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火車 改版 みんなのレビュー

文庫 第6回山本周五郎賞 受賞作品

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みんなのレビュー1,750件

みんなの評価4.2

評価内訳

1,750 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

読者が最後に得るもの

2006/03/13 23:53

14人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:六花 - この投稿者のレビュー一覧を見る

一人の刑事が人捜しを頼まれ、失踪した関根彰子という女性を捜す。
物語は、最初から最後まで、これがテーマである。
刑事が女性を追えば追うほど、足取りをたどればたどるほど、彼女の徹底した「消えぶり」が明らかになっていく。
全く痕跡もなく、友人と呼べる友人もいない。仕事場に提出していた職歴も嘘っぱち。
彼女は、「消える」準備をしていたのだろうか?彼女はここまでして、何から姿を消したのだろうか?
物語の核心ではなく、割と前半に明らかになるので書いてしまうが、
姿を消した関根彰子は、関根彰子の戸籍を持った全くの別人だった事が解る。
物語の主人公となるのは、この「偽彰子」であり、ここでまた様々な謎が発生する。
彼女はどこで、関根彰子に会ったのか。どのようにして、関根彰子となったのか。
そして、本物の彰子は?
実を言うと私は、読んでいる途中で、「偽彰子」が行なった入れ替わりトリックのようなものの一つが解ってしまった。
しかし、はっきり言って、この作品にとってそんなことは「どうでもいい」ことであろう。
なぜならこの本で最も重要なことは、「偽彰子」の人間像、そして彼女の人生の軌跡だからだ。
物語を通して、彼女の人物描写は、どうもはっきりせず、ぼけたような所がある。
それはひとえに、あくまで話を進めるのは「刑事の推論」であり、
登場人物もその多くが「少しだが彼女を知っている人物」だからだ。
「偽彰子」自身、波乱の人生を生きているので、「彼女はこうでこうでこういう人だ」と明確に説明できる人は、ほとんどいない。
彼女自身は出てこない、あくまで「彼女が生きた後」を追うところに、この物語の芯がある。
刑事が、そして読者が抱くであろう彼女への印象は、話を聞く毎に、微妙に少しずつ変わっていく。
彼女がやったことを知るにつれ。
彼女の過去を知るにつれ。
そのことは、物語の中で刑事が感じていることだが、同時に、私自身、強くそれを感じていた。
1ページ前、私は彼女について、どのように考えていただろう。
どんな人だと思っていた?
2ページ前、50ページ前では?
ふと我に返り、自問する瞬間。
私は、この物語は、この瞬間のために存在すると言っても過言ではないと思う。
何度も言うが、彼女の像がラストでくっきりはっきり明らかになる、ということはない。
彼女を追って追って追い続けた後に、刑事が、そして読者が感じること。
本を閉じた後に残るものは、実際に読んで感じてもらいたい。

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紙の本

ミステリーの王道を極めた作品だ。直木賞を取れずに物議をかもしたらしい

2010/10/07 09:20

9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る

 宮部みゆきさんは大変な売れっ子作家である。このことは疑いようがない。もしその中でベストスリーを上げろと言われれば,私は間違いなく「火車」を加える。

 主人公は,休職中の本間刑事。ある日,疎遠にしていた甥の和也が現れ,婚約者を探して欲しいと持ちかける。本間の妻の交通事故死の時,葬式に顔を出さなかった薄情者は,エリート銀行マンの設定。休職中の叔父を利用しようとするさもしい輩だ。
 本間は,昔取った杵柄よろしく調査を始めるが,次々に判明する不可解な事実を前に,体ごと絡め取られていく。くだらない甥っ子に,宮部さんがどんな処分を下すのかは読んでからのお楽しみ。そして物語は,そこから真髄に入る扉が開かれるのである。

 謎解きの入口になっているのがカード破産だ。昨今は状況が異なりつつあるが,人間の本質的な部分は何も変わらない。時事問題をうまく取り入れながら,単なる流行ものとは大きく異なる作品の深さが実感できる。

 この話ほど,先が見えず,トリックに欺かれ,最後の結末でストンと切り落とされたことはない。文庫版で,あと書きまで加えて584ページの大作。これだけの物量ながら,視点がぶれず,無理なトリックや強引な展開もない。犯人を狂気に走らせたくだりも目を引く。

