようだと言われ、離婚される男の話には身につまされるものがあった。人間の中身とは何なのであろうか。
次の短編では、生と死の考察、そして自分がからっぽであるという自覚から生じるもどかしさにある程度の共感を覚えた。
標題作は、個人と神の関係に多くの示唆を与えるだろう。神の子どもたちはみな踊るの踊るとは何を象徴するのか。
寓話性が高く、ユーモラスな面が色濃い「かえるくん、東京を救う」。かえるくんは善なるものの象徴なんだろうか。「ぼくの敵はぼく自身の中のぼくでもあります。」
3人の男女の関係を描いた「蜂蜜パイ」は面白いとは思うが、その世界にはすんなり馴染めない。「ノルウェイの森」が好きな人にとっては収録作の中で一番好きな作品かもしれないが。
阪神大震災は「何光年も遠く離れたところにあるように」感じていたし、その後旅行しても、その傷跡は目に入らなかった。モチーフとしてそれが関係しているのは明らかだが、内容としては個人の精神世界が中心であり、阪神大震災について気にしすぎる必要はないと思う。今という時代が感じられる作品でもある。
死と隣り合わせの日常
2022/12/02 10:33
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
阪神淡路大震災の後に書かれた連作短編を収めた一冊。
四半世紀以上前の出来事だが、その後も大災害や戦争、事故などで、今日まで続いていた日常が不意に断ち切られてしまう出来事は相次いでいる。それだけに、時をへても普遍的に胸に響く物語たちだ。
収められた短編には、奇想天外にも思えるものもあるが、実は日常のすぐ隣にある死の予感について考えさせられる。
あの日のことは一生忘れられない
2019/01/26 00:16
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
1995年1月の「地震のあとで」がテーマの表題を含む6作の短編集。どの作品も心に闇を持つ人達が主人公だ。小村の妻は震災のニュースを数日間見続けた後に「あなたと暮らすことは空気のかたまりと暮らすようなものだ」と言って家を出ていく。「あんな災難が自分の身に降りかかった時にこの人とは一緒に死にたくない」と思ったのかも知れない。そういった離婚の理由が当時何件かあったことを新聞で読んだことがある。どの作品も、結末の余韻に浸ることができる。どんどん静かにしみ込んでくる。とくに「蜂蜜パイ」と「アイロンのある風景」がいい。
人は悲しみを表現できるまでにどれだけの時間があればいいのだろうか
2002/07/16 00:26
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本には95年の阪神大震災を核とした六つの短編が収められている。震災のあったその年の3月に地下鉄サリン事件が起こったことを、皆さんは覚えているだろうか。村上春樹さんはあの悲惨な事件に誘発されて「アンダーグランド」というノンフィクションの快作を発表している。そして、同じ年に起こった阪神大震災のことを描くのは、それよりももっと後のことになる。その違いこそが、村上春樹さんが故郷神戸の悲劇を描くことの心の迷いを如実に表しているように思う。やっと彼自身の心の傷が癒えようとしている。
六つの短編は「かえるくん、東京を救う」を極北とする春樹ワールドとあの名作「ノルウェイの森」に連なる「蜜蜂パイ」の間を揺れているようでもある。そして、神戸の痛みとその癒しは「蜜蜂パイ」の最後の言葉に集約される。「これまでとは違う小説を書こう(中略)誰かが夢見て待ちわびるような、そんな小説を」。
そこには村上春樹さんの決意のようなものが感じられる。それは神戸の人たちへの激励の言葉でもある。
私の心も奪われてしまった
2002/04/12 00:35
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投稿者:cyappi - この投稿者のレビュー一覧を見る
6話からなる連作。最後の話を読んでいるとき、急に涙が流れ出して止まらなくなってしまった。どの部分でかは分らないのだけれど、とにかく最近流した事の無い位の量が出た。読み終わった後も止まらない。その予感はまったく無かったのだけれど、それに、最初の感触は、なんと淡々とした文なのだ。これじゃ、きっと途中まで無理矢理読む事になりそうだなぁ、と考えつつ、気がつくと、最後の話で、しかも涙が止まらない。それぞれ6つの話は完全に独立していて、その続きがあるので無し(名前でリンクしてるものが有るけど)、しかし、すべての話は、すべての人の心の中を暗示している。私の心も奪われてしまったのだ。村上さんは何故、分ったのだろうか。
ストーリーは、新しいものではない。何でも新しい物を見つけ出そうとする最近の世の中はとてもとてもつまらない。表面ばかりを追いかけてしまうから。内面を見る暇など無く、また新しい次を探すため過ぎ去ってしまう。今まで、著者のエッセイはくまなく読んでいたけれど、避けていた小説を読んでみようとおもいました。
作家の役割
2011/05/26 07:54
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投稿者:K・I - この投稿者のレビュー一覧を見る
『神の子どもたちはみな踊る』には6つの短編が収められていて、
それらはすべて1995年2月に舞台が設定されている。
これは1995年1月の阪神・淡路大震災と3月の「オウム真理教」による地下鉄サリン事件の2つが戦後日本の大きな転換点だと村上が考えるからである。
田中康夫は阪神・淡路大震災後、印税を寄付しなかった(少なくともそう表明しなかった)村上春樹を激しく批判したが、はたして、大きな災害があったときに作家にできることは、お金を送ることだけなのだろうか?
