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ペスト (新潮文庫)
ペスト(新潮文庫)
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紙の本
破滅と人間
2011/03/21 21:54
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
ペストの流行に見舞われてしまったアルジェリアの都市。ヨーロッパと同じではないにしろ現代医学の恩恵を受けてはいるが、しかし毎日100人が死んで行く。町は閉鎖され、出ることも入ることも叶わず、市民たちはじっと息をひそめて耐えるしかない。中世のようなパニックに取り憑かれることはなく、その惨禍が科学と組織の力で収まることは期待できる。たしかに「ペスト」という言葉に我々は原初的な恐怖を感じはするし、親しい者の死、いとおしい人たちの死といったものが避けられるわけではないが、この世の終わりではない。
そんな中で人々が実感したこととは、暮らしていく中では、時に自由を謳歌し、愛を得ることもあれば、また自由を失ったり、愛を失ったりする。時には他人の自由を奪い、愛を奪う。そうして最後に何を得られるでも、ただ記憶が積み重なっていって、そしてすべてを失う。
そのことを自覚してしまった上で、これから生きていけるのだろうかと思う。耐えられるのかもしれないし、耐えられないのかもしれない。空虚な抜け殻になるになるのかもしれない。
そうした空虚への恐怖は、天変地異でも、日常の些細な事件でも予感されるだろう。
もっと直接的には、ナチス支配下のフランスの閉塞感が、作者にも、当時の読者にもイメージされていたろうと思う。
オランの町とパリを結びつけられるように、たぶん時代や場所を問わない読者にも同じ痛みが伝わる。
物語を形作る人々、客観的第三者となろうとする者、危機に立ち向かう者、共感して集まる同志、逃走を企てる者、傍観してやり過ごそうとする者、初めから埒外に置かれている者、徐々に立場が変わっていく人達、そういう類型には日常的なリアリティを越えて、鮮烈な印象を持つ。
「ペスト」という言葉は、懐古的でもありファンタスティックでもある。その意味が持つ恐怖を今では誰も知らないのだから。自然の反乱に人類が勝てるかどうかといった世界的視点である必要は無いが、人生の中で出会う障壁としては絶望的に巨大なもので、しかしたぶんナチスよりは等身大に近いものだろう。この規模感は作者の意図なのかかどうか。そして経済活動は徐々に縮小してゆく。
自分を投影するのは勇気ある英雄か、おびえの中でラジオ放送に一喜一憂する一市民か、諦観する人か。いずれ恐怖の中にいることは変わらないし、襲ってくる悲しみもそんなに違うわけではなく、ただそれに対処するための、自分の持つ行動パターンやこだわりの性質だけが異なっているだけのような気がする。そして違う道を辿ったとしても、やってくる喪失感もまた共通なことを確認することが、人間を共同体として結びつけるのではないだろうか。
紙の本
私には難しかった
2020/06/04 21:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トリコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
このような状況なので、今、多くの人に読まれていると聞いたので読んでみたが、正直、私には難しかった。
そういえば、高校生の頃、「異邦人」に挫折していたことを思い出した。
でも、またいつか再読してみようとは思う。
紙の本
危機に対して大切なことを伝える作品
2020/04/05 12:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
1人1冊限定で平積みで売っていたため、買いたくなり、購入した一冊。地震、台風、新型ウイルスなど、様々な危機。この本が描くのは中世にも猛威を奮ったペスト。この本の内容は、今の日本や世界の状況とシンクロします。トップの反応や対応などなど。これは1947年の作品ですが、書かれていることは、医師であるリウーを通して危機に対して地道にできる自分の仕事を一つずつ確実に行うことの大切さを訴えるもので、すごく共感できました。訳が難しいのか、そもそもの内容が難しいのか、むずかったですが。
紙の本
淡々と
2019/01/12 20:21
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ケロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