 主人公を休職中にして,警察の協力を最小限にしたのも見事。探偵と犯人,という最もオーソドックスなスタイルであるために,胸に湧く高揚感がたまらない。

 ラストシーンの,話の完結の仕方がとても個性的だ。逆に,そのために直木賞を逃したらしいのだが,はてさて。そんな本質的でないことに拘ることなくお楽しみあれ。
 書評投稿数の多さがみんなの答え示している。

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紙の本

頂上の石ころはやがて借金地獄という名の雪ダルマになり貴方のもとになだれ込む

2008/11/05 10:54

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る

借金地獄というのは文字通り、雪ダルマ式に借金と不幸が転がり膨れる転落人生となる。カードローン、不幸続きの人生、孤独な年月。全ての「火の車」から飛び降りて「あるべき」自分になりたかった一人の女がいる。彼女は他人に成り代わるために女を殺害し新たな人生を歩みだそうと彷徨する。しかし結局なりきれなかった。逃げ場は何処にもないのだと、彼女の叫びが耳に残る。
ただ幸せになりたくて現状から逃げ、こんな人生は嘘だと、本当の自分は「こうあるべき」と理想を追い求めてひた走る。火の車から降りたつもりが、結局いっそう勢いのついた火の車に乗っている。
彼女は殺そうとした人間の過去に赴き、人に土地に触れることでその人生を
なぞっていく。彼女は彼女らの人生を背負い、また己の罪を背負い、巡礼しているようにも見える。
彼女は「幸せになりたかっただけ」であり、それは他人になってしまいたかったのではなく『あるべき自分の姿』に戻りたかったということだ。こんなはずではない、これは自分ではない。
人は弱いから確かなモノに頼る、例えばお金、確かな人生、信じられる人と場所・・・それらを積み上げた山を見上げて自分の人生に仮初の満足をする。けれど山は崩れる、あっさりと。頂点の石コロが転がり麓で見上げる己の下につくころには雪崩となって押し寄せる。彼女の地獄はまさにそれだ。
けれどそこから逃げ出し他の山に移ったところで同じことではないか?

蛇は「こんどこそ足が生えてより良くなる」と信じて脱皮するのだという。今度こそ本当の自分の人生を送れるのだと、そう信じて蛇=彼女は脱皮を繰り返す。何度も。何度も。いくら脱皮を繰り返してもその中身は己自身だということをいつになったら知るのか、それすらもきがつかずに。

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紙の本

10年ぶりの再読ですが、以前以上に楽しむことができました。借金をしてしまう人間について、もっと突き放した見方をしていたのですが、それもまた人間のありようだな、と寛容にみるようになりました。それが成長の結果なのか、老いて妥協し始めたのか、小説の良しあしを決めるのはやはり読者なんだと思った次第。

2011/09/12 20:03

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

『火車』を読むのは二度目、何年ぶりになるのでしょう。この作品で山本周五郎賞を受賞したのが1993年で、すぐには飛びつかなかったので、1995年頃ではなかったかと思います。ということは15年以上経っていて、内容はよく覚えていませんが、借金がテーマで、どうも借りているほうが被害者みたいな風潮は今でもあるのですが、それは違うんじゃないか、やはり借りる側に問題があるんだろうって反撥したことだけを覚えています。実際、その記憶は正しかったのか、当時と今で私の思いは変わったのか、検証も含めての再読となりました。

私が手にした文庫は、新潮文庫で1998年に出て、2008年で51刷とありますから、売れています。ロングセラーといっていいでしょう。藤田新策の、いかにも不安感をあおらないではいないカバー画ですが、〈火車〉の〈火〉に引きずられたといえないでもありません。現代人のおかれた孤独、絶望がよく表現されてはいますが、この夕焼けの赤さがベストの選択だったのか、これじゃあホラーじゃないか、なんて思ったりもします。装幀は新潮社装幀室。