2011年3月の東日本大震災に直接の影響を受けた小説というものは主だったところではまだ見られていない。
しかし、村上のように作家として大災害にフィクションで答えること、それも作家の一つのあり方なのではないか?と思う。
1.地震のニュースばかり見ていた妻が突然家を出て行く話。
2.流木で焚き火をする初老の男と若くない女の心の交流。
3.新興宗教の信者の母をもつ若者の「父親探し」。
4.タイで休暇を取っている女医の体験。
5.かえるくんが東京に大地震をおこそうとしているみみずくんとたたかう話。
6.淳平という短編作家の日常を描く村上春樹唯一の「家族小説」。
読み直して、ここにはたしかに「フィクションの力」があることが分かる。
作家の役割は一義的ではない。
それぞれがそれぞれできることを、
やればいいのだ。
阪神大震災から15年、節目に読むことによってより感慨深いクオリティの高い作品集だと言えそうです。切ない話ばかりですが、読み終えるとなぜか勇気を少し分けて貰った気がするところが素敵なのでしょう。全6篇でどれもいいのですがなんといっても「蜂蜜パイ」が秀逸。ラストに持ってきたところが心憎くいです。
2010/02/05 21:28
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
阪神大震災を題材というか間接的なテーマとした短篇集。
1995年という年は阪神大震災と地下鉄サリン事件の両方が勃発します。戦後の日本の歴史を変えたといっても過言ではない1995年。
今年で15年となりますが、この作品は読者にとってはまるで阪神大震災のようにいつまでも記憶に残る作品集だと言えそう。
そしてこの作品集は日本という国が決して安全ではないという警告を促しているのですね。
それは何も震災の当事者だけではありません、なぜなら作品に出てくる地域は神戸以外の地域ばかりなのですから。
全6篇からなりますが、それぞれの構成及び内容が素晴らしいと思います。
まずは妻が震災後家出をする「UFOが釧路に降りる」からラストの「蜂蜜パイ」まで。
それぞれ悩みを持った人たちが闇に包まれる生活を送っています。
読者は1篇1篇読み進めるごとに救いを見出すことができるのですね。
とりわけラストの2篇は強い救いが感じられ、明るい光明が差している印象が強く感じられました。
かえるくんやくまきちは読者に希望と勇気、そして感動を与えずにいられません。
それ以外の他の篇もすべて素晴らしく読者によって好みは分かれそうですが。
なかなか村上さんの描く世界を言葉で表すのは困難なのですが、どうなんだろう、手元に置いていつでも読み返せるような状態にしておきたい作品ですね。
読めば読むほど味わい深いものだと思われます。
読み終えた後におぼろげながら“全体像”を感じ取ることが出来るのですが、繰り返し読むことによってよりくっきりすることだと思います。
だから私の感想も初読時の感想ということでご容赦くださいね(笑)
本作を読む限りの村上さんの特徴として強く感じたところを書きます。
やはり誰もが持っている寂しさを認識しつつ、希望を読者に見出す指針を与えてくれるところでしょうか。
その希望の大きさの大小は読者によって違うと思いますが。
読者としたらどうなんだろう、“なぜ自分は生きているのだろう”ということを再考せざるをえないのですね、否応なしに。
それは他の作家にはなかなか真似が出来ない芸当だと思います、次元が違うというかなんというか。
少し余談ですが、たくさん海外小説の話題が作中に出てきます。
たとえばほとんど英語圏の作品しか読んだことのない読者の私は作中のかえるくんの次のセリフに読書意欲を掻き立てられました(笑)
もし読んでいたらもっと村上ワールドを理解できていたのにという悔しさを噛みしめながら・・・
“ぼくが一人であいつに勝てる確率は、アンナ・カレーニナが驀進してくる機関車に勝てる確率より、少しましな程度でしょう。片桐さんは『アンナ・カレーニナ』はお読みになりましたか?”
