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ジュンク堂書店 書店員レビュー一覧4ページ目

ジュンク堂書店 書店員レビューを100件掲載しています。6180件目をご紹介します。

検索結果 100 件中 61 件~ 80 件を表示

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

毛布 あなたをくるんでくれるもの 安達 茉莉子 (著)

毛布 あなたをくるんでくれるもの

「熱」をくるむ

安達さんの文章の中に、自分自身と「一致」するということについて書かれている箇所があります。
安達さんは人から、「組織で働くことになったとしても、組織とは別のチャンネルを作っておけ」という意味のことをある時言われます。そうすることは「自己決定権を高めることに繋がるから」と。
毛布というタイトルのエッセイ集、毛布をまとった動物のカバーも挿絵もふんわりとしていてむつかしくない、優しい言葉で書かれています。しかし読むと、安達さんのほとばしる思いに素手で触れるようで、読んではいけないものを読んでしまったかのような思いにかられます。
もはや温かいを通してじんじんしてくるエッセイ集なのではないでしょうか。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

それでも日々はつづくから 燃え殻 (著)

それでも日々はつづくから

服を着るだけで旅に出られる人

燃え殻さんのエッセイ集を読むと、いつもなぜか「遠い土地」について考えさせられます。それも、自分が思い描く「遠い土地」ではなく、燃え殻さんが「素敵だな」「好きだな」と思った「人」を通しての「土地」なのです。
今回のエッセイ集でも、自分が古着屋で買ったカーディガンが、今までどんな国を旅してきたのか、思い描く女性が出てきます。そんな彼女のことを、燃え殻さんは宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」になぞらえて綴ります。カーディガンから遠い国を思い描く女の人。彼女の言葉から、さらに遠い宇宙を思い描く燃え殻さん。
好きな人がいるということ、好きな人の好きなものを好きになるということ。そのような思いは伝播していくのだということ。
燃え殻さんの本を開いた読者が「饒舌になる」秘密を、そこに見たような気がします。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

万感のおもい 万城目 学 (著)

万感のおもい

すべての性格のために

万城目学さんの新しいエッセイ集。「すべての性格は捉え方によって、百八十度、その印象を変える。」と万城目さんは述べています。「心の強さ」や、「やさしさ」を登場人物の内面に表現するとき、まずは融通の利かなさや、優柔不断であるという要素を強調して描くのだと。
人間の持つ人格が、白と黒のようにわかりやすければ、私たちは万城目さんの小説を、ここまで夢中になって読むことはなかったのかもしれません。上質な織物が、どうやって作られているのかを教えてくれる職人のように、美しい花がどうやって咲くのかを知る農家の人のように、万城目さんは淡々とエッセイを紡ぎます。小説の登場人物をさらに身近に、愛おしく思うことができる、優れたつくり手によるエッセイ集だと思います。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

オールドレンズの神のもとで (文春文庫)堀江 敏幸 (著)

オールドレンズの神のもとで(文春文庫)

いままで見えなかったやわらかな日常がみえる

読み終えた後もふとした瞬間に脳裏に色彩豊かな情景と登場人物たちの言葉がよみがえる18篇の作品集。

表題作「オールドレンズの神のもとで」には男たちの頭部に代々孔があいているという一族が登場する。モノクロの世界に生きる彼らは一生に一度鮮烈な色を体験する。ある写真集に着想を得たという本作、モノクロの世界で人々を魅了し続けるその写真家の作品を知らずとも作中の情景の数々に引き込まれずにはいられないだろう。写真家の作品を知る人は不思議な既視感を味わえる。写真家が気になる方はぜひ巻末で確認を。

「杏村から」はわずか2頁ながら語り手の「わたし」への伯母の愛情と想いがこもった言葉が心に残る一篇。
「果樹園」ではひょんなことから犬の散歩係になった主人公をとりまくやさしい交流が描かれている。よりそう二頭の犬のオクラとレタス、飼い主夫妻との出会い、散歩係になった主人公、つながる縁と身近な存在への思いやりにやわらかな気持ちになれる作品。
日常のささやかな出来事のきらめきの描写がこんなにも優しい気持ちにさせてくれるのかと驚きの連続の一冊。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

おいしいごはんが食べられますように 高瀬 隼子 (著)