カバー後ろの内容紹介は
       *
休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男
性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子
の行方を捜すことになった。自らの
意思で失踪、しかも徹底的に足取り
を消して――なぜ彰子はそこまでし
て自分の存在を消さねばならなかっ
たのか? いったい彼女は何者なの
か? 謎を解く鍵は、カード会社の
犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨
な人生に隠されていた。山本周五郎
賞に輝いたミステリー史に残る傑作。
       *
となっていて、全29章に、あとがき、佐高信の解説、という構成。「この作品は平成四年七月双葉社より刊行された。」と注があります。そうか、単行本も新潮社か文藝春秋だろうと思っていましたが、見事に思い違い。双葉社ということは、「小説推理」に連載されたんだろうな、せめてその手の情報も盛り込んでおいてほしかったな、と思った次第。さらにいうと、私はてっきり、これが直木賞受賞作だとばかり思っていたんですが、山本周五郎賞で、『理由』が直木賞だったんですねえ、勘違いしていました。

まず登場人物がいいです。とりあえず、主人公は誰か、っていうことになります。実際には、本間が探すことになる関根彰子こそが、物語の核にいます。ただ、彼女にまつわることは全てがこのお話で解かれるべき謎になっているわけで、細かく書くことはできません。許される範囲で書いておけば、栗坂和也の婚約者で28歳の美女です。宇都宮の高校を出ている、ということですから大学は出ていないのでしょう。

和也の得意先である今井事務機という会社の事務員で、一昨年から付き合い始め、昨年のキリスマス・イヴに婚約しています。ただ、彰子が天涯孤独なため、家柄を重視する和也の両親から結婚を反対されています。二人で買い物をしているとき、クレジットカードを作ろうとしたことが契機で、失踪した気配があるようです。そういうわけですから、彼女の行方を追うことになる本間俊介を主人公としておきます。

俊介は強盗犯の逮捕の最中、相手の撃った拳銃で膝を打ち抜かれ、現在、休職してリハビリ中の42歳の刑事で、三年前に、妻の千鶴子を交通事故で亡くしています。彼には智という10歳になる息子がいますが、実は養子です。でも、その事実はまだ明かされていません。この家庭に事情を抱えた刑事、という設定、例えば堂場瞬一の『アナザーフェイス』なんかもそうですし、クインビーのキンケイドシリーズもそうです。定番なんでしょうが、読ませます。

彰子の婚約者で、彼女を探して欲しいと頼んできたのが栗坂和也です。俊介の妻で、亡くなった千鶴子の親戚の29歳の銀行員で、千鶴子の従兄の息子だそうです。神田支店の渉外の得意先係で、遠くに住んでいるわけでもないのに千鶴子の葬式には顔をださないで、自分の婚約者が姿を消しただけで、休職中の刑事にものを頼みにくるという、身勝手な男という設定です。とはいえ、この男が登場する場面は、冒頭だけですのでご安心ください。

俊介には、養子ですが10歳になる智という子供がいます。ただし、養子ということは未だ少年には告げられていません。そんな少年を我が子のように優しく見守るのが本間の同僚の刑事で、警察学校の同級生・碇貞夫です。貞夫は千鶴子の幼馴染で、身近にいすぎたせいで彼女との結婚に踏み切れなかったのですが、今も、千鶴子のことが忘れられなくて、智のことを可愛がっています。

他に、マンションの一階に暮らす井坂恒男・久恵夫妻がいます。恒男はもともと、久恵の会社の仕事をする内装会社の社員でしたが、二代目社長のために会社を追われ、就職の邪魔もされたことをきっかけに主夫に転向、思わぬ才能をみせる50歳の男です。子どもがいないこともあって、俊介の手が廻らない時、智の面倒をみてくれます。ちなみに久恵は、43歳。インテリア・デザイナーで友人二人と青山に事務所を構えています。

このような人々の太助を借りながら俊介は彰子を覆っていた秘密のベールを剥いでいきます。以前、読んだ時とは違って、久恵に反撥を感じることはありませんでした。むしろ、大変だなと同情を覚え、もう探さなくていいじゃない、なんて思いました。感覚的にあわないなと思ったのが栗坂和也です。私も調子がいいほうで、ちゃっかり人にものごとを押し付けたりしてしまいますが、和也のようなどこか突き放したような言動になることだけは避けたい、そんなことを思わせる物語でした。再読って、案外いいかも・・・