(「かえるくん、東京を救う」より引用)
人生、何事も勉強ですね(笑)
空虚さと向き合い、新しい方向へ。
2011/05/09 18:19
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:きゃべつちょうちょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この短編集に登場する主人公たちは、
阪神・淡路大震災をきっかけに
自分がからっぽであることを再認識してしまう。
地震の前から、彼らは崩れそうなものを抱えていて、
それが崩れてしまうのは時間の問題だったのかもしれない。
あまりにも大きな崩壊が起きると、
なにをやっても無駄なんじゃないかと
おそろしい無力感につきまとわれる。
いまの力ではどうにもならないこと、
理由づけのできない悲劇の前には
自分があまりにも小さいことを思い知らされる。
地震という大きな外的要因と、自己の内的要因がリンクして
登場人物たちは崩れ落ちた自分の中の空虚さを知る。
しかし彼らは、おそいかかってくる無力感の中から足を踏み出す。
物語に終わりはくるけれど、彼らの人生は続いていく。
続いていくという予感に(そこにきちんと人生が存在することに)
救われる思いがする。不思議な癒し効果がある。
なぜかわたしは、最後の話から読んでしまったのだが、
この本はちゃんと順番どおりに読んでいくことをお薦めする。
巻末の書き下ろし、エンディングの感動を満喫するために。
ハルキニストではないけれど、
村上作品で偏愛しているものがいくつかある。
それらは、あるときどうしようもなく読みたくなり、
ページを捲ると、喉の渇きを潤すがごとく、一気に読んでしまう。
この本も、そういう一冊になるかもしれない。
村上春樹さんの今後の小説に対して意義を有する作品
2007/06/06 23:20
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちかげ - この投稿者のレビュー一覧を見る
村上春樹さんは大鋸一正さんのインタビュー(「ユリイカ」臨時増刊)に対して、自身の小説観、あるいはこの作品集自体について興味深いことを言っています。
まず、自分が短編小説を書く目的について「ひとつは、これまで長編小説には書ききれなかったマテリアルを用いることであり、もうひとつはこれからの長編小説で使いたい手法を実戦的に試してみることです」と述べています。そのうえでこの作品を書き上げた感想として「これまでに使ったことのない筋肉をかなり存分に使ったという、フィジカルな手応えはあります。そしてこの手応えはおそらく、次の長編小説に持ち込まれるだろうという予感はあります」と述べています。
確かに、この作品集で描かれている登場人物はこれまで村上春樹さんが描いてきた人たちとは少し感性が違うし(ただし、心に満たされない部分を抱えているという点では、本質的な違いはないようにも思いますが)、作品の視点としてもこれまでの一人称から完全な意味での三人称に移行しています。そして、この作品のこのような特徴は、村上春樹さんが前記で述べているように、その後の「アフターダーク」(長編)や「東京奇譚集」(短編)にも影響を与え、持ち込まれているように思います(もっとも、「海辺のカフカ」はむしろ従前通りの村上春樹さんの手法に近いと思いますが)。
僕は正直なところ、この作品集以後の村上春樹さんの小説に対しては、自分のなかで消化しきれずにいるところがあります(「自分のなかにある引き出しの、どの段に仕舞えばいいのか分からない」という感じ)。その原因が僕自身にあるのか、あるいは村上春樹さんの小説自体にあるのか(ものすごく失礼なことを言っているのは認識しています。本当にごめんなさい…)分からないけれど、それでも僕は村上春樹さんが新しい小説を発表するたびに、この作品集を読み返し、消化を試みてみようと思います。この作品集が、村上春樹さんのこれからの小説との関係で、何かおおきな意味を持っているような気がするから。
「これまでとは違う小説を書こう」「夜が明けてあたりが明るくなり、その光の中で愛する人々をしっかりと抱きしめていることを、誰かが夢見て待ちわびているような、そんな小説を。でも今はとりあえずここにいて、二人の女を護らなくてはならない。相手が誰であろうと、わけのわからない箱に入れさせたりはしない。たとえ空が落ちてきても、大地が音を立てて裂けても」──
この作品集に、村上春樹さんの強い決意のようなものを感じてしまうのは僕だけではないと思うのです。
人の前に明かりを灯せば、自分の前が明るくなる。そんな温かな短編集。
2023/06/18 20:33
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
1999年に「新潮」誌に「地震のあとで」とのタイトルで連作された短編に書き下ろし「蜂蜜パイ」を加えて出版された短編集。
この地震とは阪神大震災。
それぞれの登場人物は直接的な被災者ではないが、間接的に様々な影響を受けている。
「UFOが釧路に降りる」ーー阪神大震災のテレビ報道を5日間見続けた妻が、家を出て言ってしまう。
「アイロンのある風景画」ーー高校三年生の五月に海岸沿いの茨城のある街にやってきた順子。同棲相手の啓介とともに仲良くなったのは、海岸で焚き火をする三宅さん。
「神の子どもたちはみな踊る」ーー編集者の善也は母と二人暮らし。生まれた時から父はいない。
「タイランド」ーー甲状腺の免疫機能の研究をデトロイトで続けてきたさつき。証券アナリストのアメリカ人の夫と別れ帰国。
バンコクでの世界甲状腺会議に参加後、観光でしばらく滞在することに。
「かえるくん、東京を救う」ーー主人公の片桐は信用金庫融資課の職員。父母を亡くし、弟と妹の面倒を見て大学を出して結婚もさせた。自分は独身。何も失うものはなく腹が座っている。
そこを見込まれて、ある重要な仕事を依頼される。「かえるくん」に。
「蜂蜜パイ」ーー短編小説家の淳平。大学時代からの親友・高槻と小夜子。卒業して高槻と小夜子が結婚しても三人の仲は続いていた。
人は様々な縁によって紛動される。それをどうするかは自分次第。
人の為に明かりを灯せば、自分の前が明るくなる。