おいしいごはんが食べられますように

真夜中のカップ麺

お菓子作りが上手で、いつも笑顔で優しい芦川。彼女は体調が悪くなるとすぐに早退したり、当日欠席したりするなど、出来ないことがたくさんあったが、無理して頑張らなくても周りから咎められず、むしろ理解され守られていた。
そんな芦川の弱さに性的興味を持つ二谷。二谷を慕い、芦川が出来ない仕事をこなす頑張り屋の押尾。
芦川に対して「嫉妬」とも「嫌悪」とも呼べぬ感情を渦巻かせながら、物語は二谷と押尾、2人の視点で進んでいく。関係の中心にいる芦川の心の内は語られることがない。そのことが物語に若干の不気味さを滲ませる。

著者はどうしてここまで人々が持つ醜い感情を言葉にできるのか。読んでいてとても苦しくなるが、それでも読むのをやめられない。この小説はまるで体に悪いとわかっていても食べるのをやめられない真夜中のカップ麺のようだ。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

天使日記 寺尾 紗穂 (著)

天使日記

天使の温度

ミュージシャン、寺尾紗穂さんの身の回りに起こったことのエッセイ集です。天使に出会ったという子供の話が出てきますが、「手は柔らかいが温度はない」と話す子供は、きっと嘘をついていないのだろうと思わされます。自分には聞こえていない声があり、見えていない世界があるかもしれないということ。そのことを分かっていたとしても何もできず、戦争は起こり、人が毎日死んでいます。そのことも寺尾さんは忘れず、繰り返し書いて来られたのだと思います。
「立ち止まりたいと思う」という寺尾さんの言葉があります。他人の温度を知るために、人間と一緒に生きていくために、今こそ読まれるべき本なのだと思います。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

あの人ひとりがこの世のすべてだった頃 ナ・テジュ (著)

あの人ひとりがこの世のすべてだった頃

冷えていくあなたの手

風や月や星など、ナ・テジュさんの詩集には自然が多く登場しますが、自然は自然として描かれ、良いところも悪いところもきちんと両方の面を描かれます。「冷えていくあなたの手を惜しんで泣く風でありたい」とナ・テジュさんは書きますが、風だから人間のように手を暖めることはできず、冷やしてしまうのです。でもどうすることもできない。そんな部分をきちんと描くことで、多くの人間の心を動かしているのだと思います。
「心に血が溜まる」という表現も、初めて聞きました。他の言葉に置き換えるのであれば何かな、と考えますが、なかなか思い当たりません。優れた詩集というのはそのようなものかもしれません。置き換える言葉を見つけ出せず、その言葉が、頭の中でずっと起きてから目を閉じるまで、めぐり続けるようなもの。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

きみだからさびしい 大前 粟生 (著)

きみだからさびしい

対等な恋愛とは

町枝圭吾は京都市内の観光ホテルで働く24歳。体は大きいのに覇気がなく、そのせいで「おばけかと思った」なんて言われてしまうことも。
そんな圭吾には好きな人がいる。二条城のランニングコースで出会った、あやめだ。
ある日、圭吾が思いを伝えるとあやめは「私、ポリアモリーなんだけど、それでもいい?」と言った。ポリアモリーとは、複数の人と関係を持つ恋愛スタイルのこと。あやめには、既に恋人がいた。
誰をどんな風に好きになろうとその人の自由だ。それでも対等な恋愛がしたいと願う圭吾。「好き」ならその人の全てを受け入れられるはずなのに…

恋愛の多様性が叫ばれ、恋をするのも不自由な現代。誰かを好きになることはつらくて苦しくてさびしい。それでも、きみがいるから世界はこんなにもまぶしい。この痛みも喜びも全部きみだからなんだ。この小説を読むと、どんな「好き」もキラキラと輝いていることに気づかされる。どんなときもこうやって大切な人と向き合える。だからきっと私たちは幸せだ。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

妄想美術館 (SB新書)原田 マハ (著)

妄想美術館(SB新書)

新たなアートの楽しみ方

作家の原田マハと漫画家のヤマザキマリがアートに対する思いやエピソードを交えて、作品や芸術家、世界の美術館、アートの楽しみ方を紹介する対談集となっている。

アート作品を鑑賞しながら、その作品の美しさや技法の素晴らしさ、芸術家の人柄や作品に込められた思いに心動かされることはあっても、著者達のように自分の考えや想像を持って、つまりは妄想しながらアート鑑賞をすることは少ない。
しかし、著者達はそんな妄想することで作品や芸術家をより楽しんでいる。
美術館へ行くことを特別とせず、話題のお店へ行く感覚でふらっと足を運び、アートのある空間で幸せを感じ、多くの感動を得た後、自分なりの美術館を妄想する。
そんな新たなアートの楽しみ方を教えてくれる1冊である。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