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紙の本

ミステリーの金字塔。オールタイムの大傑作。

2008/07/26 15:44

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:よし - この投稿者のレビュー一覧を見る

傑作というか、現代ミステリーの金字塔と言っても過言ではないでしょう。今回、再読してみましたが、とても16年前の作品とは思えないほど、ミステリーの仕上がり、経済、社会小説の融合。そして、人間ドラマの完璧さ。どれをとっても凄い。
とりわけ、犯人に迫る迫力は筆舌に尽くしがたいものです。そして、何より犯人の正体が分からない怖さ。やっぱりどれをとっても完璧な作品です。

遠い親戚から失踪した女性の捜索を頼まれる、休職中の刑事。捜査が進めば進むほど、とんでもない事件の匂いに巻き込まれる。そして、カード社会の被害者と現代社会における弱者に対する冷酷な仕打ち。被害者と加害者の境目などどこにもなく、被害者も加害者も自分なのだと思えてくる。
16年前とそんなに変わっていないですね。むしろ、ひどくなっているのでは…。そういう意味では、この小説は今の社会を冷静に見つめなおすためには必読なのでは。

そして、随所に宮部さんらしい優しさがにじみ出ています。
智や保に救われたような気がします。
いやー、凄い。再読してわかりました。これは、オールタイムのミステリーです。宮部みゆきの渾身の大傑作という思いは変わりません。

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紙の本

同じ本を三冊

2020/08/09 15:22

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ねこのここねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

90歳の父にすすめたところ、ハマってしまい、ここ半年ばかりの愛読書です。
あまりに読み込んで、汚したりして三冊め。
でも、それだけの価値はあると、絶賛です。
父曰く「直木賞をとった作品より、自分はこちらのほうがいい」そうです。

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紙の本

再読

2020/05/05 11:28

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:hid - この投稿者のレビュー一覧を見る

再読というか、以前読んだのを忘れてて、また読んじゃったっていう。
でも、流石だわ。
全然褪せない。
偶然の中の必然。
そこが、並みの作家さんとは違うんだな。

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紙の本

甘い罠

2019/12/14 21:32

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る

親戚筋の失踪した婚約者の行方を捜すところから始まるミステリー。
 静かなラストを迎えますが、そこに行き着くまでの緻密な構成により、失踪の全貌が徐々に見えてくるとともに、クレジット社会の深い落とし穴が浮き彫りになるという、とても27年前の小説とは思えない力作でした。700ページ近い大作ですが、大作特有の中だるみもなく、またサスペンス特有の無理な展開もなく、自然に一気に読了しました。とにかく面白かったです。宮部先生の作品にハズレはありません。

 ところで、以前勤めていた会社での話ですが、企業融資の審査を担当している審査役が多重債務で退職しました。会社の信用を審査する立場の人が、資金繰りに行き詰まるという、何ともお粗末な事件でした。噂によるとギャンブルに嵌まっていたとのことです。
 かく言う私も新人の頃は、オーディオ機器やCD・本の大人買いのために、安月給では賄いきれず、キャッシングを繰り返し、ボーナスで精算するというパターンの生活を送っていました。30万円までは、カード1枚あれば簡単に借りられるという気安さは、ある意味甘い罠ですね。

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紙の本

彼女に会いたかったのは読者だ

2019/04/10 15:32

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る

宮部みゆきさんが『理由』で第120回直木賞を受賞するのは、平成10年のことだ。
 それまでにも何度も直木賞候補にあがられていながら受賞することはなかった。
 今では名作の誉れの高いこの『火車』にしても、第108回直木賞の候補作に挙がったが、結構いい点が入るものの受賞には至らなかった。
 なかでも渡辺淳一選考委員の選評はひどく、「いったいこの作者はなにを書きたかったのか、そこがわからず、ただ筆を流しているとしか思えなかった」とし、「このようなお遊びの小説」と酷評している。
 一方で、井上ひさし選考委員は「持てる力と才能を振り絞って「現在そのもの」に挑戦し、立派に成功をおさめたその驚くべき力業に何度でも最敬礼する」と絶賛である。
 同じ作品を読んでもこれだけ評価が違うのだから、本を読むとは難しい(あるいは楽しい)ものだ。
 直木賞はのがしたものの、この年の第6回山本周五郎賞を受賞している。