ペストに襲われた町の様子をたんたんと描いているところが逆にリアルでした。
日常が崩壊しても、いつかはその崩壊に慣れていくのでしょうね。
紙の本
不条理小説の傑作
2001/03/08 19:39
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:55555 - この投稿者のレビュー一覧を見る
カミュの傑作。ペストの発生により閉じ込められた町。次々と発症していく市民。不条理小説の傑作。
紙の本
勝者のいない死闘劇
2005/10/01 16:49
15人中、15人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐伯シリル - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある夏の日、アルジェリアの架空の都市オランをペストの猛威が襲う。街は軍隊と警察によって世界から遮断され、誰にとっても平等な死の恐怖が舞い降りる。
主人公(語り手)は町医者のリウー。彼はただ黙々と医師としての仕事を繰り返し、ペストという名の殺戮者に反抗する。
リウーは英雄ではない。そもそもこの物語に英雄は登場しない。キリスト者であるオランの司祭はペストの災禍を神の審判だと説く。しかし司祭自身、自らの教説がゆるぎないものという確信はない。たまたまこの街に滞在した新聞記者はパリに残した恋人と逢うために戒厳令下のオランの街から不法な脱出を試みる。しかしその直前になって、いかなる災禍も愛にかなわないと信じていたはずの彼は街にとどまることを選ぶ。ヒロイズムもキリスト思想もロマンチックラブもニヒリズムも楽観主義も悲観主義も、あらゆる思想や感情がペストの前で試され、無力さを露呈し、そうしてペストはあたかも禍々しい季節風のように、ある期間、思うがままに殺戮した挙げ句、ふいに姿を消して小説は終わる。
繰り返すが、この物語に英雄はいない。勝者もいない。いかにもカミュ好みの不条理人である医師リウーは、ペストに勝てる見込みなど万が一にもないのを承知の上で、患者に血清を注射し、手厚く看護し、予測どおりの死を待ち、臨終を確かめ、泣きすがる遺族を威圧して、感染防止のために死者を特設墓地へ運び去る。彼には希望はない。絶望もない。悲哀も憐憫もない。ただひとえに、息を抜けない仕事があるだけで、そのせいで人並みな感情を抱く余裕がないのだ。
私の手元にあるのは薄墨枠と朱色の二重枠の、昔ながらのデザインのガリマール叢書版の『ペスト』である。学生時代の仏語のテキストであり、何度再読したか知れず、日本語版の翻訳に飽き足らず自分で完訳した初めての原書でもあり、影響を受けたと言っていい数少ない小説のひとつでもある。
カミュはこの小説を構想するにあたって、メルヴィルの『白鯨』を念頭に置いたことを手記で語っている。
メルヴィルはキリスト教の異端宗派であるソフィア派の信奉者だった。この宗派によれば、地球に君臨している神は「狂える神」であり、生きとし生けるものに災禍をまき散らすのを喜びとし、そのあまりの暴虐を見かねて、この神の母であるソフィアは、狂える我が息子に対抗するための武器を人間に与える。武器とはすなわち知恵であり、それを人間に手渡す使者とは蛇である。しかしこの武器で神を倒すことはできない。勝利は不可能であり、せいぜい抵抗しかできない。
以上がソフィア派の思想の骨子なのだが、メルヴィルの『白鯨』は、狂える神であるモビーディックと、それに反抗するエイハブ船長との死闘を描いた物語だ。カミュはモビーディックを「ペスト菌」に置き換えた。世界の不条理性を描いた文学の歴史は古いが、この書はそのジャンルにおける二十世紀の傑作と言えよう。
紙の本
2、3日「放置」して、後半は一気に
2010/11/25 11:40
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:K・I - この投稿者のレビュー一覧を見る
辺見庸さんが推薦したのを目にしたので読んでみた。
アルジェリアのオランという市がペストに見舞われる話。
正直に言って、途中までなかなか読み進めるのに苦労した。
文章は多くが報告の文体になっていて、書き手は最後に明かされるのだが、そのために、なかなか読みづらい文章になっていると思う。
それから翻訳が若干古くなっている部分もあると個人的には感じた。
だが、2、3日、読まずに放っておいて、
「さて、腰を据えて読むか」
と残り半分を開いたら、一気に読んでしまった。
この小説はペストという病疫に閉ざされた町において、
人びとがどんなふうに変わったのか、あるいは変わらなかったのかという物語だ。
で僕としては登場人物が変わっていく方に心を動かされ、
そして、ある登場人物の長い独白などに心を揺り動かされた。