ひとんち 澤村伊智短編集 (光文社文庫)澤村 伊智 (著)

ひとんち 澤村伊智短編集(光文社文庫)

普通という恐怖

仲が良かった3人が久しぶりに集まればおしゃべりはとまらない。
麦茶に砂糖をいれる・リモコンを別の呼び方でよんでいるといったように、ごく普通で当たり前のことだと思っていた習慣が実はその家庭独自のものだったという「あるある話」で盛り上がってしまったことから、彼女たちの日常は綻びはじめる。
著者Twitterによると「「短編集は売れない」と各社編集者に言われ、カチンと来て書いて纏めた本」であるという本著だが、個人の感想からいえばお見事、の一言であった。
一話目の「ひとんち」を読み終わった時点で、他者とこの物語を共有したくてたまらない衝動を抑えきれなくなり家族にその場で読書を強要してしまった。
『ひとんち 澤村伊智短編集』はヒトコワ(人間が一番怖い、という話)から霊的現象、SF的なものまで、幅広くホラーを堪能できるが、それぞれが40ページ弱という短い世界の中でおきているとは思えないほどに奥行があり、不穏で、ゆがみきっている。
覆いきれない嫌な予感は行間にまでしきつめられていて心の準備はとうにできていたはずだったのに、ぼうっと日常を歩いていたら突然がくっと足をふみはずしてしまったような感覚に陥ってしまう。
ねんざ程度ならまだましだが、気が付いたときには深淵の底から小さな小さな空をみあげている、なんてことになりかねない、おそろしい短編集である。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

台湾文学ブックカフェ 2 バナナの木殺し 呉 佩珍 (編)

台湾文学ブックカフェ 2 バナナの木殺し

自然と人間

中篇全三篇を収録する小説集です。表題作は、バナナ畑のなかで暮らす少女の家族とある宗教団体の関係について探っていく主人公の様子が描かれますが、主人公の車に突然ぶつかってきた少女が話す言葉はどれも寓話のよう。どの言葉も全てこの世のもののようではなく、また、彼女を取り巻く家族も、同じように感じます。
飛ぶ真似をする少女。幽霊になると言って出ていった祖母。懺悔の歌。
少女は、「倫理には差別意識が伴う」といった意味のことを主張します。それは、彼女が置かれた宗教団体が行ってきた仕打ちあってのものです。結果、なぜ、死ぬことを恐れるのかと問うまでになります。しかし、身近にいる人間がことごとく死んでいくことを経て、少女は「自然の中で、生を切り開く」ことを選択します。
太陽にさらされた暑さやアスファルトの匂い、バナナ畑に降る大雨。日本とは違う濃い自然の中で、少女の声は高らかに響き渡ります。彼女がもし日本に生まれていても、そうだったであろうか。人間だけでなく囲まれた自然にも、人を変える力があるように思うのです。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

ゆきあってしあさって 旅書簡集 高山 羽根子 (著)

ゆきあってしあさって 旅書簡集

未来に存在する場所

3人の作家による「架空の土地を旅した」書簡集です。実際に旅した旅行記ももちろん素敵ですが、フィクションにしかできない「土地の記憶」「人物」が饒舌に綴られた不思議な書簡集となっています。
確かにこんな国も、人々も存在しないとは思いますが、読んでいるうちにだんだんわからなくなってきます。磁力が強いせいで通信障害にひっかかり、軍人たちが戦争が終わったことを知らない地域。建物から家具まですべて氷で作られたホテル。
ないとは思うのですが、100%存在しないのかと言われたら、そうではないかもしれないとしか思えなくなってくるのです。それは私達が現在を生き、「未来」を、知らないから。いつか未来には存在する土地なのかもしれない。そう思うと、本当の「旅」に出たくもなってくるのです。

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生を祝う 李琴峰 (著)