 内容は自己破産を題材にしたミステリー小説だ。
 犯人である女性を休職中の刑事が追い詰めていくのだが、犯人は最後までその姿を見せない。
 ただ犯人の周辺に起こる事件から、犯人の実像が鮮やかに浮かんでくる。
 犯罪は罪だ。だから、罰を受けないといけない。
 それはわかっているが、犯人の姿が浮かんでくるたびに、誰が彼女を裁くことができるのかと思う。
 彼女を追い詰めたもの、それが一番解けない闇かもしれない。
 だから、多分読者こそが最後に彼女に会いたかったのではないだろうか。

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紙の本

人間ドラマ

2018/12/23 11:49

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:端ノ上ぬりこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

本間刑事は、けがをしてリハビリの為現在休職中。妻の千鶴子は亡くなり息子の智と二人暮らし。アパートの住民で伊坂夫婦には、子供が無く智をかわいがってくれ、面倒をみてもらっている。主夫の伊坂が主に留守中も面倒を見てくれている。千鶴子の甥の和也が、失踪した婚約者の関根彰子を探してほしいと訪ねて来る。彰子の足取りを追いかけて次々と謎が深まる。彰子が、実は別人?
疑問と何故が交錯しながら物語が進む。人物の根底にあるものを、パズルのように積み重ねながら、彰子の真実に近づいて行く過程はいつもながら圧巻です。ミステリーだけどヒューマンドラマ。時間が許す限りページをめくる日々でした。宮部さんてどんだけすごいの~。

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紙の本

負のエアポケット

2018/05/19 18:35

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る

世の中の、法律の狭間に落ちてしまった女の悲劇を描いた傑作。本人はほとんど登場しないのに凄まじく存在感のある彼女が救われる事はないと辛くなる作品でもある。必読。

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紙の本

文句なしにおもしろいです!

2017/10/08 17:48

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ME - この投稿者のレビュー一覧を見る

著者が30周年を迎えたという記事を読み、初めて読んだ作品だが、非常におもしろく、一気読みという感じだった。ネタバレになるので、詳細は書けないが、フィクションとしても、主人公の刑事の友人達も魅力的な人が多い。
次に何を読もうかなと考えているが、著者の作品は何冊もあり、長いのが難点。

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紙の本

いっき読み

2016/08/13 16:37

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:くまぜみ - この投稿者のレビュー一覧を見る

でした。登場人物の設定、描写が引き込まれる。関係者一人一人の小説を読んでいるようだ。最後が、その先が知りたくなる終わり方であったが、こういう終わり方もいいかなと思った。

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紙の本

私の中での宮部さん最高傑作

2016/08/02 23:14

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ゆきは - この投稿者のレビュー一覧を見る

詳しい経緯は皆さんのレビューを読んでいただくとして、借金を抱え、次第に社会の底辺へと流れて行かざるを得ない人々、そういう人達を弁護士の口から、真面目で、気の弱い人が多いのだと訴えています。
この作品が書かれた頃からいろいろ事情は変わり、取り立てが厳しく制限されたり、銀行がサラ金と手を組んだりと随分変化はしましたが、今でもやはりヤミ金に苦しんだり、それを苦に自殺したり、後を立ちません。

借金に縁のない恵まれた人の中には、借金ある人を見下し、馬鹿にするような人もたくさんいます。
ですが、宮部さんはそういう人達と目線を合わせた作品に仕上げてくれました。

最後の最後に現れる喬子、たとえ人を殺し、身分を乗っ取っても生きていく強さに心を打たれました。

そんな喬子にも、何かと助けてくれた唯一の友人がいたことが、救いです。

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紙の本

現代社会の恐ろしさをミステリー風に描いた大傑作

2016/01/25 09:12

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

この小説は、宮部作品の中でも傑作中の傑作です。結構な長編ですが、読者はそのストーリー展開と描写の巧みさによって一気の最後まで読まされてしまいます。
主人公の婚約者であるある一人の女性が突然姿を消します。それも調べてみると自分の意思で姿をくらましたのです。この女性には何があるのか?現代の一見便利で快適な社会の裏に潜む恐ろしさをミステリーとして描いた大傑作です。

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