つまり、ペストが町を覆い、人々に変化をもたらしてから、
物語に吸い込まれていったという感じだった。
この小説が発表されたとき、
人びとの頭にあったのは対ナチスの闘いだったようだ。
たしかに読みやすい文体ではないのだが、
読了後には深い充実感をもたらした小説だった。
カミュは哲学論文も書いていて、
僕にはそれはさっぱりよくわからないのだが、
そういう形而上学的な部分がこの小説にも出ていると思う。
でもそれだけでなく人間模様も描かれているので、
興味のある人は読んでみることをおすすめする。
紙の本
新型コロナウイルス感染症が終息したあとに教えてくれるもの
2020/05/14 13:46
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ジミーぺージ - この投稿者のレビュー一覧を見る
オランという港町に突然ペストが発生し、ロックダウンされた社会の中で、
人々の行動や心理状態を描いた作品です。
ペストという巨大な殺人兵器に立ち向かうすべはなく、ターゲットにされるのは
悪人も善人もなく、大人も子供もなく、老若男女の区別もありません。
そのため、この町から脱出するか、神にすがるか、愛する人と今ままでどおり暮すか、
好きなように欲望を満たすかしかないのです。
こんな時でも、医師は患者の命を助けるのが仕事で、これは命懸けの行為です。
仕事なのか、責任なのか、役割なのか・・・・・・・
この本は、「不条理の絶望」ということがテーマにあり、この町の全ての住民が
その絶望の対象者としてこの不条理な世界で生きることになります。
やがて、ペストは終息していきます。
このペストとの勝負で勝ち得たものは、
「ペストを知ったこと、そしてそれを思い出すということ、友情を知ったこと、そして
それを思い出すということ、愛情を知り、そしていつの日かそれを思い出すことになる
とういこと」と本文にあります。
現在、2020年、
世界的なパンデミックとなった「新型コロナウイルス感染症」が終息したあとに得るものは、
「新型コロナウイルスを知ったこと、そしてそれを思い出すということ、友情を知ったこと、
そしてそれを思い出すということ、愛情を知り、そしていつの日かそれを思い出すことになる
とういこと」と、思います。
この本は、新型コロナウイルスによって自由を奪われ、不条理な世界に生きることの困難さを
感じている人にお薦めです。
電子書籍
閉塞感が今の状況にピッタリ過ぎて…
2020/04/26 02:16
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:イリ玉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
新コロナで苦しむ現在と似ていると友人が言うので読んでみた。病魔の足踏み。あまりに今の状況に似ていて辛い。大変面白いが、若干訳が難解。表現は素晴らしいのだが。50年以上前の訳の様なので是非この機会に新訳でお願いしたい。
紙の本
圧倒的な理不尽
2018/07/30 19:16
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:藤和 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ペストという抗い難い、突然の災難に対し人々はどう対抗し、または受け入れ、生き延びようとするのか。
その理不尽さは現代でも他の病気であったり、戦争であったり、そう言った物に通じる物が有ると思う。
理不尽の中生きる登場人物達の様々な行動は、自分がどの様な信念を持つかを考えるのにヒントを与えてくれるかも知れない。
深く考えずに読み物として読むのも勿論お勧めだけども、とにかくテーマが重いので気軽の読むのは難しいと思う。
紙の本
コロナ渦で考える
2022/08/31 11:49
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:モリンガ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ペスト流行の惨禍という極限の苦難の中にあっても、じっと耐え、明日への希望をつないでいった主人公の医師の姿は、コロナ渦を生きる今の人類もやがては乗り越える日がやってくるだろうという出口への光を与える。
紙の本
読んでいて今の新型コロナウイルス禍の今の状況とシンクロする
2022/02/04 23:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る