生を祝う

私たちが生を祝うために

『彼岸花が咲く島』で芥川賞を受賞した李琴峰さんによる受賞後第1作。

出生前の胎児に生まれるかどうかの意思を確認する「合意出生制度」が法制化された50年後の日本。出生を拒んだ胎児を出産した場合は「出生強制罪」という罪に問われていた。
出生の意思を確認された上で生まれ、その事実に支えられてきた主人公・立花彩華。意思を確認されずに生まれ、「出産強制」が許せない妻の佳織。同性婚が認められた日本で彩華は妊娠手術により子を宿していた。2人は自分たちの子供の意思は必ず尊重しようと誓い合い、その子供が生まれてくるのを心待ちにしていた。

人間が完璧ではない以上、どんな制度にも必ず欠陥は存在する。何を信じ、何に従って生きて行けばいいのか不透明な状況の中、2人がくだす決断とは。そして、現代を生きる私たちが自分たちの生を祝うために信じるべきものは何なのか、深く考えさせられる作品です。

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

夜は不思議などうぶつえん (双葉文庫)石田 祥 (著)

夜は不思議などうぶつえん(双葉文庫)

愉快であたたかな夜の動物園のひみつ

生島動物園は開園して百年近い歴史を持つ古い動物園。
アルバイトの牧野飛鳥はある日夜の見廻りを頼まれ、はじめて夜勤専属のスタッフ不破と仕事をすることに。そこで不破の不思議な体質を知ってしまう。なんと彼は動物と入れ替わることができるのだ。
不破の体を借りて檻の外へ出た動物たちのやりたいことはなんともささやかなものから愉快で豪快なものまで読んでいてワクワクすることばかり。夜の動物園で繰りひろげられるおかしな人間と動物の交流がいつまでも続いてほしくなる。
だが半年後にはこの動物園の閉園が決まっている。

動物園で働く人が日々どう動物と接し向き合っているのか。作品には飼育員の方々の仕事への情熱と動物への誠実さと深い愛情も描かれていて胸があつくなる。

不破と入れ替わる動物たちの中でもとりわけチャーミングなのがライオンのライガ。飛鳥のことがお気に入りで、ふたりの会話は楽しくてちょっとほろりとしてしまう。
あきらめきれないものがある人ももう一度、と思えるあたたかな物語。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

言の葉の森 日本の恋の歌 チョン・スユン (著)

言の葉の森 日本の恋の歌

お守りの言葉

韓国の翻訳家によって書かれた、日本の和歌を巡るエッセイです。
私たちでさえ和歌に触れる機会というのはなかなか日常生活の中で訪れません。そんな中、違う国の人から見た「昔の日本の人」というのは、いったいどのように映るのだろうと思い、この本を手に取りました。
平安時代の女の人は、名や顔が判明すると「魂までも乗っ取られる」と思い、それを公にすることを恥じた、と書かれています。名前が宮中に知れ渡った紫式部。しかし彼女には、名前のほとんど知られることのなかった、ある幼なじみがいました。
著者は、紫式部と、その幼なじみの関係になぞらえ、自分と、懐かしい日本人の友人の「お互いの名前の呼び方」について、ゆっくりと話します。著者の目線はまっすぐでぶれることがなく、ページをめくっていてもどこからがどこまでが韓国の話で、どこからが日本の話なんだっけかと、わからなくなる時があります。すごく柔らかくて、人の心の琴線に触れるエピソードが、たくさんつまっています。
「昔の韓国の人」が、どんな本を読み、どんな歌を作っていたのか、反対にとても知りたくなりました。
私たちは自分の言葉が進む方向に行く。という著者の言葉が、お守りのように輝く本だと思います。

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ミーツ・ザ・ワールド 金原 ひとみ (著)

ミーツ・ザ・ワールド

人の彫刻

金原ひとみさんの本にはよく、アルコールやピアスなど、「依存」の対象となるものが多数登場しますが、今回は「人」の「依存」について大きくフォーカスされた本だという印象を受けました。
焼肉擬人化漫画をこよなく愛する腐女子である由嘉里。男性と付き合ったことのない彼女が、ひょんなことから「この世から消えなきゃいけない」と主張する美しいキャバ嬢、ライと出会います。容姿も、生きてきた家庭も、生活習慣でさえも何もかもが違う二人。しかし由嘉里は、ライがこの世からいなくなること、自分のそばから離れてしまうことに抵抗します。自分とライとの間には、「わかりあえないこと」がたくさん、存在していることに気づきながらも。
終盤に由嘉里は、ライの友人であるアサヒから、「彫刻」の話を聞きます。自分の周りの女たちはアサヒに「彫刻」=「人を愛すること」をしろとせがんでくる。しかし自分は彫刻が下手で、人を傷つけずにはそれができない。そうアサヒは由嘉里に話します。
アサヒだけではなく、誰もが人とかかわる以上、彫刻を行わなければなりません。行ったからこそ、由嘉里は傷つき、それでも不確かなライの存在を信じながら生きることを選んだのです。
多くの彫刻を見てきた飲み屋のママ、オシンが話す言葉がそれを象徴しています。「再会するっていう希望は私たちに残されてる」。二次元でも三次元でも、「彫刻」を行う人々がこの世にいる限り、その言葉はまるで灯台の様に、私たちを照らすのです。

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

氷柱の声 くどう れいん (著)

氷柱の声

日常に寄り添う一冊

会社員として働きながら、俳人・歌人として活躍する著者の初の小説。

東日本大震災が起きたとき盛岡の高校生だった主人公・伊智花を中心に、東北にゆかりのある若者たちの10年間を描いた物語。彼らが胸に抱える言葉にできなかったこと、語るべきではないと思っていたことを丁寧に掬い上げて描いている。

震災をテーマにした作品だが、ここにあるのは彼らの日常であり、同時に私たちの日常でもある。誰もが「語るほどでもないが辛かった出来事」を抱えて生きていて、コロナ禍の現在、それはより大きなものになっている。その一つ一つを溶かしていくような温かさがこの作品にはある。
私たちのこれからも続いていく日常に寄り添ってくれる一冊だ

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最強脳 『スマホ脳』ハンセン先生の特別授業 (新潮新書)アンデシュ・ハンセン (著)

最強脳 『スマホ脳』ハンセン先生の特別授業(新潮新書)

最強脳への一歩は運動から

本書は「スマホ脳」を読んでない人でも十分楽しめる本である。
さらに、専門的な知識などが、わかりやすく説明されており、子供でも理解できる内容となっている。

そもそも、最強脳とはどんな脳なのだろうか。
恐らく、脳の機能が十分に発揮されている脳と言えるのではないだろうか。
本書では、脳の仕組みや機能をわかりやすく説明した上で、どのようにすれば、その機能を十分に発揮させることができるのか、
―――「それは、運動である。」と著者は述べている。
運動についても、単に「運動が必要だ。」と述べるだけでなく、どのようなタイミングで、どれくらいの時間(量)、どのような運動をするのが良いのかと詳しく書かれている。
また、運動の内容もハードなものではなく、散歩など、日頃、運動をしていない人、運動が苦手な人でも取り入れやすい運動となっている。
まずは、最強脳への一歩として、少しの運動を始めてみようと思う。

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それぞれのうしろ姿 アン ギュチョル (著)

それぞれのうしろ姿

不思議なケーキ

素敵な比喩表現なら、星の数ほど知っているBTSのRM氏が、
Weverseでページの画像を無言で投稿した本。
無言での投稿には意図があるのかな、と不思議に思っていました。
読んで驚きました。
ページをめくるたび、不思議なケーキが出てきて、
一つずつ丁寧に、それらを食べている気分になるのです。
著者ギュチョルさんの手によるケーキの色は透明。
口にする人の色に、ゆっくりと染まっていきます。
読んだあと、しばらく何も出来ませんでした。
透明な光が何かにぶつかり、重なり、多くの色が、世界に生まれてくるようでした。
ARMY一人一人を尊重し、彼らの色に委ねようとするRM氏の想像力と誠実さを、
そこに見たような気がします。

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ルーティーンズ 長嶋 有 (著)

ルーティーンズ

言えなかったこと

コロナ渦中におけるある子持ちの夫婦の日常が描かれます。とりたてて緊迫した描写や、病気にかかるといった描写はありません。しかし、「コロナになりたくない」といったような、当たり前の思いを登場人物がふっとSNSで吐露する場面があり、普段の生活で、そういった当然の思いでも、なぜか言えない空気であった私達の日常が巧みに描かれています。
マスクが買えないこと。ラインで「マスクあった」という情報が出回ること。誰かが感染したということを、SNSで知ること。
空気感は押し迫っていますが、コロナ渦になる前に「あった」家族の空気もそのまま生きており、私達がそれに普段、どれだけ勇気づけられていたかも同時に描かれています。
普段どおりの日常にはしばらく戻らないのかもしれませんが、「どうもなかった」空気感が小説の中に一緒にあることで、こうして小説を読む人の日常も、少し楽になるのかもしれません。

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