新型コロナウイルスが蔓延するこの時代にこそ読まれるべき作品だろう。読んでいて今の状況とシンクロする。初めはちょっとした異変だったものが、見る見るうちに譲許が悪化し、都市が封鎖される。出口の見えない状況が延々と記述されていく。解説を読むともっと理解が深まった。特に途中に出てくるキリスト教に関する観念的な記述の部分である。ちょっと気になったのは訳文の言葉がちょっと古いかなと思った。
紙の本
ペスト カミュ
2021/06/16 10:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:S - この投稿者のレビュー一覧を見る
コロナ社会の私達に共感出来る点がいくつもあるように思う。今読むからこそ染みる一冊。ウイルスが現れたことによって私達は「普通」とは何かより考えさせられる。人々、社会を俯瞰しつつ、作者が思想を展開していく中で、今のご時世を生きる自分が意識できなかったいくつもの自分の感情に出会うことができる。
紙の本
あっさりと
2020/08/17 11:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:デンジャーメロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書最大の謎とされているアレは、わりとすぐわかるものだしそこまで重要なものでは・・・って感じでした(笑)
疫病に立ち向かう人々は、現在のコロナ禍にも勇敢なのだと改めて思いました。
電子書籍
やっぱり、2020年の世界を暗示していると言いたくなってしまう
2020/06/16 23:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
2020年の世界がまさかこんなことになるとは、およそ誰も思わなかっただろう。だが、すでに6月も半ばになっても尚毎日頻繁に聞く言葉が「新型コロナ」であり、人と顔をあわせた時の枕詞にもなってしまっている。そして、これだけ時間が経過しても、結局「新型コロナ」がどんなものであり、誰もが感染してしまうものなのかそうでないのか、私達にとって何がデメリットであり、何がメリットであるのかとかいったことがさっぱりわからないというのが現実で、そのわからなさをうまく抱えていることができず、不安な気持ちだけがいつも刺激されてしまっている。
そんな不安な気持ちが続いていると、何とかこの不安を解消できるものはないものかと、何かこの不安定な状況を支えてくれるものはないかと、誰もが探すのだろう。その1つがこの、カミュの『ペスト』なのかもしれない。何しろ、ノーベル賞作家の代表作であり、この2020年の世界の状況を予言したとも言える物語だというのだから。
私も、不安を自分だけで抱えていることが難しいと感じて、何か手がかりが欲しくて、この本を手にしてみた。
確かに、時も場所も、扱われているものも異なるのだけれど、この物語に出て来る人たちが感じ、考え、行動したことと同じようなことを、今の私達も感じ、考え、行動したりしなかったりしているのがありありと感じられる文言がそこここに出てくるのだ。それをいちいちマークしていたら、20カ所を越えてしまった。
特に、市が封鎖されたあとに夜警手が、「まったく、こいつが地震だったらね! がっと一揺れ来りゃ、もう話は済んじまう・・・・・・。死んだ者と生き残った者を勘定して、それで勝負はついちまうんでさ。ところが、この病気の畜生のやり口ときたら、そいつにかかってない者でも、胸のなかにそいつをかかえてるんだからね」と言っているのなど、正に2020年に生きる我々のことと言えるのではないか。
本書は、全体を通じて冷静な筆致で、ペストに襲われた市のその発端から終結までを表しており、ある種ルポルタージュのようにも読める。そこがまた、今だからこそリアルさを感じさせるところなのかもしれない。
だとすると、終わりの方で「人々は相変わらず同じようだった。しかし、それが彼らの強み、彼らの罪のなさであり、その点においてこそ、あらゆる苦悩を越えて」他人とまた1つになれると感じられるとあるのが、この先の私達自身が進んでいくべき方向のようにも思える。
そう、今私達が経験していることは何も新しいことではなく、ヒトがこれまでにも時と場所を、姿を変えて経験してきたことと何も変わらないのではないか。そんなことを教えてくれたということからして、やはりこの『ペスト』は予言の書と言えるのかもしれない。
ただし、本書がもともと刊行されたのは1969年のことらしく、翻訳の文体や言葉が古めかしいところがあった。それはそれで格調があり、雰囲気があって良いけれど、少し読みにくかった。あまり砕けすぎた表現も良くないかもしれないけれど、もう少し最近の言葉遣いなどされているともっと読みやすかったようにも思う。